第六話「ライバル!?
もう一人の魔法使いなの!」
月村邸
「ファリン!? すずかの様子は?」
「まだお目覚めになりません」
すずかは、まだ目が覚めないようだ。
「学校があるのに如何すればいいでしょうか?」
対応に苦慮するファリン。
「もう一度様子を見に行ってきます」
もう一度、すずかの様子を見に行くファリン。
すずかの部屋から聞こえるファリンの声。
「す、すずかちゃん!! 其の目、如何したんですか!?」
ファリンの声が普通じゃない。
何時ものドジとは違うようだ。
忍とノエルも様子を見に行く。
「如何した、ファリン!? 」
ファリンは、腰を抜かしていた。
そして見たのは、目が真っ赤なすずかだった。
「すずか、体は大丈夫!?」
忍が心配そうに聞く。
「心配しなくても大丈夫だよ」
「其の目は、如何かしないとね」
今のすずかの目は赤いのだ。
このまま学校に行かせるわけにも行かない。
「詳しい話をさつきさんから聞かないといけないかな?」
さつきは、自室で眠っている。
「では、起こしに行ってまいりましょう」
さつきの部屋のドアがノックされる。
「さつき様、朝です」
「もう、朝なんだ」
「さつき様、食堂の方へお越しください」
さつきは、眠い目を擦って服を着替える。
「さつきさん。すずかの目が赤い事についてお話していただけますか?」
「話してもいいですけど、時間がかかりますよ」
「構いません」
さつきが昨夜の出来事を話す。
悲惨な内容にファリンは目を回し気絶してしまった。
「貴女が、すずかに血を飲ませた事までわかりました。私も夜の一族の力を使うときは目が赤くなります。何故、すずかの目が赤いままなのですか?」
「私の血と相性がよかったんだと思います。その気になれば自由に切り替えぐらい出来ると思いますよ」
瞳の色を切り替えることができる筈というさつき。
「すずかちゃん。元の瞳の色に戻れと念じてみて」
アドバイスを送るさつき。
さつきのアドバイスを受け実行してみるすずか。
するとすずかの瞳の色が彼女本来の色に戻った。
「自分の意思で自由に切り替えられるように特訓してね」
「すずかは、完全に吸血鬼に成ってしまったの? 太陽の日の光の下を歩けるんですか?」
「問題なく歩けます。唯、体育のときは力をちゃんとセーブしてね」
すずかには大きな問題があった。
もともと運動神経がいいのだ。
そんな彼女が吸血鬼の力を使えば死人でかねない。
そして数日後の体育の時間……
私立聖祥大附属小学校
「やべ。月村にボールが渡ったぞ!!」
男の子が言う。
「気をつけないと、さっきの女子みたいにお腹抱えて苦しむことになるぞ」
すずかのボールをとり損ねた女子がお腹にボールを受けて苦しんでいるらしい。
(之くらいなら大丈夫だよね)
すずかは、力を可也抑えてボールを投げた。
ボールは、男子の一人に向かっている。
標的にされた男子がボールをキャッチしようとする。
男子は、ボールをキャッチしきれなかった。
ドボッという音共にすずかが投げたボールが男子のお腹にヒットした。
お腹にボールを受けた男子は大きく目を見開いて地面に倒れた。
お腹にボールがヒットした男子は起き上がれない。
両手でお腹を抱えて苦しんでいる。
(手加減したのに何故!?)
