第二十五話「さつき、ブリュンスタッドの試練」
王族の庭園
「さつき、わらわが課す課題は千年城ブリュンスタッドの具現化じゃ」
「千年城って言ったらアルクェイドさんのお城のことですよね」
「知識だけちゃんと教育を受けたようじゃな」
アルトルージュは、王族口調で話す。
「戦闘訓練はしてはおらぬのだろう!?」
「戦闘訓練もしましたよ。此処で何度も」
「では、空想具現化も出来ると申すのか?」
「はい」
さつきのポテンシャルの高さに驚くアルトルージュ。
「時間も限られておる。夜にはロアを倒しに行くのであろう……早くブリュンスタッド城を具現化させるがよい」
早くブリュンスタッド城を具現化させろと言うアルトルージュ。
「此処でも具現化出来るのですか?」
「そなたは、此処で鎖の具現化は出来たのであろう? 出来なくてもよい。やってみろ!!」
さつきにブリュンスタッド城の具現化をするよう促す。
「わらわも具現化するのに苦労した。ブリュンスタッドの性について聞いたことあるか?」
「聞いたことありません」
「そうか……ならば、話してやろう。わらわとアルクェイドは、ブリュンスタッド城が具現化出来るからブリュンスタッドの姓を名乗れる。ブリュンスタッド城を具現化出来ない真祖はブリュンスタッドの姓を名乗る事は許されぬ」
アルトルージュがブリュンスタッドの姓について説明する。
「アテネは便宜上名乗っていると言っておるが、アテネもブリュンスタッド城を具現化出来るのじゃ」
「アテネさん、そんな事話してくれませんでしたよ」
アテネは、さつきに話していないようだ。
自分がブリュンスタッド城を具現化できるということを。
「さつき、見事にブリュンスタッド城を具現化して見せるがよい。そなたは、アルクェイドとアテネの血を受けた身だぞ」
アルトルージュは、さつきをたきつける。
さつきは、アルクェイド達から受けて教育から知識を引き出し具現化を試みる。
「難しいよ」
具現化してみるも難しいと言うさつき。
「難しくて当たり前じゃ!! 具現化出来るのは三人しかおらぬのだぞ」
さつきのブリュンスタッド城具現化の特訓は始まったばかりだ。
冬木市
ネオ・カオスとの闘いで再び全壊した衛宮邸の再建工事が始まっていた。
修復不能な基礎の除去が重機を使って行われている。
藤村組の組員も駆けつけて来て作業を手伝っていた。
何故かギルガメッシュとランサーまで手伝っている。
カレンに命じられているようだ。
遠坂邸
「アーチャ、昨日役に立たなかった分、今日は働きなさいよ」
アーチャに命じる凛。
「まだ、怒っているのか?」
「当たり前でしょ。貴方への魔力供給を止めてもいいのよ」
「其れより出発しなくてもいいのか?」
「そうね。出発した方がいいみたいね」
三咲町に向かう遠坂とアーチャ。
王族の庭園
「ふぇぇん。難しいよ」
さつきは、泣き言を言う。
「さつきは、さくらの力で真祖に成ったのであろう。何故、ブリュンスタッド城を具現化できぬ!?」
「イメージしようにも出来ないんです」
「わらわは、教えるつもりはないぞ!! 自分の思い描くブリュンスタッド城の姿を想像するのだ」
と、言いながらヒントを与えるアルトルージュ。
「目を閉じて心を落ち着かせてみるがよい」
アルトルージュの言葉を胸に留め目を閉じ精神を落ち着かせるさつき。
そして、その時はやって来た。
さつきが思い描くブリュンスタッド城が具現化された。
「無事、ブリュンスタッド城を具現化できたようじゃな」
「へっ!? 之がブリュンスタッド城なんですか?」
「そうじゃ。これが、千年城ブリュンスタッドじゃ、さつき」
「私が、具現化したんですか?」
「そなたが具現化したのじゃ」
さつきは、千年城ブリュンスタッドを具現化していた。
「まったくあきれた才能の持ち主じゃな」
