第十四話「アルクェイドとクロウ・リードの過去 前編」
自然公園
公園には人だかりが出来ていた。
地面の変わりように驚く人。
「うわぁ、すげえ―――。一部がガラスになっているぞ」
「いいや、隕石でも落ちたんじゃ?」
「コラ。ガキども、そっちへ行ったら危ねぇだろ」
連絡を受けた土建やがやってくる。
「こりゃまた……ユンボか何かでやったか?」
「親方!! このガラスは如何説明するんです」
この現場には、一般の常識では片付けられない事が山ほど含まれているのだ。
その際たるものが地面のガラス化なのである。
「よーし。作業始めるぞー」
時間が進み夜……。
「仕方ないから行くか!? “蛇の子”を始末しないといけないから」
仕方なくアテネに渡された住所へ向かうアルクェイド。
「昨日、真祖が如何とか言っていたけど直接聞けば済む事だもんね」
アルクェイドは、ビルを足場に飛んでいく。
大道寺邸
「そろそろ、アルクちゃんが来る頃ね」
アテネが言う。
「さっちゃん、怖がらなくても大丈夫よ。アルクちゃんが殺そうとしたら私たちで抑えるから」
「いざとなれば、さくら様が真祖の姫君を押さえ込んでくれます」
ウォンがさつきに言った。
「誰が、誰を押さえ込むですって!!」
其処へアルクェイドが現れた。
「もう一度言って見なさい。誰を如何するって!?」
アルクェイドは、さつきを殺す気満々のようだ。
「アルクちゃん。そう殺気立たない!!」
「ロアに気づかれても知りませんわよ」
「あんた達、奴の居場所を知っているの?」
「知っていても教えない」
教えないと言うアテネ。
「なんで教えないのよ」
「教えたらアルクちゃん、一人で行っちゃうじゃん。其れにヨワヨワな状態でいっても返り討ちにあうよ」
「今は、蛇の居場所を聞くのは止めておいてあげるわ。聞いておかなければいけない事があるから……」
聞いておかなければならない事があるというアルクェイド。
「昨日聞けなかった話をしてくれる?」
「話しって、さっちゃんが真祖に成った経緯」
「話してくれるよねアーちゃん」
何故か愛称で呼ぶアルクェイド。
「アルクちゃんが聞きたいのは、さっちゃんが真祖に成ったことよね」
「本当は、今すぐにでも殺したいのを我慢してあげているんだからね」
「じゃあ話すね。アルクちゃんも、“真祖創生”の事は知っているよね」
アテネが、さつきが真祖に成った経緯を話し出す。
「クロウが創ったのは知っているわ」
「さっちゃんを真祖にしたのは、クロウが創った“真祖創生”とは別の“真祖創生”」
「クロウが創った“真祖創生”以外にも同じ術があるとでも言っているの?」
「そうよ。さくらちゃんは、スゴイんだよ。誰の助けも借りずに自分だけの“真祖創生”を創り上げたんだから」
「話を聞いていると私がクロウから聞いた術式と違うみたいね」
アルクェイドが知っている術と違うようだ。
「当たり前や。クロウの術は、今からどのくらい前に編まれたと思ってるんや!!」
「懐かしい気配がすると思ってたけど、貴方だったんだ。何か昔と話し方が違うけど!?」
「あぁ、其れはクロウカードの本が長い事、大阪にあったから大阪弁がうつってしもうたんや!! そう言う姫さんも性格が代わってへんか?」
「そうかなぁ? 若しかしたら一度殺されたからかも……」
「其れで、違和感を感じたんか」
アルクェイドの話を納得するケルベロス。
「アルクちゃんは、さっちゃんを如何する? 真祖に成ったと言っても殺す? 間接的とは言え貴女と私の血縁関係にあるんだけど……」
「貴女、その子の血を吸ったの?」
「吸ってはいないわ。儀式の際、私の血を少し飲ませたけど」
「納得いったわ。あの時、空想具現化が使えたのか分からなかったのよ」
アルクェイドですら原因が分かっていなかったようだ。
「じゃあその子は、肉体的に完全な真祖に成ったのね」
「一応はね……」
「一応って如何いうことよ!!」
「本当の意味での真祖に成るには、アルクちゃんの血と長い時間の勉強が必要なの」
真祖に成ったさつきにもまだまだ足りないものがあるようだ。
「イヤよ。真祖に成ったとは言え“蛇”の子に血を与えるなんて……。」
血を与える事を拒むアルクェイド。
「アルクちゃんの力を回復させるのにいい場所があると言っても?」
「そんな場所あるわけないでしょ。あるのなら、私だって行って体力を回復させているわよ」
「その場所、私が提供してもいいですよ」
さくらが場所の提供を申し出る。
「あんたに用はないのよ」
「そんなこと言っていいんか? 短時間で体力を回復できるアイテムを持っているのは、さくらだけやで」
