第四話「月村すずか誘拐なの!?」
なのはの部屋
「なのは、調子は如何?」
ユーノがなのはに体調を聞く。
「まだ、お腹の中が気持ち悪いよ」
「仕方ないよ。なのはは女の子なんだから」
なのはは、女の子と言うユーノ。
「わたし吸血鬼にお腹を何度も殴られてよく助かったよね」
「なのはは、吸血鬼にお腹を何度も殴られて口からいっぱい血を吐いて死に掛けてたんだよ」
「ふぇ!? 私が死に掛けてたぁ?」
なのはが驚きの声を上げる。
「服をめくって自分のお腹を見てみてよ」
ユーノは、なのはが女の子だという事を失念していた。
捲りあげた服の下にまだ膨れていない胸がチラリと見える。
なのはは、自分の服をめくり上げ吸血鬼に殴られた腹部を見た。
昨日はあった、なのはの腹部の真っ黒な痣が綺麗に消えていた。
「ねえ、なのは。治療魔法使った?」
「使う前に知らないよ。治療魔法なって……」
「そう言えば、なのはは治療魔法なんて知らないんだった」
なのはは、治療魔法を知らない為使えない。
「ユーノくん、ジュエルシード探しに行こうか?」
「駄目だよなのは!! 昨日の今日で無茶しちゃ。今日は、完全休養日にするから」
なのはを心配して完全休養日にすると言うユーノ。
「吸血鬼の方はさつきさんが何とかしてくれるから、なのははダメージの回復に専念する事!!」
「はぁい」
なのはは、ユーノの言う事を聞くことにした。
なれない魔法の行使の連続と吸血鬼から受けたダメージで体が悲鳴を上げていた。
「どのくらい休めばいいのかな?」
「本当は吸血鬼から受けたダメージが回復するまでと言いたいけど、早くジュエルシードを回収しないといけないし……」
吸血鬼に奪われたジュエルシードも取り戻さないといけないのだ。
「あの吸血鬼の手に渡れば取り戻すのは大変だ」
ユーノも昨日の吸血鬼の戦闘力の高さも見ている。
「明日からジュエルシード探しに復帰してもらうよ。其れまでに体調を整えておいて」
奇しくも明日が吸血鬼との闘いになるとは思ってもいないなのはとユーノだった。
テレサの城
「セバスチャン!! わらわの軍勢はどの位おるか!?」
「死者が1000人ほどです」
テレサの軍勢は1000人ほどらしい。
「死徒に成れる素質の者はおらぬか?」
「残念ながら死者の中には居りません。姫様に血を吸われて成れたのは私だけです」
「死徒に成れたのはセバスチャンだけだったな……」
「はい。2日ほど要してしまいましが」
今の所、テレサ以外の死徒はセバスチャンだけのようだ。
「姫様が血を吸われて直ぐに死徒に成れる者は居ますでしょうか!?」
「適当に攫って参れ!! わらわが直接血を送り込んでやろう」
「では日没後、攫ってまいりましょう」
テレサの陰謀によって更なる犠牲者が出ようとしていた。
其の日、すずかは一人で町を歩いていた。
そして、路地裏に居る猫を見つけた。
猫を抱き上げようとすずかは、しゃがみ込んだ。
すずかの背後に近づく影。
近づいた影は、すずかの口を塞いで抱き上げると廃ビルの中に入っていった。
「姫様、路地裏に入ってきた人間を連れた参りました」
「ご苦労。早速わらわが血を吸ってやろう……」
すずかに歩み寄るテレサ。
恐怖で声が出ないすずか。
「この者は、死者か? 其れとも死徒に成るか!?」
恐怖に震えるすずかの目からは涙が零れる。
「其の恐怖に震える顔がたまらない」
テレサは、すずかの首筋に噛み付き血を吸おうとする。
「姫様、血は何時でも吸えます。其の者を人質にとられては如何ですか?」
「人質か……何かの役にはたつだろう。牢にでも入れ死者達に見張らせるが良い」
「はっ。死者達に監視させまする」
すずかを牢に押し込む為、連れて行く。
「放してください!!」
「五月蝿い!! 静かにしろ!!」
ズン
「うっ!!」
セバスチャンは、騒ぐすずかの腹を殴って黙らせた。
お腹を殴られたすずかは意識を失って動かなくなった。
「暴れるからそんな目にあうのだ」
セバスチャンは、すずかを引きずって牢に蹴り込んだ。
「牢に入れたか?」
「はい。少し暴れましたので腹を殴って明日の夜まで目が覚めないようにしてやりました」
「今宵も死者達に町の人を襲わせろ!!」
「何人ほど動かしますか?」
「毎晩のように増やした端から死者を殺されてはたまらん」
「姫様の軍勢に手を出す輩が居ると言うのですか?」
「何処の誰かは知らないが見つけ次第、わらわの手で引き裂いてやる」
テレサは、知らない。
自分の死者を殺しているのがさつきだと言うことを。
月村邸
「すずかは、まだ帰ってこないの?」
「まだ、お戻りになられていないようです」
「今日は、家に居ると言っていたのに……」
「そう言えば、猫ちゃんが気になるから様子を見に行くといって出て行かれました」
