第七話「ここは湯のまち、海鳴温泉なの!」






 
 さて、日本国内は全国的に連休です。
 喫茶翠屋は年中無休ですが、連休のときなどはお店を店員さん達にお任せしてちょっとした家族旅行に出かけたりもします。
 今回は、なのはのお友達一同とお兄ちゃんと其の彼女の忍さん。
 そして月村さんちのメイドさん達も一緒です。
 最後にすずかちゃんちに泊まっているさつきさんもです。
 
 近場で二泊、のんびりと温泉に浸かって日ごろの疲れを癒そうという高町家の家族旅行としては何時ものプランです。


 一同は車、二台に分乗して目的地を目指す。
(なのは!! なのは、旅行中くらいはユックリしなきゃ駄目なんだからね)
(わかっているよ。大丈夫)
 なのはは、金の髪の少女の事を思い出す。



 旅館山の宿
 アリサとすずかは、池に居る大きな鯉におどろく。
「うん〜ん」
 なのはは、伸びをする。


 何故か脱衣場に居るユーノ。
 ユーノの顔は真っ赤で全身から玉のような汗が出ている。 
「ユーノくん、温泉に入った事ある!?」
「あ、そ、その……公衆浴場なら入った事あるけど」
「えへへへぇ。温泉はいいよ」
 ユーノは、なのはの方へ振り向く。
「本当?」
 そしてユーノは女性陣の裸を見て鼻血噴射寸前だ。
「があぁぁぁっ!!」
 ユーノは見てしまった。
 何も身に着けていないなのはの裸をモロに見てしまった。
(いいじゃない。一緒に入ろうよ)
 ユーノは、死んでいる。
 女性の裸に対する免疫がない様だ。


「はぁぁっ。ファンタスッティック!!」
「すごい。広い!!」
 すずかとアリサは広い湯船にはしゃぐ。
「すごいね」 
「ほんとうです」

 ユーノは、なのはに掴って女湯につれて来られた。
「お姉ちゃん、背中流してあげるね」
「ありがとう、すずか」
「じゃあ私も……」
 なのはが美由紀に言う。
「ありがとう」
 その時ユーノがアリサに奪い取られた。
 ユーノは、逃げようと暴れる。
「あんたは、私が洗ってあげるね」
 ユーノは、まだあがく。
「心配ないわよ。わたし、洗うのうまいんだから」
 なのはは、ユーノを心配しつつ美由紀の背中かを洗う。


「どうぞ」
 ノエルが恭也にお茶を淹れる。
「ありがとう」
 ノエルに礼を言う恭也。
「しかし、ノエルも今日は仕事じゃないんだからのんびりしていいんだぞ」
「はぁい!! のんびりさせて頂いていますよ!!」


「じゃあ、お姉ちゃん、忍さんお先でぇす」
 なのはとすずかが湯殿から出て行く。
 二人の顔はあかい。
「はぁい」
 まだ、忍と美由紀は湯船に浸かっている。
 しかし顔は赤く火照っている。
 ユーノは、美由紀の肩で死んでいるように見える。
「なのはちゃんたちと旅館の中を探検してくるね」
「あとでね」
 その時、アリサに掴るユーノ。  
「さぁ、いくわよユーノ」
 仲良し三人組は、浴衣姿だ。

