第二十七話「さつき、大爆発」
「皆、まとめて我が力としてくれよう……」
ロアは、全員の力を取り込もうとかっさくする。
「誰から殺して欲しい? 生命力を奪われた貴様等では私には触れることすらできんだろう」
ロアは、自分が優勢だと過信している。
「ロア、殺してあ・げ・る」
「では、我が娘から殺してやろう」
さつきは、ロアと戦闘に入る。
ロアは、魔術を織り交ぜた肉弾戦を繰り広げる。
「どうした!? その程度なんか? 娘」
「………………」
「ひゃっはぁっ」
ロアによる一方的な攻撃が続く。
「そぉらそぉら、どうした!?」
ロアの攻撃を軽くかわすさつき。
「どうしたどうした!!」
だが、さつきはロアの攻撃をかわしている。
「ん? 手ごたえがない……」
ロアの目の前にはさつきが立っているのに……。
「なぜ、私の攻撃が当たらぬ。娘は、目の前にいるというのに……」
そう。さつきはロアの前にいる。
その場から動いた形跡はない。
「娘よ。私をからかっているのか?」
ロアは、気づいたようだ。
さつきが、その場から動いていないということに……。
「からかってはいないよ」
「からかっていないというのなら何故、よけてばかりいる」
「わたしが本気になったらすぐに決着がついちゃうから」
「だったら何故本気で戦わない!!」
「だって、本気で戦ったら貴方を転生させちゃうから……」
「私は、やりたい放題できるというわけか」
「貴方にやりたい放題なってやらせないよ」
「私を転生させずになにが出来るというのだ!?」
「貴方を倒さなくても、さくらちゃんが魔法を使えば終わりなんだから」
「笑わせるな!! 魔法使いがそうそう居てたまるか!!」
ロアは、思い返してみる。
「“クロウの後嗣”なら使えても不思議ではない。だが使う前に殺せば良いだけのこと……」
「じゃあ、選択の機会をあげる」
「選択の機会をやるぅ?」
「私に殺されるのがいいか、さくらちゃんによって不帰の世界に飛ばされるのがいいか、志貴くんに殺されるのがいいか選んで」
「くっくっくっくっくっ、アイツは生きているのか?」
「志貴くんは生きているよ」
「だったら、志貴を呼べよ。今度こそ完全に殺してやる」
だが、その台詞がさつきの怒りを買うことになった。
「ロアさん。今、なんて言ったの?」
「聞こえなかったのか? もう一度、言ってやるよ。志貴を殺してやると言ったのだよ」
「そう……志貴くんを……」
さつきの怒りの炎が静かに燃え上がる。
「あぁっ。ロアの奴、さっちゃんの前で禁句言っちゃったわね」
「アルクちゃん、教えてあげたら?」
「面白いから黙っていようよ」
黙っていようと言うアテネ。
「ロアの驚く顔が早く見てみたいの」
アルトルージュも話に加わる。
「それ以前にロアの私刑確定ね」
「ロアは、どんな顔をするかな?」
「どうした? 気にでもさわったか?」
「ロアさん、覚悟はいいですか?」
「覚悟? 態度が生意気な娘を教育する覚悟は出来ている」
「覚悟はいいみたいね。じゃぁいくよ」
そう言ってさつきはロアに攻撃を仕掛ける。
今まで手を抜いていたかのような動きだ。
「デバンティーノ」
「遅いよ」
ズンッ
「がはっ!!」
ロアの腹にさつきの拳がめり込んでいる。
「たったのそれだけか?」
「聞こえないよ」
「たったのソレだけかと聞いているんだ!!」
「私の怒りはコレだけじゃ収まらないから……」
それからさつきのロアに対する私刑が幕を開けた。
「私は、まだ本気を出してないよ」
ロアを見下すさつき。
「ぐぅぅぅっ」
「動きが鈍ってきているよ」
「俺を見下すんじゃねぇ」
見下すなと言うロア。
「俺を見下すなと言うのが聞こえないのか?」
「きこえないよ?」
さつきは聞こえない振りをする。
「聞こえない振りをするんじゃねぇ」
「さっき、なんていったの?」
「さっき? わすれたなぁ」
ミシッミシッ
「志貴くんをどうするの?」
「志貴を殺すと言ったんだよ」
「そう……志貴くんを……」
火に油を注ぐロア。
油どころかガソリンを注ぐ。
さつきは今まで以上の力でロアを殴る。
ロアの内臓が破裂しミンチになる音が聞こえる。
