第106話「Starting Stars3」






 あたし、ティアナ・ランスターが陸士訓練校に入校してはや3ヶ月


 ティアナは、シューターを撃つ。
 シューターは、木々の間をぬって的に命中した。

「よーし。いいぞ32番」
 教官が言う。
「ありがとうございますッ!」
 だが、実際はギリギリの命中だった。


 訓練は順調


「ロードカートリッジッ!」
 カートリッジをロードする。
「でえええっ!!」

「でかいの来るぞ!」
「おう!」
 スバルのパンチに数人がバリアごと吹き飛ばされる。
「のああああっ!!」
 受ける方は、大変だ。
「いってぇ…………ナカジマ! ちょっとは手加減しろよ」
「あははー――。ごめんー――
 謝るスバル。
「ミッド式連中との合流まで、もうちょっとあるな。もう一周くらいバリアバック打ちやっとくか」
「あー――。じゃああたしがバック持ちやるよー」
「おう。頼むわ」
 再びバリアバック打ちをしようとするベルカ組。

「やっておるようだな」
 聞きなれない声がする。
「…………?」
「どれ、妾が持ってやろう……。その方らは、全力全壊で撃つがよい」
「……………………」
 かけられた声に反応できないベルカ組の訓練生。
 着ている服から普通の魔導師ではないことが伺える。
 だが、服は執務官、教導隊とも違っていた。
「如何した!? 打たぬのか?」
 バリアバックを持ってすずかが言う。
「……………………」
「そこのお前!!」
「えっ!?」
「その方から打つがよい!!」
 すずかに命令される訓練生。
「お俺!?」
「早く打つがよい」
 バリアバックを打つ訓練生。
「それで全力か? 次、その方、打つがよい」
 すずかに指名されるスバル。
「わたしですか? 一人で持つつもりですか?」
「心配無用。手加減はいらぬ。打つがよい」
「カートリッジロード」
 カートリッジをロードするスバル。
 カートリッジをロードしすずかが持つバリアバックを打つ。
 だが、びくともしない。
「びくともしていない」
 すずかは、一歩も動いていない。
「それでも全力か? 妾は、全力で打てと言ったはずだ!! その方の全力全壊を見せるがよい」
 あるフレーズに感じるスバル。

 全力全壊……


 憧れの人のセリフと似ている。
「それとも全力全壊で出来ぬと申すか!?」
 すずかの眼が黄金に変わっている。
「出来ます」
「なら、全力全壊で打つがよい」
「はいっ!!」
 スバルに全力全壊で打つように命じるすずか。
「カートリッジロード!!」
 再びカートリッジをロードするスバル。
「全力全壊……」
 再びバリアバックを打つスバル。
「びくともしていない。全力全壊で打ったのに……」
 ここにスバルも全力全壊に感染した。
「次は、そなた達の番だ! 全力全壊で撃たないとO・HA・NA・SHをするから覚悟するがよい」
「「「は、はいっ」」」
 涙目で返事をする訓練生たち。


 急ぎ足で基本と応用を詰め込んでいく訓練
 ミッドとベルカ個別のトレーニングも増えてきて
 あたしはひととき例のズッコケ娘から解放されて
 あの子はあの子でベルカ式の打撃系チームと楽しそうにやってたりっする



「ベルカチーム!! ヘバったのか!?」
「いえ。一寸色々ありまして……」
 事情を説明するスバル。
 ベルカチームは、疲れきっている。
「軟弱にも程がある。全員纏めて鍛えてやろう……」
 聞き覚えのある声に教官は、ガクガク震えだす。
美姫ブリュンヒルト、創生の書よ逝くぞ!!」
≪All right.≫
≪Anfang.≫
 訓練生は、あり得ない光景を目の当たりにした。
 本来、魔導師はミッド、ベルカのどっちかしか扱うことが出来ないのだ。
 だが、すずかは、ミッドもベルカも同時に使えるのだ。
「どうした!? 武器を構えよ」
 武器を構えるよう言うすずか。
「手加減は無用だ。全力全壊で来るがよい」
「い、いくぞ!!」
「「「「「「「「「「うぉおおおおおおおおっ!!」」」」」」」」」」
「逝けっ!!」
「全力全壊!!」
 スバルが言う。
「おりゃぁ」
「でやぁっ!!」
 すずかに総掛かりで襲いかかる。
 だが、一撃を入れることさえできない。
「攻撃が甘い!!」
 砲撃は、全てすずかのバリアにはじかれる。
「それでも全力か?」
 全力を出せと言うすずか。
「くそっ。何故当たらん……」
 すずかには、全ての攻撃が通じない。
「如何した!? それで終わりか?」
 すずかが言う。
「全力全壊で来ぬのか……。ならば少し戯れてやろう……」
 周囲の空気が変わる。
「えっ?」
 周囲には、無数のスフィアが出来ていた。
 その数は、訓練生と同じ数があった。
 すずかの周りには、スフィアが遊弋している。
「今から10分間、被弾せずに避けよ」
 それが、合図だった。
 今まで遊弋していたスフィアが訓練生たちに襲いかかった。