「はぁぁいっ!! おちびちゃんたち」
 額に宝石のような物がついている女性が声をかけてきた。
「君かね。うちの子をアレしてくれちゃっているのは?」
 女性はなのはの前へ来る。
「えっ、え?」
「あんま賢そうでも強そうでもないし……ただのカキんちょに見えるんだけどな」
 なのはとの間に入って睨むアリサ。
「なのは、お知り合い!?」
 なのはに知り合いかと聞くアリサ。
「ううんうん」
 否定するなのは。
「この娘、貴女を知らないそうですけど、どちら様ですか?」
 女性の睨むに警戒するユーノ。
「あぁぁぁぁぁはっはっはっはっはっ!!」
 突然笑い出す女性。
「あはっはっはっ、ごめんごめん。人違いだったかな?」
 左手で頭を掻く女性。
「知っている子によく似ていたからさ……」
「なんだ、人違いだったんですか」
 なのはは、ため息をつく。
「いいお湯でした」
 其処へ湯上りのさつきがやってきた。
「あははっ可愛いねぇ」
「はい」
「よしよしっ、なでなでぇ」
 女は、ユーノを撫でる。
(今の所は挨拶だけどね)
 女は、なのはとユーノを睨んでいる。
(忠告しとくよ、子供はいい子にしてお家で遊んでなさいね。おいたが過ぎるとガブっといくわよ。目の赤いのと紫の髪のもね)
 女は、さつきとすずかが魔力を持っている事に気づいたようだ。
「もう一風呂、行ってこようと……」
 女は、温泉に入りにいった。
 アリサは、ムスッとした顔をしている。
 さっきの女が気に食わないようだ。
(なのは!!)
(うん)
「なぁに!? アレ!!」
 何故か、アリサに牙が生えている。 
「ひるっまから酔っ払ってるんじゃないの!!」
「まあまあ寛ぎ空間なんだし……」
 さつきは、視線をさっきの女が向かった温泉へ向けたっまだ。
(あのヒトを監視してきて)
 さつきは、念じて混沌を放った。
(ユーノくん!!)
(さつきさんが使い魔を放ったんだろう)
(ねぇ、なのはちゃん!! 何を相談しているの?)
(えっ)
 ユーノの顔に焦りの色が浮かぶ。
「ユーノ、顔色が悪いわよ。湯当たりでもした?」
 ユーノは、アリサたちに長時間温泉に囚われていたのだ。


(あぁぁっ、もしもしフェイト!? こちらアルフ!!)
 この女のは、アルフと言う様だ。


 金の髪の少女は、バルディッシュを持ったまま木の上で仮眠をとっている。
((一寸見てきたよ。例の白い子……))
(そう。如何だった?)


(う〜ん、如何ってことないね)
 なのはを雑魚と言うアルフ。
(フェイトの敵じゃないよ)
((そう? 次のジュエルシードの位置は大分特定出来てきた。今夜には捕獲できると思うよ))
(う〜ん、ナイスだよフェイト!! 流石は、私のご主人様)


(そう。ありがとうアルフ)
((あの白い子と一緒にいたヤツの中に一人ヤバイヤツがいるんだけど如何する!?))
(どんなヒトだった?)
((髪を両サイドで束ねていて目が赤い女だったよ))
(その人もジュエルシードの探索者かな?)
((フェイト、もし出会っても戦っちゃ駄目だよ))
(如何して!? 探索者なら排除した方が……)
((だから、ヤバイんだって。あの女に殺気を向けられただけで動けなくなったんだから))
(アルフも出会わないよう気をつけて)
((努力するよ))
(じゃあ、夜におた落ち合おう)
((はぁい))


「はぁぁあっ、くつろぎ、くつろぎ」
 アルフは、羽を伸ばす。
 アルフから狼の耳のような物がのぞく。
「おっとと」
 慌てて耳を隠す。


 そして夜……。
 皆は、それぞれの時間を過ごしていた。
 仲良し三人組は布団の中で、大人たちは乾杯をしている。

「あらファリンちゃん!! もう子供たち寝ちゃった!?」
 桃子がファリンに聞く。
「はい桃子さん。もうぐっすり」
 ふすまをそっと開け様子を見る。
 三人はぐっすり眠っていた。
 寝ていることを確認するとふすまを閉めた。
「ありがとうねファリンちゃん」
「いえいえ、好きでやっていることですから……」


