第十九話「元最強の魔術師現る」
衛宮邸跡地
「くっ、遠坂!!」
「何とか間に合った見たいね」
何とか間に合ったというアルクェイド。
「本当はあんたに構っている時間はないのよね」
「遠坂を助けてくれ!! あんた真祖なんだろ!?」
「其の娘、血まみれじゃない。如何したの? 若しかしてそいつの混沌に貫かれたとか……」
「真祖!! 凛は、其の吸血鬼の使い魔に貫かれたのです」
「ふうん。ネロ・カオスと同じ能力を持ったやつが居ると聞いてたけど本当に居たんだ」
「早く遠坂を助けてくれ!! 早くしないと遠坂が……」
「貴方、其の娘の事が好きなんだ」
士郎は顔が赤くなる。
「じゃあ助けてあげる。じゃあ、さっちゃん、混沌を少し出して」
「はっはいっ」
アルクェイドに頼まれて影から混沌を少し出す。
「おい。其れで遠坂に何をするんだ!?」
「何って、治療に決まっているじゃん。早く治療しないと此の娘、出血多量で死んじゃうよ。其れでもいいの?」
士郎に選択を迫るアルクェイド。
「真祖!! 凛が助かるのなら何でもしてください」
「貴方は、何を心配しているの? 治療に使う混沌の事なら心配要らないわよ。回復後は、其の娘の使い魔になってくれるから」
回復後、混沌は凛の使い魔になるという。
「如何でもいいから、早くして……もう、持ちそうにないから」
「じゃあいいわ。治療してあげるね」
「させるか!!」
そう言ってネオ・カオスは混沌を放つ。
「其の台詞そのまま返しあげるわよ」
放たれた混沌を爪で引き裂くアテネ達。
アルクェイドとさつきは、遠坂の治療に当たっている。
さつきの混沌が凛の腹部の傷口から入り込んでいく。
「うぐぅっ!!」
如何やら傷が痛むらしい。
「幾ら真祖が複数居ようと我を倒す事は出来ん!! 我が内には数百もの獣を内在している」
ネロ・カオスと同じように数百の獣を体内に飼っているらしい。
「我をネロ・カオスと同じ方法で倒す事は出来んと知れ!!」
再び獣を放つネオ・カオス。
「真祖!! 私も加勢します」
セイバーは、カリバーンを振る。
「ギルガメッシュにランサー、何を怠けているのですか? 早くあの吸血鬼を退治しなさい。倒せないようなら三咲町から第七司祭に来ていただかなければなりません」
シエルを呼ばなければならないと言うカレン。
「代行者を呼んでも無駄だ!! 我は、代行者でも倒す事はできん」
「あんた、一体どれ位の混沌を貯蔵しているの? 700は持っているでしょ」
「よく見抜いたな。我の中には999の混沌が存在する」
「じゃあ、じゃあ混沌を幾ら潰しても意味がないわね」
「如何料理して差し上げましょうか?」
如何、料理しようかと考えるアンゼロット。
「笑止。我を料理するだと!? 料理されるのは貴様らのほうだ」
「治療、終わりっと」
遠坂の治療を終えアルクェイドが言う。
「あんた達、この娘を連れて下がっていなさい。巻き込まれても知らないわよ」
「本当に死にたくなかったらじっとしていて下さい」
アルクェイドとさつきもネオ・カオスと対峙する。
「シロウ、凛を安全な場所に……」
セイバーに言われ凛をお姫様抱っこで抱え安全な場所へ運ぶ。
士郎の後ろをセイバーが守る。
「セイバー!! 宝具は使えないのか?」
「真祖が何って言ったか思い出してください」
「手を出すな」
「恐らく我々を守りながら戦う事が出来ないから言ったのです」
「サクラ、遅くなりました」
ライダーも合流した。
「ライダー、姉さんが……」
「心配要りません。呼吸も安定しています」
「後三体でサーヴァントが全てそろい。我の願いが叶う!!」
ネオ・カオスの願いが叶うときが近づいている。
「我が二十七祖入りす時がやって来たのだ!!」
「残念だけど、あんたが二十七祖に入る事はないわ」
「我が二十七祖になれぬと言うか!?」
「そう言ったのよ
「我が二十七祖に成れぬか其の体で味わうがいい」
ネオ・カオスは、再び混沌を出した。
今までの非じゃない数の混沌が現れた。
「さあ、真祖どもを血祭りにあげろ!!」
「少しばかり戯れてあげようか?」
真祖たちが混沌を処刑していく。
倒せど数は、減らない。
次から次へとゴキブリみたいに湧き出てはネオ・カオスの中に戻っては出てくる。
「如何した!? 我と戯れるのではなかったのか?」
「こんな所で力を使わされるとは思わなかったわ。さっちん、アイツの混沌を減らしてくれる?」
「減らすって、どのくらい減らせば良いんですか?」
「半分は減らしてくれると有り難いわ」