ボールをお腹に受けた男子は苦しみながらコートの外に出ると地面に座って休んだ。
「また月村にボールが……」
今度は、更に力を抜いて投げた。
其れでも痛いことには変わりない。
ボールの当たった所を押さえてコートの外へ出て行く。
「すずか。今日の体育凄くなかった?」
「そう!?」
「あんたのボールが当たった女の子の一人、お腹が真っ赤になっていたわよ」
アリサがすずかに言う。
「攫われたときに何か打たれたんじゃないの?」
「何も打たれていないよ」
すずかは、何も打たれてはいない。
さつきの血を飲まされたけど……。
「なのは、あんたもすずかに聞きなさいよ」
なのはにも聞けというアリサ。
「酷いよすずかちゃん。私の手、まだ真っ赤なんだよ」
なのはは、真っ赤な手を見せて言う。
「そう言えば、例の殺人事件なりを潜めたって言っていたよね」
アレから殺人事件は起きていない。
テレビも通常の編成に戻りつつある。
「何かサイレンの音が聞こえない?」
すずかがアリサとなのはに聞いた。
「聞こえないよ」
「うん。聞こえない」
「すずか、耳がどうかしたんじゃない!?」
「私の耳にははっきりと聞こえるよ」
すずかの耳にはハッキリと聞こえているようだ。
「あっ」
「如何したのよ、なのは!!」
「私にも聞こえた」
「なのはまでおかしなことを言わない」
そしてアリサも……。
「確かにサイレンの音ね」
「一体何処で鳴っているんだろう?」
月村邸
『こんばんは、夕方のニュースをお伝えします』
夕方のニュースが始まった。
『本日午後、海鳴市の廃ビルから多数の遺体と血痕が発見されました。ビルの管理会社の社員が取り壊して建て直す為にビル内の確認をしているさいに発見したとのことです』
多数の遺体発見と字幕が打たれている。
『尚、現場ビルは規制されていて近づくことが出来ません』
海鳴市ビルの屋上
金の髪の少女が黒いマントを着け右手に杖のような物を持って立っている。
「ロストロギアは、此の付近にあるんだね」
少女の近くにオレンジの毛をした狼のような生き物が座っている。
「形態は青い宝石。一般呼称はジュエルシード」
「ワオォォォォン!!」
狼が遠吠えをあげる。
月村邸
「恭也様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」
ノエルが出迎える。
「お招きに預かったよ」
「おじゃましまぁす」
「どうぞ。こちらです」
ノエルが招き入れる。
通された部屋では、すずかとアリサ、忍とさつきがお茶をたしなんでいた。
一つの椅子には猫が気持ちよさそうに眠っている。
「なのはちゃん、恭也さん!!」
「すずかちゃん!!」
「きゅっ」
ユーノも挨拶をした。
「なのはちゃん、いらっしゃい」
「恭也、いらっしゃい」
忍が恭也に近寄る。
少し見つめあう二人。
「お茶をご用意いたしましょう……何が宜しいですか?」
「まかせるよ」
「なのはお嬢様は?」
「私もおまかせします」
「かしこまりました」
一呼吸置いて言う。
「ファリン!?」
「はい、了解です。おねえさま」
何故か敬礼をするファリン。
「じゃあ、わたしと恭也は部屋に居るから」
「はい。其方にお持ちします」
椅子に寝ている猫をどかして座るなのは。
「おはよう」
「うん、おはよう……」
「相変わらずすずかのお姉ちゃんとなのはのお兄ちゃんはラブラブだよねぇ」
なのはの手荷物のバックから出てくるユーノ。
ユーノは、上を見上げていたが自分を狙っている物の気配に気づく。
「そう言えば、今日は誘ってくれてありがとうね」
「こっちこそ来てくれてありがとうね」
すずかは、さつきからレクチャーを受けている為か普段どおりに振舞っている。
「今日は、元気そうね」
「なのはちゃん、最近元気がなかったから……」
アリサは、カップを手にお茶を飲む。
「『もし何か心配事がるのなら話してくれないかな?』って、二人で話していたんだけど」
「すずかちゃん」
アリサの方にも向いて言う。
「アリサちゃん!!」
その時、ユーノの悲鳴を聞いて目を丸くするなのは。
必死に逃げ回るユーノを追い回す一匹の猫。
「あわわっ、ユーノくん!?」
「アイン、駄目だよ」
ユーノを追いかけている猫の名はアインというらしい。
其処へタイミング悪くファリンがやってきた。
「はぁい。おまたせしました。イチゴミルクティーとクリームチーズクッキーでぇす」
ファリンの足元で追いかけっこをするユーノとアイン。
足元で騒がれバランスを崩し目を回すファリン。
「ファリン、危ない!!」
倒れそうなファリンとお盆を支えるなのはとすずか。
「はわわっ。すずかちゃん、なのはちゃん、ごめんなさい」
すずか、なのは、アリサの三人は、中庭でお茶会の続きをしていた。
中庭にもたくさん猫が居る。
「しかし、相変わらずすずか家は猫天国よね」
「うふふふっ」
「でも、子猫たちかわいいよね」
「うん。でも、里親が決まっている子がいるから、お別れもしなければならないんだけどね」
「そっかぁ。ちょっとさびしいね」
「でも、子猫たちが大きくなっていってくれるのは、うれしいよ」
「そうだね」
一匹の猫が何かに興味を持った。
なのはは、ジュエルシードの発動を感じ取った。
其の気配は、吸血鬼と成ったすずかも感じ取っていた。
(なのは!!)
