第八話「わかりあえない気持ちなの?」






 
 私立聖祥大附属小学校
「いい加減にしなさい!!」
 アリサがバーンと机を叩く。
 アリサは、何故か怒っている。
「此間からなに話ても上の空でボウっとして」
「ごめんねアリサちゃん」
「ごめんじゃない!! 私たちと話しているのそんなに退屈なら一人で幾らでもボウっとしていなさいよ!!」
 アリサはプイと他所を向く。
「行くわよすずか」
「あ、アリサちゃん」
 なのははボウっとしている様に見える。
「なのはちゃん!?」
「いいよすずかちゃん。今のはなのはが悪かったんだから」
「そんな事、ないと思うけど……アリサちゃんも言いすぎだよ。少し話してくるね」
「ごめんね」
 そう言ってすずかも教室から出て行った。
「怒らせちゃったな。ごめんねアリサちゃん」



「アリサちゃん。アリサちゃん!!」
 すずかがアリサを追いかける。
「アリサちゃん」
「何よ!?」
 不機嫌なアリサ。
「何で怒っているか、なんとなくわかるけど駄目だよ。あんまり怒っちゃ」
「だってムカツクわ!! 悩んでいるの見え見えじゃない。迷っているの、困っているの見え見えじゃない!!」
 アリサは、なのはの心情が見えているようだ。
「なのに何度聞いても何も教えてくれない」
「あっ」
「悩んでも迷ってもいないなんて嘘じゃん」
「どんなに仲良しな友達でも言えない事あるよ。なのはちゃんが秘密にしたいことだったら私たちは待ってあげることしか出来ないんじゃないかな?」
「だから、其れがムカツクの!! 少しは役に立ってあげたいの……」
 なのはの手助けをしたいと言うアリサ。
「何にも出来ないかもしれないけど、少なくても一緒に悩んであげられるじゃない」
 アリサの台詞を聞いて安心するすずか。
「やっぱり、アリサちゃんもなのはちゃんのことが好きなんだよね」
「そんなのあたりまえじゃないの」
 アリサの顔が赤い。
「アリサちゃんには私の秘密も知っていてもらいたいの」
「すずか、あんたも秘密している事があるというの?」
 すずかに問うアリサ。
 すずかは目を閉じて瞳の色を変える。
「アリサちゃん。此の瞳の色を見ても友達でいてくれる!?」
 すずかは、アリサに吸血鬼の目を見せた。
「すずか、攫われたときに何かされたんじゃない!?」
「何もされてないって」
「嘘よ。何かされないとそんな目の色にならないわよ」
 すずかは、観念してアリサに話す事にした。
「攫われたときに吸血鬼に何度もお腹を殴られて一杯血を吐いてわたし死にかけたの」
「一杯血を吐いて死にかけたって……病院にはいったの?」
「病院には行っていないよ。病院に行った所で助からなかったから……」
「そのわりにピンピンしているわね。お腹の中をグチャグチャにされたんでしょ?」
「さつきさんに助けてもらったからこうしてアリサちゃんとお話が出来るんだよ」
「吸血鬼に成ってもすずかは、すずかよ」
「アリサちゃん、私の家は“夜の一族”と呼ばれる吸血鬼の血を引いているの」
 アリサに月村家の秘密を話すすずか。
「この事を聞いたら制約して貰わないといけないの。私と友達のままでいてくれるか……」
「私とすずかは友達!! 之で良いでしょう?」
 アリサは“夜の一族”の制約の事を知っているようだ。
「あんたが“夜の一族”の吸血鬼でも本物の吸血鬼でも友達は友達!!」
「ありがとうねアリサちゃん」
「問題はなのはよ!! すずかは、ちゃんと秘密を話してくれたんだから……」
「わたしもなのはちゃんの力になりたいよ。私には、吸血鬼の力は在るのに」
 力がない事を悔しがるアリサとすずか。


