第六話「ネロ・カオス襲撃」







 〜センチュリーホテル
 志貴とアルクェイドは、ネロから逃げる為、ホテルに隠れていた。
 そして、アルクェイドは体力の回復の為に休んでいた。
 外は、すっかり日が暮れていた。
 アルクェイドは、志貴に殺した理由を聞いた。
「何故、私を殺せたの?」


 ホテルを望める場所では……。
「見つけたぞ……」
 ネロが、ターゲットを見つけたようだ。
 ネロの肩には、カラスがとまっていた。


 ホテルでは、志貴がナイフを手にメガネを外していた。
 メガネを外した志貴は、ナイフで椅子を解体した。
 何の抵抗も感じさせずに……。
 解体された椅子を見てアルクェイドが言う。
「確かに……其れなら私を殺せるわね」
 少しの間をおいてある単語を紡ぐ。
「直死の魔眼か……」
「直死の魔眼?」
「あらゆる物には発生した時から予め決まっている崩壊の時期」
 直死の魔眼について語り始めるアルクェイド。
「つまり、『死期』が内包されているわ。貴方は、其の『死』と言う情報が見えているの」
「『死』が見える?」
「要するに、あらゆる物を殺せる目を持っているのよ。外的要因も魔術的要因も無視して対象を殺すことが出来る。そう言う意味では、私より貴方の方がよっぽど化け物ね」
「化け物……」
 あらゆる所に見える線に気分が悪くなりメガネをかける。


 そして、玄関ロビーに大きな犬を連れたネロ・カオスが現れた。
 玄関ロビーには、大勢の人がいる。
 だが、誰一人気づいていない。
「お客様。ペットを連れてのご来場はご遠慮頂いておりますので……」
 ホテルの従業員がネロに声をかける。
「あれ?」
 ネロの脇に居たはずの大きな犬は、居なくなっている。
「今、此方の方に大きな犬が居ませ」
 従業員は、最後まで言えなかった。
 上半身が食いちぎられたのだ。
 残った下半身は、ネロの影に飲み込まれていった。
「さあ……食事の時間だ」
 ネロが、そう言った直後、ホテルから灯が消えた。


 此の異変に、アルクェイドが行動をとる。
「志貴、此処を出るわよ」


 ロビーに居た人たちは、ネロの使い魔に喰い散らかされていく。
 辺りには、喰い散らかされた遺体と血の海が増えていく。


「何処へ行くんだ!?」
 志貴とアルクェイドは、脱出しようと廊下を走る。
「一体、何が……」
「敵が来たわ」
「敵?」
「今は此処を出るしかない」
 脱出しようと階段へ辿りつたアルクェイドが見たものは……。
 階段を上がってくるネロの使い魔達だった。
「志貴。先に行きなさい」
「な……」
「早く!!」
 志貴は、アルクェイドを残してエレベーターの前に差し掛かった時……。


 ポーンと言う音共にエレベーターの扉が開いた。
 エレベーターから出てきたのは、大きな犬だった。
 出てきた犬は、志貴の肩を裂いた。
 肩を裂かれた志貴は、右手で左肩を抑えている。
 志貴は、エレベーターの扉が開いたり閉まったりする音に目を向けると喰い散らかされた人の遺体が複数あった。
「ぅうあああああああぁぁぁ」
 あまりの惨劇に志貴は、吐き気をもようした。
 吐き気に耐えつつ、大きな犬に対峙する。
 犬は、志貴を襲う。
「うくっ……」
 志貴は、苦痛に顔を歪めわき腹を押さえた。
 如何やら掠った様だ。
 掠ったわき腹から血が滲む。
「しまっ……」
 姿を見失った志貴は、犬の体当たりで壁まで吹き飛ばされた。
 吹き飛ばした志貴を犬は喰らおうと圧し掛かった。
 圧し掛かった犬の線に志貴は手刀を突き刺した。
 手負いになりながらも起き上がってきた犬を刃物で解体した。
 解体し終えた直後、頭痛が志貴を襲った。
 目の前に落ちていたメガネを拾うと立ち上がった。

「屑どもめ、肉片ひとつ片付けられぬか……」
 現れたのは、コートを羽織った大柄の男……ネロ・カオスだ。
 志貴が解体した犬がネロに取り込まれる。
 相変わらずズキッズキッと頭痛が志貴を襲い続ける。
「喰え」
 ネロが喰えというと巨大なワニのような頭が志貴を喰らったように見えた。
「ほう……ようやく出逢えたな……。アルクェイド・ブリュンスタッド……」
「……ネロ……。ネロ・カオス……」
「いかにも」
「まさか貴方がこんな下らないゲームに乗ってくるなんて……なんだか出来の悪い夢みたいだわ」
「同感だな。私もこの様な無諜な祭りの執行者にしたてあげられるとは夢にも思わなかった。私にとっても、之は悪夢だ」 
「……志貴。此処を抜けるわよ」
「お前、其の腕……」
「さっきのヤツで一寸引っ掛けただけ」
「……抜ける?」
 ネロの脇には無数の獣が控えている。
「出口などない。此処が貴様の終着だ」
「……さあ……。其れは、如何かしら」
 アルクェイドは、爪でなぎ払った。
 ホテルの壁に穴を開けたアルクェイドは、志貴を抱え爪を壁に引っ掛けながら地上へ下りていった。
「志貴、走って」
 アルクェイドが穿った大穴から右手をかざして大きな鳥を放とうとする。
 其の鳥を一本の黒鍵が切り裂いた。


