私、弓塚さつきは今、見知らぬ世界にいます。
本当の名前は、弓塚さつき・ブリュンスタッドと言うんです。
何で日本人なのにブリュンスタッドが付くかって?
元の世界で真祖の王族だからなんです。
こう見えても私、由緒正しいブリュンスタッド系の吸血鬼なんですよ。
そんな私が何故異世界にいるかって聞かれても説明が長くなるので勘弁してください。
イキナリ並行世界に飛ばすとか言われ、さくらさんの次元転移で此の世界に飛ばされてしまいました。
此処って何処なんだろう……
とりあえず、お金は使い切れないくらい持っています。
此の世界で暮らすにも戸籍はない、住民票はない、之じゃあアパートとか借りれないよ。
全部、手配してくれるんじゃなかったの!?
ゼルレッチさん、全て手配したというのは嘘だったの?
今度、ゼルレッチさんに逢ったら文句言ってやるんだから!!
「魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜始まります」
第一話「魔法少女とフェレットと吸血鬼なの?」
「とりあえず、生活の拠点を探さないと……」
さつきは、海鳴の町を歩いていた。
此の世界での生活の拠点を探すために。
さつきにとって見知らぬ世界の見知らぬ土地、そう簡単に見つかる訳はない。
「住まいが簡単に見つかるわけないよね」
そうさつきが呟いた瞬間異変に気づいた。
先ほどまでいた人が急に消えたからだ。
「さっきまで居た人たちは何処へ行ったんだろう?」
「なのは、結界を張ったよ。早く封印を……」
「うん。ユーノくん」
「レイジングハート!!」
≪All right≫
レイジングハートと言われた赤い玉は、あっという間に「杖」の形に変わった。
なのはは、レイジングハートを手に謎の化け物と対峙する。
「なのは、何をしているんだ!?」
「だってだって、熊さんだよ。こんなの如何やって倒せば……」
なのはは、ジュエルシードを取り込んで巨大化した熊に後ずさりしている。
熊は有無を言わずなのはに襲い掛かる。
だが、熊の爪が届く気配がない。
なのはが恐る恐る目を開けると熊の攻撃を片手で食い止めている人の姿が眼に入った。
「熊は山に帰りなさい!!」
そう言ってさつきは、熊を殴り飛ばした。
熊は100メートル以上も殴り飛ばされていた。
「く、熊を素手で殴り飛ばした」
「貴女達、大丈夫?」
未だに棒のように立っているなのは。
(なのは、封印を)
念話で指示をするユーノ。
(うん、ユーノくん。其れよりも、その人を)
(わかった)
そんな念話を聞かれているとも知らない二人。
ユーノがさつきを結界の外へ出そうとしたとき先ほどの熊が復活して襲ってきた。
「ジュエルシード、シリアル……」
なのはがジュエルシードのシリアル番号を言おうとしたときには熊は目の前に迫っていた。
「なのは!!」
なのはは、恐怖で目をつぶってガードする姿勢をとった。
≪Protection≫
レイジングハートがなのはの危機を感じ周りにバリアを張る。
何時までたっても襲われる気配がない。
「あまり、手間をかけさせないでよね」
さつきは、魅了の魔眼を発動させ熊を動けなくさせて爪で之でもかと言うくらいに熊を引き裂いた。
其の余波はすさまじく道路に無数の溝がいろんな角度に出来ていた。
熊は、さつきに細切れにされもう襲ってこない。
「なのは、今の内に封印を……」
なのはは、恐る恐る熊の前に行くとジュエルシードを封印した。
「なのは、お疲れ様!!」
なのはにお疲れと言うユーノ。
「其のフェレット、貴女の使い魔?」
「ユーノくんは、私の使い魔じゃ……」
否定するなのは。
ユーノは、なのはの肩に乗っている。
「ユーノくん、お姉さんの目が赤いよ」
なのはは、さつきの目が赤い事に気づいた。
「何言っているんだい!? なのは、瞳が赤い人間居るわけ……」
此処で、ユーノは気づいてしまった。
さつきが人間じゃなことに……。