 最初の脱落者が出る。
 スフィアが命中し大爆発が起きる。
 訓練生は、白目を剥いて気絶していた。
 その訓練生は、全身から煙が燻っていた。
 訓練生たちの意識が、脱落者に向く。
 それは、致命的な隙だった。
「戦闘中に余所見をするでない!!」
 スフィアが、訓練生たちに襲いかかる。
 結果は、数十人の訓練生が一気に脱落した。
 脱落した訓練生たちからは煙が燻っている。
 一瞬にして半数以上の訓練生が脱落したのだ。

「被弾せずに残っている者がおるか……」
 幾人かの訓練生は、被弾せずに残っていた。
 その中にスバルとティアナも含まれていた。
「圧倒的な実力差を思い知るがよい」
 すずかは、創世の書を開いた。
「咎人達に、滅びの光を」
 すずかは、詠唱を始める。
「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。貫け!閃光!」
 すずかの前に紫色の巨大な光の塊が出来る。
 光の塊には訓練生が放った魔力の残滓も含まれている。
 なのはの魔砲より遥かに巨大な……。
「お、終わった……」
「アレを撃つんですか?」
「スターライト・ブレイカー!」
 すずかは、上空に向かって放った。
 訓練生に撃てば、ケガでは済まない。
 凶悪な砲撃は上空へと消えていった。
「勝てない……」
「どうやって勝てと言うのだ……」
 全員固まっていた。
 どこかに伏せてあったスフィアが生き残りの訓練生に命中した。
 結果……大爆発して二人を除いて倒れた。
「ほう。生き残ったか……」
 生き残ったスバルとティアナもボロボロだ。
「勝負は、まだ着いておらぬ。来るがよい」
「でえやああああっ」
 すずかに殴りかかるスバル。
 バルアにぶつかって火花が飛び散る。
「かったい……」
 硬すぎてすずかのバリアを抜けない。
 スバルは、左手で右腕を掴まれていた。
「は、離れない」
 すずかの握力から逃れられないスバル。
 だが、その時タイムアップを迎えた。
 すずかから開放されるスバル。
 スバルとティアナは、辛うじて生き残ったのだ。
「その方ら名は?」
「スバル・ナカジマ……」
「ティアナ・ランスター」
「スバルにティアナか……」
 スバルとティアナに向けられている殺気は消えていた。
「あの。お名前は?」
 すずかに名前を聞くスバル。
「知らないほうがいいよ」
「教えてください」
 名前を知りたいスバル。
「月村すずか」
 すずかは、ただ一言だけ言った。
 名前を聞いたスバルの目は輝いていた。
「さて」
 再び王族口調に変わるすずか。
「では脱落者にO・HA・NA・SHするか」
 スバルとティアナを除く訓練生はO・HA・NA・SHを受けた。


 訓練生、すずかからO・HA・NA・SH中……



「予定外の出来事もあったが、今週の訓練は、此処まで」
 今週の訓練が終わった。
 訓練生たちは、全員ボロボロだ。
 特に女子は、服が破け胸が見えている子もいた。
「なお。週末の休暇中は、グラウンド整備が入るので自主練は禁止だ」
「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」
「週末練習組もたまには休め」
 スバルとティアナに向けて言われる。
「「はいっ!!」」
 スバルとティアナも服はボロボロだった。



