第13話「それぞれの胸の誓いなの」
降りしきる雨の中に5人はいた。
「5人とも戻ってきて」
『……了解……!!』
「で……なのはさんとユーノくんには、私直々のお叱りタイムです」
なのはとユーノがリンディに呼び出されていた。
「指示や命令を守るのは、個人のみならず集団を守る為のルールです。勝手な判断や行動が、彼方たちだけでなく周囲の人たちを危険に巻き込んだかも知れないということ……それは、わかりますね」
「「……はい」」
「本来なら厳罰に処す所ですが……結果として、幾つか得るところがありました。よって今回のことについては不問とします」
「「あっ!!」」
お互いの顔を見つめあうなのはとユーノ。
「ただし……二度目はありませんよ!? いいですね!!」
「はい」
「すみませんでした」
「さて……問題はこれからね」
なのはとユーノのお叱りタイムが終了した。
「ヒバリ執務官研修生!! 事件の大本について心当たりが?」
「はい……!! リミエッタ執務官補佐、モニターに……」
「その前に、さつきさんと忍さんとすずかさんを呼んで頂戴」
さつきと忍とすずかを呼ぶよう言うリンディ。
呼ばれたさつきと忍とすずかが加わる。
「エイミィ!?」
「はいはぁ〜い!!」
テーブルの中央に立体映像が投影される。
「あら?」
「そう。私たちと同じミッドチルダ出身の魔導師……プレシア・テスタロッサ……。専門は、次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法研究の事故によって放逐された人物です。登録データとさっきの攻撃の魔力波動も一致しています。そして……あの少女フェイトは、おそらく……」
「フェイトちゃん……あの時、母さんって……」
「親子……ね」
「そ、その……驚いていたというより、なんだか怖がっているみたいでした」
「エイミィ!! プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる? 放逐後の足取り、家族関係、その他なんでも……」
「はいはいっ!! 直ぐ探します」
この人が、フェイトちゃんのお母さん……。
時の庭園では再びフェイトが鞭で打たれていた。
鞭で打たれるたびにフェイトは悲鳴を上げる。
「アレだけの好機を前にして、ただボーっとしているなんて……」
「ご、ごめんなさい」
「ひどいわ、フェイト。貴女は、そんなに母さんを悲しませたいの?」
再び鞭で打たれるフェイト。
「プレシア・テスタロッサ……ミッドの歴史で26年前は中央技術開発局の第三局長でしたが……当時、彼の個人が開発していた次元航行エネルギー駆動炉ヒュードラ使用の際、違法な材料を持って実験を行い失敗……。結果的、中規模次元震を起こしたことが元で中央を追われて地方へと異動になりました。随分もめたみたいです。失敗は結果に過ぎず、実験材料にも違法性は無かったっと……。辺境に異動後、数年間は技術開発に携わっていました。暫くの後、行方不明になって……ソレきりですね」
「家族と行方不明になるまでの行動は?」
「その辺のデータは、キレイさっぱり抹消されちゃっています。今、本局に問い合わせて調べてもらっていますので……」」
「時間はどれ位!?」
「一両日中には……」
「うん……プレシア女史もフェイトちゃんもアレだけの魔力を放出した直後では早々動きは取れないでしょう……。その間にアースラのシールド強化もしないといけないし……」
リンディが席から立ち上がる。
「貴女たちは、一休みしておいた方がいいわね」
「あっ……でも……」
「特になのはさんとすずかさんは、あまり長く学校を休みぱなしでも良くないでしょう……一時帰宅を許可します」
一時帰宅を許可するリンディ。
「ご家族と学校に顔を見せておいた方がいいわ」
鞭で打たれたフェイトが床に倒れている。
「フェイト」
フェイトに駆け寄るアルフ。
「フェイト……フェイト……」
フェイトを抱きしめるアルフ。
「たった9つ……コレでも次元震は起こせるけど、アルハザードには届かない……。うはっ」
突如、血を吐くプレシア。
激しく咳き込む。
もう、あまり時間が無いわ……。
私にもアリシアにも……。
壁を破って、アルフがプレシアに迫る。
ある程度、近付いた所でイッキに襲い掛かった。
だが、シールドに阻まれる。
再び襲い掛かるもシールドが阻む。
なんとかしてシールドを破ったアルフはプレシアを掴みかかる。
「あんたが母親で、あの子は、あんたの娘だろう!? あんなに頑張っている子に……あんな一生懸命な子に……なんで酷い事ができるんだよ!!」
プレシアは、何も言わずアルフの腹に魔法を叩き込んだ。
魔法を叩き込まれたアルフは吹き飛ばされる。
「あの子は、使い魔の造り方が下手ね。余分な感情が多すぎるわ」
吹き飛ばされたアルフは口から血が流れている。
内臓にダメージを受けたようだ。