「あの、目が赤いですが如何したのですか?」
なのはは、さつきに直球で聞いた。
「目が赤い?」
なのはの質問を気にせずに答えるさつき。
「だって私、吸血鬼だから……」
直球で答えを返すさつき。
「吸血鬼って言ったら、あの血を吸うってヤツ?」
「此の世界にも吸血鬼の定義はあるんだ」
さつきの言った言葉がユーノは気になった。
まるで自分は、此の世界の住人じゃないと言っているからだ。
「貴女は、此の世界の住人じゃないというのですか?」
フェレット姿のままユーノが聞く。
「そうだよ。私此の世界の住人じゃないから」
あっさり認めるさつき。
「先ほどは、なのはを助けてくれてありがとうございました」
「お礼なんか、如何でもいいよ」
さつきは、時間を気にする。
「ところで、さっきの青い結晶は何?」
さつきは、青い結晶について聞いた。
「青い結晶はジュエルシードといいます」
「ふうん。ジュエルシードと言うんだ」
「自己紹介がまだでしたね。僕の名前はユーノ・スクライアといいます。分けがあってなのはにジュエルシード集めを協力してもらっています」
「高町なのはです」
「貴女の名前を聞かせてくれませんか?」
ユーノがさつきに名前を聞かせて欲しいと聞いた。
「弓塚さつき・ブリュンスタッドよ」
「あのあの。日本人ですよね? 日本人なのに何で外国人のような名前が付いているんですか?」
すかさずなのはがさつきに聞いた。
「其れは私が吸血鬼の真祖……其れも王族所縁の吸血鬼だから」
「なのは、聞いたことある?」
「知らない」
「知らなくて当然よ。だって私の居た世界の名前だから」
さつきの居た世界では有名な名前のようだ。
「あなた達は、熊の後始末を如何するの?」
「如何すると言われても……如何するなのは?」
「私とユーノくんじゃ片付けられないよね」
「私が変わりに片付けてあげようか?」
助け舟を出すさつき。
「ちょうど此の子達がお腹を空かせていたから……」
そう言ってさつきは影から混沌を出して熊の肉片を残さず食べさせた。
「ユーノくん……」
衝撃の光景を見たなのはとユーノ。
熊の肉片を食べつくした混沌はさつきの影の中へ戻った。
「あのあのっ……」
「何!?」
「さっき、吸血鬼と言っていましたよね」
恐る恐るなのはが質問をする。
「言ったけど如何したの?」
「ち、ち、ち、血は吸うんですか?」
「血? 私、血は吸わないよ。だって吸う必要がないから」
「血を吸わないだって」
「吸血鬼って、人の血を吸う化け物なんじゃ」
なのはも吸血鬼の件は知っているようだ。
「あなた達に聞くけど、此の世界に吸血鬼は居る!?」
さつきが二人に質問をした。
だが、二人から答えは返ってこない。
「そう、知らないんじゃ仕方ないね。あなた達には、今日私に会ったことを誰にも話さないで欲しいんだけど」
此の世界には夜の一族と呼ばれる吸血鬼が居る事をさつきは知らない。
なのは達も知らない。
なのはも自分の友達の月村すずかが夜の一族と呼ばれる吸血鬼だという事を知らない。
「あの……また逢えますか?」
「元の世界への戻り方も判らないし、此の世界の事も判らないから……」
少し間をおいて話を続ける。
「此の町の空気が気に入ったから暫く居るつもりよ」
さつきは、海鳴 に腰を下ろすようだ。
「でも、まだ住むとところが決まっていないの」
さつきは、住む所がまだ決まっていないようだ。
「海鳴にもホテルはありますよ」
「泊まれたら良いんですけど……」
「あっ」
なのはは思い出した。
「異世界から来たんですよね」
「うん。お金なら沢山持っているけど」
さつきは札束の山を見せる。
「どのくらい持っているんですか?」
「10億くらいはあるかな?」
さつきの所持金の額を聞いてなのはは目を回す。
「それだけあるのならホテルに泊まれば良いじゃないですか」
今のさつきは宿無しなのだ。
お金があるのに泊まれないという珍しいケースなのだ。
