第九話「四天王との激闘」






 
 友枝中学校グランド
 友枝中学校のグラウンドにはさくら達の反対側に死者たち、其の後ろに四天王が控えていた。
 省吾は、四天王の更に後ろで見ている。
「四天王たち、其のお姉ちゃんに力の差を見せてあげて」
「はい、省吾様。他の連中は如何しますか?」
「そうだね。手を出さないのなら無視してもいいよ」
「アテネと言う者が、手を出さないと言っております」
「じゃあ、あのお姉ちゃんだけ可愛がってあげて」
「では、思いっきり可愛がってあげます」
 アイルトンは、向き直ると命じた。
「死者達よ、我ら四天王も戦う。あの死徒を血祭りにあげろ!!」
 アイルトンの命と共に死者たちは、さつきに襲い掛かった。
 さつきに襲い掛かった死者の数は、さっき葬った数の1.2倍なのだ。
 更に四天王も加わっているので戦闘力は計り知れない。
「死ねぇ!!」
 マッサがいっきに飛び込んでさつきに飛び掛って爪を振り下ろす。
 しかし振り下ろしきれない。
 そう。さつきに手首を掴まれたのだ。
「それっ!!」
 マッサは、爪を振り下ろした体勢から其のまま、さつきに投げ飛ばされた。
 其の動作を隙と見て襲い掛かる使者。 
 そんな死者達をさつきの影から出てきた混沌がかった端から灰にしていく。
「あのお姉ちゃん、あんな能力を隠していたんだ」
「省吾様。あの能力は、ネロ・カオスの物の筈です」
「其れは、僕も知っているよ。唯、あのお姉ちゃんが如何して混沌を使えるかが問題だよね」
「考えられる事は、ネロ・カオスの死徒。若しくは、ネロ・カオスの力を借りた」
 考えられる事をあげるブリミル。
「ですが、ネロ・カオスは血を吸いません。その事からあの死徒は、ネロに力を与えられたと考える線が妥当です」
「四天王達、其のお姉ちゃんを後にして混沌を先に始末して。混沌さえ始末したら無力になるはずだから」
 彼らは、気づいていない。
 さつきが、空想具現化マーブル・ファタズム固有結界リアリティ・マーブルを持っている事に……。
「小次郎!!」
「混沌を殺せばいいんだな」
 そう言って小次郎は、刀を抜く。
「目障りな混沌よ、この一凪で消えうせろ!!」
 小次郎が刀で混沌をなぎ払った……ように見えた。
 しかし消えたのは、死者達の方だった。
「ちっ。仕留め損ねた」
「小次郎。何処を狙っている!?」
「俺は、ちゃんと混沌を狙ったぜ」
「狙っていながら外すヤツが何処にいる」
「そう言うお前も仕留められていないじゃないか!!」 
 四天王同士が言い争いを始める。
「お前達!!」
 突如、省吾が怒る。
「言い争う暇があったら、其のお姉ちゃんを早く血祭りにあげて。じゃないと僕が殺しちゃうよ」
 彼是言っているうちに死者達の数は半数を切ろうとしている。
「えぇっと……。皆、殺しあっちゃえ」
 そう言って、さつきは死者たちに魅了の魔眼で暗示をかけた。
 暗示を掛けられた死者たちは、死者同士で殺し合いを始めた。
「小娘、我らに暗示はきかん。我ら四天王の力見せてやる」
 四天王の力を見せると言うアイルトン。
「行くぞ、小娘!! 省吾様に歯向かった事を後悔させてやる」
「では、拙者から行かせて貰う」
 先鋒は、刀を使う小次郎のようだ。
「之は、拙者が人間だった時に使っていた刀で銘は壊刃正宗。多くのアヤカシや吸血種の血を吸った妖刀だ。お前の血もコイツに吸わせてやる」
 刀の刀身は黒く不気味な光を放っている。
「コイツもお前の血が吸いたいと騒いでいる」
「小次郎。其れを使うのか?」
「あぁ。少し離れていてくれ!! コイツの力を解放したらお前達の力を吸いかねん」
 如何やら仲間の力をも吸収してしまう危険な刀のようだ。
「アイルトン。小次郎が、あの刀を使うんだ」
「はい。其のため我らも退避しているのです」
 だが、彼らは信じられない光景を目撃する事になる。
「小娘。死ね!!」
 そう言って斬りかかる小次郎。
 元剣士だった為か其の気配を感じ取って回避しようとする。
「!」
「固有結界『枯渇庭園』」
 さつきがそう言うと周囲の景色が一変して枯れ果てた砂漠に変わる。
「ま、まさか。之は……」
 さつきが展開した固有結界内に取り込まれる小次郎。
「早く脱出をしないと……」
 脱出を試みるも枯渇庭園から逃げる事かが出来ない。
「体から魔力が……力が抜けていく」
 小次郎の体がボロボロと崩れていく。
 枯渇庭園の効果が小次郎の構成力を上回っている証拠だ。
「しょ、省吾様。ど、どう…か、ご無事……で」
 小次郎の体は、あっという間に灰になった。
 死者たちは、発動と同時に灰になっていた。