(ユーノくん、起きている!?) 
 なのはが、ユーノに念話で聞く。
(うん)
 なのはは、布団から起き上がる。
(昼間の人、此間の子の関係者かな?)
(多分ね)
(また、此間みたいなことになっちゃうのかな?)
(多分……)
 ユーノの雰囲気が重くなる。
(なのは!! 僕ねあれから考えたんだけど、やっぱり此処からは僕が……)
(ストップ!!)
 ユーノの話を止めるなのは。
(其処から先言ったら怒るよ!! 『此処からは僕一人がやるよ。これ以上なのはを巻き込めないから……』とか言うつもりだったでしょう!?)
 如何やら図星だったようだ。
(ジュエルシード集め、最初はユーノくんのお手伝いだったけど今はもう違う。わたしが自分でやりたいと思ってやっていることだから……)
 なのはは、ユーノを抱き抱える。


 フェイトとほぼ同時になのはもジュエルシードの発動に気づいた。

 ジュエルシードは、川に落ちて発動していた。
「ビンゴ!! 見つけたよフェイト」


 なのはも現場に急行する。
(なのは)
「急ごうユーノくん」
「ちんたら走っていたら先を越されるよ」
「さつきさん」
「変身するのなら早くして」
「レイジングハートお願い」
≪stand by ready. set up.≫
 なのはは一瞬で変身を終える。


「すごいね。こりゃぁ」
 フェイトとアルフは現場で合流していた。
「之が、ロストロギアのパワーってヤツ!?」
「随分不完全で不安定な状態だけど……」
「あんたのお母さん何であんな物、欲しがるんだろうね!?」
「さぁ!? わからないけど、理由は関係ないよ。かあさんが欲しがっているんだから、手に入れないと」
 フェイトが戦闘態勢に切り替える。
「バルディッシュ、起きて!!」
≪yes, sir.≫
 バルディッシュが待機状態から目覚める。
 バルディッシュが待機状態から目覚め杖の形に変わる。
≪sealing form. set up.≫

「封印するよ!! アルフ、サポートして」
「へいへいっ」

「アレは……」
「先を越されちゃったみたいね」
 さつきが言う。

 既にフェイトはジュエルシードを封印し終えている。
「二つ目」
 其処へなのはとさつきがやって来た。
「あ〜ら、あらあらあら〜」
「はあっ」
「子供はいい子でと言わなかったけか?」
「其れを、ジュエルシードを如何する気だ!? 其れは危険な物なんだ!!」
「さあね、答える理由が見当たらないよ。其れにわたし親切で言ったよね。いい子でないとガブッといくよって」
 アルフが敵意をむき出しにしてくる。

「あいつ、あの子の使い魔だ!!」
「使い魔!?」
「そうさ。わたしは此の子に作ってもらった魔法生命。製作者の魔力で生きるかわり、命と力の全てをかけて守ってあげるんだ」
 アルフがフェイトに言う。
「先に帰っていて。直ぐに追いつくから」
「無茶しないでね」
「オッケイ」
 アルフがなのはに襲い掛かる。

「簡単に帰すと思うか!?」
 さつきにスイッチが入り王族口調にかわる。
 なのはを襲おうとするアルフが急ブレーキをかける。
「アルフ、如何したの!?」
「フェイト、あの女に手を出しちゃ駄目だよ」
「アルフらしくないよ」
「良くわからないんだけど、アイツからはやばい感じがするんだ」
 アルフの狼の本能がさつきが危険だと告げてくる。
「はやくあの娘の元へ行くがよい」
 フェイトの所へ行けというさつき。
「行かせると思う?」
「其の方には、我の相手をしてもらおう」
 さつきはアルフの首を掴むとひとっ飛びで別の場所へ移動していった。
「アルフが手も足も出せないほどの戦闘能力。いい使い魔だ」
「さつきさんは、私の使い魔じゃない。吸血鬼の王族と言っていたけど私のお友達」
 なのはとフェイトは、川の上の橋に立っている。
「で、如何するの!?」
「話し合いで何とかできるってことない?」
「わたしはロストロギアの欠片を……ジュエルシードを集めないといけない。そして貴女も同じ目的なら、私たちはジュエルシードを賭けて戦う敵同士ということになる」
「だから、そう言うことを簡単に決め付けない為に話し合いって必要なんだと思う」
 話し合いを求めるなのは。
「話し合うだけじゃ……言葉だけじゃきっと何も変わらない!!」
 話し合いを断るフェイト。
「つたわらない!!」
 フェイトは一気になのはの間合いに入り込む。
≪flier fin.≫
 飛行魔法でフェイトの攻撃をかわす。
 その後をフェイトも追う。
「でも、だからって……」
「賭けて!! それぞれのジュエルシードを一つずつ」
 賭けをしようというフェイト。
≪photon lancer. get set.≫
 フォトンランサーをセットするバルディッシュ。
「あっ」
 なのはを追い越したフェイトが上空にまわる。

