第十一話「フォアブロ・ロワイン」






 
 大道寺邸
『おはようございます。友枝テレビから今朝のニュースをお伝えします』
 ニュースキャスターがニュースを読み上げる。
『先ずは、たった今入ってきたニュースをお伝えします。休校中の友枝中学校の校舎の一部が倒壊しグラウンドに大きな穴が開いているのを出勤してきた警備員が発見しました。警備員によりますと昨日、帰る前には異常がなかったと言っている事から、警備員が帰った後から今朝までの間に何者かが学校の敷地内に立ち入ったと見て現場に残された遺留品を回収すると共に事件と事故の両面から捜査を行う予定です』
 テレビに友枝中学校の写真と字幕で『友枝中学校倒壊!?』と表示されている。
『現場を呼んで見ましょう。現場の猿渡さん』
『はい。此方、現場の猿渡です。後ろに見えるのが原因不明の倒壊をした友枝中学校です』
『倒壊した友枝中学校は、休校中だったそうですが』
『はい。町内を騒がせている吸血鬼殺人事件の影響で休校中です』
『吸血鬼殺人事件で失踪した人の遺留品が見つかったとの情報がありますが如何なのですか?』
『警察への取材で行方不明者や失踪した警官の物も含まれているとの事です』
「さっちゃん、気分は如何?」
 アテネがさつきに気分を聞いた。
「全快です」
 さつきは、全快したと言った。
 恐るべき回復力だ。
「私の見立てどおりね。じゃあ、今夜は三咲町にネロ退治に行くわよ」
「叔父さんを倒しにいくの?」
「決まっているじゃん。其れが私たちの仕事だもん」
 死徒退治が仕事と言うアテネ。
「そうだ!! 今夜、アルクちゃんに紹介してあげるね」
「久しぶりにアルクェイドをからかってあげますわ」
 アルクェイドをからかうと言うアンゼロット。



 伽藍の堂
「おはようございます」
「今日も遅刻せずに来たか」
 煙草を吸いながら言う橙子。
「黒桐、早速だが珈琲を淹れてくれ」
 毎日、出勤最初の仕事が珈琲を淹れるのが彼の仕事なのだ。
 黒桐は珈琲を淹れる為、給湯室に向かう。
「式、昨日は寄り道せずに帰ったんだろうな!?」
「帰り道で死者に出くわしたから殺してやった」
 式は、帰り道で死者を何人か殺したようだ。
「殺しがいの無い奴らばかりだ」

「橙子さん、珈琲がはいりましたよ」
「ん? あぁ、ごくろうさん」 
「今朝、友枝中学校によって来ました」
「友枝町に行ったのか?」
「はい。出社する前に見てきました」
「其れで如何だった? 吸血鬼の城だったのか」
「友枝町の吸血鬼は、友枝中学校を城としていたようです。之が友枝町の吸血鬼の詳細です」
 そう言って、友枝町の吸血鬼の資料を橙子に渡す。
「佐々木省吾、四天王以下全滅……」
 沈黙の時が流れる。
(佐々木省吾と言えば、近年誕生した死徒の勢力では最大規模のはず。其れが一晩で全滅するなど考えられん)
 橙子は、書類に目を通しながらブツブツ呟いている。
「橙子さん!!」
 橙子は、気づかない。
「橙子さん!!」
「ん? 何だ!?」
「何だ!? じゃありませんよ。さっきから呼んでいたのに」
「そうか? すまんすまん」
 まったく謝っているようには見えない。
「其れより。之を如何やって調べた。友枝中は、立ち入り規制されていたんだろ?」
「はい。立ち入り地規制で入れませんでした。そんな時、鳴海と言う警部が特別に入れてくれたんです」
「鳴海って、元ピアニストの鳴海清隆か?」
「確かそう言っていました。後、橙子さんによろしく伝えておいてくれって……」
「トーコ知っているのか?」
「ヤツから人形を一体作ってくれと先日頼まれた」
「誰のをですか?」
「此の話は、お前の関知することではない」
 橙子は、黒桐の関知する話しではないと言った。
「そうだ、黒桐。悪いが今日中に此の仕事を片付けておいてくれ」
 そう言って、何処からか書類の山をデーンっと机の上に置く。
「之を今日中にですか?」
「頼む」
「頼むって之、今日までの仕事じゃないですか」
「忘れてた」
「忘れてたじゃ、済まされませんよ」
 と、黒桐はある事を思い出した。
「橙子さん。今月と先月と先々月分のお給料をください」
「すまん。もう少し待ってくれ!!」
「其の台詞は聞き飽きました。橙子さん、まさか……」
「昨日、お前達が帰った後、限定10個生産のアイテムが如何しても欲しくなってな」
「全額をつぎ込んだと言う事ですね」
 黒桐の財布は、大分厳しいようだ。
「橙子さん。何時になったらツケも払ってくれます」
「その内払ってやるから気長に待っていろ」
「待てません」
 黒桐は、我慢の限界のようだ。




