第107話「Standby Riot 6」
新暦0075年 3月
ミッドチルダ中央区画湾岸地区
古代遺失物管理部『機動六課』本部隊舎
引っ越し業者と応援の局員が荷物を隊舎に運び込んでいく。
慌ただしく部隊立ち上げの準備が進む。
「なんや、こーして隊舎を見ていると、いよいよやなーって気になるなー――」
「そうですね。はやてちゃん…………」
シャマルが言う。
「八神部隊長♪」
シャマルが言い直す。
「あはは♪」
照れ笑いするはやて。
「良い場所があってよかったですねぇ」
「交通の便がちょう良くないけど、ヘリの出入りはしやすいし、機動六課にはちょうどええ隊舎や」
「なんとなく海鳴市と雰囲気もにていますしね」
「あはは。そういえばそーや」
海鳴市と雰囲気が似ている場所のようだ。
「部隊長室は、まだ机とか届いてないんですよね?」
「ツヴァイ用のデスクでええのがなくってなー――。エイミィさんに探してもらってるんよ」
ツヴァイ用のデスクが無いらしい。
機動六課
駐機場
「ヘリの実機は、まだ来ていないんだな」
「今日の夕方到着っス」
ヘリは、まだ来ていなかった。
「届くのは武装隊用の最新型! 前から乗ってみたかった機体なんで、これがもー楽しみで!」
興奮気味のヴァイス。
「隊員たちの運搬がおまえとヘリの主な任務だ。お前の腕からすれば、物足りなくはあるかもしれんが」
「いや、なに。ヘリパイロットとしちゃ操縦かんを握れるだけでも幸せでしてね。も一杯やらせてもらうっスよ」
「シグナム副隊長〜! ヴァイス陸曹〜ッ!」
二人の名前を呼んで駆け寄ってくる女性。
「アルト・クラエッタ二等陸士ただいま到着です!」
「ああ。早かったな」
「なんだおめー。半年ばかり見ねーうちに背ぇ伸びたか?」
「えへへ。3センチほど」
背が伸びているらしいアルト。
「ヘリは、まだ来てないんですか? あのJF704式が配備されるって聞いて急いで来たんですよ!」
「まだだよ。夕方だ」
「相変わらずだなアルト。通信士研修は、滞りなく済んだのか?」
「はいっ! シグナム副隊長!」
通信士研修は終わったらしいアルト。
「ついでにいくつか資格も取ってきました!」
「うぉ! ナマイキな資格が並んでる!」
ナマイキな資格があるようだ。
「えへへー――。いつかヘリパイロットのAも取りますよー――」
「人員配置の都合で、整備士や通信スタッフは新人が多い。お前はもう新人気分ではいられないぞ。しっかり頼むぞ、、先輩としてな」
「はいっ!!」
敬礼するアルト。
「こんにちはー――。失礼します! アルト・クラエッタ二等陸士は、こちらに…………」
「あ…………。ルキノさん!」
新たなスタッフがやって来た。
「おつかれですー――!」
「ああどうも、おつかれさまです!」
「あ。紹介しますねー――」
ルキノの紹介を始めるアルト。
「通信士研修で一緒だったルキノさんです」
「本日より機動六課『ロングアーチ』スタッフとして情報処理を担当させていただきますルキノ・リリエ二等陸士です!」
「前所属は次元航行部隊で艦船アースラの事務員だそうで」
「アースラには昔幾度か大変お世話になった。艦長のクロノ提督はご健勝化?」
「はいっ」
クロノは健勝のようだ。
「今はアースラを降りてXV級新造艦の艦長をされています」
「そうか」
クロノの近況を聞いたシグナム。
「お前たちの上司については聞いているか?」
「はい…………通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士と」
「指揮官補佐のグリフィス・ロウラン准陸尉ですね」
「おう。そのお若い准陸尉殿とメカオタ眼鏡の一等陸士がお前らの直接の上司だ」
「「はいっ」」
「2人は今後コンビで通信管制や事務作業をしてもらうことになる」
「「はいっ!」」
「シャリオが戻るまで2人で隊舎の中でも見回っているといい」
「「はいっ!」」
二人は見回りに行くようだ。
「ヴァイス陸曹〜ヘリが到着したら!」
「あー。通信で呼んでやるよ」
ヘリが到着したら連絡する約束をするヴァイス。
「大丈夫なんスかねえ。あんなガキんちょどもで」
「入隊したてのお前を見て私は全く同じ感想を持ったものだよ。なあ8年目?」
「いやシグナム姐さん。それは言わねー約束で」
「隊舎内、広いですねえ」
「ちょっと古い建物らしいですけどね」
「ん? ルキノさん。どーかした?」
「あ! おつかれさまですっ!」
「おつかれさまですー――♪」
ツヴァイが浮いている。
「か」
「かわいい…………」
