第十七話「聖杯戦争開戦!!」
冬木教会
「動いたようね」
「何が動いたのですか?」
「吸血鬼よ」
「吸血鬼って、私の土地に侵入したという……」
「じゃあ、さくらちゃん。遠見の魔術お願いね」
さくらに頼むアテネ。
「見えざる者の姿を我の前に映し出せ!!」
さくらが簡単に呪文を言うと地面に敵の姿が映し出された。
映し出された者を見て戦慄する。
「ネロ・カオスとそっくりじゃない!!」
写された吸血鬼は、ネロ・カオスと似ていたからだ。
「アイツが聖杯を狙っているとでも言うの?」
「聖杯を欲している吸血鬼は沢山居るわ」
聖杯を欲する吸血鬼が沢山居るというアテネ。
「じゃあ、イリヤと桜が聖杯だと知られたら襲われるってことじゃ……」
「そうね。間違いなくイリヤと桜を狙って来るでしょうね」
「心配要りません。サクラは、私が守ります」
桜を守ると言うライダー。
「シロウ。こうしては、居られません。早く戻って剣の稽古です」
直ぐにでも稽古を始めるというセイバー。
「俺は、吸血鬼から町の皆を守る」
「衛宮くん。町の人を守るって、いったい何人いると思うの?」
「何人って……」
「吸血鬼から全ての人を守るのは不可能よ」
全ての人を守る事は不可能と言う。
「シロウ。幾らヒト助けといって吸血鬼に戦いを挑まないでください。吸血鬼の中には、我々サーヴァントでも勝てないものが存在します」
「吸血鬼ってそんなに強いのか?」
場の空気を壊す衛宮士郎。
「しょうがないな。今のうちに吸血鬼の事を教えておいてあげる。其の前に先日真祖に成った子を紹介してあげるね」
さつきの事を紹介すると言うアテネ。
アテネに言われて入ってくるさつき。
「遠坂と同じ年頃の女の子?」
「衛宮くん。私と同じ年頃の女の子と甘く見ていると死ぬわよ」
「死ぬって、如何いうことだよ遠」
「其の子、つい最近まで普通の女の子だったんだって」
「普通の女の子?」
「そう。不幸な事に吸血鬼に血を吸われて死徒に成ったんだって。普通は、数十年掛かるんだけど、どの位で死徒に成ったと思う?」
凛が士郎に聞いた。
「一年か?」
「ブー」
「じゃあ半年か?」
「違うわ」
「一ヶ月か?」
「全部はずれ」
「それじゃあ、どのくらいなんだ!?」
「この馬鹿に教えてもいい?」
遠坂がアテネに聞いた。
「其の子は、血を吸われた直後には自我を持った死徒として蘇ったのよ」
「凛。其れは、本当なのですか?」
「本当らしいわ」
本当だと言う遠坂。
「さっちゃんは、其の日の内に真祖に成っちゃったんだから」
「死徒に成った其の日の内に真祖に成ったと言うのですか!?」
「ルヴィア、あんたは死徒を真祖にする方法知っている?」
「そんな魔術知りませんわ」
「じゃあ、イリヤは?」
「私も知らない。アインツベルンにも死徒を真祖にする術はないわ」
「知らないのも当然か。死徒を真祖にする秘術が使えるの世界でさくらちゃんだけだから……」
「唯一人って、完全に魔法じゃない」
完全に魔法と言う遠坂。
「一寸違うわよ。魔法は何れ魔術になってしまうけど、さくらちゃんの術は永遠に秘術のままだから」
さくら以外に使える者が現れないと言うアテネ。
「貴女は、誰なの? 真祖さん」
遠坂がさつきに名前を聞いた。
「ゆ、弓塚さつきです。此間まで普通の高校生をしていました」
「如何見ても、真祖には見えないね」
「そうですか?」
真祖には見えないさつき。
「ぜんぜん見えないわね」
グサッと見えない刃がさつきに刺さる。
精神的に落ち込むさつき。
「何泣かせているんだよ、遠坂!!」
「今のうちに私の事を怖がらせておくのよ」
「言い忘れたけど、さっちゃんに危害を加えるとただじゃ済まさないわよ」
「ただじゃ済まさないって……」
「アルクェイドをはじめ、生き残りの真祖の全てを敵に回すことになるわよ」
真祖の全てを敵に回すことになるというアテネ。
「カレン。あの二人は、如何したの?」
