第12話「決戦は海上の上でなの」






 
「と言うわけで、本日0時をもって本艦全クルーの任務はロストロギア、ジュエルシードの捜索と回収になります」
 アースラの任務が変更になったようだ。
「また本件においては、特例として問題のロストロギアの発見者であり結界魔導師である」
「はい」
 ユーノが椅子から立ち上がる。
「ユーノ・スクライア」
「それから彼の強力者である現地の魔導師さん」
「高町なのはです」
「異世界の吸血鬼の王族の……」
「弓塚さつき・ブリュンスタッドです」
「現地の吸血鬼で魔導師さん」
「月村すずかです」
「以上4名が臨時局員の扱いで事態に当たってくれます」
「「「「よろしくお願いします」」」」
「そして、何故かついて来た……」
「月村忍よ」
「彼女にはメカニックチームのアシスタントをしてもらいます」
 忍は、メカニックのアシスタントとなった。
 その時の忍は不気味な笑みを浮かべていたらしい。



「じゃあ、此処からはジュエルシードの位置特定は此方でするわ。場所がわかったら現地に向かってもらいます」
「艦長、お茶です」
「ありがとう」
 そう言って砂糖つぼに手をのばす。
 砂糖を山盛り二杯とミルクを入れたものを飲むリンディ。
「そう言えば、なのはさん、すずかさん、学校の方は大丈夫なの?」
 手を打ってあると説明するなのは。


 結界内に火の鳥がいる。
 コレが捕獲対象のジュエルシードのようだ。
「捕まえた! なのは!!」
「う、うん」
≪Sealing mode, setup――≫
 ピンクのリボンのような物が火の鳥に伸びる。
≪Stand by? ready.≫
「リリカル・マジカル……ジュエルシードシリアル8――封印!」
≪Sealing!≫
 ジュエルシードを封印するなのは。
≪Receipt number eight.≫


「状況終了です。ジュエルシード、ナンバー8無事確保! お疲れ様、なのはちゃん。ユーノくん」
『は〜い』
「ゲートを作るね。そこで待ってて」
「う〜ん、二人ともなかなか優秀だわ。このまま、うちに欲しいくらいかも」

「この黒い服の子、フェイトって言ったけ?」
「フェイト・テスタロッサ……嘗ての大魔導師と同じファミリーネームだ!!」
 車椅子に座ったクロノが言う。
「へぇ〜そうなの?」
「大分前の話だよ。ミッドチルダの中央都市で魔法実験の最中に次元干渉事故を起こして追放されてしまった大魔導師……」
「その人の関係者!?」
「関係者とは限らないでしょう?」
「さぁね、本名とも限らない」
「やっぱりだめだ!! 見つからない。フェイトちゃん、よっぽど高性能なジャマー結界を使っているみたい」 
 ファイトは高性能な結界を使っているようだ。
「使い魔の犬……コイツがサポートしているんだ」
「お陰で、二個もこっちが発見したジュエルシードを奪われちゃっている」
「確り探して補足してくれ!! 頼りにしているんだから」
「はいはい」

「フェイトちゃん、現れないよね」
「うん。こっちとは別にジュエルシードを集めて行っているみたいだけど」


「ダメだフェイト、空振りみたいだ」
「そう……」
「やっぱ向こうに見つからないように隠れて探すのなかなか難しいよ」
「うん。でも、もう少し頑張ろう」
 腕の包帯を解くフェイト。


 そして、私たちがアースラに移ってから10日目……。
「私たちが手に入れたジュエルシードは[、\、]Uの計3つ。そしてフェイトちゃんたちが手に入れたのがシリアルUとXの二つだから……」
「あと6個か……」

「残り6つ、見当たらないわね」
「捜索範囲を地上以外の所に広げています。海が近いので、若しかしたらその中かも……例の黒い服の子とあわせてリミエッタ執務官補佐が探してくれています」
「そう……」

