第103話「月村城は血を欲す」






 叛乱軍は、月村邸の敷地内各所で破壊活動を始めていた。
 木を切り倒し、月村城を目指している。


 月村城の司令室……。
「叛乱軍による損害額、拡大中!!」
「被害額、10億を超えました」
 月村家の被害額は増え続けていく。
 だが、それでもすずかのポケットマネーで吸収できる。
「尚も、叛乱軍の破壊活動継続中!!」
 叛乱軍の月村城の破壊工作は続いている。
 その叛乱軍の先頭に居るのは、やはり貴族の奴隷だった。
 矛であり盾なのだ。
 そして彼らは自分で武器を持って戦わない。
 選民意識が強いのである。
 自分たちこそが絶対的支配者である考えの持ち主たちだ。
「すずかさん。どうしますか?」
 グリューエルが聞く。
「玉座の間に誘い込んで!! 罠も玉座の間に向かうようにして」
「わかりました。庭に集めたゴミは、どうしますか?」
「ズェピア!! せっかく庭に集めたゴミだけど、玉座の間に移して」
「玉座の間に来させて良いのかね? 来させたら、後がないが……」
「言われたとおりに運んで!!」
「何か、企んでいるようだね」
「運んだら、悲劇の上演を準備して!! 運んだゴミでね」
「ふむ。ゴミでの悲劇も、一興か……」
 ゴミ扱いの叛乱軍で悲劇を開演させるすずか。


 何も知らない叛乱軍は、月村城の廊下を玉座の間を目指して突き進む。
「敵もようやく陛下の怖さを思い知ったようです」
「今頃、ワシの怖さを知っても遅い!! 大人しく玉座をワシに譲っておれば、ノミのフンぐらいの金は残してやったのに」
「陛下、まずは玉座を簒奪することのみに集中してください」
「よし。進言は覚えておこう……」
「ありがとうございます」
 叛乱軍本隊は、玉座の間へ迫る。

 侵攻を邪魔せんとする人形を斬り捨てる。
 斬り捨てられた人形は、血の海に沈む。
 また、奴隷たちも斬られ血の海に沈む。
 月村城の廊下には、血の海が広がる。
 この後、掃除することになるメイド軍団の苦労が思いやられる。
 廊下に敷かれて居る絨緞は、血を吸う。
 紅い絨緞は、血を吸い更に赤みを増す。


「大した警備態勢でないのに突破できないのか!!」
「それが、各所に罠がしかけられていまして……」
 そう言った瞬間、背後の装甲シャッター降りて退路を断った。
 その装甲シャッターの下敷きになって胴体が真っ二つになる人。
「た、助けてくれ!!」
 胴体が二つに分かれ血を流しながら床を這う。
「そんな役立たずなど捨て置け!! 其れよりも先を急ぐぞ!!」
 役立たずを斬り捨てて先へ進む叛乱軍本隊。

 その様子を監視カメラで録画されているとも知らない叛乱軍本隊。

「あの人、部下を斬り捨てるようですわ」
 部下を切り捨てる様を克明に記録した。
「この映像、保存しておきます?」
「保存しておきましょう。言い逃れできない決定的な証拠として……」
 証拠として残すグリューエル。


「おのれ、月村すずかめ!!」
 罠にかかり次々倒れていく叛乱軍本隊。
「陛下……」
「バルトザウザー!!」
「はっ」
「兵は、何人残っておる!?」
「役立たずの奴隷共が300です」
「精鋭兵は!?」
「全滅したのか、連絡がつきません」
 叛乱軍本隊の精鋭兵は、全滅していた。


 其れは、叛乱軍本隊が来る数十分前に遡る。
「隊長!! 標的が目の前に居ますぜ」
「どうやら間違いないようだな」
 写真と見比べる精鋭隊長。
 叛乱軍精鋭部隊の前にすずかが現れた。
「生死は、問わぬからってしまえ!!」
 一斉にすずかに襲い掛かる叛乱軍精鋭部隊。
 剣を持つ者は、剣ですずかに斬りかかる。
 だが、その剣がすずかに当たることはなかった。
 各方面から同時に斬りかかられるが、すずかはその全てを余裕でかわしていたのだ。
「蜂の巣になりやがれ!!」
 マシンガンを持つ者は、マシンガンで銃弾の雨をすずかに浴びせる。
 何百発もの銃弾がすずかに降り注ぐ。
 その銃弾の雨を余裕を持ってかわしている。
 逆に銃弾の雨の中から銃弾を逆に撃ち返すこともした。
 しかも撃ちだされつづける銃口に栓をされれば……。
 マシンガンの銃口が蓋をされ暴発した。
 すずかがしたのは、それだけではなかった。