 鼻歌を歌うスバル。
「…………を希望します…………と」
「なんだ。アンケートもう書いてるの♪」
 スバルは、アンケートを書いているようだ。
「あ。ランスターさんおかえりー」
 ティアナは、外出していたようだ。
「提出は来週でしょ」
「んー――。なんか早く出した方が通りやすそうかなーって」
「…………まあ、どーせ提出するわけだしね。あたしもかいちゃおう」
 ティアナのアンケートを見ようとするスバル。
「なに見ようとしてんのよ!」
「いや。あのー」
 ガードされるスバル。
「その…………。興味があるっていうかー――。ルームメイトとして」
 スバルは、内容が気になるようだ。
「あんたには関係ないでしょ」
 そう。
 スバルには関係ない。
「まったく」
 ため息を吐くティアナ。
「で、そーゆーあんたはナニ希望よ?」
 スバルからアンケートを奪うティアナ。
 一瞬の早業である。
「備考欄『在校中はティアナ・ランスター訓練生とのコンビ継続を希望します』?」
 スバルは、アンケートを読まれてしまった。
「やめてよね。ぞっとしない」
 だが、ティアナはスバルの意思を無視してアンケートを読み続ける。
「卒業後の配属は災害担当。将来的には救助隊…………?」
「なんだ。あんたも災害担当志望なんだ」
「ランスターさんも!?」
 ティアナも災害担当が志望のようだ。
「陸士隊の中では門戸が広いわりに昇進機会が多いからね。とんでもないハードワークだからだけど」
 二人は、知らない。
 管理局にもっととんでもないハードワークな部隊があることを……。
「あたしはまあ、人助けできる部署ならどこでもよくはあるんだけど」
 人助けできるならどこでも良いようだ。
「災害や危険があれば、血の底、水の中! 災坦や救助隊は魔法戦技能を十分に活かせるお仕事だしね」
 スバルは、話し続ける。
「ランスターさんは、陸隊で活躍して昇進して魔導師ランクもアップして空隊入りして、それで執務官試験を受けるんだよね?」
 ティアナは、執務官になるのが目標のようだ。
「それをあんたにうっかり漏らしちゃったのは、あたしの大失敗だけどね」
 ティアナは、スバルに漏らしたらしい。
「道のり結構長いから、お互い全力全壊でケガをしないようにしないとね」
「その前にあんたはここを卒業できるかどうかでしょうに」
「うう。できるー――」
 卒業できるか心配なスバル。
「あ、そうだ。ランスターさん。週末のお休みどうするの?」
「あたしは、いつも通りよ。あんたと違って帰る家も待っている家族もいないしね」
 ティアナには、家族が居ないようだ。
「じゃあさ。じゃあさっ」
 元気づけようとするスバル。
「じつはあたし、おねーちゃんと遊びに行く約束をしてるのね。それで、ご飯とおやつ奢ってくれるって話だから、ランスターさんも良かったら…………」
「冗談やめてね。馴れ合う気は無いって何度も言わせないで」
「おねーちゃんもランスターさんに、是非是非会ってみたいって」
「…………む…………」
 むっとするティアナ。
「午前中から夕方までだけだから」
 条件を出すティアナ。
「ね?」
「あんたのお姉さんには申し訳ないけど」
「ね?」
「お断りするわ。ほっといて」

 翌日
「あたし思うんだ」
 なにか思う事があるティアナ。
「あんたのその異様なワガママさと強引さだけは見習うべきところがあるって!」
 何故かプンプンしているティアナ。
「ほめっられたー――♪」
「あたしは、挨拶だけして直ぐにかえるからね! 姉妹水入らずなんだし、2人でゆっくりしなしよ!」
「うんー――」
 嬉しそうに言うスバル。
「お姉さんどこ?」
「えーとねー」
 姉を探すスバル。
「あ!」
 発見したようだ。
「スバル!」
「ギン姉〜!」
 ギンガに飛びつくスバル。
「スーバル〜!」
 すると二人は人間ハンマー投げの様にクルクル回った。
「1ヶ月ぶり〜。元気だったー♪」
 普通の人間なら目が回る勢いだ。
「もちろん。スバルも元気そうね」
「そうだギン姉。こちらランスターさん」
「ど、どうも…………」
「はじめましてー――。スバルが何時もお世話になってます」



