第20話「フェイトちゃんの嘱託試験なの」






 
「では、受験番号1番の方、氏名と出身世界をどうぞ♪」


「ミッドチルダ出身。フェイト・テスタロッサです!」
 フェイトが名を名乗る。
「こちらが私の使い魔アルフです」
「よろしくー」


「使い魔持ちのAAAクラス魔導師か……でも、ずいぶんおとなしそうな子ね」
「いい子ですよ。素直で真っ直ぐで」
「ま、リンディの推薦ならハズレはないわね。実力のほど拝見しましょ」


『さて……ぼちぼち始めようか。心の準備はオッケー?』
「はいっ!」


 時空管理局嘱託魔導師認定試験。
 これが受かると異世界での行動制限がぐっと少なくなるし、リンディ提督やクロノのお手伝いができるようになる。


「行くよバルディッシュ!」
≪Yes sir.≫


 目標一発合格!


『じゃ、まずは儀式魔法の実践から!』
「はいっ!」
 実技試験が始まった。


「アルカス・クルタス・エイギアス。煌きたる天神よ、いま導きのもと降りきたれ……。バルエル・ザルエル・ブラウゼル……」


「儀式魔法も天候操作に長距離転送、フィールド形成……と」


「サンダーフォールッ!」



「あなたの推薦も納得いくわね」
「でしょう」
「儀式魔法4種無事確認……と」




『はい。おつかれさまー、儀式実践終了だよ』
「はぁいっ」
『1時間休憩だから、お弁当食べて一休みしてね』
「はいっ」
「お弁当!」
 試験は食事休憩に入った。


「フェイト、おつかれさま」
 労を労うアルフ。
「しっかり食べて、午後もがばろう!」
「うん」


「ああ……プレシア・テスタロッサ事件の重要参考人って、この子だったのね」
「そう、色々あってね」
 事件の事を話すリンディ。
「裁判中の嘱託試験は異例なんだけどね。嘱託資格があると本局での行動制限もぐっと少なくなるし、本人たちも局の業務強力には前向きだし」
「なるほどね。まあ、優秀な人材なら過去や出自には文句ないわ。大切なのは現在の意志と能力だもの」
「アリシアさんも受けたいといっていてんだけど」
「例の事件で生き返ったって子?」
「そう、フェイトさんのお姉さん」
「その子もリンディが面倒を見るつもり? 一人で三人の面倒を見るの大変でしょ?」
「まぁ、大変なんだけど……ね」
「一人くらい面倒見てあげようか?」
「フェイトさんとアリシアさんを離れ離れにするのはよくないと思うから」
「そう。困った事があったら何時でも力になってあげるから」
「ありがとう、レティ」
「それで、この子達は?」
「あぁ、この子達? 事件の協力者よ」
「この三人は、直ぐにでも欲しいくらい」
 レティの端末にすずか、忍、さつきの三人の簡易データが表示されている。
「この子にクロノくん、ボロボロにされたんだって!?」
「そうなのよ。その経緯は色々あってね……」
 話を逸らそうとするリンディ。
「クロノくん、試験官務まるの?」
「つい此間復帰したばかりなんだけど……」
「なんだけど?」
「アリシアさんと模擬戦の後にね……」
 クロノは、アリシアに模擬戦の度に血を危険値まで吸われていた。







「でもさフェイト」
 アルルは、骨付き肉をほおばりながらいう。
「試験はやっぱ、なのはの影響?」
「ん……そうかもね。なのはも向こうでがんばってるんだし、私もがんばらないとなって。なのはより強い人が居るしね」
「うん! 負けないようにがんばろう!」
「うん! もたもたしているとアリシアに追い越されちゃうしね……」
 アリシアも実力をつけて来ているらしい。
「さつきとすずかともちゃんとした試合形式で戦ってみたいな」
「あの二人と?」
「うん」
「あの二人の強さは次元が違うよ」
「それは、わかっている。それでも戦ってみたいよ」
「フェイトがどうしてもっと言うのなら止めはしないよ」
「でも、お腹だけは殴られたくないな。あの時、凄く苦しかったから……」
「あの怪力だけは魔法でも防げないからな」



「はっくしょん!」
 その時、第97管理外世界の海鳴市でクシャミをしたものがいたらしい。
「風邪ですか?」
「吸血鬼は、風邪をひかないはずだから、誰かが噂でもしているのかな〜」
「風邪じゃないんだ」
 風邪では、ないらしい。
「そういえば、なのはちゃんが今日、フェイトちゃんが試験を受けるって言ってたよ」
「それなら知っているよ。なのはを通じてある物を送っておいた」
「あるもの?」
「あのの者を袋にする呪文を授けた」