 なのはたちは、食堂で軽食を食べていた。
「今日も空振りだったね」
「うん。若しかしたら結構長く掛かるかもね。なのは、ごめんね」
「ふぁっ?」
「寂しくない?」
「べつにちっとも寂しくないよ。さつきさんとすずかちゃんも一緒だから」
「さつきさんとすずかちゃん、出動掛からない理由聞いた?」
「うぅ〜んうん、聞いていないよ」
「あの二人の魔導師ランクが関係しているようなんだ」
「さつきさんとすずかちゃんってそんなに高いの?」
「高いって物じゃないよ。普通じゃ考えられないくらい高いんだって。その為、出動待機にしているみたいなんだ」
「すずかちゃんは実戦経験がないからわかるけど、さつきさんは如何して?」
「なのはも見ただろう!? クロノを殺しかけた魔力砲撃を……」
 さつきがその気になれば海鳴を地図上から消すことが出来るのだ。
「あの魔力がジュエルシードに注ぎ込まれたら大変なことになるからなんだって……」
「それよりもユーノくん聞いた!?」
「なにを?」
「すずかちゃんのお姉さんのこと……」
「技術部に入り浸っているって話しだろ?」
「うん……」
「それにしても凄いね。短期間で管理局の技術をモノにしてしまうんだから」
 忍は管理局の技術を幾つかものにしたようだ。
 恐るべし忍。
 オマエはその技術で何をしようというのだ。
「なのはちゃんにユーノくん!!」
 そこへすずかがやってきた。
「すずかちゃん!!」
「私もいい!?」
「うん」
「すずかちゃん、前線に出れないけど退屈じゃない?」
「退屈じゃないよ。色々な技術が身につけられるから……」
「あはっはっはっ……」
「すずかちゃん、お姉さんに負けず劣らずメカの虫だね」
 すずかも忍に負けないくらいのメカの虫だった。
「お姉ちゃんも戦闘魔導師としての才能あるんだって」
「忍さんも?」
「戦闘もだけど、メカの方がいいて言って個室にこもったままなの。今度うちに来たときは新しい警備システムが増えていると思うよ」
 月村家の警備システムが凶化されるらしい。
 最初のターゲットは誰になるのか?

 その時、アラームが鳴り響く。
『エマージェンシー!! 捜索区域の海上にて大型の魔力反応うを感知!!』
 アラームがなり続ける。

「なんってことしているの!? あの子達!!」



 海鳴の海上で大魔法を使おうとしているフェイト。
「アルカス・クルタス・エイギアス。煌きたる天神よ、いま導きのもと降りきたれ……バルエル・ザルエル・グラウゼル」
 無数の稲妻と共に雨が降り出す。

 ジュエルシードは、多分海の中……。
 だから海へ電気の魔力流を叩き込んで強制発動させて位置を特定する……。
 そのプランは、間違ってはいないけど……でもフェイト……。

「撃つは雷、響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス……!」
 巨大な金色の魔力の塊が現れる。
「はぁぁぁっ!!」
 その塊を海中へ叩き込む。
 すると海が荒れ暴風が引き荒れる。。 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……。見つけた!! 残り六つ」
「こんだけの魔力を撃ち込んで、更に全て封印して……こんなのフェイトの魔力でも限界越えだ!!」
「アルフ!! 空間結界とサポートをお願い」
「あぁ、任せといて!!」

 だから、誰が来ようが、何が起きようが、私が絶対に守ってやる。
 とは言え、あの女が来ればフェイトを守りきれない……。
 あの女が来る前に終わらせないと……。


「行くよ、バルディッシュ。……がんばろう」


「なんとも呆れた無茶をする子だわ」
「無謀ですね。ほぼ、間違いなく自滅するでしょう……あれは個人が出せる魔力の限界を超えています」
「私なら余裕の出力よ」
「さつきさんは、SSSクラスの魔導師だから言えることよ」

「フェイトちゃん!!」
 なのはがブリッジに駆け込んでくる。
「あのっ……私、急いで現場に……」
「その必用はありません。放っておけば、あの子は自滅します」
 モニターを見るなのは。
「かりに自滅しなかったとしても、力を使い果たした所で叩けばいいだけです」
「でも……」
「今のうちに捕獲の準備をしてください」
「了解!!」


 フェイトとアルフは、強制発動させたジュエルシードと格闘していた。
 フェイトは肩で息をしている。


「私たちは、常に最善の選択をしないといけないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実……」
「でも……」
 意見するなのは。
『(行って!!)』
「あっ」
『(なのは、行って!!)』
 行ってというユーノ。
『(僕がゲートを開くから、行って、あの子を……)』
「(でも、ユーノくん……私が、あの子と……フェイトちゃんと話をしたいのは、ユーノくんとは……)」
『(関係ないかも知れない……。だけど、ぼくは、なのはが困っているのなら、力になりたい。なのはが、僕にしてくれたみたいに……)』
 ゲートを開くユーノ。
「キミは……!!」
 ゲートに駆け込むなのは。
「……あ……」
「……あっ……」
「ごめんなさい!! 高町なのは、指示を無視して勝手な行動をとります」
 印を結ぶユーノ。
「あの子の結界内に転送!!」
 転送されていくなのは。


「行くよ、レイジングハート。風は空に、星は天に。輝く光はこの腕に――不屈の心はこの胸に! レイジングハート――セーット・アーップ!」
≪Stand by.....ready!≫
 変身するなのは。