「ごめんなさいね。何時もうちのスバルが迷惑かけちゃってるみたいで」
「ああ。いえ…………」
 ギンガと話をするティアナ。
「妹さん優秀ですよ。訓練校でも最年少組ですけど、良くやってますし、最初はともかく今は個人成績も上位グループだと思います」
「ほんとに? よかった」
 スバルの事を聞いて安心するギンガ。
「ランスターさん。ご家族は…………?」
「ああ。ええと。…………私、ひとりです」
 ティアナは、独り身だった。
「両親は私が生まれてすぐの頃、育ててくれた兄も3年前…………。天涯孤独ってやつですね」
 ティアナは、天涯孤独だ。
「ごめんなさい…………」
 謝るギンガ。
「お気になさらず」
 気にしないで言いというティアナ。
「寮制の魔法学校から訓練学校なんで、暮らしに不安もありませんし、兄の残してくれた遺族補償もありますしね」
 ティアナは、遺族補償をもらっているようだ。
「遺族補償…………。お兄さんも局員?」
「ええ。まあ…………」
「憧れだったりした?」
「…………今もです」
「…………スバルに聞いているかな」
「はい…………」
「うちも母が任務中に亡くなってるんだ。私達がまだ小さかったころのことなんだけど」
 ギンガの母親も亡くなっているらしい。
「スバルがやっているシューティングアーツね。あれ、もともと母がやってたの」
 スバルの母もやっていたようだ。
「だから私は、小さいころからやってて、スバルも基礎くらいはやってたんだけど、怖いのとか、痛いのとか、他人を痛くするのが嫌だからって、あんまりちゃんとやってなかったの」
 スバルは、真面目に練習をしなかったらしい。
「でも、あの事故に遭ってから、SAも魔法も本気でやるようになってね」
「あの事故?」
「あ。聞いてないんだ」
 ティアナは、聞いていないらしい。
「去年の春に起こった空港火災」
「…………空港一個丸ごとダメになったアレですよね?」
「そう」
 空港火災のことを話すギンガ。
「スバルね、アレに巻き込まれちゃったの」
「え…………?」
「空港のかなり奥の方で、ひとりぼっちでね。もう絶望的な状況で…………」
「それって去年のことですよね? 其れから半年ちょっとで訓練校に?」
「うん。ケガは割りと軽かったしね。決めちゃったみたいなの」
 ギンガは、スバルが決めたと言う。
「私と父さんは、止めたんだけど、訓練校に行って局員になるんだって。大急ぎで魔法を覚えてSAを練習して」
「あの子、魔法学校とか行ってなかったんですか?」
「うん。普通校」
「魔法歴1年以下…………。なるほど、道理で飲み込みが早いと…………」
 衝撃の事実が告げられる。
「てか、凄いですね。その転身ぶり。事故がよっぽどショックだったんですかね」
「んー――。というか出会っちゃったの」
「出会った…………?」
「スバルの憧れと理想そのままの人と」
「…………ああ」
 ティアナにも直ぐわかった。
「高町なのは教導官」
「そう」
 スバルの憧れは、なのはだった。
「憧れを見つけて、自分を見つめて、スバル、泣いてた…………。弱い自分が嫌いだって。強くなりたいって」

「そして、またであちゃったみたいなの」
「誰にですか?」
「月村すずか特別執務官……。聞いたことない?」
 ティアナも名前は知っていた。
「知っています。昨日、扱かれました」
「その割りに傷がないわね」
「治療してもらいました」
 ティアナたちは、あの後治療してもらったらしい。
「ああ。ごめんなさい。こっちの話ばかりで」
「いえ」
「あの子のメール、ランスターさんのことばかりかいてあるから、ランスターさんのお話も聞きたいな」
 ティアナの話も聞きたいというギンガ。
「といっても、別に普通です。魔法もミッド式で射撃しか出来ない凡人ですし、サポート用に幻術系を一寸練習してますけど…………」
 眼を輝かせるギンガ。
「幻術系!? 珍しい! 渋い! どんなの練習してるの?」
「いやあの。基礎的なところから…………」
「何か出来るのある?」
 幻術に興味があるギンガ。
「ええと」
「近代ベルカ式は、そっち系ほとんどないし、うらやましいな〜!」


「アイス、お待たせ〜」
 スバルがアイスを買ってきた。
「ギン姉とランスターさん、なんか楽しそう」

「凄いのよスバル。ランスターさん、幻術系も出来るんだって」
「いや。まだ出来ませんって、練習中です」


 時間が過ぎ夕刻……

 結局フルで付き合っちゃった…………
 アクセまでかってもらっちゃって…………


「そう言えばスバル。リボルバーナックルちゃんと整備してる?」
「してるよー」
「大事なものなんだから、大切にしてかないとね」
「うん!」
「あの。リボルバーナックルって…………」
「…………母の形見なの。母は両手で使ってたんだけど、今は私とスバルで片方ずつ」
「あたし右利き。ギン姉左利き!」


 わかってた
 悲しい思いとか
 悔しい思いとか
 きっと届かない憧れとか
 もう取り戻せない過去とか
 そんな物を持って必死になってがんばってるのは
 あたしだけじゃないんだってこと