「うげぇっ」
ロアの口からは血が溢れる。
「苦しいでしょう? わたしの怒りはまだまだ収まらないから」
「このまま転生すれば……」
「貴方に転生はさせないよ」
「無駄だ……十八回目の転生さえしてしまえばこっちのものだ」
「何故、殺さずに痛めつけていたかわかる?」
「ん?」
ロアは異変を感じる。
「何故、転生出来ない!!」
ロアは転生出来ない。
「やっと気づいたんだ」
「またしても、貴様か!? “クロウの後嗣”!!」
さくらが何かを施したようだ。
「ロア、転生を封じられた気分は如何?」
「転生封じ?」
「志貴くんが来るまでもっと痛めつけてあげるね」
さらにさつきによる一方的な攻撃がロアに加えられる。
ロアは、真祖に成ったさつきの重いパンチをその身体の受けることになった。
「がはっ」
ダメージに復元呪詛が付いてゆかない。
「アルクェイドサンたちもうらみ晴らしていいんですよ」
アルクェイドたちに声をかけるさつき。
「そうね。わたしも恨みを晴らさせてもらおうかな?」
アルクェイドもロアへの攻撃に加わる。
ロアの受けるダメージが2倍に増えた。
「姫君が加わった所で……」
アルクェイドがロアの頭を押さえつけた瞬間にロアの鳩尾にさつきの膝蹴りが極まった。
「う゛ぇっ!!」
「わたしたちも加えてもらいますわ」
アンゼロットたちも加わる。
真祖たちによる袋叩きがはじまる。
ロアはくみ上げた魔力を回復に当てなければならない。
治す以上のダメージが蓄積していく。
骨が折れる音、内臓が破裂する音が入り混じっている。
ロアの身体がいびつな形に歪んでいく。
折れた骨が肉を突き破って露出する。
吸血姫たちの服はロアの血などで汚れていく。
そんなことを気にせずにロアを痛めつけることのみに集中している。
「おげぇぇぇっ!!」
「まだまだぁ!!」
防御すら許されないロア。
ロアは、転生封じがなければ50回以上殺されたダメージを受けている。
「ロアさん。私の怒りは、まだまだ収まらないよ」
まだ怒りが収まらないさつき。
「いままでは、遠野君の分……」
「まだ、気がすまないのか?」
「うん。そして、これからが私を吸血鬼にした分……。楽に死ねると思わないでね」
それは、ロアにとって地獄以外の何物でもなかった。
「29万6千倍の力でいくよ!!」
「おい、待て!! 29万って、そこまでオレが憎いか?」
「憎いよ。イスカンダルまで殴り飛ばしてあげたい気分」
「其処まで殴り飛ばせるのか?」
「じゃあ、殴り飛ばしてあげようか?」
「どうせ、冗談だろ?」
「冗談じゃないよ。私がその気になったら光速で飛ばしてあげるよ」
「飛ばされた後、如何やって返って来いというのだ!!」
「ガミラスの宇宙船で返ってくれば?」
「あぁ、かえって来るとも。何年かかろうと……」
「もう、言い残す事はないよね」
もう言い残す事はないかと聞くさつき。
「でも、殴り飛ばす前にもっと痛めつけて、あ・げ・る」
さつきの顔を見たロアは、恐怖を感じる。
再びさつきによる一方的な攻撃がロアを襲う。
聞こえてくる音は、さつきの攻撃音とロアの悲鳴とロアの骨が折れる音、ロアの内臓が破裂する音、破裂した内臓がかき混ぜられる音だ。
「う゛げぇっ!!」
ズン!!
「げぇはぁっ!!」
盛大に血を吐くロア。
「うぇっ!! ガハッ!!」
「まだまだ、殴ってあげるよ」
既に『グロッキー?』状態のロア。
「ぐぇぇぇぇぇえぇぇぇぇっ!!」
大量の血を吐き出す。
「ごぇぇぇぇっ!!」
休みなく腹に突き入れられる拳によって絶え間なく血を吐き続ける。
「ぐはっ!!」
「とっても苦しそうね」
「げふっ!!」
「でも、私の攻撃はまだまだ続くよ」
まだまだ攻撃が続くと言うさつき。
「こ、殺せ」
ドボォッ!!
「ブフェッ」
奇怪な声を上げるロア。
「一思いに殺してくれ」
死を求めるロア。
「頼むから殺してくれ」
ズム!!
「おがぁぁぁぁぁあぁぁあっ!!」
簡単に殺さないさつき。
自らを吸血鬼にしたロアを痛めつけるのを楽しんでいるように見える。
「た、頼むから、開放してくれ」
「開放したら町の人を襲って血を吸うんでしょ?」
ドキッ!!