「手が……」
「足がぁぁぁ」
 叛乱軍精鋭部隊全員の手と足に銃弾を撃ち帰して撃ち抜いていた。
「痛いよう……」
 すずかに撃ち抜かれた叛乱軍精鋭部隊員の手足からは血が流れ出ている。

「総大将が、部下の武勲を横取りするものではないよ」
 ズェピアが、すずかに言う。
「其れは、判っているよ」
 判っていると言うすずか。
「ズェピア。ちょうど良いところに来た!!」
「私に何か用でもあるのかね?」
「そこの精鋭隊長とやらの身体中の骨を砕いてやるがよい」
「骨を砕いてやればよいのだね」
 精鋭隊長の骨を砕こうとするズェピア。
「や、止めてくれ……」
 逃げようにも身体が動かない精鋭隊長。
「覚悟はいいかね? 精鋭隊長くん……」
 ズェピアは、どのように骨を砕くかシナリオを考えているようだ。
「では、指の骨から逝ってみようか」
 そう言って精鋭隊長の手の指の骨を砕いた。
 骨を砕かれた精鋭隊長は悲鳴を上げる。
 時間を掛けて身体中の骨を砕いていく。
 腕の骨を砕く途中で、精鋭隊長は気絶していた。
「鳴かなくなったのかね?」
 既に精鋭隊長は、白目を剥いていた。
「このゴミはどうする!?」
「叛乱王子と同じところに運んでおいて。叛乱軍盟主のルードルフ達と一緒に処分するから……」
「では、運んで置こう……。この後は、どうするのかね?」
「その前に2、3人ほどこの場で処刑し肉片にしておく」
「ふむ。叛乱軍盟主を突撃させるつもりかね」
「妾も3人ほど肉片にしたら玉座の間へ戻る。其れまでにゴミを運んでおくがよい」
「心得た」
 血の海に転がるゴミを玉座の間へと運ぶズェピア。

「さて、その方達には、ヴァルハラに逝ってもらう。主君の暴走を止められなかったことを悔いるのだな……」
 そう言ってすずかは、爪を伸ばした腕を振った。
 それだけで、三人は肉片に化した。
 今までの苦痛がなかった様に一瞬で肉片に化したのだ。
 血の海の床は、何かで引っかいたような傷が出来ていた。
 その中にすずかによってバラバラにされた肉塊があった。
 三人は、何も判らないままにヴァルハラの門を潜っていた。


「グリューエル!!」
『はい』
「今の映像をルードルフに見せてやれ!!」
『それだけでいいのですか?』
「この場を通るよう壁の配置を変えてくれ」
『判りました』


 そして警備室……。
 用兵の専門家でもあるルッツとファーレンハイトも司令室にいた。
 二人の皇女の侍従長であるヨートフも……。
「ルッツ。卿は、どう思う?」
「愚かな連中だ!! 無駄に兵を失っている」
「我が皇帝カイザーとローエングラム公は、あぁいう連中が嫌いだからな」
 すずかとラインハルトは、民衆を傷つけるような連中が嫌いだ。
「無辜の者達だけでも救出せねばならない」




 精鋭隊長達の処刑映像は、ルードルフの居る場所のモニターに流された。
『叛乱軍の皆さん。貴方達の精鋭部隊は、先ほど処刑しました』
 モニターには、残虐な方法で処刑される模様が流された。
「おの!! 月村すずか、許さんぞ!!」
『このマップの通りに来れば玉座の間まで5分で着きますよ』
「黙れ!!」
 ルードルフは、銃でモニターを撃った。
 自ら情報源を断ったのだ。