「フェイトは……アンタの娘は……アンタに笑って欲しくて……優しいアンタに戻って欲しくて……あんなに……」
苦痛に顔が歪む。
「邪魔よ!! 消えなさい!!」
残る力を振り絞って脱出したアルフ。
……何処でもいい……転移しなくては……。
ごめんフェイト……もう少しだけ待ってて……。
「フェイト……起きなさいフェイト」
「はい。母さん」
「貴女が手に入れていたジュエルシード9つ……これじゃあ足りないの。最低でも後5つ……出来ればそれ以上、急いで手に入れてきて? 母さんの為に……」
「……はい……。……ん? アルフ?」
「あぁっ。あの子は逃げ出したわ。怖いから、もうイヤだって……必要なら、もっと良い使い魔を用意するわ。忘れないで。貴女の本当の見方は母さんだけ……
いいわね、フェイト!?」
「はい……母さん……」
「……と、そんな感じの10日間だったんですよ」
「あらぁ? そうなんですかぁ?」
リンディは、話を上手いこと騙している。
リンディの話術に感心するなのはとユーノ。
「でもぉ、なのはさん優秀なお子様ですし、もぉ、うちの子にも見習わせたいくらいで……」
「あらぁ〜またまた、そんなぁ〜」
すずかは、家に帰って猫を膝の上に乗せていた。
膝に乗せたまま携帯を操作している。
どこかへメールを打っているようだ。
アリサも、車中で携帯を操作していた。
メールを打っていたようだ。
「送信っと……」
メールを送信した。
「アリサお嬢様、何か良いお知らせでも?」
「べぇつに……普通のメールよ」
アリサは外へ視線を向ける。
「……あぁ……」
アリサが何かに気付いた。
「鮫島、ちょっと止めて」
車を止めさせるアリサ。
停車した車から降りる。
「やっぱり、大型犬」
アリサの後を追って鮫島もやってくる。
「怪我をしていますな。かなり酷いようです」
「でも、まだ生きている」
アルフは苦しそうに息をしている。
「鮫島!!」
「心得ております」
「あぁっ、目覚めた?」
……あれ? このチビッ子、どこかで……。
「アンタ、頑丈に出来ているのね。あんなに怪我していたのに……命に別状は無いってさ……。怪我が治るまではうちで面倒を見てあげるからな」
アリサがアルフの頭を撫でる。
「安心していいよ」
……あぁ……あの子の友達なんだ。
「ほらっ。柔らかいドックフードなんだけど食べられる?」
アルフがドックフードに近寄って食べ始めた。
「そんなに食欲があるのなら心配ないね。食べたらゆっくり休んで、早く良くなりなね」
「アリサちゃん、心配かけてごめんね」
「まぁ、よかたわ、元気で……」
「また、いかないといけないんだ」
「うん」
「わたしもね」
「すずかも?」
「そうなの。お姉ちゃんも……」
再びアースラに戻らないといけないなのはとすずか。
「じゃあ、放課後、少しだけ遊ばない?」
「じゃあ、うちに来る? 新しいゲームがあるし……」
「あぁっ、本当?」
「さつきさんにもメールしようっと」
さつきにメールを打つすずか。
「そう言えばね、夕べ怪我している犬を拾ったの」
「犬?」
「うん。凄い大型で、なんか毛並みがオレンジ色で、おでこにね、こう……赤い宝石が付いているの」
「あっ」
「あっ」
なのはとすずかには、思い当たる節があるようだ。
「(やっぱり、アルフさん)」
「(あんた達か……)」
「(その怪我……どうしたんですか? それにフェイトちゃんは……)」
「あららららっ、元気なくなっちゃった」
アルフの元気がなくなってしまった。
「どうした? 大丈夫?」
「(傷が痛むの?)」
ユーノがすすかから飛び降りる。
「ユーノ? こら、危ないぞ?」
「大丈夫だよ、ユーノくんは」
「(なのは、すずかちゃん、彼女からは僕が話を聞いておくから、二人はアリサちゃんと……)」
「それじゃあ、お茶にしない? おいしいお茶菓子があるの」
なのはたちは屋敷の中へ消えていく。
「一体、どうしたの? 君たちの間で一体なにがなにが……」
『(あんながここに居るということは管理局の連中も見ているんだろう)』
『(うん)』
「時空管理局ヒバリ・アナスタシア執務官研修生です。どうも事情が深そうですね。正直に話していただければ悪いようにはしません。貴女の事、貴女の主……
フェイト・テスタロッサのこと……」
「(話すよ……全部。……だけど、約束して!! フェイトを助けるって……。あの子は、何も悪くないんだよ)」
『(そのネガイ……叶えてあげるよ)』
突如、聞いたことのない声がする。
「誰だ!! 出て来い!!」
『(出て行ってもいいけど、注意してね)』
「次元転移をキャッチ!!」
エイミィが言う。
「何者かが転移してきます」
「出現位置は?」
「現在、計算中です」
エイミィは謎の人物の出現位置を割り出す。
「えっこの数値……」
「エイミィ、どうしたの?」
「艦長、この数値を見てください」
エイミィは、謎の数値を表示する。
その数値は、凄い速さで桁が上がっていく。
ボンと言う音と共に計器から煙が出る。