普通は逆で泊まる所があるのにお金がないというケースだ。
そして不幸な事にホテルが満室だったのだ。
「なのは、早く封時結界を解きたいのだけど」
ユーノは、早く結界を解きたいようだ。
「うん。ユーノくんが結界を解いたら友達に電話をして聞いてみる」
なのはが電話をしようとしている相手はアリサとすずかなのだ。
「電話くらい移動中にでも出来るでしょ。しっかり捉まっていて」
ユーノが結界を解除した後、さつきは言った。
「いくよ!!」
二人がしっかりつかむのを確認してさつきは勢いよくジャンプした。
「お、おちる」
しっかりつかまっているはずのユーノが落下しそうになる。
「ユーノくん、私の服の中に……」
なのはが、ユーノに服の中に入るように言う。
「なのはちゃんの家はどっち?」
猛スピードで移動するさつきがなのはに聞いた。
「ま、真っ直ぐで良いです」
落ちまいとなのはは必死につかまっている。
なのはの家の近くに着地した。
「なのは、大丈夫?」
「な、何とか……」
なのはは、家に帰って着替えて迎えが来るのを待った。
さつきは高町家で待たせてもらっていた。
そしてドアフォンがなった。
迎えに来たのは月村家のメイド、ノエルだった。
「夜分に御用とはなんですか? なのはお嬢様!!」
「此の人が今夜泊まる所が無いと困っているんです」
「此方でも確認しましたがそのようですね」
月村家の方でも確認を行ったようだ。
「恭也様、忍お嬢様がお求めになっておられます」
「アレか……」
「はい。車で来ておりますので恭也様ご一緒願います」
「今夜は忍の所に泊まる事になっちまった」
「恭也様とそちらの方も車に乗ってください」
そう言われて巨大な荷物を担ごうとするさつき。
「荷物は私がお持ちしましょう」
「凄く重いですよ」
「確かに重いですね」
再びさつきは軽々と荷物を担いだ。
「凄いね。あの重い荷物を」
感心する美由紀。
美由紀も持とうとしたが1センチも上がらなかったのだ。
恭也とさつきはノエルの運転する車に乗っている。
移動中の車内は無言だ。
だが恭也は荷物を軽々持っていたさつきを警戒しながら見ていた。
さつきは海鳴の夜景を眺めていた。
吸血鬼の為、夜目が利くさつきは情報を汲み取っていく。
そうこうしている内に車は月村邸に着いた。
月村邸に着くと忍とファリンが玄関で待っていた。
ノエルは車を降りるとドアを開けた。
「お嬢様、恭也様とお客様をお連れしました」
「恭也、待っていたわ」
待ちきれなかった様子だ。
「ファリン!! お客様をご案内して」
「お荷物をお持ちします」
ファリンが荷物を持とうとする。
「重いから良いですよ」
さつきは荷物を持たなくていいと断る。
「恭也、先に私の部屋で待っていて。私は、話があるから」
そう言われて恭也は忍の部屋に通された。
さつきは応接間に通されている。
「貴女は、何者ですか? あの荷物を持っていらっしゃいましたが」
忍はさつきに話しを聞いている。
忍とさつきの前には紅茶が出されている。
「私ですか?」
「ノエルに調べさせましたが、貴女に関する情報が得られませんでした。ご説明いただけますか? 得体の知れない方をお泊めするわけにはいきません」
「理解できなくても良いですか?」
「貴女の素性がわかれば良いです」
さつきは之までの出来事を話した。
「貴女の素性は大体わかりました。当家に逗留されて結構ですよ」
「いんですか?」
「貴女の戸籍など必要な手続きは明日、ノエルにさせます」
さつきの戸籍を用意するという忍。
「確か、さつきさんは高校生でしたね」
「はい」
「高校の編入手続きも此方でしておきます」
高校の編入手続きもすると言う忍。
「さつきさんは大金をお持ちでしたね」
「持ち歩くのに困っていたんです」
「では、さつきさんの口座を開設しますので其れまで、当家の金庫で預かっても良いでしょうか?」
さつきは、少し考えてバックから大量の札束を出してテーブルの上に積んでいった。