「妾達も、出て行こうか?」
 出て行こうかと聞くさつき。
「認めません!! 出て行くことは許しません」
「ゲート閉鎖しました」
「ゲートを閉鎖しようが無駄だ。ゲートを使わずとも現場へは行ける」
 ゲートを使わずに現場に行けると言うさつき。
「(聞こえるか!? これから現場へ乗り込む)」
『(今からですか?)』
「(直ぐに参るが良い!!)」
 すずかを呼ぶさつき。
 さつきに呼ばれたすずかがやってくる。
「私たちもなのはちゃんのところに行かせてください」
「ダメです」
「あなた方の魔力は大きすぎます。出す訳には行きません!!」
「理由は、わかりましたね。貴女達の持つ力はあまりにも大きすぎます」
 さつき達が持つ力が巨大だかららしい。
「貴女達には引き続き、待機していてもらいます」
「少し遅かったな……」
「遅かった?」
「既に転移の呪文は詠唱済みだ!!」
「ま、待ちなさい!!」
 リンディの静止もむなしくさつきとすずかは転移して行った。
「追跡して拘束しますか?」
 対応を聞くヒバリ。
「拘束しようと考えない方がいいですよ」
「月村さん!!」
「私の家が吸血鬼だとお話しましたよね」
「それは聞かせてもらいました」
「私の家は、この世界の……吸血鬼の王族なんです」
「王族って……」
 月村家は、吸血鬼の王族だった。
「貴女がなんと言おうと拘束します」
「彼方たちに、すずかを拘束できるかしら」
 忍は、すずかを拘束することは出来ないと言い切る。
「さつきさんの血を受けたすずかは、私よりも強いわよ」
「では、貴女も……」
「えぇ、私も強いですよ。彼方達の身体に直接教えて差し上げましょうか?」
 忍は瞳の色を赤くして言う。
 忍からは魔力があふれ出る。
「脅しても無駄だ!! 彼女たちは拘束する」
「じゃあ、見せしめに誰かを殺そうかな?」
 見せしめに誰かを殺すと言う忍。
 忍は、ターゲットを見定める。
「決めた!!」
 ターゲットを決めたようだ。
 ターゲットに選ばれたのは……。
「彼方にしたわ」
 ターゲットにされたのはクロノだった。
「そう言えば、私から彼方へのお返しがまだだったわね」
 お返しと言う台詞にクロノの背中が凍りつく。
 クロノの首を片手で掴んだ持ち上げた。
「すずか、まだ怒ってるわよ!?」
「……お、怒っている……?」
「彼方に、いきなり胸を触られたの、まだ根に持っているわよ。早くきちんと謝らないと、殺されるわよ」
「だから、アレは事故だって……」
「あまり私を怒らせないでね。怒らせると、すずかには悪いけど、私が殺すから……」
 笑顔の陰に凄まじい殺気がこもっている。
「あのっ……怒っていません?」
「怒っていないよ」
 忍は、怒っている。
「絶対怒っているだろう?」
 クロノの首を更に強く締め付ける。
「ぐっ」
「とりあえず一発……」
 そう言って忍は目に見えな速度でクロノの腹を殴った。
「がふっ」
 クロノは、血を吐いた。
 忍は、クロノの首を離した。
 放されたクロノは床で腹部を抱え苦しんでいる。
「クロノ!?」
「ごふっ」
 再び血を吐くクロノ。
 目に見えなかったが、忍のパンチは、クロノの腹部に深々とめり込んでいたのだ。
 床でピクピクと痙攣をクロノは起こしたいる。
「拘束命令の撤回はしないんですよね?」
 リンディは決断を迫られる。
「艦長!! このままでは、クロノ執務官が殺されてしまいます」
「仕方ありません。クロノの開放と引き換えに拘束命令を撤回しましょう」
 クロノを開放する忍。
「クロノを直ぐに医務室へ……!!」
 ストレッチャーに乗せられ医務室に運ばれていく。
 クロノの全治が再び伸びたのは言うまでもない。



「フェイトの邪魔をするな!!」
 ユーノが現れアルフの攻撃を防ぐ。
「違う!! 僕たちは君たちと戦いにきたんじゃない」
「ユーノくん!!」

「なにをやっているんだ!?」


「(ごめんなさい!! 命令無視は後でちゃんと謝ります。だけど……放っておけないの!! あの子、きっと一人ぼっちなの。一人きりが寂しいのは、私、少しだけどわかるから!!)」
「まずは、ジュエルシードを停止させないと、マズイことになる」
 海上には無数の竜巻が海水を巻き上げている。
「だから、今は……封印のサポートを……」
「その必要はない!! 我等二人だけでこと足りる」
「えっ!?」 
「行くぞ!!」
「は、はいっ!!」
「「空想具現化マーブル・ファンタズム!!」」
 さつきとすずかが同時に空想具現化マーブル・ファンタズムを発動させた。
 空想具現化マーブル・ファンタズムで出した鎖で荒れ狂う竜巻を捕らえる。
 鎖は、全ての竜巻の動きを封じている。
「……………………」
「……………………」
 ユーノとアルフは、言葉を失う。