「ギルガメッシュとランサーですか? あの二人は、軒先に吊るしてあります」
ギルガメッシュとランサーは、軒先に吊るされているらしい。
冬木市郊外
「此処が聖杯戦争が行われる冬木とか言う地か……」
マントを纏った男が町を見下ろす。
「之ほど魔力が満ちた地は例を見ない。この地を我の城とする」
この男は、この地を城とするようだ。
「確か、近くに廃屋があったな。あそこを我が出城としよう」
彼の廃屋をねじろにすると言う。
「聖杯さえ手に入れば我が二十七祖になる事など造作もない。黒の吸血姫も敵ではない」
野望を大きく膨らませる男。
其処へ使い魔が返ってきて報告する。
「そうか。真祖たちもこの地に来ているか……」
更に報告を続ける使い魔。
「真祖の姫君の孫がいただと!!」
得た情報を主に告げる使い魔。
「何!? 真祖の姫君の孫が真祖!? ありえない!!」
衝撃の情報に驚く謎の男。
「聖杯を手に入れるのは、一筋縄ではいきそうにないな……。力を得るのに町のヒトを襲えば、管理者や代行者が黙ってはくれないだろう」
この吸血鬼、七人のマスターと九体のサーヴァント、五人の真祖を相手にしないといけないということをまだ知らない。
更にクロウの後嗣をも相手にしないといけないのだ。
「障害が大きければ大きいほど聖杯を得た時の喜びが増すと言うもの……。この障害を乗り越えてくれよう」
冬木教会軒先
「降ろせ!!」
「五月蝿いぞ、槍!!」
「串刺しにしてやろうか!?」
「その前に我を降ろせ!!」
金ピカと槍が吊るされたままで言い争っている。
「この布から抜け出せないのに降ろせと言うな!! 元はと言えば、お前のせいだろうが!!」
吊るされたのは金ピカが原因らしい。
「黙れ、槍!! 吊るされた原因は、お前がアイツの機嫌を損ねたからであろう」
どうやら此の二人、カレンの機嫌を損ねて吊るされたようだ。
「其れを言うなら、お前が出前を頼み忘れからだろうが」
「お前は、耐えられるのか? 頻繁に紅洲宴歳館・泰山の麻婆豆腐を喰わされてみろ、舌がおかしくなるだろう」
「流石にあの辛さは勘弁して欲しい」
「そうだろう。そう言うわけで我を逃げさせろ!!」
其処に悪魔が現れた。
「何処へ行こうというのですか? 今から食事にします。今日は、お客様が来ているのでへんなことをしたら覚悟して置いてくださいね」
カレンの笑みに恐怖を感じるギルガメシュとランサー。
冬木教会
「さぁ遠慮なさらずに食べてください」
テーブルからは、豆板醤の匂いが鼻をつく。
「如何したのですか? 遠慮なさらずにどうぞ」
カレンは料理に箸をつけるよう勧める。
だが、箸をつけようともしない者が二名……。
ギルガメッシュとランサーである。
「おい女!! 悪い事は言わん。其れを喰うな!!」
ギルガメッシュは、警告する。
「ギルガメッシュ。後で覚悟しておいてくださいね」
直後、ギルガメッシュが震えだす。
最古の英雄王の威厳は姿も形もない。
「彼方、食べないの? 食べないのなら私が食べてあげる」
「貴女は、中華が食べれるのですね」
「うん。エリオルが作ったのを食べさせてもらったから」
「じゃあ今度私が作る料理食べてみる?」
凛がアテネに聞いた。
「貴女の腕はどのくらいか期待しておくわ」
「期待していなさい」
一部の者を除いて楽しい食事が終わった。
「貴女は、サーヴァントも無しに聖杯戦争に参加する気!?」
凛は、さくらに聞いた。
「でも、もうサーヴァントは召喚できないんでしょ」
「貴女は、聖杯戦争を舐めているのですか!! サーヴァント無しにで勝ち残れるほど生易しいものではありません」
「セイバー。さっきも言ったけど其の子が真祖を見方にしているのを忘れた?」
「そう言えば真祖を見方にしているのでしたね。其れで凛、真祖は何人いるのですか?」
「先日真祖に成った子もあわせると5人よ」
「なあ、セイバー」
「何ですか!? シロウ」
「真祖を5人も相手に勝てるのか?」
