第28話「偽りの夜なの!?」






 
「ここは、何処なんだろう?」
 なのはは、ベットの上で目を覚ました。
 辺りを見回しても何処かわからない。
「フェイトちゃんたちは?」
 ベットから起き上がろうとする。
「痛っ!」
 腹部に激痛が走る。
 恐る恐る服を捲って自分の腹部を見る。
 すると腹部がワイヤーで縫われていた。
「確か、私、お腹を殴られて誘拐されたんだった」
 記憶を掘り起こす。
「気がついたときは服を逃がされていたっけ? その後、胸を揉まれて、またお腹を殴られて血を吐いたような……」
 記憶と共に、腹部が痛む。
「フェイトちゃん達の所へ行かなくちゃ」
 腹部に力が入らないためにたつ事が出来ずに床に倒れた。
 起き上がろうとしても直ぐに倒れてしまう。


 そして、アリサは……。
「ここは何処よ!」
 目を覚ましたアリサが吠える。
「いたっ!!」
 痛みが走った場所を見るアリサ。
「なんなのよ、此れ!」
 再び吠えて苦痛に呻く。
「確か、下校中になのは達と一緒にお腹を殴られて……」
 記憶が混乱しているようだ。
 服を捲って見ると手術の痕があった。
「わたし、内臓が破裂するまで殴られたんだ」 
 冷静に分析するアリサ。
「わたし、どの位意識を失っていたんだろう?」
 何かを思い出すアリサ。
「学校!」
 学校へ行こうとする。
「貴女も意識が戻ったようね」
「わたし、どの位眠っていた?」
「まるまる1週間よ」
「1週間も? それじゃあ学校は?」
「あぁ、それなら心配ないよ」
「心配ない? 1週間も学校を休んだのよ!」
「だから、心配ないよ。外の時間と此処の時間の流れは違うから」
「違うってどう言うこと?」
「だって外の時間は、まだ1分もたっていないから」
「1分もたっていないって……」
「此処の時間は、外の世界の1時間が1年になるの。だから心配要らないよ。夜が明けるころには完治しているはずだから」
「ならいいわ。それより、なのは達は?」
「なのはちゃんは、ついさっき目を覚ましたよ」
「じゃあ、フェイトとアリシアは?」
「フェイトちゃんはまだみたいだけど、アリシアちゃんは4日前に目を覚ましているよ」
「そう。すずかは?」
「すずかちゃんは、看病疲れで寝ているよ。って言うかさっきまで一緒に身体を動かしていたから」
「犯人はアンタだったの! ドッカンドッカン五月蝿くて眠れないじゃない!」
「あまり怒ると傷口が開くよ!?」
「誰のせいで……」
 怒っているアリサの台詞が止まる。
「う゛ぅぅっ!」
「ほら、傷に触った。だから怒ると傷に触るって……」
 アリサはお腹を押さえて苦しむ。
 そのアリサのお腹から顔を覗かせる混沌。
 今は、アリサの失った臓器の代わりを果たしているのだ。
「?」
 そんなアリサに魔力を感じた。


 アリサちゃんに魔力の気配が……。
 私の使い魔を治療に使ったからな?
 アリサちゃんのデバイスも用意といたほうがいいよね。
 ちょうど、もう一個あるから……。
 
「今は、ゆっくり休みなさい」
 そう言ってさつきはアリサの部屋から出て行った。


 そしてクロノ達は……。
「ヒバリ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃありません。お腹がメチャ痛いです」
「アレだけめり込んでいたら痛いだろう?」
「クロノ執務官こそ骨折のほうは大丈夫なんですか?」
「全治3ヶ月だ!」
 クロノの全治は3ヶ月らしい。
「それで、アルフさん達は?」
「ユーノとアルフは、全治半年。リニスは、かすり傷程度だ」
「高町さん達は?」
「すずかとアリシア以外は重症で全治1年近くらしい」
「手術をしたんですよね」
「あぁ。君も手術をしたんだぞ」
「僕もですか?」
「なのは達とは言わないが、内蔵が破裂しかかっていたそうだ」
「それで高町さん達の状態は?」
「聞かないほうがいい」
 聞かないほうが良いと言うクロノ。
「聞かせてください!」
「それでこそ執務官研修生だ!」
 クロノは、夜の一族の医者から貰ったカルテを読んだ。
「先ず、高町なのは……。内臓破裂多数。開腹したら全ての臓器がミンチ状態だったそうだ」
「うぇっ。うげぇ!!」
 ヒバリは、堪えきれずに吐いた。
 その後も、フェイトたちの状態を聞いて更に嘔吐した。
 よっぽどこたえたようだ。
 特にアリサの子宮が潰されていたと聞いたときは盛大に吐いていた。
「僕の病室で吐くな! 誰が掃除すると思っているんだ?」
 その後、クロノは不自由な身体で掃除をしたらしい。 



「それよりも此処は何処なんだ?」
 クロノは、道に迷っていた。
 ドゴォン!!
「ば、爆発音!?」 
 爆発音が聞こえた。
「こっちの方から聞こえたような……」
 音の聞こえたほうへ向かう。
 ドォン!
 目の前に煙が噴出してきた。
「此処か?」
 問題の場所に着いたようだ。