 場所を屋上へ移す。
「あの子がいたから私は一人ぼっちじゃなくなったんだ」
 アリサとすずかの髪が風でなびく。
「そうだね。わたしもだよ」
 出会いのときを思い出す。
「なのはちゃんがいたから私たち友達になれたんだよね」


 放課後……。
「じゃあなのはちゃん、ごめんね。今日は私たちお稽古の日だから」
「夜晩くまでなんだよね。いってらっしゃい。がんばってね」
「アリサちゃん……」
 すずかが小声で言う。
「あっ。大丈夫だからね、なのはちゃん」
「うん。ありがとう。すずかちゃん」

 なのはは、一人で下校する。
「寄り道して帰ろう」
 なのはは、寄り道してかえるつもりの様だ。



 アリサとすずかはお稽古に向かっている。
「はじめてあったころはさ、私今よりずっと気が弱くて、思ったことが全然言えなくて誰に何を言われても反応できなくて」
「わたしはワレながら最低な子だったけね。自信家で我がままで強がりで、だからクラスメイトをからかって馬鹿にしてた。心が弱かったから……」
 アリサは、すずかを苛めていた頃を思い返す。
「私も弱かったからちゃんといえなかった。其れはすごく大切な物だから返して!!」
「やめなよと言っても聞かなかった。他人の言う事素直に聞いたら何かに負けちゃうきがしてたから」

「あの時、なのはちゃん何って言ったんだったけ!?」
「いたい!? 大事な物を取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ」
「そうだったね」
 大喧嘩の事を思い返すアリサとすずか。
「其れを止めてくれたのが……」
「事の発端の酷く大人しいこ」
「あの時は、だって必死だったんだよ」
「其れから少しずつ話をするようになっていったんだったけ」
「そう。三人で」 
 車は夕方の渋滞につかまっている。
「で、すずかはそんな昔話をきっかけに私に如何させたいわけ!?」
「判っているくせに」
 すずかの方を見るアリサ。
 すずかは、くすっと笑う。
「私たちに心配させたくないってことぐらい判っているわよ。多分、私たちじゃあの此の助けになれなことも……まっててあげることしか出来ないなら」 
 再びすずかの方を向くアリサ。
「じゃあ怒りながら待っている。気持ちを分かち合えない寂しさと親友の力になれない自分に……」
「意地っ張り……」
「ふんっだ!!」


 なのはの部屋
「そうか、喧嘩しちゃったんだ」
「ちがうよ。わたしがボウットしていたからアリサちゃんに怒られたってだけ」
「親友なんだよね」
「うん。入学して直ぐの頃からね」

「はい」
 ユーノにたい焼きの半分を差し出す。
「こっちユーノくんの分ね」
 なのははたい焼きの半分にかぶりつく。
「晩御飯の時までゆっくりジュエルシード集めできるよ。いっしょにがんばろう」
「うん。がんばろう」
 時計は4時半をまわったばかりだ。



 フェイトのマンション
 アルフは、ペット缶を食べている。
「さて、うちのお姫様は……」
 アルフはドックフードの箱を手に取る。

 フェイトは、ご飯を食べずにベットに横になっている。
「あぁっ。また食べていない!!」 
 アルフは、ベットに腰をかける。
「食べないと駄目だよ」
「少しだけど食べたよ。大丈夫」
 そう言ってベットから起きる。
「そろそろ、行こうか!?」
「あっ」
「次のジュエルシードも大まかな位置特定も済んでいるし、あんまり母さんを待たせたくないし」
「そりゃぁまあフェイトはわたしのご主人様で、わたしはフェイトの使い魔だから行こうといわれれば行くけどさ」
「それ食べ終わってからでいいから」
 ベットの上に置いていたペットフードの箱を手に取るアルフ。
「そうじゃないよ。あたしは、フェイトが心配なの。広域探索の魔法は可也の体力使うのにフェイトたらろくに食べないし休まないし、その傷だって軽くはないんだよ」
「平気だよ。わたし強いから……」
「幾らフェイトが強くてもあの女と戦ったら殺されるかもしれないんだよ」
「白い服の子と一緒にいた人? 空も飛べないのに!?」
「空を飛べる、飛べないの問題じゃないんだよ。あの女、あの時何って言ったか覚えている?」
「二人まとめて相手をしてやる」
「あの女は、フェイトと私を同時に相手をして余裕で戦えると言ったんだよ」
「でも、あの人は私たちの世界の魔法は使えない」
「そうかもしれないけど……フェイト、接近戦は絶対に駄目だよ」
 彼女たちは知る由もない。
 さつきがミッドとベルカ式のデバイスを持っていて尚且つ別の魔法が使えるという事を……。