ツヴァイに見とれるアルトとルキノ。
「なにあの子? 誰かの使い魔とか?」
「そうかも! あんな小っちゃい子は初めて見るけど!」
「陸士制服きてるしー」
そんな二人の前にツヴァイが現れた。
「あー――。おつかれさまです。クラエッタ二等陸士とリリエ二等陸士ですね」
「はいっ」
「あ。え」
「2人のお話はシグナムやフェイトさん、アリシアさんから伺ってるですよー」
豆鉄砲を喰らった感じのアルトとルキノ。
「はじめまして。機動六課部隊長補佐及びロングアーチスタッフ、リインフォースU空曹長です!」
上司と言う衝撃が二人を襲う。
「し…………失礼しましたっ!」
慌てて敬礼する二人。
「あー――いいですよ。そんなに固くならなくて」
ツヴァイは、言う。
「私の方が年下ではありますし、ロングアーチスタッフ同士仲良くやれたらうれしいです」
「「あ…………ありがとうございます!」」
「はいです」
話を続けるツヴァイ。
「『アルト』のことは、シグナムから聞いてたですが、私のことは聞いてなかったです?」
ツヴァイが聞く。
「あの。ご家族に『ツヴァイ』という小さな末っ子が居るとは伺っていたんですが、まさか、その」
「『ツヴァイ』? って、若しかして……」
「あははー――。シグナムらしい説明不足さですー――」
「ツヴァイ。ちゃんと仕事はしているか?」
ツヴァイと似た大人が現れた。
「はいですー――」
「あの、小さいリインさんとはどういったご関係で……」
「ああ。まだ言っていなかったな」
紹介を始めるアインス。
「私は、リインフォース・アインス二等空尉だ」
再び二人に上司というなの二文字が落ちる。
「アインスって言うことは……」
「私がオリジナルだ」
アインスが、夜天の書の管制人格だということは伏せられている。
同日ミッドチルダ西部21区
管理局市民窓口センター
「モンディアルさん。エリオ・モンディアルさ〜ん」
「はいっ!」
エリオは、陸士服を着ている。
「IDカードの更新ですよね。更新事項は、武装局員資格と魔導師ランク陸戦B。役職は、陸士研修生改め三等陸士。お間違いないですか?」
「はいっ。大丈夫です」
「ではこちらが正規の管理局員としての新しいIDカードです」
「はい。ありがとうございます」
新しいIDカードを手にするエリオ。
「エーリーオー♪」
「シャーリーさん!」
「更新終わった?」
「はいっ」
「ふっふっふっふっ…………それじゃあ…………」
何かを言うようだ。
「アリシアさんとフェイトさんからお祝いのメッセージ〜〜」
『エリオ! 正式採用おめでとう…………』
「フェイトさん!!」
『あたしもいるぞー――』
「アルフ!」
『後、アリシアとリニスもいるぞー――』
『エリオおめでとう』」
「アリシアさん」
『これも私の教育が良かったと言う物ですね』
リニスが言う。
リニスは、エリオの教育係もしていたようだ。
「あれ? でもアリシアさんとフェイトさん、お仕事中じゃ。それにアルフとリニスも…………」
『いま、食事休憩中』
『あたしは、ちょっとおつかいがあってな』
『わたしはアルフの監視ですね。肉を食い散らかさないか』
「エリオの事だから大丈夫だと思っていたけど、試験も研修も無事に終わって良かった」
「がんばったなー――」
「わたしが教えたのですから当然の結果です」
リニスが言う。
『あるがとうございます!』
「出会った頃は、あんなちっちゃかったエリオがもう正規の管理局員なんて、わたしはなんだか感慨深いやら寂しいやら…………」
フェイトは、寂しいようだ。
「すみません。フェイトさん…………」
何故か謝るエリオ。
「なんで謝るのー――。いいんだよ。エリオが選んだ夢なんだから」
『はい…………』
「わたしとアリシアとの約束もエリオはちゃんよ守ってくれるもんね」
「友達や仲間を大切にすること。戦う事や魔法の力の怖さと危険を忘れないこと。どんな場所からも絶対元気で帰ってくること!」
『そう。六課では同じ分隊だから、わたしや新しい仲間たちと一緒に頑張ろうね』
「はいっ!」
エリオは、返事をする。
「それで、アリシアさんは、どうなるんですか?」
『まだ、メンバーは決まっていないよ。色々探しはいるけどね』
『シャーリーは、この後は?』
「エリオが訓練校に挨拶に行くのに付き合って、それから六課の隊舎に行ってきます」
シャーリーの予定は、決まっているようだ。
『じゃエリオ。本当におめでとう』
「ありがとうございます」
『あたしも今度お祝いしてやからなー――』
「あはは…………。ありがとうアルフ」
「じゃあねー――」
『はいっ!』