「私を括るつもりか……」
 無数の剣がネロを括ろうと動き回る。
「だが……。興が削がれたな……。再会の時、其の命貰い受ける」
 ネロは、コートを翻して歩む。
「真祖の姫君よ」





 〜三咲高校地下
「如何やら我が盟友も来ている様だな……」
 ロアは、盟友の気配を探っていた。
「其れはさて置き、死者どもをもっと増やさねばならん!! 一人、命令どおりに動かんヤツが居るようだ」
 ロアは、自分の城で原因を探っていた。
「如何やらあの娘、私の支配から逃れたか……。見つけ次第、支配下に戻してやる」
「ぐぎぎぎぎっ」
 死者がロアに何か言う。
「そうか。エレイシアも来ているか……」
 ロアは、壊れたように笑い出した。
「近いうちに挨拶に行かないといけないな」
 シエルにも挨拶しないといけないと言うロア。
「もう一人、忘れてはいけないヤツがいた。志貴にも挨拶しておかないと」
 ロアの中のもう一人が言った。


 〜三咲町内
 三咲町内では、ロアの指令を受けた死者が徘徊していた。
 獲物を求めるように……。
 人の居ない路地裏では、悪魔のような残虐な行為が行われている事を通行人たちは知らない。
 いや、気づいてさえ居ない。
 また、尊い命が消えていくのだった。
 残虐行為を終えた死者達は、新たな獲物が来るのを息を殺して待っている。
「ひ、人殺しだぁ」
 人殺しだぁと叫んだサラリーマンは、死者の餌食となった。
 死者は、サラリーマンの首筋に牙をつき立て血を吸う。
 血を吸われたサラリーマンは、死者の仲間入りを果たした。吸血種の才能があったようだ。


 〜三咲高校地下
「ふむ。死者たちに命じて一時間で十人を手勢に加えてやった」
 ロアは、城で死者から送られてくる力を蓄える。
「エレイシアに気づかれないよマナを汲み上げる式を張り巡らせて置こう」
 マナを汲み上げる式を張り巡らせようと動くロア。
 



 〜友枝中学校地下
「流石に僕が此処に城を構えているとは思わないだろうね」
 省吾は、玉座に座って言う。
「兵も十分揃えたから、あのお姉ちゃんと遊んであげようかな?」
「遊ぶのは結構ですが、全滅するような事だけはしないでください」
「五月蝿い!! お前は、僕の執事をしていればいいんだブリミル」
 省吾に仕えている死徒はブリミルと言うらしい。
「畏まりました。ですが、あの少女は、数刻で死徒に成った程の者です。クレグレも忘れないでください」
「わかったよ。明日、あのお姉ちゃんと遊ぶから準備をしといて」
「はい。四天王にも準備をさせておきましょう」


「何の用だ!! 此処へ来ていいのは省吾様だけだ」
「省吾様からの命令です」
「言え!! ブリミル」
「明晩、例の小娘と遊んでヤレとのことです」
 執事服姿のブリミルが言う。
「久々に全力で戦ってもいいのだな」
「はい。但し舐めて掛からないでください」
「舐めて掛かったりはしない。そうだろ? お前ら」
 すると闇の中から三人が姿を現した。
「久々に我々が前戦で戦えるんだね。アイルトン」
「ブリミル。此度の敵は?」
「成り立ての死徒です。しかも、省吾様を凌ぐかもしれない力を持っています」
「成りたてが二十七祖候補の省吾様に勝てるわけないだろう」
「成り立ての死徒を殺す機会って何時以来だ?」
「五年ぶりか」
 五年ぶりと言うマッサ。
「俺は、之から此の町の代行者を消してくる。此の刀の試し斬りをしたいからな」
「ようし。小次郎、此の町の代行者を消して来い!!」
「三十分ほどで戻ってくる」
 そう言って、城を出て行く小次郎。
 彼が友枝町の代行者を消して戻ってきたのは、キッチリ三十分後だった。


 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜皆元気か? ケロちゃんにおまかせのコーナーの始まりや」
「今回は、シナリオ後半に出てきおった連中について説明したる」
 映像と共に説明を始める。
「先ずは、コイツや。名前をブリミルちゅうんや。省吾の配下としては古参の部類にはいる」
 執事服を着たブリミルの写真がアップで写る。
「ブリミルは、省吾の執事でな身の回りの世話をしとる。正確に言えば身の回りの事は、侍女にさせとるんや。彼は、頭脳労働が専門なんやで」
 映像は、切り替わって四人の写真が並べられる。
「んで、此の四人は四天王と呼ばれる省吾配下の重鎮でブリミルとちごうて肉体派、戦闘の専門家や。其の戦闘力は成り立ての死徒や普通の死徒では歯がたたん連中や。シナリオには書かれとらんけど吸血鬼退治のプロである代行者があっさり殺されとったからな」
 宮本小次郎による代行者殺害シーンがながれる。
「宮本小次郎ちゅうヤツは刀使って戦うようやけど、他の三人はどんなスタイルで戦うんかは不明や」
 此処で、ケルベロスのアップに映像が切り替わる。
「おっと、そろそろ終いの時間や。次回も全力全壊で飛ばしていくからちゃんと着いて来るんやで」
 ケルベロスがカメラに向かって手を振る。
「ほな!!」


三咲市の方は大体、原作通りかな。
美姫 「そうね。あっちは今の所は大きな変化はないみたいね」
問題は省吾たちの動きか。
美姫 「彼らの力がどれぐらいなのか」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ」



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