「じゃあ、少し離れてください」
「わかったわ」
さつきから間を取るアルクェイド。
「あんた達、もう少し離れないと巻き添えを食らうわよ」
「巻き添えを食らうって如何言う事だ!!」
「言ったとおりよ。此処で退場したくなかったら離れる事ね」
「我に命令するな!! 真祖!!」
「ギルガメッシュ、言われとおりにしなさい」
「我に指図するな!!」
「私の言う事が聞けないのですか? 之は聖杯戦争ではありません。吸血鬼退治です」
「うるせえ!! 我をこき使いやがって……」
「では、彼女に殺されますか?」
「我が殺されるだと!? 殺せるものなら殺してみやがれ」
「では、彼女に殺されてきなさい」
さつきに殺されて来いと言うカレン。
「おいおい。本当に良いのか? 戦力がさがっても……」
「混沌の貯蔵は十分? 十分なら行くよ?」
「先ずは、貴様から喰ろうてやる。第十位を倒した貴様を倒せば、二十七祖にも顔が利く。我が二十七祖に入る為に死ね!!」
ネオ・カオスが大量の混沌をさつきに放つ。
混沌がさつきに届く瞬間、景色が一変した。
「こ、固有結界だと!!」
さつきを襲おうとした混沌たちが次々、灰になっていく。
「貴様は、真祖では無いのか!?」
「真祖だよ」
「真祖がこんな固有結界を持っているなんて聞いた事が無いぞ」
流石に驚くネオ・カオス。
「まだ、余裕なら威力を強くするよ」
「(このままでは不味い。願いをかなえなくては……)」
「何処へ行くの?」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!! 我を殺すな!!」
ギルガメッシュがさつきの固有結界“枯渇庭園”に巻き込まれていた。
「我を助けろぉ」
見かねたさつきがギルガメッシュを片手で持ち上げた。
「だから言ったでしょ。巻き込まれても知らないよって……」
さつきは、ギルガメッシュを固有結界の外へ放り投げた。
「我を殺す気だったのか? あの女!!」
「ギルガメッシュ、死に掛けた気分は如何でしたか?」
「二度とごめんだ」
如何やら懲りたようだ。
「もう混沌が尽きたのかな?」
「貴様は、死徒なのか? 其れとも真祖なのか!?」
「元死徒の真祖って言ったら良いのかな?」
さつきも何って答えたらいいか困る。
「ところで、取引をしないか?」
「取引!?」
不意にさつきの固有結界が緩む。
「(しめた)」
固有結界が緩んだ隙に脱出を図る。
「逃がさないんだから」
だが既に遅かった。
再び捕らえるにはみんなを巻き込む事になる。
「真祖よ、この勝負預けさせてもう」
ネオ・カオスは、衛宮邸後から逃げて行った。
ネオ・カオスを逃がした事に落ち込んでいるさつき。
「さっちん、落ち込む必要は無いわよ。アイツの混沌を大幅に減らせただけでも……」
「此処で逃がしたのは、不味かったのではないですか? 真祖の姫君」
アルクェイドに掛けられる男の声。
「誰よ」
「私ですよ。アルクェイド・ブリュンスタッド!! と、言っても判りませんか」
「私、あんたのことなんか知らないわよ」
「エリオル、来たんだ」
「アテネ、アイツの言知っているの?」
「エリオルは、クロウ・リードの生まれ変わり何だから」
其れを聞いたイリヤが驚く。
「クロウ・リードと言ったら大物の名前じゃない」
「イリヤは知っているのか?」
「シロウは知らなすぎ」
「イリヤ、クロウってどんなやつなんだ?」
「私も詳しくは知らないわよ。生きていた頃は世界最強の魔術師と呼ばれていたらしいけど」
「とりあえず場所を変えましょう。其処で、お話してあげますよ」
ニコニコしながら言うエリオル。
「俺の家は、こんなんだし全員が入れる場所はねえぞ」
「では、私が元に戻してあげましょう」
エリオルは、全壊した衛宮邸を元に戻すと言う。
エリオルから魔力があふれ出す。
クロウ・リードの半分しかなくても其れでも十分巨大だった。
「何よ。この巨大な魔力」
壊れた衛宮邸が時計を逆回転させたかのように元通りになって行く。
「どうなっているんだ!? 之ってガラスの修復と同じなのか?」
「之は、私……。いいえ、クロウ・リードが編み出した魔術ですよ」
エリオルは途中で言いかえた。
「衛宮くん、家は元通りにしてあげました。この対価は後で頂きますよ」
士郎に対価を請求するエリオル。
「何で俺が払わないければならないんだ!!」
「何言っているの? 魔術の基本は等価交換でしょ」
「衛宮くんは料理が上手なんでしょ。対価は、其れで良いですよ」