「省吾様。小次郎の気配が途絶えました」
「あのお姉ちゃん固有結界を持っていたんだ」
「はい。今のでネタは割れています。次に使わせなければいいだけのことです」
「じゃあ次は、誰が相手をするの?」
「マッサとベッテルの二人に相手をさせます」
 今度は、マッサとベッテルに相手をさせると言うアイルトン。
「マッサ、ベッテル!! 小次郎の仇を討て!!」

「貴様!! 許さんぞ」
「小次郎の恨みを晴らしてやる」
 マッサとベッテルは、さつきの前に立つと一気に襲い掛かった。
「きゃっ」
 マッサの高速陽動に混乱するさつき。 
「おらおら、ついて来れないのか?」
「あうぅぅぅ」
「攻撃してこないのか? 来ないのならこっちから行くぞ」
 マッサが引っ掻き回し踊らされているさつきをベッテルが攻撃すると言う構図が出来上がった。
「そおらっ」
「いたぁ」
 ベッテルの拳がさつきの顔面にヒットしよろめく。
 不幸な事に此処に来てさつきの不幸体質が発動してしまう。
 普通なら回避できる攻撃を貰ってしまう。
 ベッテルに殴り飛ばされたさつきをマッサが後ろから羽交い絞めにする。
「放してよ」
 放してと言うさつき。
 だが、其れを聞くマッサではない。其れどころか更に強く羽交い絞めにする。
「マッサ。しっかり抑えて置けよ」
「任せておけ」
「な、何をするの?」
「何って、小次郎の恨みをお前で晴らすに決まっているだろ!!」
 そう言って羽交い絞めにされたさつきの腹部を殴りつけた。
「くっ、苦しいよぅ」
 ベッテルの拳はさつきの腹部にめり込んだままだ。
「まだ、一発殴っただけだぜ? 之じゃあ、小次郎のヤツが報われないなぁ」
「そうだな。もっと痛めつけてやれよ」
「今度は、さっきの10倍の力で殴るからな。死ぬなよ!?」
 再びさつきの腹部を襲う衝撃。
「やっ。やめて……」
「おらぁおらぁっ!!」
 衝撃は、一発だけではなかった。何度も何度も、休みなく衝撃が襲ってくる。
 休みなく襲う衝撃にさつきの体は、ピクピク震える。
「ガハッ」
 内臓が破裂を起こしのか、血を吐く。
 さつきの口からは止めどなく血が溢れ出る。
「之で最後だ!!」
 最後に放たれた一発は今までの攻撃で一番重くさつきの腹部に深くに沈み込んだ。
「うっぐぅおえっ」
 ベッテルがさつきの腹部から拳を引き抜くのと同時にマッサは羽交い絞めを止めた。
 すると音もなくさつきは地面に倒れふした。
「うぅぅぅぅっ」
 さつきは、呻き声を上げる。
 立ち上がろうとするもダメージが大きい為、なかなか立ち上がれない。


「あのお姉ちゃん。固有結界を持っている割に大したこと無いんだね」
「油断は禁物です。自分の感が正しければ、まだ隠している能力があるはずです」
「じゃあ、早く隠している能力ってヤツをばらして」
「其れは、出来ません。我々の手に余るものだった場合、対処のしようがありません」
「悪い事に第七司祭に気づかれたようです」
「第七司祭って、先代“蛇”だった娘だろ?」
「如何して第七司祭が此処に来たか分かりますね」
「一寸、暴れすぎたかな」