難しいと言っていたのは何処へやらである。
「そなたが、ブリュンスタッド城の具現化が出来た事でわらわの講義は終了じゃ」
アルトルージュの課した課題をクリアしたさつきは一息つこうとした。
「さっちん、見させて貰ったよ」
アルクェイドが声をかけて来た。
「ちゃぁんとブリュンスタッド城を具現化出来ていたじゃない」
「此のお城ってアルクェイドさんのですか?」
「現在の城主はアルクェイドじゃぞ」
「アルトルージュさんじゃなかったんですか!!」
「不本意じゃがな」
さつきは、一つずつブリュンスタッド城を持っていると思っていたらしい。
「之で、さっちんもブリュンスタッドの姓を名乗れるわよ」
さつきにブリュンスタッドの姓を名乗れると言うアルクェイド。
「私が名乗っても良いんですか?」
「良いに決まっているじゃん。さっちんは、ブリュンスタッド城を具現化できたのだから」
「今度は、王族に相応しい所作と言葉遣いの教育が必要じゃな」
今度は王族としての教育をすると言うアルトルージュ。
「此間したものとは別の物ですか?」
「此間したのは知識と戦闘訓練だもの。あの時は、まだする必要がなかったから」
「無駄話している時間はないぞ」
さつきの新たな教育が始まった。
ロアとの血戦まで、外の時間で後10時間。
ヘリ
「わざわざヘリを飛ばさなくても良かったんじゃない?」
如何やらヘリで移動しているようだ。
「其れに着陸できる場所なんてあるの」
「そんなの飛び降りるに決まっていますわ」
ヘリから飛び降りるというルヴィア。
「飛び降りるってパラシュートは?」
「貴女の分はありませんわよ」
遠坂のパラシュートはない様だ。
そして二人はヘリから飛び降りた。
王族の庭園
さつきと王族としての教育が続けられている。
「時間は後僅かしかないのだぞ」
外での時間は大分たっているようだ。
此処には二つの時計が設置されている。
一つは王族の庭園での時間を知らせる時計。もう一つは外の時を知らせる時計だ。
外の時を知らせる時計は午後4時をさそうとしていた。
「ロアとの血戦までに叩き込むの無理じゃない!?」
アルクェイドも少々焦りを感じる。
「まだ時間はある。ギリギリまで教育しても問題はあるまい」
「さっちん、続けるわよ」
「連続でやると頭がオーバーヒートしちゃいますよ」
さつきの頭はオーバーヒート寸前だ。
休みもなく朝から夜遅くまで缶詰状態なのだ。
「其の程度の事で参るほど軟ではあるまい!?」
「そう言えば、さっちん混沌を使い魔にしてたからエネルギーを割いていたんだっけ?」
アルクェイドがさつきが混沌を使い魔にしていた事を思い出した。
「ネロが倒されたという噂は本当じゃったのだな」
「それだけじゃないよ。ネオ・カオスももういないから」
「仕方あるまい、今日は此処までじゃ。ゆっくり休むが良い!!」
さつきに休めというアルトルージュ。
幾ら此処が魔力の濃い場所でも消耗するものは消耗するのだ。
其れに定期的にブリュンスタッド城を具現化していれば消耗も大きい。
そして翌日もさつきの教育は続くのだった。
三咲町某所
「遠坂凛!! 何を全身で地面とキスをしておりますの!?」
「……」
「何を言っているかわかりませんわよ」
ルヴィアは遠坂の着地をあざ笑う。
「ルヴィア!! よほど死にたいらしいわね」
黒いオーラを放ちながら起き上がる凛。
「死んだんじゃありませんの?」
「此の混沌たちのお陰でね……」
遠坂は混沌のお陰で命拾いしたようだ。
「ヘリから蹴落としてやるべきでしたわ」
「私を蹴落とすつもりだったんだ」
そう言って殴り合いを始める遠坂とルヴィア。
お互いに顔面や腹に攻撃をしている。
吸血鬼との闘いでお互いにダメージを受けた箇所を知ってる為、其処を集中的に攻撃している。
此の二人、このまま殴り合いを続けるつもりなのであろうか?