図星のようだ。
「志貴くんが来るまでは開放してあげないよ。それまで地獄の苦しみを与え続けてあげるね」
「さっちゃん、楽しんでいるね」
「楽しんでいるわりに凄まじい殺気を放っていない?」
「さっちん、教育のときも志貴のことになったら回りが見えなくなっていたら」
「確かにそれは問題だな。ロアの件が片付いたら再教育が必要だな」
再教育が必要と言うアルシャード。
「それは止むえぬだろう? 好きな者の事になれば周りが見えなくなるであろう」
「でもさっちんは我慢しているじゃん。本当なら一思いにロアを殺せるのに殺さないように力をセーブしている」
「ネロにトドメを刺したのは志貴だったしね」
ネロにトドメを刺したのは志貴だった。
「その志貴って子を好きなのがあの子ってわけ?」
「ロアは地雷を踏んだことにも気づいていないようだな」
「わらわも志貴に告白しようかな」
志貴に告白しようと言うアルトルージュ。
「さっちゃんが聞いたら大変だよ」
その時もさくらは呪文を唱えている。
「ぐはっ」
「志貴くんが来る前に面白い物を見せてあげようか?」
「はん? 面白い物を見せる?」
「星の息吹よ」
空想具現化で出した鎖でロアの自由を奪う。
「面白い物が空想具現化とは笑わせる」
「今から見せてあげるよ」
今から見せると言うさつき。
「闇の力を秘めし鍵よ」
さつきが詠唱を始める。
その詠唱を聞いたロアが噛み付く。
「その詠唱は、クロウ・リードが鍵の開放時に唱える呪文……」
「真の姿を我の前に示せ」
「何故、オマエが知っている!!」
「契約の下さつきが命じる……封印解除」
何とさつきは魔法の鍵を解放した。
杖の先端は星と月が合体した物だ。
「貴様、クロウ・リードの魔法を継承したな!!」
「それがどうしたの?」
「オマエは化け物か!?」
「私が化け物だったら貴方はなんなの?」
「真祖に成るだけじゃ足りないから魔法使いになりましただぁ?」
ロアは、さつきの桁外れな才能に嫉妬した。
「ふざけんじゃねぇ。どれだけ俺を見下せば気が済むんだ!!」
「まだ、そんなに元気があるんなら少し本気で焼いても大丈夫だね」
さつきはロアを焼く気だ。
「大地と火の精霊よロアを火刑にせよ!!」
さつきが簡単に呪文を唱えると何処からか火が出てロアを焼く。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
身体を焼かれるロアが悲鳴をあげる。
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁっ!!」
ロアは、身体を焼かれ続ける。
身体が焼ける匂いが立ち込める。
「あがあぁぁぁぁぁぁっ!!」
ロアは身体を悲鳴を上げ続ける。
身体を焼かれるロアに最後の時が近づいていた。
シエルに連れられた志貴はすぐ近くで来ている。
ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間や」
ケロちゃんにおまかせのコーナーが始まる。
「今回のゲストは、真祖の姫君アルクェイドや!!」
「私のことを呼び捨てとは覚悟はいい?」
「姫さん、何か話してくれへんとこのコーナーがなりたたんねん」
「ロアもゲストに呼んでいたみたいだけど、何で私が後なの」
「ワイに言われても困るがな! スッピーが呼んだんヤ、文句ならスッピーに言ってぇな」
「居ないわよ」
居ないと言うアルクェイド。
「ロアより後に呼んだ御礼は貴方で晴らさせてもらうから」
「うぎゃぁ」
アルクェイドの私怨晴らし中。
「あぁ、すっきりした」
すがすがしい顔のアルクェイド。
「スッピーの奴、こうなるとわかってて来なかったな」
「それよりも私におやつとジュースは?」
「そこにあるから勝手に飲み食いしてな」
お菓子とジュースを飲み食いするアルクェイド。
「ねえ、なにを話したらいいの」
「好きなことを話してな」
「何でもいいのね」
「あまり時間がないからそのつもりでな」
「ロアを倒したらね、志貴と毎日遊ぶの。朝から晩までずっと……」
朝から夜遅くまで遊ぶと言うアルクェイド。
「次の日も朝から次の日の朝まで遊ぶんだから」
志貴と遊ぶことばかり語り続けるアルクェイド。
「姫さん!?」
「なによ」
「姫さんが志貴のことばかり話しているから終いの時間を過ぎてんねん」
「えぇぇっ!! もっと話したいことがあるのに……」
「今度はちゃんと話すんなら次回、呼んでやらんでもないで」
「ちゃんと話す」
「ちゃんとやで!!」
「うん」
「次回のゲストは引き続きアルクェイドや」
「わぁい」
はしゃぐアルクェイド。
「次回も楽しみにしててな!! ほな!!」
何か一方的になってしまったな。
美姫 「あっという間に逆転ね」
寧ろ、ロアに哀れみを抱いてしまうよ。
美姫 「志貴が来るまでは生かされ続けるのよね」
でも、志貴が近付いているみたいだしな。
美姫 「吸血鬼事件も終幕直前ね」
それでは、今回はこの辺で。