 そして、噂の人物は……。
「ハクッションッ!」
「クロノ執務官風邪ですか?」
「いや、ちがう」
「顔色が悪いですよ」
「急に寒気が……」
「医務室に行った方が良いですよ」
「医務室にいく必要はない」
 この後、クロノに災難が降りかかる事をしらない。





「あの後、数日間、まともに食事を取れなかったけ?」
「うん。食べても直ぐに吐いちゃって、アルフに心配かけちゃったよね」
「フェイトったら掃除しても直ぐ吐から大変だったよ」
「あの時の痛みと苦しみは忘れない。絶対に忘れない」
「あの借りを返せるくらい強くなろうよフェイト」
「うん。でも、借りを返すのは難しいかも……」
「確かに難しいかも知れないね。あの時、その気になっていれば、フェイトと私を殺すことだって出来るのにアイツはしなかった……」
「あ……」
「あいつは、フェイトを殺さなかった」
「それどころか、これを……」
 紙切れを見せるフェイト。
「ただの紙切れじゃ……」
 その時、紙切れが光って文字が浮かび上がった。
「フェイト、文字が浮かび上がって来たよ」
「読んでみる」
 浮かび上がって来た文字を読むフェイト。
「最後の所、呪文のようなものが書いてあるよ」
 フェイトは、呪文を何度も読んで暗記した。
「最後のやつ、使うつもり?」
「使ってみる」
 フェイトが覚えた直後、証拠隠滅するかのように独りでに紙が燃え跡形もなく消えた。







「さーて、お弁当と休憩は終わったかな? 最終試験は、実戦訓練だよ!」


『いま試験官がそっちに向かうから、がんばって戦ってね』
「はいっ」
「試験官って誰だろうね?」
「誰だろ」
『(僕だよ)』
「え……?」
 転移してきたのは……。
「クロノ!?」
 クロノだった。
「AAAクラス魔導師の戦闘試験をできる試験官となるとなかなかあいていなくてね。まあ、身内といえど手は抜かないから安心しつつ気を抜かず全力でかかってくるといい」
『フェイトちゃんの単身戦闘力を見るから、アルフは見学ね』
「えー!?」
「君の試験や連携戦は、また後でやるから」
「へーいっ」
「クロノ、顔色が悪いけど大丈夫?」
「大丈夫だ! キミに遅れをとる僕じゃないよ」
「そう……」
 クロノの顔色は明らかに悪い。
 この判断がクロノを地獄に叩き落すことになる。


「さてフェイト、準備は?」
≪Start up≫
「…………いつでも!」


「ランサーセット!」
≪Get set≫
≪Set on≫
 フェイトとクロノの戦闘が始まる。
 激しい魔法の応酬が繰り広げられる。
「サンダー・スマッシャー!」






≪Blaze cannon≫
≪Thunder smasher≫
 フェイトはすぐさま次の魔法をチャージする。
「サンダー・レイジ」
「その攻撃は、想定済みだ」
 サンダー・レイジを防ぐクロノ。
「ば、バインド?」 

「アルカス・クルタス・エイギアス、 疾風たりし天神 今導きのもと撃ちかかれ、バルエル・ザルエル・ブラウゼル……フォトンランサーファランクスシフト。打ち砕け、FIRE!」
 バインドに捕らえたクロノにフェイト最凶の魔法が放たれる。
「ちょ、ちょっと待て!」
 クロノの叫びも空しく直撃を受けた。
 フェイトの攻撃はそれだけではなかった。
「雷雲湧き出でて、暴風来たれ、我が敵に雷神と風神の裁きを与えよ」
 フェイトの詠唱と共に雷雲が湧き立ち暴風が吹き始める。
 激しい雷鳴と暴風が吹き荒れる。
「轟雷刃風……」
 落雷と暴風が間髪入れずクロノを襲う。
「極大サンダーフォール!」
 一際巨大な雷がクロノに直撃した。
 あまりの威力にクロノのバリアジャケットが破れる。
 極大サンダーフォールの直撃を受けたクロノからは煙が燻っていた。
 結果、クロノの撃墜判定でフェイトの勝ちとなった。


