第二十話「たこ焼き戦争後麻婆地獄」
夜が明け聖杯戦争三日目の朝を迎えた。
「朝飯だぞ!!」
士郎は何時もどおり朝食を作っていた。
普通の朝食にしては量が半端じゃない。
「シロウ、私はこんなに食べれませんよ」
大食いのセイバーでも食べきれないくらいの量のようだ。
「其れに皆も食べるだろう」
「シロウ昨日聞いていなかったのですか?」
「何がだ!?」
「一旦家に帰るって……」
「そう言えば、そんな事言っていたような……。作りすぎてしまった」
「シロウ、私が昼にも食べてあげます」
セイバーは昼にも食べるつもりのようだ。
廃屋
「よう。マスター!!」
「何ですか? アヴェンジャー」
「やけにうれしそうじゃん」
「直ぐに聖杯戦争の準備をしなさい」
「聖杯戦争なら此間あったばかりじゃねえか」
「あれは再現であって本当の聖杯戦争ではありません」
女とアヴェンジャーが話している。
「今夜、衛宮邸に行きます」
「誰から叩くんだ?」
「聖杯を狙っている吸血鬼です」
「吸血鬼など教会に任せとけばいいだろう?」
「その教会からの要請です。アヴェンジャー!!」
「オレはいきたくないぜ」
面倒くさいというアヴェンジャー。
「何をグズグズしているのですか!? 早く衛宮邸に言って食事をご馳走になりますよ」
女は、衛宮邸で食事を頂くつもりのようだ。
衛宮邸
「おはよう……」
眠そうな目を擦って起きてきた遠坂。
「凛、体はいいのですか?」
「まだ、傷が痛むけどね」
「遠坂、何か食うか?」
「今は欲しくないわ」
「凛、食べないと早く良くなりませんよ」
「昼には勢が出るものを作ってやろうか?」
「私、昨日の今日だから」
「姉さん。食べれないのなら私が食べさせてあげましょうか?」
「桜、おはよう」
「おはようございます。先輩!!」
桜の目にテーブルの料理が目に留まる。
「姉さん。せっかく先輩が作ってくれたのに食べないんですか? 自分で食べれないのなら私が食べさせてあげましょうか?」
黒桜が現れた。
そして次々遠坂の口に料理を詰め込む黒桜。
自分が食べる分以外を遠坂に無理やり食べさせ満足した黒桜が元に戻った。
「うぅぅっ。苦しい」
「姉さん大丈夫ですか? いったい如何したんですか」
「お前がやったんだよ。桜!! 内臓が痛んでいる遠坂に無理やり……」
「姉さん、しっかりしてください」
「すみません。朝食をご馳走になりに来ました」
「バゼットか……わりい。桜が遠坂に無理やり食べさせちまったんだ」
「そうですか」
「昼には食わしてやるから」
「本当ですか!?」
だが彼らは知らない。
之から衛宮邸の食材が無くなる事態が訪れる事を……
「ねえシロウ、庭においてあるアレ何?」
イリヤが士郎に聞いた。
「アレって何だ!?」
「丸いくぼみがある鉄板」
「其れは、たこ焼きを作るためのものだ」
「シロウ、たこ焼きを作ってください」
「急に言われても……」
「たこ焼き〜」
「たこ焼き、早く作ってください」
いつの間にかやってきていたケルベロスとスピネルが言う。
「早く作ってえな」
「今回もあなたには負けませんよ」
既に食べる気満々のケルベロスとスピネル。
「シロウ、早く作ってください」
「分かった。準備するから少し待ってくれ」
そう言って準備に取り掛かる士郎。
「タコあったかな? 後、ガスボンベ」
材料を下ごしらえをする士郎。
衛宮邸中庭
「シロウ、早く焼いてください」
「慌てるな鉄板が十分に暖まってから油をひくんだ」
既に臨戦態勢を整えているケルベロスとスピネル。
「んじゃ、焼くぞ!!」
士郎は鉄板に生地を流し込んだ。
此処に焼き手、衛宮士郎VS食い手、セイバーVSケルベロスVSスピネルのたこ焼き戦争の幕が上がった。
焼きあがったたこ焼きはあっという間に三人?の胃袋に消えていった。
どう見ても焼き手の不利である。
「シロウ、次はまだですか?」
「兄ちゃん、忙しいからって言って生焼けやったら許さへんで」
「シロウ!! 私に生焼けを食べさせるつもりだったのですか?」
「お前らが早いから焼けないんだよ。焼くのにも時間が掛かるんだって」
士郎は、必死に焼いているがとても追いつかない。
「シロウ、次はまだですか?」
「貴方は、何時まで我々を待たせる気ですか」