 三咲高校
『こんにちわ。お昼のニュースをお伝えします』
 お昼のニュースが始まる。
『昨夜から今朝の間に起きた友枝中学校の倒壊事故のニュースをメインに時間を延長してお送りします』
「校舎が倒壊か……。うちの学校も倒壊しないかな」
「有彦、遊びたいのか?」
『現場では、建築の専門家立会いの下で原因の調査が進められています。専門家に聞いた話によりますと手抜き工事の可能瀬は無いとの事で、爆発物か何かで破壊した状態に良く似ているそうです』
 倒壊原因を伝えるキャスター。
『倒壊した校舎に火の気が無かった事から益々、謎が深まっています』
「爆発とは、物騒だ!! 爆発で思い出した事がある。遠野、今年の二月ごろ冬木って所でガス漏れ事故があったの覚えているか」
「ガス漏れ事故?」
「ヤハリ知らないか。そんなんじゃ、社会で生き残れないぜ」
「そうですよ、遠野くん」
 有彦とシエルは、遠野を自分達の都合のいいように教育しようとする。 
『また、同町で発生した猟奇殺人事件の被害者の数減った事と関係が無いか注意深く捜査を進めるとのことです』
 此のニュースだけで休み時間が終わった。



 アルクェイドのマンション
「私がネロの気をひき付けるから志貴は背後から襲って」
 アルクェイドは、対ネロの作戦を志貴と打ち合わせする。
「じゃあ、予定通りに来て」
 そう言ってアルクェイドは、マンションから出て行く。
 残った志貴は、七夜の刃を出して確認する。
 刃の状態を確認すると志貴もマンションを出て待ち合わせ場所に向かった。



 公園
 アルクェイドは、待っている。
 志貴も公園にやってきて待機場所に身を隠す。
「待たせたな……真祖の姫君」
「随分と待たされたわネロ・カオス。其れとも、フォアブロ・ロワインと呼んだ方が良いかしら?」
「よもや、人の身であった頃の名を聞く事になろうとは夢想だにしなかった」
 ネロも予想外の事だったようだ。
「流石は我らの処刑人。死徒二十七祖の経歴など知り尽くしているわけか」
「二十七? 貴方達は“蛇”を同胞とは認めていないの?」
「無論―――ヤツは吸血種である意味を持たない吸血種だ。もっとも他のモノよりは、アレを理解しているつもりだが……」
 ネロとアルクェイドの会話が続く。
 ネロが会話に夢中になっている事を確認した志貴が背後からネロを襲う。
 だが、ネロの背中から獣が一体出てきて志貴に飛び掛る。
「志貴!?」
「背後で何か起こったようだ」
 志貴は、獣を解体した。
 しかし獣は混沌になって志貴の足に絡まって自由を奪う。
「貴様の使い魔か。残念だったな。私に奇襲は通用しない」
 奇襲は、通用しないと言うネロ。
「私の領域に入ったものは私が気づかなくとも私達のいずれかが発見し之を迎撃する」
「そうみたいね。私以外のモノを一切見ていなかったのに背後に反応するなんて、其れが群体の強みと言う事かしらね」
「面白い。空想具現化もできぬほど衰弱している貴様が私に挑むと?」
「そんなものいらないわ」
 空想具現化マーブル・ファタズムは必要ないと言うアルクェイド。
「折角、一日貴様に時間を与えてやったのを感謝してもらいたい」
「気前がいいのね」
「今のお前は、“蛇”の娘にも劣る」
「わたしが、バカシエルに劣るとでも言うの?」
「私が言ったのは、今代“蛇”の娘だ!!」
「教えてくれるなんて気前がいいのね。其の死徒を始末するから、あまり手間を掛けさせないでね」
「戯け!! 蛇の娘は、完全に“蛇”の支配から脱しておる。貴様が一日休んでいた間に城を一つ落とした」
「まるで知っているような口ぶりね」
「使い魔を通して戦いを見させてもらっていたからな。だが、途中で魔術師に気づかれて使い魔を消されたから結果は分からん。あの小僧が敗れていれば、二十七祖候補の器ではなかったというだけだ」
 会話をやめ戦闘体制に入る両者。
「我が糧となれ! アルクェイド・ブリュンスタッド」
 そう言って一体の猛獣を放つ。
 アルクェイドは、爪で猛獣を引き裂く。
「たかだか死徒相手に世界と同化しても仕方ないわ。ネロ・カオス」
 アルクェイドは、両手から鋭い爪を出している。
「貴方には此の爪だけで充分よ」
 アルクェイドとネロ・カオスの戦いが今始まる。




 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間やで」
 ケルベロスは、今日も元気だ。
「今回は、ようしらんが有名なヤツが出てきおったなぁ」
 ケルベロスの言う有名人とは鳴海清隆の事だ。
「橙子はんの事を知っとったし、侮れんヤツや。橙子はんに、人形を造ってくれと依頼している事から橙子はんの正体を知っているみたいやで。しかし、何で人形の依頼をしたんや? ヤツが人形を必要としている理由が思い当たらん」
 清隆の考えが分からんと言うケルベロス。
「橙子はん、何を対価に引き受けたんやろうか? 気になるなぁ。しかし、魔術師は仕事の内容を他人に簡単に語らへん。まぁ語らんでも時が経てば明らかになるさかい……」
「おっと。もう終いの時間か……。毎回の此のコーナーのネタ探しも大変や。次回も全力全壊で行くから楽しみにしているんやで。ほな!!」 



アルクェイドと志貴のコンビがいよいよネロと対決か。
美姫 「さつきたちも三咲町に向かったみたいだし」
両者はどう出会うのか。
美姫 「どのタイミングで現れるのかも楽しみね」
だな。次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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