 その結果……。
「ぎゃぁぁぁっ!!」
 次々、罠に掛かって逝った。
 床からの剣山に串刺しにされた者……。
 月村城は、死屍累々、血の海を造っていく。
「た、助けてくれ!!」
 落とし穴に落ちて逝く者。
「おのれ!!」
「この状況は、陛下にも責任があります」
「貴様!! このワシが悪いだと」
「申し訳ありません。陛下」
 自分のミスも部下のミスにするルードルフ。
「えぇい!! 無能者め!!」
 自らが絶対だと自負しているようだ。
「罠を突破せんか!!」
 目の前には。罠に掛かり倒れた者達の血による海が出来ていた。
「陛下、選民に何を言っても無駄です。選民共には、陛下の偉大さが分からないのです」
「その通りです。選民は我ら選ばれし者達の駒でしかありません」
「おらぁ選民共!! ルードルフ様の為に戦え!! 命を捧げろ!!」
 選民共を無理やり戦わせる。
「お前たちの血の一滴までルードルフ様の物だ!!」
「月村すずかの首を盗れ!!」
 剣山地獄と落とし穴のエリアを中々突破できない。



「あのままでは、可哀そうですわね」
 次々、倒れていく人を憐れむ。
 ルードルフの無謀な命令によって多くの者が犠牲になっていた。
「そろそろ、すずかさんの方も仕込が終わるころですし、罠を解除しましょう」
「そうですわね」
 ルードルフ達の侵攻を苦しめていた罠を解除する。
「では、処刑の間まで来てもらいましょう」
「壁の配置を変えてください」
 ファーレンハイトは、壁の配置を変え始めた。
 モニターに壁の配置が変わる模様が映し出される。
 ルードルフ達から離れた隙に壁を動かし切り離すし安全を確保する。


 ルードルフから切り離された民たちは……。
「此処は、どこだ!?」
「俺たち死んだのか?」
 自分たちは死んだと思い込んでいるようだ。
「じゃあ、ここはヴァルハラ?」
 不意にいい匂いが漂ってくる。
「いい匂い」
 匂いに釣られて匂いのする方へ歩を進める。
 ドアを開ける。
 そこには、食事が用意されていた。
 そこには、先に身柄を保護された平民たちが食事を食べてた。
「あちらの席にどうぞ」
 イレインに席に案内される。
「之は……」
「気になさらずに食べてください」
 イレインは、付け加える。
「暫くの間、この部屋から何があっても出ないでください。もし、出られた場合、命の保証は出来ません」






「あそこだ!!」
 玉座の間に突入する叛乱軍。
 そこで見たのは……。
「王子……」
 処刑されようとしていた。
 処刑執行人は、ズェピアだ。
「ズェピア!! そのゴミを肉塊にせよ」
「仰せのままに……」
 すずかに命じられて叛乱軍の王子を肉塊にする。
「貴様、王子を……」
 怒りに任せてズェピアに襲い掛かる。
 そんな叛乱軍に言うズェピア。
「今は、劇の上演中だ。観客なら静かに観劇したまえ」
「王子をこんな風にする劇の上演は認めんぞ!! 今すぐ止めろ!!」
「劇の上演を止めることは、出来ないね。スポンサーの許可がないと……」
 そのスポンサーは、すずかだ。
 ズェピアは、叛乱軍の王子の人形を処刑した。
 本物の王子は、既に処刑した肉塊の中にある。
 そうとも知らない叛乱軍は……。
「そこを退け!! そこは、ワシの席だ!!」
 玉座は自分の物と言う男。
「其れより、よくもワシの息子を処刑してくれたな!! 許さんぞ!!」
 すずかに吼える男。

「この程度のことも見抜けぬとは情けない」
「見抜けぬとは、なんだ!?」
「その程度のことも判らぬのに玉座を奪おうとは甚だしい!!」
「五月蝿い!! 貴様は、今すぐワシに玉座を渡せばいいんだ!!」
「そんなに玉座が欲しいか!?」
「当然だ!!」
「欲しければ、自分の力で妾から奪ってみよ」
「お前達、奴を玉座から引き摺り下ろせ!!」
 自分で戦おうとはせず、家臣に命じる。
 そんな、男にすずかはキレる。
「ルードルフ!! その方を玉座に就かせるわけにはいかぬ。その方とその方の家臣を処断する!!」
 すずかは、静かに玉座から立ち上がる。
 すずかからは、凶悪な魔力が陽炎のようにたちのぼる。
 主君を守ろうとする家臣たち。
 すずかの魔力に触れ、蒸発する者もいる。
 中にはショック死する者も居た。
 何人倒れようが、すずかは殺気を放つのを止めない。
 叛乱軍を許さないと言う意思の明確な表れだ。
「あがっ」
 すずかは、ルードルフの首を掴み片手で持ち上げる。
 すずかの握力で首を絞められるルードルフ。
 すずかの握力によってルードルフの首の骨が軋む音がする。
 呼吸が出来ずに苦しむ。
 不意に床に落とされる。
「げほっげほっ」
 酸素を吸おうと咳き込む。
 そんなルードルフを見下す、すずか。

