第15話「宿命が閉じるときなの」






 
「次元震発生!! 震度、徐々に増加していきます」
「この速度で震度が増加していくと、次元断層の発生予測値まで後、30分たらずです」
「あの庭園の駆動炉もジュエルシードと同系のロストロギアです。それを暴走覚悟で発動させて足りない出力を補っているのです」
「はじめから片道の予定なのね……」
「狂う前に、さくらか、次元の魔女に頼むことぐらいできたやろうに……」
 さくらか次元の魔女に頼めばいいというケルベロス。
「貴方もあの迷信を信じているのですか?」
「おのおばはんが言っとったことは迷信やあらへんで。確かにアルハザードは実在する。昔、クロウや魔女の姉ちゃんと行ったさかい」
 ケルベロスから明かされる衝撃の事実……。


 廊下で走ってくるヒバリと遭遇する。
「ヒバリさん!? 何処へ?」
「現地に向かいます。現況を叩きます」
「私も行く!!」
「僕も……」
「妾も力を貸そう……」
「私も……」
「わかった……!!」
「アルフは、フェイトに付いていてあげて」
「……あっ……うん……」

「行こう!!」
 5人は通路を走る。



「ヒバリ!! なのはさん、ユーノくん、さつきさん、すずかさん、私も木之本さんと共に現地に出ます。彼方達はプレシア・テスタロッサの逮捕を」
『『『『『了解!!』』』』』



 なのはたちは、時の庭園に侵入していた。
「一杯いるね」
「まだ、入り口です。中にはもっといます」
「ヒバリさん、このこたちって……」
「近くの相手を攻撃するだけの……ただの機械です」
「そっかぁ。なら安心だ!!」
 レイジングハートを構えるなのは。
「この程度の相手に無駄球を使う必要はありません」
「道を作ってやろう……その前に……」
 陰から使い魔の混沌を出すさつき。
 その数、30体あまり。
「道を開けるがよい!!」
 さつきは、右手をかざして魔力を放つ。
 さつきが放った魔力の通った場所のバケモノは跡形も無く蒸発した。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
 凄まじい威力に言葉を失うなのは、ユーノ、ヒバリの三人。
 残った敵もさつきの爪にかかって爆発する。
「何時まで固まっておる!? 行くぞ!!」
 さつきに声をかけられフリーズから復活する。
 復活した三人は出来た道を通って次の部屋に向かう。
 途中の通路は所々崩れ謎の空間が見える。

「その穴……黒い空間がある場所は気をつけてください」
「……ふぇ?」
「虚数空間……あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間なんです。飛行魔法もデリートされます。もしも落ちたら重力のそこまで落下します。二度と上がって来れません」
「き、気をつける」
 次の部屋の扉を開ける。
 そこには、さっきと同じ機械が居た。
「ここで、二手に分かれます。君たちは最上階にある駆動炉の封印をお願いします」
「ヒバリさんは?」
「プレシアの元へ行きます。それが自分の仕事です」
「今、道を作ります」
「その必要はない。下がっておれ!!」
 大量の機械たちの前に立つさつき。
 爪を出すとすずかと共に機械を破壊していく。
 ヒト払いだけで数体の機械が破壊される。
 あっという間にその場の機械が破壊されしまった。
 機械と言えど真祖の吸血鬼二人の前ではガラクタ同然だった。
 自分の仕事をまた取られたヒバリ。

「ここで、暫くの間、お別れだ」
 二手に分かれるヒバリとなのは、ユーノ、さつき、すずか。


「私も出ます。庭園内でディストーションシールドを展開して次元震の進行を抑えます」


「あの子達が心配だから、あたしもちょっと手伝ってくるね」
 フェイトの頬に手を添えるアルフ。
「直ぐに帰ってくるよ。そんで全部終わったら、ゆっくりでいいから、私の大好きな本当のフェイトに戻ってね。これからはフェイトの時間は全部、フェイトの自由に使っていいんだから……」
 フェイトを残して部屋を出て行くアルフ。
 それと同時にフェイトの瞳に光が戻る。
 部屋のモニターには戦闘の様子が流れている。