「フェイトちゃん!!」
 フェイトの元へ近寄るなのは。
「手伝って、ジュエルシードを止めよう!」
 レイジングハートから光の帯のようなものがバルディッシュへ伸びる。
≪Power charge...≫
≪Supply complete!≫
 突然の行為になのはを見つめるフェイト。
「二人でキッチリ、半分っこ!!」
 さつきとすずかは、涼しい顔で、ジュエルシードを押さえ込んでいる。
 そして、ユーノとアルフは、仕事がないとばかりに、その光景を見ている。
「さつきさんとすずかちゃんが止めてくれている。だから……今のうち」
 フェイトはなのはを見つめている。
「二人でせーので、一気に封印!」
≪Shooting mode.≫
 レイジングハートが変形する。
 なのはは、嵐の中に突っ込んでいく。

 一人ぼっちで寂しい時に一番して欲しかったことは……『大丈夫!?』っと聞いてもらう事でも、優しくしてもらう事でもなくて……。

 なのはは、フェイトの方を見る。
 フェイトは、固まったままだ。
≪Sealing form, setup...≫
 固まったフェイトの代わりにバルディッシュが答える。
「……バルディッシュ……?」
 フェイトにウィンクして合図を送るなのは。
「デバインバスター、フルパワー……いけるね?」
≪ALL RIGHT, MY MASTER?≫
 デバインバスターの発射準備に入るなのは。
 それに習いフェイトも自分の魔法の準備を行う。
「せーーのっ!」
「サンダーーー」
「デバイィンーーー」
「レイジー!」
「バスターァァァァ!」
 フェイトのサンダーレイジとなのはのデバインバスターがほぼ同時に放たれる。


「ジュエルシード、6個、全て封印を確認しました」
 エイミィが報告する。
「なんてデタラメな魔力だ」
「でも、凄いわ……」


 海上には雨が降りしきる。
 海上に青白い光の現われ封印されたジュエルシードが海底から現れる。
 その数、6つ……。


 ……おんなじ気持ちを分かち合える事……。
 寂しい気持ちも……悲しい気持ちも……半分っこにできる事……。
 ……あぁ……そうだ……。
 やっとわかった……。
 私、この娘と分け合いたいんだ。

「友達になりたいんだ!」
「……あっ……」
 なのはとフェイトを見守るユーノとアルフ、さつきとすずか。


 アースラに警報が鳴り響く。
「次元干渉? 別次元から本艦及び戦闘空域に向けて魔力攻撃来ます」
 エイミィが声を荒げる。
「後、6秒!!」
 次の瞬間、アースラを魔力攻撃が襲った。
 クルー達が悲鳴を上げる。


 戦闘空域にも魔力攻撃が襲ってきた。
「……あっ……母さん?」
 次の瞬間、フェイトに魔力攻撃が直撃した。
「……あぁぁぁぁぁぁっ!!」
 魔力攻撃に悲鳴を上げる。
「フェイトちゃん?」
 魔力攻撃に意識を失ったフェイトが落下する。
 落下するフェイトをキャッチするアルフ。
 フェイトを抱えたままジュエルシードに向かうアルフ。
 其処へクロノの代わりにヒバリが現れた。
 アルフは、そのヒバリを殴り飛ばした。

 3つしかない……。

 3つのジュエルシードは……。
「私が確保したよ」
 すずかの手中にあった。

「う゛ぅぅぅぅぅっ!! うわぁぁぁぁぁっ!!」


「逃走するわ、補足を……」
「駄目です」
「機能回復まで後、25秒!! 追いきれません!!」
「機能回復まで対魔力防御!! 次弾に備えて」
「「はいっ!!」」
「それから、なのはさん、ユーノくん、さつきさん、すずかさん、ヒバリを回収します」


 次回予告

 なのは「事態はいよいよ、大詰めに……」

 ユーノ「最後の嵐に立ち向かう為、それぞれの胸に秘める誓い」

 なのは「そして、私はフェイトちゃんに思いを告げて……」

 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第13話『それぞれの胸の誓いなの』」


概ね原作通りに進んでいるかな。
美姫 「さつきやすずか、忍の登場で少し違う形にはなっているけれどね」
にしても、クロノはご愁傷様だな。
美姫 「この調子だと最終決戦には出れそうもないけれどね」
さてさて、どうなるのかな。
美姫 「それじゃあ、この辺で」
ではでは。



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