「こんなことをしてタダで済むと思うなよ!!」
 まだ、刃向うルードルフ。
「ちょうど女もいるな……」
 立ち上がって、言う。
「おいっ。女どもは、今すぐ裸になれ!! 全員隅々まで調べてくれる」
 次の瞬間、周囲の温度が急激に下がった。
 この場に、なのは達も居たのだ。
 見ず知らずの男に年頃の乙女が裸になれと言われてタダで済むはずが無かった。
「そんなにもO・HA・NA・SHされたいんだ……」
 その場に、なのは、フェイト、アリシア、はやてが現れた。
「あたしもO・HA・NA・SHに混ぜなさいよ」
 内臓破裂で治療中の筈のアリサも現れた。
「そいつが、親玉!?」
「そうや!! うち等に、裸になれって言ったんやで」
「あんた、はやて達にまで裸になれって、許さない!! しかも乙女の裸をタダで見ようなんって……」
「O・HA・NA・SHが必要みたいね」
 なのはが言う。
「O・HA・NA・SHすることなどない!! 今すぐ裸になれば、ワシの息子にしたことは許してやらんでもないぞ」
「どうやら、このおっさん死にたいらしいわ」
「すずか、どうする!?」
 判断をすずかに仰ぐアリサ。
「それじゃあ、まずは、無限O・HA・NA・SHタイム逝ってみようか」
「「「「「了解!!」」」」」
「一寸待て……。話せばわかる……」
 そんなルードルフを冷めた目で見るなのは達。
「話せば……」
れ!!」
 すずかの合図でO・HA・NA・SHが開始された。





 ルードルフ、無限O・HA・NA・SHタイム中……。




「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」




 なのは達のO・HA・NA・SHは、続く。
 ルードルフが、血の海に沈もうが容赦なく続けられる。
 その中でも、アリサのO・HA・NA・SHは苛烈だった。
 内臓を破壊され胸を揉まれた恨みを目の前の男に向ける。


「アリサさん、相当怒っていらっしゃいますわね」
「でも、あまり暴れられますと……」
 アリサの容体を心配するグリューエルとグリュンヒルデ。
 そして、画面の中で暴れるアリサが血を吐いて血の海に倒れた。


「アリサちゃん!!」
 アリサは、血の海に倒れた。
 その瞬間を逃さないルードルフ。
 血の海に倒れたアリサを仰向けにし服を引き裂いて胸を鷲掴みにして揉んだ。
 暴れようとするアリサの腹部を殴って大人しくさせる。
「ごふっ」
 腹部を殴られたアリサは、血を吐く。
 そんなアリサの胸を揉むルードルフ。
 はやてが見ている前で……。
「ワシ好みの体をしておるではにか」
 ルードルフは、O・HA・NA・SHされながらアリサの胸を揉み続けていた。
「うちの許可なくアリサちゃんの胸を……」
 はやては、最後まで言い切れなかった。
 はやての横で何かが切れる音が聞こえたからだ。
「ブチッ!?」
 すずかを見るはやて。
 すずかの眼は、黄金色に変わっていた。
「すずかちゃん!?」
 だが、すずかの耳にはやての声は入っていない。
 唯、鋭い目つきでアリサの胸を揉んでいるルードルフを睨む。
 だが、それでもルードルフは、アリサの胸を揉むのを止めない。
 それどころか、新たな腕を生やし、ダメージの残るアリサの腹部を殴りはじめた。
 腹部を殴られると血を吐くアリサ。
 その全てが鳩尾に叩き込まれていた。
「アリサちゃんが、子供を産めなくなったらどないするんや!!」
「この小娘は、ワシの所有物だ!! だからワシがこの小娘の胸を揉もうが腹を殴ろうがワシの自由だ!!」
 アリサを自分の所有物と言い始めるルードルフ。
 吐血量からもアリサが危険な状況だという事は分かる。
 再びアリサの腹部を殴ろうとするルードルフ。
「邪魔をするな!!」
 そんなルードルフを腕を掴むすずか。
 すずかは、何も言わずにルードルフを殴り飛ばした。
 殴り飛ばされたルードルフは、壁にめり込んだ。
「これで終わったと思うでない!!」
 すずかは、空想具現化で鎖を出しルードルフの手足を拘束する。
「先ずは、アリサの恨み……」
 すずかは、ルードルフを殴る。
 鎖で拘束されている為、サンドバックだ。
 何故か、はやては恨みを持ってルードルフを殴る。
 容赦なく徹底的に……。