「エリオは、すぐに六課に合流ってわじぇはないんだよね?」
「まだ、」出向研修の日程が残ってるんだって
エリオは、まだ研修があるらしい。
「うーん。でも今の日程だとエリオとキャロの初顔合わせに私は立ち会えそうにないのが残念だなー――」
「そーか。キャロも保護隊から陸士研修の日程があるもんな」
キャロも研修があるようだ。
「まあ。あの2人ならきっと仲良くなれるよ」
「うん。わたしもそう思う」
予感を感じるフェイト。
「キャロは、自然保護隊の皆さんにお別れの挨拶をしてるころかな」
「泣いていないといいんだけどなー――」
管理世界61番『スプールス』
自然保護区
「じゃあキャロ、忘れ物ないね」
「はい! 本当にお世話になりました」
スプールスでは、一つの別れを迎えていた。
キャロが、自然保護隊を離れるのである。
「あー――。いざ行っちゃうとなると寂しいもんだね〜〜!」
「ミラさん…………」
「キャロにはずとっといてほしかったよ〜〜」
「おいおい。キャロの保護者の方がいる舞台に行けるんだし、こんな山奥から都会の陸士隊に栄転でもある、華々しい門出じゃないか」
「タントさん。あの、わたし保護隊でお世話になって、お仕事をさせてもらって、本当に楽しくて…………」
「あたしも楽しかったよ。キャロはまだちっちゃいけどさ、一人前の魔導師になれるように、いつか大好きなフェイトさんの事を助けてあげられるようにって、いつも一生懸命頑張ってたことあたしやタント達はちゃんと知ってる」
キャロを抱きしめる。
「キャロはもう保護隊員としては一人前だからさ、陸士も魔導師もきっとしっかりやってけるよ。がんばっておいで!」
「ありがとうございます。がんばります…………っ」
「じゃあ、行っといでキャロ」
「気が向いたら何時でも帰っといで。もちろん仕事は手伝わせるけどね!」
「ありがとうございます! 行ってきますっ!」
「…………行っちゃったな」
「うん。あの子の新しい行先で優しくしてくれる先輩とか、親友とか沢山出来るといいな」
「心配ないさ。いい子だからなキャロは」
「うん」
だが、キャロは六課ではやてにスキンシップと称して胸を揉まれることになるのだった。
ミッドチルダ南部
陸士386部隊 本部隊舎
「ええ。2人ともうちの突入隊のフォワードです。新人ながらいい働きをしますよ」
誰かと話をしている担当者。
「2年間で実績もしっかり積んでます。いずれそれぞれの希望転属先に推薦してやらんととは思ってましたが、本局から直々のお声がかりとは、うちとしても誇らしいですなぁ」
誇らしげに言う担当者。
「スバル・ナカジマ二等陸士。うちのフォワードトップ…………。武装隊流に言えばフロントアタッカーですな。とにかく頑丈で頼もしい子です。足も速いしタテ移動も優秀です。インドアや障害密集地なら下手な空戦型よりよっぽど早く動きますな」
『破壊突破行きますっ』
映像を見せる。
「突破力もある。本人の希望は特別救助隊でしてね」
「なるほど」
「で…………2人目。シューター…………放水担当ですね。ティアナ・ランスター二等陸士」
ティアナの説明を受ける。
「武装隊向きの射撃型な上に本人も将来的には空隊志望とかで、正直うちではどうかと思ったんですが、訓練校の学長先生からの推薦もありまして、射撃型だけあってシューターとしていい腕ですし覚悟がいいんでしょうね。飲み込みは早いし今やるべきことを完璧にこなすって気概があります」
二人の説明を続ける担当者。
「ナカジマもランスターも魔導師ランクは現在Cですが、来月、昇格試験を受けることになってます」
「あ…………両利きですね?」
なのはが言う。
「ええ。魔力カートリッジ用のデバイスですね。自作だそうです」
ティアナのデバイスは自作だしい。
「何より訓練校からのコンビ3年目ってことで」
コンビ歴3年目に入るようだ。
「この2人の技能相性やコンビネーション動作はなかなか大したもので…………」
「ああ。いや」
答えに困る担当者。
「航空教官のヴィータ三尉や戦技教導隊の高町一尉がご覧になれば、穴だらけだとは思いますが」
「いえ」
「交代申し送りは以上です」
シフト交代のようだ。
「よろしくお願いしますっ!」
「おつかれさまでしたっ!」
引継ぎが終わったようだ。
「ティアおつかれー――」
「んー――」
伸びをするティア
「Bランク試験来月…………ていうかもう再来週だけど、準備オッケーだよね?」
「まぁね」
再来週は試験のようだ。
「任務や待機の合間にずっと練習してきたんだし、あたしもあんたもね」
「うんっ!」