「戦ってみないと分かりませんが、恐らく私でも勝てないでしょう」
セイバーでも勝てないと言う。
「セイバーでも勝てないのか?」
「はい。現界している他のサーヴァントでも勝つのは難しいでしょう」
「聞き捨てならんなセイバー!!」
ギルガメッシュがセイバーに意見する。
「此の我でも真祖に勝てぬと言うのか!?」
「そう言ったのです」
「おい、真祖!! 我と勝負しろ!!」
真祖に勝負を申し込むギルガメッシュ。
いや、命令する。
「勝負してもいいけど、英霊の座に送還されても知らないわよ」
「構わぬ。勝負だ!!」
「ギルガメッシュ!!」
ギクッと硬直するギルガメッシュ。
「誰が勝負してもいいと許可しましたか?」
「……」
「今、彼方に消えられると困るという事を忘れないでください」
カレンに止められるギルガメッシュ。
「此の我が真祖に負けるとでも言うのか?」
「彼方が消えれば今後の生活費が心配です」
生活費の事を気にするカレン。
「止めて正解かもね……」
止めて正解というアルクェイド。
「如何いう事ですか? 真祖の姫君」
「さっちゃんと戦っていた貴女のサーヴァントは消えていたわね」
「そんな娘に私のサーヴァントが負けるというのですか?」
「そうよ。さっちゃんの固有結界 は、ある意味サーヴァントの天敵なんだから」
「真祖の姫、固有結界 の名は教えてくれないのでしょう」
「教えるわけ無いじゃない。貴女達だって宝具の真名を知られないようにするでしょう」
「軽率でした。真祖の姫君」
「真祖の王族だろうと我は頭を下げないぞ」
頭を下げないと言うギルガメッシュ。
「その前に王である俺の前に跪け!! 雑種!!」
「そんなに殺されたいんだ」
アルクェイドとギルガメッシュの間に険悪な空気が流れる。
「我に跪け!! 真祖」
「私の言う事が聞けないのですか? ギルガメッシュ!! また一晩中吊るされたいのですか?」
「真祖!! 何時かは、我の前に跪かせてやるからな」
真祖に喧嘩を売るギルガメッシュ。
その夜、ギルガメッシュが教会の軒先に吊るされたのは言うまでもない。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間や」
「真祖の姉ちゃんとギルガメッシュとか言う英雄、一触即発の危機やったわ」
「ギルガメッシュがさつきはんと戦っとたら魔力を根こそぎ奪われとったやろうな……。止めとって正解で」
「ぬいぐみの分際で我の事を話すな!!」
「このコーナーに出たいんならちゃんと挨拶をするんや」
「何!? 我に挨拶をしろだと!! ふざけるな雑種!!」
「なにおう。やるか?」
ケルベロスは、真の姿に戻る。
「なっ、貴様。ぬいぐるみじゃなかったのか!?」
「当たり前や!! ワイは、クロウ・リードが創った黄金の瞳の最強の守護獣ケルベロスや」
場外乱闘を始めるケルベロスとギルガメッシュ。
「お前なんかワイの炎でバーベキューにしたる」
「貴様を我の下僕にしてやる」
「残念ながらワイがあんさんの下僕になる事はない。ワイの主はさくら唯一人だけや」
「ギルガメッシュ!! こんな所で何をしているのですか?」
「このコーナーを我のコーナーにしようとしただけだ」
其れがカレンの怒りに火をつけた。
「アレほど他人に迷惑をかけるなと何度言ったら分るのですか?」
カレンの聖骸布がギルガメッシュをくるむ。
「お邪魔しました。ケルベロスさん」
そう言ってカレンは、ギルガメッシュを引きずって行った。
「あぁ残念。もう終いの時間や……ほななぁ」
吸血鬼も聖杯を狙いに来たのか。
美姫 「何か本当にややこしい事態になっているわね」
うーん、流石にここまでややこしくなると一体何が起こるのか分からないな。
美姫 「本当よね。この先どうなるのかしら」
それではこの辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」