 フェイトは、変身する。
 マントを出す。
「フェイト……」
 フェイトは取り出したマントを纏う。
「さぁ、行こう。かあさんが待っているんだ」


 なのはは、ジュエルシードを捜し歩く。


「はぁっタイムアウトかも。もうそろそろ帰らないと……」
「大丈夫だよ。僕が残ってもう少し探していくから」
 もう少し探すというユーノ。
「ユーノくん、一人で平気!?」
「平気。だから晩御飯取っておいてね」
 そう言ってなのはは家に帰る。

(アリサちゃんとすずかちゃん、そろそろお稽古が終わって変える頃かな?)
 なのはは、携帯を取り出してメールを確認する。
 確認し終えるとポケットに終うと再び走り出した。



「だいたい、この辺りだと思うんだけど。大まかな位置しかわからないよ」
「はぁ、確かに之だけごみごみしていると探すのも面倒だよね」
 フェイトは、バルディッシュを掲げる。
「一寸乱暴だけど、周辺に魔力流を打ち込んで強制発動させるよ」
 フェイトは、ジュエルシードを強制発動させるようだ。
「あぁっ待った!! 其れあたしがやる」
「大丈夫!? 結構疲れるよ!!」
「このあたしをいったい誰の使い魔だと?」
「じゃあお願い」
「そんじゃぁ」
 アルフが、ジュエルシードを強制発動させようとする。


 その気配をなのは、ユーノ、さつきは感じ取った。
 月明かりが消え暗雲が広がり海が時化始める。
 海には、落雷が相次ぐ。

「こんな街中で強制発動!? 広域結界間に合え」
 ユーノは、広域結界の展開を急ぐ。

 なのはも気配の方へ走りながら変身する。
「レイジングハート、お願い!」

 落雷がジュエルシードに直撃し発動する。
「見つけた!!」
「あっちも近くに居るみたいだけどね」
 広域結界に一帯が覆われていく。
「バルディッシュ!」
≪sealing form. set up.≫
 バルディッシュの形状が変わる。



『(なのは、発動したジュエルシードが見える?)』
「(直ぐ近くだよ)」
『(あの子達が直ぐ近くに居るんだ。あの子達より先に封印して)』
「(わかった)」
 なのはは、杖の形状を変える。


 フェイトがジュエルシードに攻撃を仕掛ける。
 遅れてなのはも攻撃する。
「リリカルマジカル」
「ジュエルシード、シリアル]\」
「封」
「印!!」
 二人同時に封印しようとする。

 レイジングハートから魔力の滓が排気から排出される。
≪device mode.≫
 なのはがジュエルシードを見上げている。
「やった!! なのは、早く確保を……」
「おっと、そうはさせるかい!!」
 ユーノがなのはとアルフと間に割ってはいってバリアを張る。
 バリアに弾かれるアルフ。

「此間は自己紹介できなかったけど、わたしなのは。高町なのは。私立聖祥大附属小学校三年生」
≪scythe form. set up.≫
 フェイトの答えは、拒絶だった。
≪flier fin.≫
 なのはは、フライで空へ飛ぶ。