(うん。直ぐ近くだ)
(如何する!?)
念話でなのはに相談するユーノ。
(えぇっと)
抜け出す方法を考えるなのは。
(そうだ!!)
ユーノは、なのはが動けうる口実を作る為、逃げた。
「ユーノくん?」
なのはは少し間をおいて演技をする。
「あらら?」
「ユーノどうかしたの!?」
「何か見つけてのかも……一寸、探してくるね」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫!! 直ぐ戻ってくるから待っててね」
そう言うとなのははユーノを探しに言った。
(なのはちゃん、無理しないでね)
何故かなのはに念話を送るすずか。
青い石に興味を持った猫が触れた瞬間……。
「発動した」
「此処だと人目が」
ユーノがなのはに振り返って言う。
「結界を作らなきゃ」
「結界!?」
「最初に会ったときと同じ空間。魔法効果が生じている空間と通常空間との時間進行をずらすの。僕が少しは得意な魔法……」
再び正面を向くユーノ。
「あまり広い空間は切り取れないけど、此の家の付近くらいなら何とか……」
ユーノは結界魔法で空間を切り取る。
結界が張られた直後、巨大化した猫が鳴く。
巨大化した猫を見てなのはとユーノは固まる。
巨大化した猫が地響きを立てて歩く。
「あ、あ、あれは!?」
「た、多分」
ニャオンと鳴く猫。
「あの猫の大きくなりたいという思いが正しく叶えられたんだとおもう」
「そ、そっかぁ」
「だけど、このままじゃ危険だから元に戻さないと」
「そうだね。流石にあのサイズだとすずかちゃんも困っちゃうだろうし……」
再びなのはたちの方を向いて鳴く猫。
「襲ってくる様子はなさそうだし、サッサッと封印を……」
なのはは、レイジングハート取り出す。
「じゃあ、レイジングハート」
なのはがレイジングハートを起動させようとした時。
金色の槍が猫に直撃した。
攻撃を受けた猫が悲鳴を上げる。
なのはが、攻撃が来た方向を見た。
なのはの見た先に攻撃した人物はいた。
「バルディッシュ、フォトンランサー電撃!!」
≪Photon lancer Full auto fire.≫
金の髪の少女がバルディッシュを構え猫に向ける。
無数の電撃が猫を襲う。
「なっ」
愕きの声を上げるユーノ。
「魔法の光……そんな」
「レイジングハート、おねがい」
≪Stanby ready Set up.≫
なのはは、レイジングハートに口付けをする。
なのはは、レイジングハートを起動させ私立聖祥大附属小学校の制服に似たバリアジャケットを身に着けた。
変身が終わると猫の方へ駆け寄るなのは。
≪Flier fin.≫
両足の靴の左右に羽を生やして空へ飛び猫の上空へ向かう。。
猫の上空で振り向く。
≪Wide
area Protection.≫
前面にシールドのような物を張って攻撃を防ぐ。
「魔導師」
少女は、猫の足へ攻撃を変えた。
猫の上にいたなのははバランスを崩す。
「ふぁ、ふぁぁぁっ」
体制を立て直して着地するなのは。
「同系の魔導師……ロストロギアの探索者か!?」
言い当てられドキっとするなのは。
「間違いない。僕と同じ世界の住人……そして此の娘、ジュエルシードの正体を……」
少女は、なのはの持つ杖を見る。
「私と同系のインテリジェントデバイス」
「バル、ディッシュ!?」
「ロストロギア、ジュエルシード」
≪Scythe
form Setup.≫
バルディッシュが死神の釜のような形に変わる。
「申し訳ないけど、頂いていきます」
なのはへ襲い掛かる金の髪の少女。
≪Evasion. Flier fin.≫
レイジングハートが飛行魔法を発動させ少女の攻撃をかわす。
≪Arc Saber.≫
死神の釜の刃の部分を飛ばす。
≪Protection.≫
レイジングハートがシールドを張って飛んでくる金の刃を防ぐ。
その時、金の髪の少女は、目の前にいてバルディッシュを振り下ろしてきた。
振り下ろしてきたバルディッシュをレイジングハートで受け止めるなのは。
「なんで!? なんで、急にこんな……」
「答えても、多分意味がない!!」
お互いに間合いを取る二人。
なのはは地上に、金の少女は木の上に着地した。