「貴方は其れでいいの? 家の修復と料理じゃつりあうわけ無いじゃない」
「いいんですよ。気持ちがこもっていれば其れだけで対価としての効力が発生するんですよ。イリヤさん」
衛宮邸
「桜、遠坂は?」
「姉さんならベットで寝かせてあります。先輩、藤村先生は如何したんですか?」
「其れなら組の人を呼んで連れて帰ってもらったさ。藤ねえが居たら話しづらいだろ」
「先輩すみません。私のせいで先輩に対価を支払わせることになって……」
「気にすんなよ。済んでしまったことはしょうがないだろう?」
「話を始めても良いでしょうか?」
話を始めても良いかと言うエリオル。
「先ずは、私が何者かお話しましょう」
エリオルが、冬木の面々を前に話し始める。
「私の名は、柊沢エリオルと申します。そしてこのこたちが……」
「おはつめにかかります。スピネル・サンと申します」
「ルビー・ムーンと呼んで頂戴」
「この子達は、クロウ・リードが創った使い魔です」
真の姿で現れるスピネル・サンとルビー・ムーン。
「そんな高度な自我を持つ使い魔を創れる人間はもう居ないかもね」
「維持するだけでも相当な魔力が要ります。現代トップクラス魔術師でも維持は出来ないでしょう」
「そっかぁ。だから最強の魔術師と呼ばれていたんだ」
「本当に最強だったのか?」
「クロウ・リードは生前、あまりに巨大な魔力に困っていました。何しろ未来がわかってしまったのです」
「未来がわかるって、アトラス院に居たのですか?」
「クロウ・リードは何処にも所属しておりませんでした」
「ただ、気まぐれでやっていた占いが良く当たっていたようですよ」
エリオルは話を続ける。
「貴方は、クロウ・リードが生きていた時代には生まれていなかったのでしょ。何故、わかるのですか?」
「答えは簡単ですよ。何故なら、私がクロウ・リードの生まれ変わりだらですよ」
一同に雷が落ちたような衝撃が走る。
「クロウ・リードは死んでいるんでしょ」
「はい。クロウ・リードはずいぶん前になくなっています。私はクロウ・リードの生まれ変わりであってクロウ・リード本人ではありません」
「何故、私たちに話すの?」
「今話さなくても何れ知られていたでしょう。クロウ・リードの名は有名ですから」
エリオルは、話さなくても何れ知られたという。
「貴方は何処からやってきたのですの?」
「私ですか? イギリスから来ました」
イギリスと言う言葉を聞いていやな事を思い出す。
「私の前でイギリスと言わないで下さる!?」
そう言ってエリオルにガンドを撃つ。
エリオルは涼しい顔をしてガンドを防ぐ。
「私にガンドは効きませんよ。ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトさん」
「私のガンドを何事もなかった様に防ぐなんて……」
「貴女にはゼルレッチから伝言があります」
「貴方、魔導元帥の事を呼び捨てにして唯で済むと思っているのですか?」
「彼は、私が如何呼ぼうと気にしないと言っていました」
エリオルは特別扱いのようだ。
「この私と勝負しなさい」
エリオルに勝負を申し込むルヴィア。
「勝負を申し込むのはいいですが、貴女ではエリオルに触れる事すれ出来ないでしょう」
「言ってくれましたわね。この黒いぬいぐるみが!!」
完全にキレているルヴィア。
「勝負は、冬木の吸血鬼を退治してからにしましょう。固有結界が使われたら冬木の地は完全に死んでしまうでしょう」
「冗談じゃないわよ!! 私の土地が死ぬですてぇ!!」
「凛、起きても大丈夫なんですか?」
「あの吸血鬼、私の土地に手を出した事を後悔させてやる!! くっ……」
腹部に走る痛みに顔が歪む。
「遠坂!! 無理するな」
「そうですよ凛。ダメージがまだ残っているのでは?」
「そうね。動くのもきついわ」
「トオサカ、貴女との決着はしばらく預けて置いてあげるわ」
「そう。助かるわルヴィア」
「では、カレンさん。キャスターを呼んでください。其れからアーチャ、隠れていないで出てきたらどうですか?」
誰もいないはずの方角を見て言うエリオル。
「何時から気づいていた!?」
「最初からですよ。貴方が遠坂さんのことを見ていた事も……」
「アーチャ!! 何時から覗いていたの!?」
「何時からって、お前が着替えさせられいるとこからだ」
「アーチャ、覚悟はいい?」
凛の怒りが込みあがる。
「凛!! 其れは何だ?」
「言い忘れていましたが遠坂さん」