「きゃっ」
「うわぁ!!」
「皆、大丈夫!?」
「大丈夫です」
「エイミィ、なにが起きたかわかる?」
「魔力値の測定をしていたのですが、ある数値を超えたところで計器が壊れました」
「壊れる直前の数値は?」
「9999兆です」
とんでもない数値にアースラクルーが戦慄する。
「謎の魔導師、転移してきました」
「ヒバリ執務官研修生!! 直ちに、謎の人物と接触しなさい!!」
「魔力反応ロスト」
エイミィが魔力反応ロストと報告した。
「追跡を!!」
「無理です。完全に見失ってしまいしました」
「ヒバリ執務官研修生!!」
「記録をお願いします、執務官補佐」
「し始めているよ」
「(フェイトの母親プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ)」
アリサとすずかはゲームをしている。
『(なのは、すずかちゃん、聞いたかい?)』
「(全部聞いた)」
『(キミの話と現場の状況……そして彼女の使い魔アルフの証言と現状を見るに、この話に嘘や矛盾は無いみたいだ)』
「(どうなるのかな?)」
「プレシア・テスタロッサを捕縛します。アースラを攻撃した事実だけでも逮捕の理由にはお釣りがきます。だから我々は艦長の命令があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更することになります。貴女達はどうしますか? 高町なのはさん、月村すずかさん、弓塚さつきさん」
「わたしは……わたしは、フェイトちゃんを助けたい」
「(アルフさんの思いと……それから、私の意志。フェイトちゃんの悲しい顔は、私もなんだか悲しいの。だから助けたいの……悲しいことから……。それに
……友達になりたいって伝えた、その返事をまだ聞いていなしね)」
「こちらとしても貴女達の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。フェイト・テスタロッサについては、なのはに任せる。それでいいか?」
アルフはうなずく。
『(なのは……だったね……)』
「(頼めた義理じゃないけど、だけど、お願い……フェイトを助けて!!)」
『(あの子、いま、本当に一人ぼっちなんだよ)』
「(うん。大丈夫。任せて!!)」
「なのは!!」
なのはは、ゲートが開かれる場所へ走っている。
塀のほうを見るとアルフが塀の上を走っていた。
海鳴臨海公園 AM5:55
「なのはちゃん!!」
すずかもやってきた
「すずかちゃん!?」
「我も居るぞ!!」
さつきも居た。
「さつきさんも来たのですか?」
「この世界で最も強いのは私だから……でも、今はNo2になるかな」
「No2って、貴女より強い人が居るのですか?」
「居るよ。昨日、声を聞かなかった?」
「そう言えば、『そのネガイ……叶えてあげるよ』って言っていた様な……」
「その人は、何処に居るのですか?」
「その人なら、この近くで気配を完全に絶って様子を見ているよ」
謎の人物が様子を見ているらしい。
「ここならいいね。でて来てフェイトちゃん」
風が騒ぐ。
≪Scythe form.≫
フェイトが現れた。
「(フェイト、もうやめよう。あんな女の言うこと聞いちゃダメだよ。フェイト、このままじゃ不幸になるばかりじゃないか!! だから……フェイト……!!)」
フェイトは、首を横に振る。
「だけど……それでも私はあの人の娘だから……」
なのはは、バリアジャケットを身に纏う。
「ただ捨てればいいって訳じゃないよね。逃げればいいって訳じゃもっとない。切っ掛けは、きっとジュエルシード……。だから賭けよう? だからお互いが持っているジュエルシード、全部……」
≪Put out.≫
レイジングハートがジュエルシードを吐き出す。
≪Put out.≫
バルディッシュもジュエルシードを吐き出す。
「それからだよ。全部……それから」
なのはは、レイジングハートをフェイトに向ける。
「私たちの全ては、まだ始まってもいない。だから、本当の自分を始める為に……はじめよう……最初で最後の本気の勝負!!」
次回予告
なのは「決意で望んだフェイトちゃんとの決戦!!」
なのは「そして、その中で繋がっていく二人の過去と現在……」
ユーノ「動き出す時の庭園……」
ユーノ「プレシアが望むアルハザードとは?」
さつき「姿を現す全次元最凶の魔術師……」
なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第14話『思い出は時の彼方なの』」
なのは「リリカル・マジカル、全力全壊!!」
なのは、フェイトに関しては特に問題なさそうだけれど。
美姫 「一体、誰が来たのかしらね」
さつきよりも強い人物。
美姫 「限られてくるけれど、果たしてどうなのかしら」
うーん、どんな終息をするんだろうか。
美姫 「この続きは……」
この後すぐ。