王族の庭園
「時間ギリギリまでかかったがよく終えた」
「つかれました」
さつきは床に倒れ大の字に寝る。
「後は、血戦まで休むが良い」
さつきの目は閉じかかっている。
「せめてベットで寝るがよい」
「そうだね。少しの間だけどおやすみなさい」
さつきは自分に割り当てられている部屋のベットで眠りについた。
「わらわも少し休むとしよう。ロアとの血戦に参らねばならぬからな……蛇にはさくらにチョッカイ出した代償を払ってもらわねばならぬから」
「じゃあ、わたしも休むとするわね」
三人は血戦までの短い時間眠りについた。
外の時間は午後7時を回った頃だ。
消耗した力を回復させる為に多くの時間を睡眠に当てる。
此処が魔力に満ち、尚且つ外界の時の流れから切り離された空間だから出来る裏技なのだ。
大道寺邸
「さくら準備はええか?」
ケルベロスがさくらに聞いた。
さくらは桃色を基調とした服を着、マントを着けている。
マントにはさくらの魔方陣が刺繍されている。
此の刺繍は、知世がしたものらしい。
「主!!」
月が、特訓を終えて出てくるアルクェイド達の気配を感じた。
暫くするとアルクェイド、アルトルージュ、さつきの三人が姿を現した。
「さっちゃんは具現化できた?」
ブリュンスタッド城を具現化出来たか聞くアテネ。
「ちゃんと具現化出来てたよ」
「気に入りませんわ!! 私でも具現化出来ていませんのに」
不満を言うアンゼロット。
「言い争っている時ではないぞ!! 一刻も早くロアの城に乗り込む事じゃ」
「其れで、ロアの城は?」
「ロアは、さつき殿が通っていた学校を根城にしておった」
城の場所を言うアルシャード。
「志貴くん、大丈夫なのかな?」
さつきの顔に不安の色が浮かぶ。
さつきは、志貴がロアに生命力を奪われて死に掛けている事を知らない。
「ロアも自分が血を吸った娘が真祖に成ってブリュンスタッド城まで具現化できるなんて思わないでしょうね」
「さくら!!」
「転移はワシがやろう」
転移を買って出るウォン。
ウォンの転移魔術でロアの城に乗り込むロア討伐隊。
最凶の戦力で乗り込んでいった。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーの時間やで!!」
「今回もゲストを呼んでいないのでしょう?」
「今回はちゃんと呼んどるで」
「誰なのですか?」
「黒の姫さんや」
「アルトルージュさんですか」
「わらわを呼んだのは、そなたらか!?」
「わいらや」
「わらわに何のようか?」
「さつきはんは、如何やった!?」
「アレの血を引いているだけある」
さつきの事を聞くケルベロス。
「ブリュンスタッド城を具現化したから、其の才能は認めておる」
「クロウの予言は間違っておらんかったということや!!」
「エリオルに聞いた話ではクロウが編んだ術にはブリュンスタッド城を具現化させる付加はなかったはずです」
クロウが編んだ術には真祖に売る事は出来てもブリュンスタッド城を具現化する力を与える事はないという。
「となると原因はさくらじゃな」
「さくらは、クロウを超える魔術師やで」
「巨大なさくらさんの力が影響を与えた事も考えられます」
「ロアはわらわが処刑する」
「あのな、此のコーナーはゲストにいろんな事を話してもらう所なんや」
「そうであったのか? もっと早く言うがよい」
「話してもらおうと思ったん屋が時間切れ見たいや」
「わらわを呼んでいながら時間切れだと!!」
「次回、もう一回呼ぶさかいカンニンしてぇな」
「次は、ちゃんと話させるんじゃぞ」
「わかっているがな」
「今回は、此処までや!! ほな!!」
いよいよロア討伐。
美姫 「にしても、戦力的にロアは不利じゃないかしら」
何か手を隠し持っているのか、どうかだな。
美姫 「どういった形で決着がつくのかしらね」
だな。それじゃあ、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」