「坊主、こっちにもお変わりをくれ!!」
何時の間にからんサーもたこ焼きを食べていた。
「アーチャ、貴方も焼くの手伝いなさい」
「何で手伝わねばならないのだ!?」
「いいから言われたとおりに手伝え!!」
凛に命令されてたこ焼きを焼く羽目になるアーチャ。
「赤い服に兄ちゃんもキリキリ焼かんかい!!」
「シロウにアーチャ、手がやんでいますよ」
「そら、焼きあがったぞ」
其れを聞いた三人は一気に食べた。
「少しは味わって食え!!」
「之は戦争や!! 手加減する必要はあらへん」
「そうです。焼き手が倒れるか食べる側が倒れるまで戦いは終わりません」
「次は、まだですか?」
「直ぐに焼けるわけないだろ!?」
士郎とアーチャの二人掛でも太刀打ち出来ない。
セイバー、ケルベロス、スピネルの食べる速度は落ちることを知らない。
「少しは遠慮したらどうですか?」
「スッピーこそ遠慮したら如何や!?」
たこ焼きが焼きがるっとあっという間に胃袋に消えていく。
焼き手は大粒の汗をかいている。
「あのぬいぐるみ、セイバーを相手によく食べるわね」
ケルベロスとスピネルの奮戦に感心する遠坂。
「アヴェンジャー、私たちも食べますよ」
参戦する気のバゼット。
其れから数十分後……。
「マスター、もう食えねえ」
アヴェンジャーは、リタイヤした。
「アヴェンジャー、そんな事では聖杯戦争に勝ち残れません。之も食べなさい!!」
そう言ってたこ焼きの生地をアヴェンジャーの口に流し込む。
「バゼット!! 生を食わすと腹を壊すぞ!!」
「アヴェンジャー!! 今すぐ吐き出しなさい!!」
「マスター、もう駄目だ」
アヴェンジャーは、参戦早々にたこ焼き戦争から脱落した。
他の人たちは、自分のペースでたこ焼きを食べていた。
「先輩!! 追加の材料を持ってきました」
「ありがとう桜!!」
「あのう。先輩!?」
「如何した、桜?」
「冷蔵庫の中、空っぽになってしまいましたけど」
「そうか、空っぽになったか……」
士郎は、台詞を思い返して驚いた。
「若しかして家の食料、全部なくなったのか?」
「はい。切って持ってきた分でお終いです」
「士郎、お昼がないって本当ですか?」
「本当だ。たこ焼きに全部使っちまったみたいなんだ」
ガーンと落ち込むセイバー!!
「先輩、食材の買出しに行ってきますね」
「桜、頼む」
「ライダー、ついてきて」
「はい。サクラ」
桜とライダーは買出しの為、商店街に向かった。
「かわいそうなセイバーの為に私がお昼をご馳走してあげましょう」
「本当ですか?」
「ギルガメッシュ!! 紅洲宴歳館・泰山に電話をして出前を頼みなさい」
携帯電話を取り出して電話をかける子ギル。
「何人分頼めばいいんですか?」
「20人分を頼みなさい」
カレンに言われた人数分注文する子ギル。
電話を終えると子ギルは携帯電話を懐にしまった。
「ランサー、何処へ行こうというのですか?」
「坊主の為に釣りにでも行こうかと……」
ランサーは、釣りを理由にマーボーから逃げようとした。
「次が最後だぞ!!」
如何やら次が最後のようだ。
「あのぬいぐるみ、セイバーと引き分けるなんてやるじゃん」
結局たこ焼き戦争は、決着がつかず引き分けに終わった。
使用した食材が3日分だった事が後で判明する事になる。
「シロウ、もうないのですか?」
「あぁ、完売だ」
士郎は後片付けを始める。
鉄板に水をかけ汚れを落としていく。
「アーチャ、あんたも片づけを手伝いなさい」
「まだ、怒っているのか?」
「当たり前じゃない!! 私の裸をタダで見れると思わないでよね」
「アーチャ、凛の裸を見たのですか?」
「見たくて見たんじゃない」
「アーチャ、其処に直りなさい!! 切り伏せてあげます」
「衛宮くん!? 何で鼻血が出ているの?」
士郎は鼻血を拭う。
「衛宮くん。今、私の裸を想像したでしょ?」
「シロウ、如何なのですか?」
セイバーは、士郎に刃を向けなおす。
「想像したと言えば、想像した」
士郎は、遠坂の裸を想像していた。
「シロウ。私は、聖杯戦争のことを考えていると思っていたのに残念です」
「シェロ、私に言ってくださればよかったですのに」
「衛宮くん、ルヴィアの言う事を聞いたら許さないわよ」
遠坂とルヴィアの間に火花が飛び散る。