 母さんは、最後まで私に微笑んでくれなかった。
 私が生きて居たいと思ったのは、母さんに認めて欲しかったからだ……。
 どんなに足りないと言われても……どんなに酷い事をされても……。
 ……だけど、笑って欲しかった。
 あんなにハッキリと捨てられた今でも、まだ私、母さんにすがり付いている。
 ……アルフ……ずっと側にいてくれたアルフ。
 言う事を聞かない私にきっと随分悲しんで……。
 何度もブッツかった、真っ白な服の女の子……初めて、私と対等に真っ直ぐに向き合ってくれたあの子。
 何度もであって、戦って……何度も私の名前を呼んでくれた……。
 何度も……何度も……。

 涙がこぼれるフェイト。
 涙をこぼしながら起き上がる。


 生きて居たいと思ったのは、母さんに認めてもらいたいからだった。 
 それ以外に生きる意味なんて無いと思っていた。
 それが出来なきゃ、生きていけないと思っていた。
 捨てれば良いって訳じゃない……逃げれば良いって訳じゃ……もっとない。


 時の庭園では、アルフも加わって機械人形を壊していく。



 フェイトは、バルディッシュを手に取っている。


「私の……私たちの全ては、まだ始まってもいない」
 フェイトは、バルディッシュを起動させる。
「そうなのかな、バルディッシュ。私、まだ始まってもいなかったのかな?」
≪get set≫
「そうだよね、バルディッシュもずっと私の側にいてくれたんだもんね。お前も、このまま終わるのなんて嫌だよね」
≪yes sir≫
「上手くできるかわからないけど、一緒に頑張ろう」

 私たちにとっては、まだ始まってもいないの……。

 バリアジャケットを身に纏う。

「だから、本当の自分をはじめるために……今での自分を終わらせよう」


 なのはは、空を飛び回るバケモノを撃つ。
 アルフもバケモノを地面に叩き落す。

「数が多い!!」
「このっ!!」

 ユーノは、バインドで数体動きを封じている。
「なんとかしないと……」
 鎖を千切り一体が復活する。

「我が手、我が爪こそ星の息吹と知るがよい!!」
 数体のバケモノが一瞬で消し飛ぶ。


「なのは!!」
 一体のバケモノがなのはに迫る。
「くっ……」
「なのは!!」
≪Thunder rage≫ 
 雷がバケモノに直撃する。
 雷が来たほうを見るなのは。
≪get set≫
「サンダーレイジィ!」

「フェイト!?」

 フェイトがなのはの元に降りてくる。
 

 其処へ壁を破って新たなバケモノが現れる。

「大型だ、バリアが強い」
「うん……。それにあの背中の……」
「あのバケモノを二人に任せるが良いか?」
 さつきがなのはとフェイトにバケモノを任せるという。
「だけど……二人でなら」
「うん、うんうん!」
「行くよ、バルディッシュ」
≪get set≫
「こっちもだよ、レイジングハート!」
≪stand by ready≫
 なのはとフェイトの共同作業が始まる。
「サンダースマッシャー!」
「ディバインバスター!」
 二つの魔法を同時に受けるバケモノ。
「「せぇのっ!!」」


 爆発の振動が伝わる。
「来たのね。だけどもう間に合わないわ、アリシア。あぁっ、アリシア!!」



 レイジングハートとバルディッシュが同時に排気を排出する。
「フェイトちゃん!!」
「フェイト!? フェイトォ!! フェイトォッ!!」
 心配していたアルフが駆け寄ってくる。
「アルフ、心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、それからはじめるよ……本当の私を……」




「後もう少し」





「あそこのエレベーターから駆動炉に向かえる」 
「うん。ありがとう……フェイトちゃんは、お母さんの所に……」

「今、ヒバリさんが一人で向かっている。急がないと……」
「フェイト!」


 エレベーターで駆動炉に向かうなのはとユーノ。
 そこにも、バケモノがうじゃうじゃいた。
「防御は、僕がやる。なのはは、封印に集中して!!」
「うん、いつも通りだよね。ユーノくんって、いつも私といてくれて、守っててくれたよね?」
≪Sealing mode≫
「だから、戦えるんだよ? 背中がいつもあったかいから」
 なのはは、魔法を構築する。
「いくよ、ディバインシューターフルパワー。シュート!」


「プレシア・テスタロッサ……終わりですよ。次元震は私が抑えています」

『(駆動炉はじき封印……貴女の元には執務官研修生と他3名と二体の使い魔が向かっています。忘れられし都、アルハザード……そして、そこに眠る秘術は、存在するかどうかすら曖昧なただの伝説です)』
「違うわ。アルハザードへの道は次元の狭間にある。時間と空間が砕かれたとき、その狭間に滑落していく輝き……道は、確かにそこにある」