「て、ゆーかね。卒業後の配属部隊とグループまで一緒どころか、何が悲しくて魔導士試験まで二人一組枠で受けることになってんのよ?」
「あははー――なんかずっとセット扱いだよねぇ」
ここまでずっとセット扱いの二人。
「でも、訓練校の首席卒業とDとCランク一発合格! ここまではティアの目標通りにちゃんと来てるよね」
「まあね」
「一緒に頑張ろうねティア」
「あんたに言われなくても頑張るわよ!」
「あははー――♪」
「でも別に無理して付き合うことないのよ。あんたも自分の夢があるんだからさ」
「んん?」
「あたしの夢は、まだまだ遠い空の向こうだしね」
「だからいいんだ。まだ当分はティアといっしょ!」
「あー――うれしくない」
「あ! そうだティア駅前のお店、今日はサービスランチの日だよ! 食べに行かなきゃ!」
「はいはい」
ミッドチルダ北部
旧ベルカ自治領
『聖王教会』大聖堂
「機動六課…………かぁ。お子様だったはやても、もう部隊長か」
「出会ってからもう8年よ。はやても立派な大人だわ」
はやてを大人と言うカリム。
「部隊の後見人で監査役でもあるクロノ提督はいろいろお忙しいし、わたしやシャッハも教会からあんまり動けないし」
カリムは、動けないようだ。
「はやてのこと、助けてあげてねロッサ」
「了解。姉さん。僕らの可愛い妹分のため、ヴェロッサ・アコース頑張りますとも」
「では、これからする私のお願いに“はい”か“イエス”でお答えください♪」
アンゼロットが現れた。
「アンゼロットさん、いらっしゃい」
「ぼくは忙しいので、之で……」
逃げようとするアコース。
「そこの貴方。どこに行くのですか?」
アコースは、アンゼロットに捕まった。
「私のするお願いに“はい”か“イエス”でお答えください」
アンゼロットの口撃。
「拒否権は?」
「あると思いますか?」
勝ち目がないと判っているアコースは聞く。
「其れで、お願いとは何ですか?」
「お茶を淹れてきて下さい」
「其れぐらいお安いことですよ」
お茶を淹れに行くアコース。
「アンゼロットさん。今日は一緒ではないのですか?」
「わたしのマスターは、忙しいのです」
すずかは、忙しいようだ。
「本当は、はやての部隊に参加して欲しかったわ」
「その代り、さつきさんが行きますわ」
「さつきさんが行かれるのなら心配はないわね」
だが、統計規模に引っかかるのだ。
さつきは、すずかと同様∞ランク魔導師なのだ。
「お茶を淹れてきましたよ」
「では、お茶にしましょう」
仕事を中断するカリム。
「そやけど最初の『レリック』を運んでからもう4年か、なんやあっとゆーまやったなぁ」
「ほんとうです」
「そやけどこれでやっと片手間やなしにレリック事件を追いかけられる」
準備が整ったようだ。
「カリムやクロノくんが尽力してくれて、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんが手伝ってくれて、集まった皆全員でたった一つの事件を追いかけるわたしたちの機動六課。私の命への恩返しと夢の舞台の始まりや」
はやては言う。
「」しっかり、きっちりやってかんとな
「はい」
「すずかちゃんやアリサちゃんも来れればよかったですね」
「仕方ないよシャマル。すずかちゃんとアリサちゃんは、大学にも行ってるんやから」
「今回の事件、特捜課もバックアップしてくれるそうですね」
「派遣されてくるとしたらローエングラム部隊や」
そして、本局特捜課部隊長室では……。
「弓塚三佐! 君には機動六課に出向してもらう」
「機動六課ですか? 六課って、はやてちゃんが立ち上げた?」
「そうだ」
「でも、魔導師ランクは……」
「それは、心配ない。特例が適用される」
「判りました。弓塚さつき・ブリュンスタッド、機動六課に出向します」
ホームズに敬礼するさつき。
「其れから、あの三人も出向させます」
次回よりStrikreS本編にはいります。
次回予告
スバル「やって来た昇格試験の日」
ティアナ「ちゃんとやってよね」
スバル「全力全壊!!」
ティアナ「だから全力全開は止めなさいって」
スバル「そして再開するあの人」
はやて「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第108話『空への翼』」
六課が立ち上げられたな。
美姫 「みたいね」
これでいよいよ三期へと話は進むのか。
美姫 「原作と違い、キャラが濃いし多いからね」
一体、どんな変化が起こるのか。
美姫 「今回はこの辺で」
ではでは。