「シェロ!! 私と遠坂、どちらが好きですの?」
(ルヴィアの胸が……)
ルヴィアは豊満な胸で士郎の理性を狂わせる。
「駄目だ。理性が……」
士郎の理性は既に飛びかけている。
「士郎。何デレデレしているのよ!!」
遠坂は士郎にガンドを撃った。
ガンドの直撃を受ける士郎。
「シェロは、トオサカの小さな胸では満足できないですって」
「士郎は、そんな事言わないわよルヴィア!!」
「でも、シェロは嬉しそうですわよ」
ルヴィアは士郎を盾にガンドを防ぐ。
そうこうしている内にお昼になった。
そして、お昼は紅洲宴歳館・泰山の麻婆豆腐だった。
「本格的な麻婆豆腐やないか!?」
ケルベロスは、マーボーを口に運ぶ。
「さあ、遠慮なされずにどうぞ」
ランサーは既に撃沈されていた。
「ランサー、お残しは許しませんよ」
「凛、無理なら残してください」
「ギルガメッシュ、遠坂さんが食べれるものを注文しなさい」
「お姉さん。何なら食べれますか?」
「桜に無理やり食べさせられた朝食が堪えたからいらないわ」
「そうですか……。食べたくなったら言って下さいね。直ぐに出前を頼みますから」
子ギルは、携帯をしまった。
「セイバーもよく食べるわね」
セイバーは、既に5人前のマーボーを食べていた。
「凛が食べないのならもったいないでしょう」
セイバーは、辛いのを我慢しているようだ。
「シロウ、水を下さい」
如何やら辛いようだ。
アヴェンジャーは、早々に死んでいた。
彼は最弱のサーヴァントだけあって、紅洲宴歳館・泰山の麻婆豆腐の辛さにあっさり負けていた。
「アヴェンジャー、手が止まっていますよ」
「マスター、辛すぎて食えねえ」
「アヴェンジャー、食べないと勿体無いです。さあ、食べなさい!!」
無理やりアヴェンジャーの口に流し込むバゼット。
無理やり口に流し込まれたアヴェンジャーは白目をむいて倒れた。
恐るべし紅洲宴歳館・泰山の麻婆豆腐。
アヴェンジャー以外にも死屍累々が転がっている。
涼しい顔をして食べるカレン。
涼しい顔をして食べるカレン以外に残っているのはケルベロスとスピネルとセイバーだけだ。
「もう、駄目だ!!」
脱落する士郎。
「水をくれ!!」
水をガブガブ飲む脱落者。
「誰が水を飲んでいいと言いましたか?」
「此処は俺の家だぞ」
「麻婆豆腐を残しておきながらよく言えますわね」
悪魔が此処に降臨する。
「悪魔……」
「そんなに死にたいのですか!? ランサー!!」
「俺は言っていないぞ」
如何見ても言ったのはランサーにしか見えない。
本当は、ランサーの影で死んでいるアヴェンジャーが言っていたのだ。
「何処からでも掛かって来い!!」
「いい度胸ですね。ランサー」
カレンがドス黒いオーラを纏ってランサー言う。
「今夜の調教楽しみにしていてくださいね」
突然ランサーが震えだす。
如何やらいやな記憶が呼び起こされたらしい。
「まだ一皿残っていますね。誰かだべる人は居ませんか?」
「私は、もう結構です」
「では、ランサー!! 貴方が責任を持って食べてください」
「誰が喰うかよ!!」
「そうですか……マスターに逆らおうと言うのですか!?」
「槍のお兄さん死なないで下さいね」
「なっ。逃げるな!! ギルガメッシュ」
「貴方がこの皿を空にしないと昼食が終わらないのですよ」
「ランサー早く食べきってください」
セイバーまでランサーを促す。
「早くしないと江戸前屋の超デラックスどてら焼きが帰ってきてしまいます」
「早くしないと其処の黄色いぬいぐるみにもらった此の怪しい薬を垂らしますよ」
「判った。喰えばいいんだろ!? 喰えば……」
「少し私の言う事を聞くようになりましたね」
自分の思い通りになった事に満足するカレン。
そしてランサーは力尽きた。
「こないな体調じゃあの吸血鬼には勝てへんで」
「今すぐに体調の回復を図ってください。吸血鬼が動き始める時間まで5時間余しかないのですよ」
「貴方のご主人は何をしているの?」
「エリオルですか? エリオルでしたら結界の基点に細工をしているはずですよ」
ネオ・カオスの結界の基点に細工をしているというスピネル。
柳洞寺
「宗一郎さま」
キャスターと宗一郎は相変わらず熱々だった。
この二人、本当に戦う気があるのだろうか?