「随分と分の悪い賭けだわ……。貴女は、そこに行っていったい何をするの? 失われた時間と犯した過ちを取り戻すの?」


『(そうよ。私は取り戻す。私とアリシアの過去と未来を……)』

「取り戻すの……こんなはずじゃなかった世界の全てを……」


「貴女、ネガイがあるんじゃないの?」
「私のネガイは、アルハザードに行ってアリシアを生き返らせること……」
「貴女のネガイが叶うことはないよ。アルハザードへ行っても死んだヒトを生き返らせることは出来ないから……」
「いいえ、あるわ。アルハザードに行けばアリシアは生き返る」
「プレシアさん、丁度良い機会だから教えてあげるね」
「アンタみたいな小娘に教えてもらうことなんか無いわ」
「良いから黙ってさくらの話を聞けや」
「昔、クロウさんも死んだヒトを生き返らせる術を求めて色んな世界を旅をしたの……」
 プレシアにクロウ・リードの過去を話すさくら。
「色んな世界を旅して探したけど見つからなかったの……それで、クロウさんは死んだヒトを生き返らせることは出来ないって結論に辿り着いたの」
「そんな話、信じるとでも思うの?」
「信じるも、信じないも貴女の自由よ。どうしても生き返らせたいというのなら二つほど方法が在るよ」
「アリシアを生き返らせる方法が!?」
 プレシアの顔が変わる。
「一つは、転生……」
「もう一つは?」
「吸血鬼の血を送り込んで吸血鬼として生き返らせる……どっちを選ぶかは貴女の自由よ、プレシア・テスタロッサさん」
 アリシアが生き返ると言うことに心が揺れ動く。

 ア、アリシアが、生き返る……。
 アルハザードに行かなくても、アリシアが……。

「アリシアが生き返るのなら吸血鬼でもいいわ。今すぐ生き返らせて!!」
「そのネガイ叶えてあげるよ」
「あぁぁっ、アリシアが……アリシアが生き返る」
「でも、貴女には対価を支払ってもらうよ」
「アリシアが生き返るのなら、何でも払うわ」
「じゃあ対価は、『関係性』を貰うよ」
「貴女も私からアリシアを奪うの?」
「契約は既に履行したら、対価を貰うから……」
 契約履行後に対価を貰うと言うさくら。
「さつきさん、アリシアさんのポッドを持ってきて」
「は、はい」
 アリシアのポッドを持ってくるさつき。
 ポットからアリシアを出すと安全な床に横たえた。
「月村すずかちゃんだったかな?」
「はい」
「さつきさんと一緒にアリシアちゃんの首を噛んで吸血鬼の血を送り込んで」
 アリシアにさつきとすずかの吸血鬼の血が送り込まれる。
 さつきとすずかがアリシアに吸血鬼の真祖の血を送り込んで少ししたとき変化が起きた。
 アリシアの身体がピクリと動いたのだ。
「ア、アリシア? わたしよ、母さんよ……」
「おかあさん?」
「感動の再開をしているところ悪いが、プレシア・テスタロッサ、貴女を逮捕します」
 プレシアを逮捕する、ヒバリ。
 プレシアから杖を取り上げ手枷をつける。
「(艦長!! ヒバリです)」
 艦長に連絡を取る。
『(どうしたのですか?)』
「(プレシア・テスタロッサを逮捕しました)」
 プレシアの逮捕を伝える。
『(プレシアを連れ帰還してください)』
「(それともう一つ報告することがあります)」
『(詳しい話は、帰還してから聞きます。今すぐ脱出しなさい)』
「(了解しました)」


 時の庭園が爆発したのは、全員が脱出した直後のことだった。


 次回予告

 なのは「ついに終焉を迎えた事件」

 なのは「そして訪れる結末と別れの時」

 なのは「だけど、一つの終わりは、何時だって新しい始まり」

 なのは「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第16話『なまえをよんで』」


プレシア逮捕。
美姫 「しかも、アリシアまで復活したわね」
だとしても、対価として払ったものがな。
美姫 「どんな影響を与えるかしらね」
プレシアは病魔に侵されているし、そっちはどうなるかな。
美姫 「それじゃあ、この辺で」
ではでは。



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