 アリサの恨みを晴らしたはやてが抱き起こそうとする。
「アリサちゃん、大丈夫か!?」
 はやてに抱えられるアリサ。
「大丈夫じゃ、ないわよ。お腹の中、グチャグチャなんだから……」
 苦しそうに血を吐くアリサ。
 はやての眼は、ある部分に向いていた。
 それは、上半身裸のアリサの胸だった。
 今は、何の邪魔な物がない。
 介抱するふりをしてアリサの胸を揉み始めた。
「この柔らかさ最高やわ!!」
 アリサの胸にはやての指が食い込む。
「はやて!!」
 アリサの胸を揉むはやてに言うフェイト。
「そうやった!! でも、止められへん」
 アリサの胸を揉み続けるはやて。
「はやて、アリサが死んでもいいの?」
 アリシアが言う。
「アリサちゃんの胸を好きなだけ揉める機会なんやで、簡単に止められへんわ」
 それでもアリサの胸を揉み続けているはやて。
「この感触、止められへん」
 アリサの胸を揉むのを止められないはやて。
「はぁ。仕方ないかな」
 ため息を吐くアリシア。
「本当は、友達の血を吸いたくないんだけど……」
 そう言って、はやての首に牙を突き立てて血を吸うアリシア。
 はやてが、暫く誰の胸を揉めなくなるまで血を吸う。
 無論、生命にかかわる一歩手前で止めた。
 血を吸われたはやては、力なく倒れた。
 はやての間の手から解放されたアリサは、危険な状況にある。
 血を失いすぎているからだ。
「フェイト、なのは!! アリサとはやてをお願い」
「わかった」
「うん」
「はやては、ベットに拘束しておいて」
 医務室に運ばれていくアリサとはやて。






 玉座に座りなおすと言う。
「それでは、叛乱軍の見聞を行う」
 即席の裁判が開かれる。
 裁判長は、すずかである。
「ルードルフ・ゴールデンヴァーム!! その方、クーデターを起こしたのみならず妾を弑しようとしたことは、一族同等死刑だということは知っておろうな?」
 夜の一族においても皇帝弑逆罪は、重罪だ。
 よって、ルードルフの一族は皆死刑である。
「今回、無辜の領民を動員したことは許しがたい。その方の死をもってしても償えぬものだ」
 ルードルフの罪は重いらしい。
「わ、ワシは死にたくない!!」
 醜態を晒すルードルフ。
「そうだ。全財産を差し出してもいい。命だけは……」
 醜く命乞いをするルードルフ。
「命乞いをしても無駄だ!! その方らの全財産と領地は没収する」
 財産のみならず領地まで取り上げられてしまうルードルフたち。
 領地を取り上げられた彼らは、発言権すらない。
「ワシらから取り上げた土地は、どうするのだ!!」
「その方らの領地は、カーテローゼの預かりとする」
「陛下……」
「とは言え、領地の運営を全て任せることはまだできぬ。よって代官を派遣することになるだろう……」
 カーテローゼの領地に編入するというすずか。
「ワシらから領地を取り上げて、そんな小娘に任せるだと!! それにワシらは、どこで暮らせばいい」
「その方らを住まわせる土地は、どこにもない」
 ルードルフ達に住まわせる土地は、ないようだ。
「アリサの胸を快くまで揉んだのだから、この世に未練はあるまい」
「ワシは、まだ……」
「口を開くでない。発言を許した覚えはなはない」
 ルードルフに発言は許されていない。