「あんた誰よ!?」
「怪我が治るまで、その混沌を使い魔として使わない事を進めます。その混沌で、貴女の傷をふさいでいるのですよ」
「何で私の中に混沌がいるのよ!! 今すぐ取り除きなさい」
「取り除いてもいいですが死んでもいいのですか?」
「私が死ぬですて!?」
「今の貴女は、その混沌で命をつなぎとめている状況です。其れはお分かりですか?」
「私ならこのとおり……」
遠坂は腹部を押さえてうずくまる。
「まだわからないの? 今の貴女は、さっちんの使い魔で命を繋ぎとめている状態なんだから」
今の遠坂は、混沌で命を繋ぎとめているらしい。
「おい、魔術師!!」
「何でしょうか? 人類最古の英雄王ギルガメッシュ」
「我に何を期待している」
「貴方には圧倒的な火力で混沌を焼き尽くし頂きましょう」
「我の好きなように暴れていいんだな!?」
「貴方のマスターの許可があれば好きなだけ暴れてください」
「カレン!! 今すぐ我に許可を出せ」
「駄目です」
すんなり駄目だしを食らうギルガメッシュ。
「あんなヤツ、我一人で十分だ!!」
「吸血鬼の居場所も分からないのに動けると思いますか? 其れにまだ全員そろっていません」
「そんな事関係ない。我は一人でも行くぞ!!」
「ギルガメッシュ!! 私の言う事が聞けないのですか!?」
カレンは、天使の笑顔で悪魔の気配を放つ。
「ネオ・カオスは、普通の方法では倒す事は出来ません。その為、人形師に人を寄越すよう頼んでおきました」
「人形師ってミス・ブルーの姉?」
「はい。蒼崎燈子に直死の魔眼を持つ者を寄越すよう頼みました」
「あんたよく取引が成立したわね」
「向こうも殺人衝動を発散させる仕事が欲しかったようです」
如何やら両義式を寄越すよう頼んだようだ。
「私も志貴をつれて来たかったんだけど、ネロとの戦いのダメージが大きかったから」
「志貴って眼鏡かけた男の子の事でしょ」
「彼なら今頃、ロアと遭遇しているでしょう」
「凛、ロアって誰ですか?」
「ロアは、其処の真祖の死徒よ」
「私を騙して血を吸わせたヤツよ」
「放って置いてもいいのですか?」
「放って置くつもりはないわ。こっちが片付いたら処刑してやるんだから」
「アルクェイドさん、私は本当にロアって人から断ち切られているんですか?」
「間違いなく断ち切られていると思うんだけど……」
「私の……いいえ。クロウ・リードの後継者であるさくらさんが儀式を行ったのならロアの支配から断ち切られていますよ。手駒を失ったロアは、ますます人を襲って力を蓄えるはずです。自分に流れてくるエネルギーラインが一つ突然消えたのですから」
冬木市郊外
「おのれ許さんぞ!! 真祖共!! 特に姫君の孫は……。我の混沌の大半を潰した借りは何倍にもして返してやる。幸い我の固有結界は知られていない」
だが、固有結界を知っている者がいる事を知らない。
「明日がこの町の最後だ!! 既に結界の基点に我が混沌を潜ましてある。この町の全てを喰ろうてやる」
冬木の夜は更けていく。
聖杯戦争二日目は吸血鬼の襲来で過ぎていった。
三日目には何が待ち構えているのだろうか?
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーの始まりや!!」
「あなたにだけ任せてはおけません」
「スッピー!!」
「ところで私にはお菓子はないのですか?」
「あるわけないやんか」
「あなたの前にある物は何ですか?」
「之は、ワイんや!! 分けてやらへんで」
「あなたの食べかけなんかいりません。私は、後でエリオルにたこ焼を作ってもらいます」
「其れは、本当か!?」
「あなたには食べさせてあげません」
「そんな事言わんで之を食え!!」
ケルベロスが皿に盛られた菓子をスピネルに無理やり食わせた。
その中に甘いものがあった。
「ヒック!!」
「スッピー、どないしたんや!?」
「甘いもの……」
「やば、さっきの中に甘いものがあったんやった」
スピネルは口から怪光線を撃ちまくる。
「おかし、もっと食べた〜い」
「こら、スッピー何処へいくんや!?」
スピネルは、酔っ払って何処かへ行った。
「そろそろ終いの時間や。ほななぁ」
とうとうエリオルまでやって来たか。
美姫 「冬木市の状況が既に混沌としているわね」
エリオルに喧嘩を売ったり、暴走しそうなサーヴァントが居たり。
美姫 「無事に事態が収拾するかしら」
一体どうなるのやら。
美姫 「次回を待ってますね」
ではでは。