「ファリン、其れは何時ごろのこと?」
「えぇと、今が夕方の5時ですから1時ごろだったと思います」
「幾らなんでも遅いわ!! ノエル、アリサさんの所と恭也の所に電話をして聞いてみて」
すずかの帰りが遅いことを心配して行きそうな所に電話をするよう指示を出す忍。
電話を終えたノエルの報告を聞いた忍はソファに腰掛けてため息をついた。
「猟奇殺人事件に巻き込まれていなければいいのだけど……」
忍の予感は当たっているのだ。
猟奇殺人事件の犯人……吸血鬼に捕らえられている。
忍の指示で情報を収集するノエルとファリン。
だけどこれっと言う情報は得られない。
「少し休みになられたら如何ですか?」
「すずかが心配なのに眠れるわけ無いでしょ」
「はわわわっ」
フラフラしながら情報を収集するファリン。
「ファリン、少し休め!!」
「私ならまだ平気です」
「足がフラフラしているではないか!?」
「情報収集は私とノエル、さつきさんでやるから少し休みなさい!!」
忍に休息をとれと言われるファリン。
「では、少し休んできます」
そう言って自分の寝室にフラフラしながら帰っていった。
「何か飲み物を淹れてきましょうか?」
「お願い!!」
ノエルは珈琲を淹れるため作業を中断させた。
「さつきさん、すずかの居場所は?」
「使い魔さん達に廃屋などを流させているんですが……」
さつきは、混沌を放ってすずかの居場所を探しているようだ。
「犯人が吸血鬼さんなら吸血鬼の城に囚われていると思うんです。すずかちゃんの気配が判れば城の位置も判るんですけど」
「吸血鬼の城がわかったら如何するのです」
「見つかったら葬るまでです」
さつきは吸血鬼を葬るつもりのようだ。
「もしも何か在った場合、すずかちゃんに血を飲ませても構いませんか?」
すずかは、忍に確認をとる。
「何かあった場合はやむ得ませんね。その時の判断はさつきさんにお任せします」
さつきは、忍から対処の許可を得た。
「明日、この町で事件を起こしている吸血鬼を退治ます」
「珈琲を淹れてまいりました」
珈琲を淹れてきたノエルがテーブルにカップと珈琲の入ったポットを置いた。
一夜明けた翌朝……
「はわわすみません」
ファリンが起きてきた。
「すずかちゃんの居場所は分かったんですか?」
「判ったのだけど……」
「我々では簡単に手が出せんのだ」
「すずかは、事件を起こしている吸血鬼に捕らえられているの。さつきさんが見つけてくれたの」
実際には、さつきが放った使い魔が見つけたのだ。
『おはようございます。今朝のニュースをお伝えします』
テレビから朝のニュースが流れ始める。
『海鳴市と周辺で発生中の猟奇殺人事件の犯人に繋がる情報は今まで得られておりません』
トップニュースは、猟奇殺人事件の続報だ。
『昨夜から今朝にかけて新たに犠牲者が出た模様です。発見された遺体からは血液が無くなっており、犯人が被害者から血液を抜き取ったと見られます』
映像が事件現場のものに変わる。
映像は警察による規制の為、遠くからの物だった。
『現場は警察による規制線が張られており之より近づくことが出来ません。現在鑑識作業が行われている物と思われます』
「犯人がわかっているのに何故、警察に情報を提供しないのですか?」
「警察に言った所で犠牲者を増やすだけよ。この件だけは、私たち夜の一族でも手が出せないの」
得体の知れない相手に手が出せないと言う忍。
「既にさつきさんに吸血鬼の処理をお願いしました」
「お願いされたからには、すずかちゃんを救出して吸血鬼を倒します」
「少しお休みをとられたら如何ですか?」
「平気です。私、吸血鬼の真祖ですから」
さつきは、吸血鬼の真祖なのだ。
テレサの城
「セバスチャン。昨夜の成果は?」
「はい。襲った人間の数は100人で死者にできたのはわずかに5人です」
「少なすぎる!! わらわは、この世界の王となる器だぞ。其れなのに一向に配下が増えないのは何故だ!?」
テレサは、配下が増えない事に苛立つ。
「わらわは、吸血鬼の王なのだぞ!!」
テレサの怒りは収まらない。
「姫様、あまりお怒りになられますと気づかれますぞ」
「構わぬ!! 気づかれた所でわらわの王国作りの邪魔を出来る者等おりはせぬ」
テレサは、本物の吸血鬼の王族が直ぐ近くに居る事に気づいていない。
「昨日、攫った小娘の様子は如何だ!?」
「牢の中に入れたままの状態です」
「小娘の腹を強く殴りすぎて殺したのではあるまいな?」
「強く殴ったので内臓を潰してしまったかもしれません」
「かまうものか!! 人質としての用が済めばどのみち殺すのだからな……」
用が済めばすずかを殺すようだ。
月村邸
月村邸では、さつきがテレサと戦う準備をしていた。
「空想具現化は、使わなくてすむかな?」