「処分を申し渡す。その方たちを永久除名処分の上、異界への追放とする」
 異世界への追放が言い渡される。
 その追放先は……。


「ここは、どこだ!?」
「父上。アレなんかどうですか?」
「よし。アレをワシの城にする。あの城を落としに行くぞ」
 ルードルフ達は、ある城に向かった。


 紅魔館……。
「お嬢様、来たようです」
 テラスから見ている咲夜。
「そう。すずかが送ってきたようね」
「では……」
「盛大に歓迎してあげないといけないわね」


 盛大にルードルフ達を歓迎するようだ。


 その後、紅魔館を襲撃したルードルフ達は……。
 紅魔館に待ち構えていた妖怪たちにボロボロにされたのだった。




「何なんだ!? ここは……」
「何で我々がこんな目に……」
 襲撃に失敗したルードルフ達……。
「確り働いてちょうだい」
 ルードルフ達は、奴隷となっていた。



 月村城襲撃事件から数日後……。
 ルードルフの叛乱は一族中を駆け巡った。
 そして、ある一族にも書簡が届けられていた。
 書簡を読んだ男は頭を抱え俯いていた。
「貴方、どうされましたの?」
「これを見てくれ」
 送られてきた書簡を見せる男。
「我が家は、もう終わりだ!!」
 絶望の色を見せる男。
「陛下に頭を下げればいいじゃありませんか」
「謝って済む問題ではない。我が一族から叛乱者を出してしまったんだぞ」
 叛乱者を出してしまった一族のようだ。
「これで、我がキルヒハイト家は、叛乱者を出した一族だと言う汚点が残るのだぞ」
 テーブルを叩くキルヒハイト家当主。
「まして弑逆未遂犯を出してしまったのだぞ」
 弑逆は未遂であっても一族郎党私刑である。
「それで陛下は、なんて言っておられるのですか?」
「当主の座を子息に譲り隠居せよ」
「良かったではありませんか。隠居で済んで……」
「よくあるか!! 大半の領地を召し上げられたのだぞ!!」
 多くの弑逆未遂犯の領地は召し上げの上、家名断絶が下されていた。

「旦那さま」
「なんだ!? いまは、忙しい。用があるのなら後にしろ!!」
「皇帝陛下とローエングラム様がお見えです」
「なに!? 陛下が?」
「はい」
「直ちにお通ししろ!!」
「かしこまりました」
 一礼する執事。
 予告なしの訪問。
 召使たちも混乱する。
 何の準備も出来ていないからだ。



「キルヒハイト、久しいな」
 上座に座ったすずかが言う。
「お久しぶりであります。陛下」
「その方の一族から弑逆未遂犯を出した罪は重いぞ」
「陛下、私は……」
「弑逆未遂犯を出した一族の族長としての責任をとるがよい」
 一族の族長を辞めよと言っているのと同義だ。
「とは、言え領地の空白を作る訳にはいかぬ。その方は、領地運営の専門家だ」
「では、私は……」
「此度の件でこのカーテローゼ預かりとした領地の運営をその方に委ねる」
「えっ」
「カーテローゼの預かりとしたことで領土は広大となった。今代わりに運営している代官では手が足りぬ」
「弑逆未遂犯を一族から出した私に如何せよと!?」
「新たな領主が決まるまで運営する代官を選定いたせ」
「代官をですか?」
「但し、誰もが納得する代官でなければならぬぞ」
「御意」
「最終的に決めるのは、カーテローゼ、そなただ」
「はい。陛下」

 その後、各領地に代官が派遣され一連の事件は幕を閉じた。


 次回予告

 なのは「空港火災から一年……」
 フェイト「訓練校は入校シーズン」
 アリシア「母校を訪れるあたしとフェイト」
 アリサ「その中に居るやんちゃコンビ」





 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第104話『Starting Stars』」



反乱はあっけなく終わったな。
美姫 「ええ。で、実行犯たちはまさかの幻想郷行き」
しかも紅魔館の奴隷に。
美姫 「まあ、同情の余地はないでしょうけれどね」
だな。それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る