「なのはにメール!?」
 アリサがすずかに聞く。
 如何やらお稽古が終わったようだ。
 すずかは、なのはにメールを打っている。
「うん。お稽古終了って……」
 アリサは、携帯に目を通して荷物を持った。
「さあ、帰るよ」
「あっ、うん。一寸待って」
 すずかは、急いでメールを打つ。
「お悩み、早く解決するといいね。がんばって。何時だって応援しています。すずかっと」
 メールを打ち終えると送信した。


 なのはとフェイトは、結果以内で戦っている。
 いとも簡単になのはの背後を取るフェイト。
≪flash move.≫
 逆にフェイトの背後に回るなのは。
≪divine shooter.≫
 フェイトに向かってデバインシュートを撃つ。
≪defenser.≫
 なのはのデバインシュートをディフェンサーで防ぐフェイト。
 なのはは、レイジングハートをフェイトに向ける。
 フェイトもバルディッシュをなのはに向ける。
「フェイトちゃん!!」
「あっ」
「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないと言っていたけど、だけど話さないと言葉にしないと伝わらないことがきっとあるよ。分かり合ったり、競い合う事になるのは、其れは仕方のかもしれないけど、だけど何も判らないままぶつかり合うのは嫌だ!!」


 ユーノと追いかけっこをしているアルフ。

「わたしがジュエルシードを集めるのは、其れがユーノくんの探しものだから……ジュエルシードを見つけたのはユーノくんで、ユーノくんが其れを元通りに集めなおさないといけないから。私はそのお手伝いで……だけどお手伝いをする様になったのは偶然だけど、今は自分の意思でジュエルシードを集めている。暮らしている町や自分の周りに人たちに危険が降りかかったら嫌だから……之が私に理由!!」
「私は……」
 フェイトが語ろうとする。
「フェイト!! 答えなくていい」
 答えるなというアルフ。
「優しくしてくれる人たちの所でぬくぬく甘ったれて暮らしているガキンチョになんか何も教えなくていい」
「えっ」
「あたしたちの最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ」
「その方らにジュエルシードは渡さぬ」
 アルフの背後から発せられる声。
「この者がジュエルシード集めの時、どんな目にあったと思う!? 吸血鬼に奪われたときは死にかけもした」
「死に掛けたって……」
「吸血鬼に何度も腹を殴られ血を吐きもした。之でもぬくぬく甘ったれていたと言えるか?」
 なのはが死に掛けたと聞いて何もいえないアルフ。
 なのはが受けた苦しみと痛みは想像できない。
「妙な動きはするな!! すれば、首を落とすぞ」
 さつきがアルフを脅す。

「なのは!!」
 ユーノが封印を促す。
 フェイトが、ジュエルシードの捕獲に向かう。
 対応が遅れるなのは。
 なのはもフェイトの後を追う。
 そしてほぼ同時にジュエルシードに触れた。
 その直後、レイジングハートとバルディッシュに罅が入り魔力爆発が起こった。


「あっ」
 すずかが、遠くで発生した魔力爆発の気配を感じ取った。
 アリサは、車に乗り込む。
 すずかは、気配のしたほうを見ている。
「すずか、如何したの!?」
「今、なのはちゃんの気配を感じたんだけど……」
 すずかは、携帯の画面を見た。
 携帯の画面には、新着メールはありません。とあった。
 心配したアリサが、車から降りてきた。
「もう、お腹減ったよ。早く帰ろう」
「あっ、うん」
 アリサに続いてすずかも車に乗った。


 次回予告

 アルフ「あんな爆発が起きるなんて絶対にやばいって」

 フェイト「だけど、かあさんが待っているから」

 ユーノ「ジュエルシードの正体とは!?」

 ユーノ「そして現れる新たな魔法使い」

 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第9話『5人目の魔法使いなの!?』」


すずかがアリサに秘密を明かしたな。
美姫 「それでもアリサは変わる事無く」
うんうん、良かった、良かった。
美姫 「なのはの方はまた問題が起こったけれどね」
爆発だもんな。どうなるのだろうか。
美姫 「それじゃあ、この辺で」
ではでは。



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