其の額を見た忍は直ぐに指示を出した。
「ノエル、直ぐに海鳴銀行の口座担当を呼びなさい」
「しかし、夜ですよ」
「大口の顧客が居ると言って来させなさい!!」
忍の指示でノエールは電話で海鳴銀行の顧客担当を呼びつけた。
呼びつけられた銀行員はスーツを着ている。
「月村さん、夜にイキナリ呼びつけないで下さい。其れで顧客と言うのは?」
「其の娘よ」
忍がさつきの事を言う。
「急いで口座を作りたいのよ」
「幾ら月村さんの頼みでも無理ですよ。審査に時間が掛かるんですよ」
「あの大金を見ても同じことが言える?」
テーブルの上の大金を見て銀行員は腰を抜かした。
「い、一体幾らあるのですか?」
「10億くらいかな」
「じゅ、十億……」
驚いた行員は慌てて電話をしようとする。
だが、其の手は震えている。
震える手でなんとか電話をした行員の声は震えていた。
そんな電話の向こうから声が返ってくる。
『バカモン!! 手続きなど如何でもいい。直ぐに契約を纏めろ!! 他の所に獲られてたまるか!!』
「直ぐに契約します」
『そっちに現金輸送車を回す。其れまでに契約を済ませておけ』
「はっはい」
『10億だ!! 絶対に逃がすな』
ブッ
電話が切れると直ぐに契約書を取り出して契約に入った。
口座開設の書類にさつきは必要事項を書いていった。
さつきが書類を書き終えると同時にジュラルミンケースを持った行員が大勢やって来てさつきの大金をジュラルミンケースに詰めていった。
あまりの大金にジュラルミンケースが足りなくなってしまった。
「ジュラルミンケースは?」
「もうありません」
「何だと!!」
「後どのくらい残っているんですか?」
「まだ、3億くらい残っているぞ」
「3億ですか?」
「月村さん、一旦戻ってきます。手持ちのジュラルミンケースが足りなくなってしまいまして……」
その後、戻ってきた行員によってさつきの大金は無事海鳴銀行に運ばれた。
持ち帰った海鳴銀行は地獄絵図と貸していた。
さつきが開設した口座の10億もの大金と格闘していた。
翌日、出社してきた行員が見たのは、大金と格闘し続ける行員の姿だった。
「ファリン、弓塚様を客室にご案内して。其れから輸血パックを」
「あのう、私は血を飲みませんよ」
「吸血鬼なのに血を飲まないのですか?」
「私、血を飲まなくても平気なんです」
「じゃあ、私の分だけ用意して」
「了解しました」
さつきの荷物はファリンが持っている。
10億もの大金がなくなった分、軽くなっていた。
「此処が、さつき様のお部屋になります」
そう言った次の瞬間。
「はわわわぁ」
ビターンとコケたファリン。
「大丈夫ですか?」
お客であるさつきにまで心配されるファリン。
起き上がって客間のドアを開けるファリン。
客間でも可也豪華な部屋だった。
さつきは、客間に入っていく。
「さつき様、ごゆっくりおくつろぎください」
ファリンは、客間のドアを閉めると去っていった。
「ふぅ。疲れたよ」
そう言うとさつきは、ふかふかのベットに倒れこんだ。
さつきの海鳴での一日目の夜は暮れていった。
この先、何が待ち構えているのだろうか?
次回予告
なのは「ごくごく平凡な小学三年生だった筈なのに魔法にであったと思ったら吸血鬼に会ってしまいました」
なのは「しかも凄く強いお姉さん。暫く海鳴に居るとか……」
なのは「ジュエルシード集めの筈が異世界から来た吸血鬼と戦う事に」
なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第二話『吸血鬼事件発生なの?』」
さつきがリリカル世界に。
美姫 「ジュエルシード探しのお手伝いかと思ったんだけれど」
どうも、吸血鬼が出るみたいだな。
美姫 「という事は、海鳴で事件が起こるのかしら」
どうなんだろう。次回を待つしかないな。
美姫 「そうね。それじゃ〜まったね〜」
ではでは。