「見ろよ。コイツのもがき苦しみかた」
「苦しいだろう? 何とか言えよ」
 ドボォッ!!
 地面でもがき苦しむさつきを蹴るマッサ。
 マッサの蹴りはさつきの鳩尾に突き刺さった。
「ぐぅえっ」
 さつきの眼から涙が、口からは血が垂れている。
「さっさと立ち上がらんと轢き殺してやるぞ」
「マッサ、轢き殺す前に俺に胴体を真っ二つに引き裂かせてくれよ」
「駄目だね。あの小娘は、俺が轢き殺すと決めたんだから」
「何だと!! あの女は、俺の獲物だ」
 マッサとベッテルは、言い争っている。
 其の為、さつきのことに気づいていない。
「よそ見するなんて余裕なんだね」
 さつきの声に我に返る二人。
「なっ……」
 気づいたときには、さつきの爪が目の前に迫っていた。
「うぎゃぁぁぁ!!」
「マッサ!!」
 マッサは、さつきの爪によって引き裂かれていた。
「貴様、其の汚い手をマッサから放せ!!」
「邪魔しないで」
 さつきはそう言って一振り。其の一振りでベッテルは跡形もなく消し飛んだ。
「ベッテル―――!!」
「今度は、貴方にトドメを刺して上げる」 
「貴様、相当のダメージを受けて動けなかったんじゃないのか!?」
「とっても苦しかったんだよ。まだ、お腹が凄く痛くて苦しいんだから」
 其の割りにさつきは、自分より大きいマッサを片手で軽々持ち上げている。
 マッサの首からはミシミシっと骨が軋む音がする。
「ぐっぅぅぅ」
「じゃあね。苦しまずに逝かせてあげる」
 グサッとマッサの胸に爪を突き刺し心臓を握り潰した。


「噎せ返るほどの血のにおいを感じて来て見れば……」
「バカシエル」
「誰がバカです。誰が……」
 馬鹿と言われた事を起こるシエル。
「貴方達が一緒に居ながら何で弓塚さん一人に戦わせているのですか!?」
「之は、さっちゃんの試練だから」
「試練も何もありません。貴女達が戦えば一瞬で終わっている事です」
 さくらやアテネ達が戦えば一瞬で済むと言うシエル。
 確かにシエルの言うとおり、さくらやアテネ達が戦えば一瞬で済んでいるのである。何しろ世界最強の魔術師と真祖達だ。
「だって、さっちゃん。まだ、全力で戦ってないから」
「私が見たところ、弓塚さんは全力で戦っています」
「貴女には、そう見えたんだ」
「では、貴女の目には如何見えたのですか? 真祖の生き残り!!」



「そんな……マッサとベッテルが……」
 信じられない出来事に気が動転する省吾。
「消沈している時ではありません。そんな事では、小次郎やマッサ、ベッテルの死が無駄になってしまいます」
「省吾様には、私やアイルトン殿が居るではありませんか」
「そうだったね。僕には、アイルトンや大した戦力にならないブリミルが居たね」
「省吾様、其のお言葉は酷というもの」
「確かに言い過ぎたかな?」
 言い過ぎたかなと言う省吾。
「じゃあ、小次郎とマッサ、ベッテルの仇を討ちに行くよ」
 小次郎、マッサ、ベッテルの三人を失った省吾。
 仇を討つためにさつきの前へ進む。
 そんな様子を見る影がある。ネロの使い魔のカラスだ。
「お姉ちゃん。僕のおもちゃにしてあげるね」
「小娘、四天王が将の力其の身に刻み込んでやる」 
 いよいよ友枝町に城を構える省吾と其の配下、四天王が将アイルトン、執事のブリミルとさつきの戦いが始まる。
 怒りに燃える省吾たちは、疲労が溜まっているさつきは如何戦うのか?




 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間やでぇ」
 おなじみのコーナーが始まる。
「それにしても、本編でのワイの出番が無いのは如何言う訳や!? まぁ、此のコーナーがあるだけマシか」
 そう。此のコーナーは、ケルベロスが主役なのである。
「今回は、さつきはんが着ている服について説明したる。さつきはんが着ている服は、普通の服に見えるが普通の服やない。繊維の一本一本の隅々まで魔力を通わせてあるんや。繊維の隅々まで魔力が通わせてあるから強度は中々のもんや」
 さつきが着ている服を紹介する。
「固有結界の影響をうけんとは如何いう創りになっとるんのかな? 死者の攻撃はまったく受け取らんかったが死徒の攻撃は防ぎ切れんかったみたいや。腹部を殴られたさつきはんも之を着とらんかったら、もっとダメージを受けとったやろうなぁ。まぁ、さつきはんには関係ないやろう……。さつきはんは、真祖やからな。少々なダメージくらいでは死なへん」
 解説が長々と続く。
「さつきはんが真祖の力を解放したらあの死徒どもは、いっかんの終わりや!!」
 まるでネタバラシをしようとする。
「おっと、もう終いの時間見たいや。次回もバリバリ行くから着いて来いや。ほな!!」







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