「持っているというのなら見せてくれない!?」
「今、この世にはないの。異世界に在る城に置いているの」
異世界の城に置いていると言うさくら。
其れもそのはず。秘宝中の秘宝なのだ。
「城へ行き方を見るんや。唯で見れるとは思わん事や!!」
「じゃあ、対価として昔話をしてあげるわ」
「よっしゃ!! 確かに話してもらうで」
「契約も纏まったし、“アテネ城”に行きましょ。さくらちゃん、お願いね」
「はい」
さくらは、軽く目を閉じて魔力を開放する。
「異界の門よ、我が魔力を糧に現世に現れよ、開くはブリュンスタッドの名を冠する城。今此処に道を開かん。出でよ、“アテネ城”!!」
さくらが呪文を唱え終わるとアテネ城へ通じる門が現れた。
「アルクちゃんは、初めて見るでしょ。私の城、アテネ城への門」
「私のブリュンスタッド城の門に似ているんだけど」
似ているというアルクェイド。
「似ていても当然よ。元は、私の城だったんだから」
アテネ城”は、元々はアテネの城だった。
「じゃあ、手放したんだ。あの城、欲しがる人たち大勢居るでしょう」
「話は後、城に入りましょう」
アテネ城
アテネ城は、広大な庭の中に城があるだけの空間だった。
「此処は、外の世界と同じ時間の流れなんだよ。あまり長い時間こっちに居ると怪しまれるから“王族の庭園”に入るよ」
有無を言わさずに“王族の庭園”に入る一同。
王族の庭園
「はわっ」
体に起こった異変を感じるアルクェイド。
「私、800年生きてきてこんなにマナが満ちた場所は初めてよ」
アルクェイドもこんなにマナが多い空間は初めてと言う。
「アルクちゃんの体力が回復するまでの間に、話してくれる?」
「其処の獣と銀髪は、知っているから話を聞かなくてもいいよね」
「私は、別に構わん」
不機嫌そうに月 が言う。
「じゃあ話すわね。私とクロウ・リードの過去を……」
回想
「私に何の用ですか? 真祖の姫君アルクェイド・ブリュンスタッド」
「何もかも知っているって言う話し方ね」
アルクェイドがメガネをかけた男に言う。
「今日、貴女が尋ねて来るということも分かっていました」
「我が此処へ来た理由は分かっているのだろう?」
「私が編み上げた“真祖創生”の事ですね」
「お主は、その“真祖創生”を如何するつもりだ」
「如何するつもりもありません」
如何するつもりもないと言う男。
「簡単に話す気は無いのだな……。流石は、ゼルレッチと並び称される魔術師だけあるな」
「貴女の後見人は、彼でしたね。彼は、元気ですか?」
「我に聞かなくても知っているのだろう? 当代最高の魔術師クロウ・リード」
「今現在の居場所を聞きたいですか? 対価次第でお教えしますよ」
「対価だけは、しっかり要求するか!? 対価は、金か? 其れとも物か?」
対価は何かと聞くアルクェイド。
「では、ゼルレッチの居場所を聞きたいのですね」
「いや、聞かぬ!!」
「そうですか。では、話を変えましょう」
話を変えるというクロウ・リード。
「貴女が、一番聞きたい事は“真祖創生”のことですね」
「分かっているのなら早く話して頂戴。我にはせねばならぬ事がある」
「あぁ。“蛇”の処刑ですね」
簡単に言い当てられるアルクェイド。
「その方、何故知っておる」
「私には未来が見えてしまうのです。故にあなたの未来も見えてしまいました」
アルクェイドの未来が見えたと言うクロウ・リード。
「未来が見えたと申すか!? アトラスの錬金術師でもあるまいに」
「はい。こう見えても私の占いは当たります」
クロウの占いは良く当たるらしい。
「では、占ってもらおうか?」
占ってもらおうかと言うアルクェイド。
「貴女は近い未来、殺人貴によって殺されるでしょう。そして、恋に目覚めるはずです」
「我が殺される? 星の精霊である我が殺されると言うか!?」
「恋に落ちる者が居る地において貴女と“蛇”の鬼ごっこは終わります」
「我と“アカシャの蛇”の鬼ごっこが終わると申すか?」
「はい。貴女と“アカシャの蛇”……其れとも“ミハイル・ロア・バルダムヨォン”と言ったほうがいいでしょうか?」
「名などどっちでも関係ない!! 鬼ごっこが終わるのならな……」
「“ミハイル・ロア・バルダムヨォン”に騙されて血を吸った事を後悔しているようですね。怒っているの間違いですね」
「その方に問う。ロアの居場所は、何処だ!!」
「ロアならヨーロッパにいますよ」
「ヨーロッパか……。待っているが良い、今殺しに行く」
アルクェイドは、何代目かのロアを殺しに行こうとする。
「急がなくて大丈夫ですよ。もう少し話でもしましょう」
もう少し話でもしようと言うクロウ。