「クロノくんらしくなかったわね」
「ですね。あっさり撃墜されてましたし」
「クロノくん、怪我でもしているの?」
「ちょっと、色々ありまして……袋にされたんです」
「最後にフェイトちゃんが使った魔法……威力の割りに消費魔力が少なすぎません?」
「確かに凄い威力の魔法ね。クロノ、大丈夫かしら?」
「普通、あの規模の魔法は、魔力の消費が激しいんですよね」
 フェイトが使った魔法に話題が移る。
「袋にされた原因て何?」
「実はですね。クロノくん、なのはちゃんとフェイトちゃんの胸を触りまくっちゃったんです」
「それは、袋にされても文句は言えないわよね」
「クロノくん、立て続けにやっちゃったんですよ」
「立て続けて?」
「この子の胸を……」
「それで、集団でリンチにされて現状に至ると?」
「クロノくん、ちゃんと謝らないから、いろんな人を怒らせちゃったのよ」
 クロノが袋にされる映像を見せる。
 映像にはクロノが腹を殴られ血を吐くシーンも含まれていた。
 凶悪な魔力が何発も直撃していた。
 さつきによるクロノへのトドメの一撃は、クロノの腹部に突き入れられたパンチは背中に拳の形が浮き出ていた。
 その際、一際大量の血を吐いた。
 拳を引き抜くと海へ叩き落された。
 海に叩き落されたクロノヘさつきの凶悪な魔力が放たれた。
 放たれた、魔力が巨大な水柱を上げクロノヘ直撃した。
 直撃した魔力は、大爆発を起こした。
 クロノからは、真っ黒な煙が出ていた。
 ボロ雑巾のクロノは、海底深くに沈んでいった。
 その直後、クロノが回収されたところで映像が終わった。
「クロノくんが、あそこまで遣られたなんて思わなかったわ」
 クロノの実力を知っているレティが言う。
「今の戦闘も何時ものキレがなかったわね。ダメージがまだ残っているんじゃないの?」
「多分残っているはずですよ。今も、気持ち悪いといって仕事を休んだりしていますから……」
「試験官を交代させたほうがいいかな? 貴女の所で研修中のヒバリくん」
「彼は、別件で手が塞がっているのよ」
「クロノくんには試験官を続けてもらいましょう」








「く、クロノ大丈夫?」
「だ、大丈夫だ……」
 そのわりに煙が燻っている。
「若しかして、フェイト! あの事、まだ根に持っているのか?」
「何のこと? 根に持つようなことはないよ」

 絶対に嘘だ! 
 根に持っていないと、あんな威力で撃ったりしない。
 まだ、胸を触ったことを起こっている。




「それで、私、合格なの?」
「戦闘技術を見るだけだから、別に勝敗は関係ないよ?」
「そうなの?」
「と、言うわけで試験は続行するわけだが」
 フェイトは、今ので合格と勘違いしていた。


「なに……? うっかりやさん? それとも、あわてんぼうさん?」
「少しね」
「さ、次はアルフとの連携戦を見るよ」



「はいっ!」


「魔法技術も使い魔との連携もほぼ完璧。戦闘も攻撃に傾倒しすぎだけど、まあ合格点。嘱託魔導師としては申し分ないかな」
 評価を下すレティ。


『うっかりやさんは今後気をつけてもらうとして……』



「おめでとうフェイトさん」



『これをもってAAAランク嘱託魔導師認定されました。認定書の交付の時に面接があるから、あとはそれだけね』
「はい! ありがとうございます!」
「ふぅ。疲れた……」
 バターンとクロノが倒れた。
「く、クロノ?」
 クロノは、倒れたままである。
『フェイトちゃん、悪いけどクロノくんをつれて帰ってきて』
「はいっ」
『じゃあ帰っておいでー。今夜はお祝いだ!』


 なのはへ。
 あの日なのはに言った通り私は少しずつ本当の自分を始めています。
 今度会う時にちゃんと胸を張って会えるよう私なりに自分なりにがんばっています。
 追伸。
 きっと近いうち、そちらに会いに行けます。


 次回予告

 フェイト「魔法の勉強を続けるアリシア」

 フェイト「アリシアの習熟状態を確認する為に模擬戦を行うことに……」

 アリシア「私の愛器を見せてあげるよ、フェイト」

 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第21話「フェイトVSアリシア」」


フェイト、無事に合格。
美姫 「良かったわね〜」
まあ、クロノはまたしてもちょっと可哀相な事になっているけれどな。
美姫 「何か最近、良い所ないわね」
あははは。さて、次回はアリシアの登場か。
美姫 「さてさて、どうなるかしらね〜」
では、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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