≪Device form.≫
バルディッシュは形態を変える。
≪Shooting mode.≫
レイジングハートも形態を変えた。
≪Divine buster Stand by.≫
なのはは、杖を金の髪の少女へ向ける。
≪Photon lancer Get set.≫
金の髪の少女もなのはへ杖を向ける。
きっと私と同い年くらい……綺麗な瞳と綺麗な髪……だけど、この娘……。
猫の声になのはの注意が其方へ向く。
バルディッシュの先に光の玉が出来、少女が呟く。
「ごめんね」
言葉との言葉と共になのはへと放たれた。
放たれた魔法によってなのはは、上空へと吹き飛ばされた。
此のままでは、なのはは地面に叩きつけられてしまう。
「なのは!!」
必死で駆けるユーノ。
そんな、ユーノを追い越す影。
追い越した影は、上空へジャンプをしなのはをキャッチした。
其の人影には見覚えがあった。
「さ、さつきさん……」
地面に叩きつけられる筈だったなのはを助けたのはさつきだった。
なのはを抱えて着地すると地面に寝かせた。
其の間になのはを倒した少女は猫の元にいた。
≪Sealing form. Set
up.≫
再び杖の形が変わるバルディッシュ。
「捕獲!!」
杖の先からは稲妻みたいな物がいろんな方向に出ている。
少女は、其の杖を猫へ向け振り下ろす。
杖から放たれた雷によって猫が感電し悲鳴を上げる。
感電した猫から青い結晶が出てきた。
青い結晶に数字が浮かんだ。
如何やらシリアルナンバーのようだ。
≪Order.≫
「ロストロギア、ジュエルシード、シリアル]W……封印!!」
≪Yes sir.≫
バルディッシュが上空へ雷を放つ。
上空に暗雲がたちこめ無数の光の刃が出来る。
無数の光の刃が落ち、トドメと太い光の塊が落ちてきた。
少女は、封印したジュエルシードの元へ歩み寄る。
巨大化していた猫は元の大きさに戻っていた。
≪Captured.≫
バルディッシュがジュエルシードを取り込むと勢い欲排気を出した。
金の髪の少女は、なのはとさつきのほうを見た。
暫く見てきびすを返して去っていった。
さつきは、金の髪の少女が去るまで警戒を解かなかった。
完全に去ったと確認してなのはを抱え屋敷へ戻った。
屋敷に連れ帰ったなのはが目を覚ましたのは日が暮れる夕方の事だった。
なのはの、回りには心配したすずかやアリサ、忍と恭也、ノエルとファリン、さつきが居た。
なのはの部屋
「あの杖や衣装や魔法の使い方……多分、うんん。間違いなく僕と同じの界の住人だ!!」
「うん。ジュエルシード集めをしていると、あの娘とまたぶつかっちゃうのかな?」
一方的な敗北に自信をなくしている様に見える。
「不思議なほどに怖くはなくて、だけど、なんだか悲しいような、そんな複雑な気持ちで……」
金の髪の少女のアジト
金の髪の少女に狼が擦り寄る。
「少し邪魔が入ったけど、大丈夫だったよ」
金の髪の少女が狼の頭を撫でる。
「ジュエルシード、シリアル]W……幾つかは、あの娘が持っているのかな!?」
狼が心配そうに見上げる。
「大丈夫だよ、迷わないから」
少女は写真たての写真を見る。
「待っててかあさん。直ぐに帰ります」
吸血鬼が倒され平穏を取り戻した海鳴市の夜は深けていく。
次回予告
なのは「学生さんも勤め人さんも時にはゆっくり休養が必要」
なのは「と、言う事でやって来ました地元海鳴温泉!!」
なのは「そんなくつろぎの一時、邪魔をするのは一体誰!?」
なのは「そして漆黒の魔法少女の目的と真意は?」
なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫の奏でる物語〜』第7話『ここは湯のまち、海鳴温泉なの!』」
すずかの方は特に大きな問題はないみたいで良かった。
美姫 「ちょっと慣れるまで力の加減とかが難しそうだけれどね」
で、平和になったと思ったのも束の間か。
美姫 「まあ元々、なのはたちの目的はこっちだからね」
ジュエルシードを巡る対立が。さつきはどう動くんだろうか。
美姫 「それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。