さつきは、空想具現化を使いたくないようだ。
「すずかちゃんが死にかけて場合には力を割かないといけないから……」
パワー配分を考える。
「死者相手に力を使わされたんじゃ意味ないよね」
死者の数を推測してパワー配分を決めていく。
なのはの部屋
「なのは、何か在ったの? 昨日の夜から悩んでいる顔をしているけど」
「あのね。すずかちゃんが吸血鬼に攫われちゃったの」
「若しかしてなのは、一人で乗り込む気なの」
「うん」
「駄目だよ、なのは!! もし一人で乗り込んだら完全に殺されるよ」
「其れでもすずかちゃんを助けないと……」
「今度はお腹を殴られて血を吐くだけじゃすまないかもしれないんだよ」
なのはの脳裏利に自分がお腹を何度も殴られて血を吐いて苦しい思いをした記憶が蘇る。
「もう、お腹を殴られて苦しい思いをするのはいや」
「だったらさつきさんからの連絡を待つんだ!!」
「でも、私の携帯番号を教えてないよ」
「えっ!?」
ユーノも此処でなのはが携帯番号を教えて居ないことに気づいた。
「でもでも、如何しよう……」
「さつきさんは、すずかちゃんの家に滞在しているんでしょ。直接電話をすればいいじゃないか」
「あっそうか!!」
なのはは、ポンと手を叩いて電話をかけた。
「なのは、吸血鬼の居場所は分かったの?」
「うん。海鳴市中心街の廃ビルにいるって」
「今日は、ジュエルシードを取り返して封印するんだ!!」
「でもね、吸血鬼と戦っちゃ駄目って条件出された」
「其れで、条件を飲んだの?」
「飲まないとジュエルシードを封印できないでしょ」
「其れもそうだ」
「ユーノくん、吸血鬼さん何個ぐらい集めているのかな? ジュエルシードを……」
「直接聞けば判る事だけど、向こうには人質を取られている。人質を盾になのはが集めたジュエルシードを要求されるかもしれない」
人質を盾にジュエルシードを要求されるかもしれないというユーノ。
状況的には、なのはたちが圧倒的に不利なのだ。
相手は、すずかを盾にジュエルシードを寄越せといって脅せばいいのだ。
脅してジュエルシードを奪った後は殺すことが出来る。
「なのは、僕たちは受身側なんだ!! 攻め手に回るにすずかちゃんを助け出す必要があるんだ」
「私、封印魔法しか使えないよ」
「そうだった」
なのはは、攻撃魔法はまだ使えない。
使えるといえばシールドと封印だけなのだ。
「なのは、今回だけはさつきさんに吸血鬼と戦ってもらうしかないよ」
「だよね。今から攻撃魔法を覚える時間ないもんね」
既に午後の三時を回っている。
此処で、無駄な魔力を使うわけにもいかないのだ。
ジュエルシードの封印にも魔力が要るのだ。
そして、時計は周り約束の時間となった。
さつきとの待ち合わせの場所へ向かうなのは。
「なのは、本当に大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
「一昨日、吸血鬼に殴られたお腹だよ」
「もう、痛みもないから大丈夫だよ」
「だったらいいんだけど」
「レイジングハート、お願い!!」
≪stand by ready. set up≫
なのはは、レイジングハートを起動させバリアジャケットを纏った。
「待たせたな!!」
「えっ!?」
突然した聞きなれない喋り方に固まるなのは。
「吸血鬼の城に攻め込む。ついて参れ」
王族の服を着たさつきが王族口調で言う。
さつきが発している空気は、なのはが知っているさつきとかけ離れていた。
「空を飛べぬのであろう!? 我にしっかり掴まるがよい」
なのはに命じるさつき。
「吸血鬼の城に友を助けに行くのではないのか?」
「はっはい」
「ならば掴まるがよい。飛ばすから落ちるではないぞ!!」
なのはは、さつきに確りと掴んだ。
「では、行くぞ!!」
さつきは足に力を込めると一気に宙へ飛び上がった。
飛び上がったさつきは、テレサの城を目指す。
さつきの目からは優しさが消えていた。
次回予告
なのは「吸血鬼の城に乗り込んだ私とユーノくんとさつきさん」
なのは「吸血鬼の城には攫われたすずかちゃんが……」
ユーノ「なのはの友達を人質に脅迫してくる吸血鬼」
なのは「すずかちゃんが、吸血鬼にお腹を一杯殴られて血を吐いちゃったよ」
さつき「心配要らぬ。わらわが助けてやる」
なのは「でも、すずかちゃんの様子が……」
ユーノ「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』」
なのは「第5話『吸血姫月村すずか誕生なの!?』」
すずかが捕まったな
美姫 「幸い他の人たちとは違って血は吸われなかったけれど」
奪還するべくなのはとさつきが動き出したけれど、無事に助けだせるかな。
美姫 「どうなるかしらね。それじゃあ、この辺で」
ではでは。