王族の庭園
「あの陰険メガネ、私の事を見透かしたように言うんだから腹が立ったわ」
クロウの事を腹が立ったと言うアルクェイド。
「結局、クロウの予言どおりアルクちゃん殺されたんでしょ」
「そうよ。何もかもアイツの言ったとおりの事が起こったわ」
「当たり前じゃ。当時、クロウ・リードは世界最高の魔術師。ヒトの行く末が見えても不思議ではない」
「じゃあ、あんたは見えないの?」
「ワシは、魔力が強いと言ってもクロウ・リードやさくら様には遠く及ばん。見えても断片的なものに限られる」
「じゃあさくらちゃんも未来が見えるの?」
「当然、見えておられる。見えるだけではない。クロウ・リードが制御できなかった力を完全に制御されておられる」
「じゃあ、あの時クロウは見えたことを言ったんじゃないの?」
「確かにクロウは、未来が見えておった。だが、其れは勝手に見えてしまったものじゃ」
「さくらちゃんは、アルクちゃんが殺されることもネロが殺されることも見えていたんだから」
さくらの凄さを語るアテネ。
「流石に“クロウの後嗣”を名乗るだけあるようね。異空間に城を移動させられるわけね」
「アルクちゃん、力はまだ戻らない?」
「一寸だけど戻ってきているみたい。志貴に殺される前くらいには回復できるかな」
志貴に殺される前くらいには回復できると言うアルクェイド。
「此処は、外での一時間が一年もあるんだから」
「じゃあ、此処は魔法で創られた空間なんだ」
「確かに此処は魔法で創られた空間だよ。でも、此処に魔力を満たす為の装置があるのに気づいた?」
「あの変な機械でしょ」
「そう。アレは、さくらちゃんが異世界から貰ってきたの」
「うらぁ。ケルベロススペシャルドリフトぉー!!」
「あまいですわ」
「ウギャァッ!! また負けてしもうた」
ケルベロスとアンゼロットはゲームをしている。
「アテネ。アレのエネルギー何処から持ってきているの?」
アルクェイドはアテネにゲームの電源を聞いた。
「そんなの決まっているじゃない。この空間に魔力を満たしている装置からよ。外の世界から生活必需品を結構持ち込んでいるから」
周りを良く見ると冷蔵庫、炊飯器があるのが分かる。
テレビとゲーム機とゲームソフトはケルベロスが持ち込んだものだ。
「もう一回勝負や!!」
「何度やっても同じですわ」
「何ではじめてやるのにそんなに上手いんや」
ケルベロスは、何度もアンゼロットに負けているようだ。
「ケロちゃん!! 皆が話しているときに五月蝿いよ」
そう言って、ゲーム機の電源を切るさくら。
「何するんや!!」
ゲーム機の電源を切られた事を怒るケルベロス。
「ケロちゃん。一ヶ月ゲーム禁止」
「そんなぁ!!」
ケルベロスの叫びがこだました。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーやで」
「さくらの奴、イキナリ電源切る事ないよな。ゲーム機が壊れたら如何してくれんや」
ケルベロスが愚痴る。
「其れにしても真祖の姫さんヨワヨワやなぁ。あそこまで弱っていると幾ら王族の庭園でもどのくらい掛かるか分からんわ」
「王族の庭園を使うの之で三回目なんやで。真祖の姫さんは初めてやけど、さつきはんは三回もはいっとるんや。使用制限か? 使用制限は、一旦入ったら外の世界で一時間たたんと出れへんのや」
「実を言うと王族の庭園は、時空管理局が見たらロストロギアに指定されかねん品なんや」
「おっと、もう終いの時間か……。次回も楽しみにしててなぁ。ほな!!」
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーやで」
「さくらの奴、イキナリ電源切る事ないよな。ゲーム機が壊れたら如何してくれんや」
ケルベロスが愚痴る。
「其れにしても真祖の姫さんヨワヨワやなぁ。あそこまで弱っていると幾ら王族の庭園でもどのくらい掛かるか分からんわ」
「王族の庭園を使うの之で三回目なんやで。真祖の姫さんは初めてやけど、さつきはんは三回もはいっとるんや。使用制限か? 使用制限は、一旦入ったら外の世界で一時間たたんと出れへんのや」
「実を言うと王族の庭園は、時空管理局が見たらロストロギアに指定されかねん品なんや」
「おっと、もう終いの時間か……。次回も楽しみにしててなぁ。ほな!!」
アルクェイドとクロウは加古に会っているんだ。
美姫 「みたいね。尤もアルクェイドの方が軽くあしらわれているみたいだったけれど」
だよな。
美姫 「アルクェイドの完全復活になるのかしら」
何処まで回復できるのか。
美姫 「続きはこの後すぐ」