冬木市郊外
「準備は全て整った!! あの小娘に減らされた混沌は後で補充できる」
ネオ・カオスの戦闘準備は整ったようだ。
「一番最初に私の混沌を減らした小娘を取り込んでやる!! 次に真祖の姫君を取り込んでくれよう」
取り込む順番を考えるネオ・カオス。
冬木駅
「此処が、冬木か……」
冬木に降り立つ和服に革ジャンの女性。
「トウコは、オレに此処で暴れて来いと言ってたな」
ネオ・カオスと戦う者が冬木の地に揃おうとしていた。
ネオ・カオスとの血戦まで後3時間……。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの始まりや!!」
「このコーナーも20回を越えて21回目や。之もワイの名司会のおかげやで」
「迷司会間違いでは無いのですか?」
「なにおぅ。ワイの何処が迷司会や!?」
ケルベロスとスピネルが言い争いを始める。
「貴方はゲストの方に飲み物も出さずに自分だけ飲んでいたではないですか」
「スピネルさん、今の話本当なんですか?」
「はい。本当の事です。あっ、お久しぶりです」
「スピネルさんも元気にしてた?」
「エリオルと楽しく過ごしていますよ」
「ケロちゃん!?」
どす黒いオーラーを放ちながらケルベロスに言うさくら。
「うぉ!! さ、さくら!!」
「スピネルさんが言っていた事、本当なの!?」
「そ、其れはな……」
言い逃れようとするケルベロス。
「ケロちゃんは、このコーナーを含めて一ヶ月、おやつお預け!!」
「そんなぁ、さくらさま、許してぇな」
「はい。スピネルさん」
さくらは、冷たく冷えたジュースをスピネルの前に差し出す。
「之は、どうも……」
スピネルは、冷えたジュースを飲む。
「なぁ、ワイのは?」
「自分で買ってきなさい」
自分で買えというさくら。
「其れから、ゲームも禁止だから……」
お菓子とゲームのダブルパンチはケルベロスに大ダメージを与えた。
ケルベロスのテンションはどん底にまで落ちた。
「ワイは、之からどうやって過ごしたらええんや」
元気なく言うケルベロス。
「このコーナーは貴方のでは無いのですか?」
だが、ケルベロスは落ち込んだままだ。
「ケルベロスが仕事をしないので、此処からはスピネルが引き継ぎます」
ケルベロスの代役を務めるスピネル。
「ケルベロスは役立たずになってしまいました」
変わりに司会を務め始めるスピネル。
「何時までしょげているんですか!!」
「ワイの楽しみが……」
「次からは私のコーナーに変わってもいいんですね?」
だが、ケルベロスはしょげたままだ。
「このまま続けていても時間の無駄なのでこの辺で終わらせていただきます」
「では……」
ネオ・カオスとの決戦前なのに何をやっているんだろうか。
美姫 「まあまあ、こういう風に騒ぐのも大事よ」
いや、若干数名、既に戦闘不能っぽいんですが。
美姫 「主戦力には問題ないみたいだから良いじゃない」
お、鬼だ。
美姫 「次回はいよいよ開戦かしら」
どうなるのか。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ではでは。