 別の場所では、さつきがアルフの相手をしていた。
 相手というより遊んでいた。
「そんな攻撃では当たらぬぞ」
 アルフの息はあがっている。
「如何した!? もう終わりか?」
「はぁはぁはぁっ」
「之では遊ぶ事も出来ぬではないか」
 遊ぶ事が出来ないと言うさつき。
「ちょろちょろ逃げんじゃないよ」
「逃げているのではない」
「ごちゃごちゃ五月蝿い!!」
「我がその気になれば、その方を倒すことなど訳はない」
「出来る物ならやってみな」
「その身でもって後悔するがよい」
 さつきがアルフに向けて殺気を放つ。
(はやく間合いを取らないとられれる)
 さつきから発せられる殺気に慌てて間合いを取るアルフ。
「我の殺気を感じ取って間合いを取ったか!?」
 アルフは策を練る。
「その方の自由を奪わせてもらう」
 アルフの自由を奪うと言うさつき。
「星の息吹よ!!」
「しまった」
 アルフは、慌てて逃げようとする。
 さつきが空想具現化で出した鎖に拘束されてしまった。
「くっ。バインドか!? こんなバインドぐらい……」
 アルフは、鎖を引きちぎろうと試みる。
「その方にその鎖を引きちぎる事は出来ぬ。決着がつくまで大人しくしていてもらおう」
 引きちぎれないとわかると観念して大人しくなる。



≪thunder smasher.≫
 フェイトは、次の魔法を放つ。 
≪divine buster.≫
 なのはは、デバインバスターで応戦する。
「レイジングハート、お願い!!」
≪all right.≫
 なのはのお願いに答えるレイジングハート。

≪scythe slash.≫
 フェイトは高速で死神の釜のような物でなのはに迫り首筋に刃を突きつけた。
 勝負ありだ。
≪put out.≫
 レイジングハートがジュエルシードを吐き出した。
「レイジングハート、何を!?」
 だが、レイジングハートは答えない。
「きっと主人思いのいいこなんだ」
 フェイトは、レイジングハートが吐き出したジュエルシードを回収する。

「帰ろう、アルフ!!」
「流石、私のご主人様!! じゃあね、おちびちゃん」
 なのはにおちびチャンというアルフ。
「待って!!」
「出来るなら、私たちの前に現れないで!! もし、次ぎ逢ったら今度は止められないかもしれない」
「名前……貴女の名前は!?」
 なのはが名前を聞く。
「……フェイト……。フェイト・テスタロッサ」
「その方ら、次は二人まとめて我が相手をしてやろう……その時は死ぬ覚悟で参れ」
 さつきが凄まじい殺気をフェイトとアルフに放った。

 フェイトとアルフは、目的を果たし夜の闇に消えていった。
 敗北に打ちのめされるなのはがボウっと立っていた。


 次回予告

 アリサ「なのはが何か隠し事をしている」

 すずか「仕方ないよ。友達でも言えない事くらいあるもの」

 ユーノ「明かされていく過去の出来事……そして再びめぐり合う二人の魔法少女の運命は?」

 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第8話『わかりあえない気持ちなの?』」


さつきが相手だとアルフでも無理みたいだな。
美姫 「みたいよね。次はさつきが相手するみたいな事を言っているけれど」
どうなんだろうか。
美姫 「二人掛りでもさつき相手では厳しそうな感じね」
だな。さて、それじゃあ、この辺で。
美姫 「それじゃーねー」



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