 眼を覚ますスバル。


「…………?」
 リボルバーナックルを見る。
「あ」
 リボルバーナックルが違うことに気づく。
「あれれ…………?」
 手に持つスバル。
「なんで…………? 凄いピカピカになっている!」
 その時、ティアナも起きる。
「あ。ランスターさん?」
 ティアナは、寝ぼけている。


「ランスターさんっ!」
「あによ」
 ツンなティアナ。
「知らないわよ。あんたのナックルのことなんて」
「あ。やっぱり!」
 墓穴を掘ったティアナ。

「普段ならあんたが泣こうが嫌がろうが知ったこっちゃないけどさ、大切な思い出を傷つけたんなら謝らなきゃとは思うわよ」
 顔を洗っているティアナ。
「いつかのアレ…………悪かったわ。ごめん」
「いつかのアレ…………? え? …………え? ランスターさん、何かしたっけ…………?」
 ボケをかますスバルにキレるティアナ。
「あいたーっ!? なに? 何で蹴るの?」
 スバルを蹴るティアナ。
「うっさい。この能天気お花畑!」
 スバルを蹴り続ける。
「やー―――! よくわかんないけど、ごめんなさいぃ〜!」
 謝るスバル。


「もう来週は、一期試験なんだからね。バカやってないで、きっちり締めてくわよ!」
「うんっ!」
「コンビでいる間は、あたしの足を引っ張るような真似ゆるさないから。いいわねスバル!」
「うん…………! ティア!」
 寒気を感じるティアナ。
「ちょ…………なんで知ってんのよ。その呼び名!」
「ギン姉に話したでしょ? 友達とか仲良しの子は、そう呼んでたって」
「あたしとあんたは友達でも仲良しでもないっ!」
「でも、いまはコンビだよ。だから呼ばせて。仲間としての呼び方で」
「もー―――何でも好きにすりゃいいわよ! どーせあんたはワガママで押し通すんでしょっ!?」
「そ…………そんなことはないと思うんだけど…………」
 スバルは、ワガママを押し通すのか?
「ティアー。ティアー。おこんないでー」
「うるさいッ!」



 この時はまだ、あたしは気付いていなかった
 この変な娘とのコンビがこの先かなり長きに渡って続いていってしまうことを


「ティアってばー♪」
「うっさいっ!」



 新暦0074年 9月
 管理世界61番「スプールス」自然保護区画

「おし…………そろそろ出来上がりだ。キャロを呼んであげなきゃ」
「うん」
「ちーび! チビ竜!」

 キュクー

「ご主人様を呼んでおいで。ごはんだよーって!」
 呼びに行くチビ竜。


「あの子が来てから鳥獣調査がはかどっていいわね。あの年でもう大した召喚魔導師だしなぁ。鳥獣使役はお手の物…………かな」
 キャロは、鳥獣使役はお手の物らしい。
「あの子のは使役っていうか、『友達』ってかんじだけどね」


「みんな手伝ってくれてありがと! また見に来るから元気でねー」
 鳥たちに手伝って貰ったらしいキャロ。
「フリード♪」

 キュクルー

「そっか。そろそろごはんの時間だね」


「動物好きだし経験積んでけば、いい保護官になりそうなんだけど、保護隊に長居はしてくれないだろうなぁ」
「でしょうね」
「本局の偉いさんが目をかけてる子なんだっけ?」
「ていうか保護者よ。保護責任者」
「そのうち、その人の所に行っちゃうじゃないかな」
「キャロもその偉いさんのこと大好きみたいだしね」
「よくメールが来てるよな…………。なんてったけ?」
「アリシア・T・ハラオウンとフェイト・T・ハラオウン。本局次元航行部隊所属の執務官だって」


「おまたせしましたー! 果物摂ってきましたよー!」
「おー。ありがとー! 転ばないでよー」
「今日のメシもうまいぞー♪」


 次回予告

 はやて「機材の運び込みが始まった隊舎」
 シャマル「慌ただしく機材を搬入する局員」
 ツヴァイ「続々集まってくるメンバー」
 アインス「ツヴァイ、迷惑はかけるなよ」





 はやて「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第107話『Standby Riot 6』」



訓練校での日々は続くって感じだな。
美姫 「ティアとスバルの仲が少し変化したわね」
どちらかというと、ティアナの方が変化という感じだったかな。
美姫 「後はすずかがまさかの降臨ね」
いや、訓練であれは辛すぎるだろう。
美姫 「でも、あれこそがすずかって感じだしね」
確かに。さて、次は何が起こるのやら。
美姫 「それじゃあね〜」
ではでは。


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