「まだ、姫モードの維持時間が短い!」
「短いですか?」 
「短すぎだ!」
「難しいですよ」
「難しくて当然だ! それが、オマエの最終形態だからだ」
「この最終形態を自由に変身でき出きるようになるのにどの位掛かりますか?」
「それは、すずかちゃん次第だよ」
「その前に、そこに居るのでしょ?」
「隠れていないで出て来い! 居るのはわかっておる」
 部屋の出入り口のほうに向かって言う。
 そこから出てきたのは……。
「クロノさん。そんな所で何をしていたんですか?」
「何をしているか気になって……」
「覗き見をしていたというわけか」
「別に覗きをしていたわけじゃ」
「クロノさん。私の裸を見たんですか?」
 ドキっとなるクロノ。
「見たんですね。私の裸を」
「別に見たくて見たわけじゃ……」
 クロノは急に現れる凄まじい殺気に身体が金縛りに逢ったかのよう動かせない。
「その汚らわしい魂、この場で屠ってやる」
「一寸、ま……」
 クロノは最後まで言うことが出来なかった。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 クロノの悲鳴が王族の庭園ロイヤルガーデン内に響き渡った。


 クロノ・ハラオウン、すずかの裸を見た代償として全治10ヶ月の重症を負った。
 その後、クロノは、なのは達から白い目で見られたのは言うまでもない。
 そのクロノは全身を包帯でグルグル巻きにされベットに繋がれている。
「クロノくんのH!」
「クロノ、変態!」
 なのは達、乙女から口々に言われるクロノ!
「もし私の裸を見たら日本海溝に沈めてやるわよ」
 クロノに言いたい放題言ってなのは達は去って行った。
「クロノ執務官!」
「なんだ?」
「ご愁傷様です」
「僕は、まだ死んでいない」
「包帯でグルグル巻きの人が言っても説得力ありませんよ」
 今のクロノには説得力がない。



「すずか、凄くない?」
 すずかの戦いを見ているアリサ。
「雰囲気が変わるたびに強くなっているんじゃない」
「確かにすずか強くなっている。普通のすずかでも勝てないのに、3段階の開放が出きるんじゃ……」
 すずかは、某フリ○ザのように力を解放するたびに戦闘力が上がるようだ。
「私達でもすずかちゃんに勝てないんだからさつきさんに勝てる分けないよね」
「フェイト達じゃ、あんなパンチを受けたら一発であの世行きよ。私は、すずかとさつきの血を受けているから少しなら大丈夫だけど、本気の攻撃を受けたら肉片も残らずに消滅しちゃうわ」
「じゃあ、体育のときは……」
「痛いで済めば良いわよね」
 現実世界の体育の授業で実際に起こるのである。




 そして、現実世界に戻った翌日……。
「やべえ! また月村にボールが渡ったぞ」
 この日の体育はドッヂボールのようだ。
「総員退避!」
 退避といってもコートから逃げることも出来ない。

「おーやってるやってる。なのはちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃん、どこ?」
「右側のコートの手前側」
「あーいたいた」
「なんか……楽しそうだね」
「うん楽しそうだ」
 其の時、ありえない音が聞こえた。
「……………………」
「楽しいて話じゃ済まないかも」
 グラウンドにはクレーターが出来ていた。
 そのクレーターには、女の子がお腹にボールがめり込んだ状態で倒れていた。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
 エイミィ、アルフ、リニスは言葉を失う。
 その間に女子生徒はコートの外に運び出される。
 女子生徒が運び出されるとプレイが再開される。
「あはは、なのはちゃんは相変わらず運動苦手かー」
「まあ、なのはは純粋な魔導師だしねぇ」
「アリサちゃんたちも元気だー」
「うん、うん」
「アルフとリニス的にはどう? ご主人様の学校生活はさ」
「んー楽しくやれてるみたいで何よりだよ」
「フェイトにはいっぱい笑って欲しいからね。友達が増えるのもきっといいことだし」
「アリシアには、今までの時間を取り戻して欲しいしから」
「そっか」
 その間にもゲームが進んでいく。
「あははーアリサちゃんアウトだ」
 アリサがアウトになったようだ。
「さすがはフェイト♪」
「あたしも士官学校時代を思い出すなぁ。あの頃のクロノくんは可愛かった♪」
「あ、試合再開だ」



「ターゲット、なのは……!」
 アリサは、ターゲットをなのはにさだめた。
「シュートっ!」
「に゛ゃっ」
 避けきれずになのはにボールが当たる。
「なのは!」
 なのはを抱きとめるフェイト。
「大丈夫?」
「ありがとフェイトちゃん」
「あ」
「でもボールが……」

 角度と速度、風向き。
 この軌道なら普通のジャンプでも取れるはず!

「任せて! アウトになんかしないから……!」
 瞬時に軌道計算を終えるフェイト。
「はっ!」
 大ジャンプをするフェイト。


 ターゲットは……。
 向こうのエースすずか!
「ショット!」

「空中でッ!?」
「フェイトちゃんすごーいっ」

「さすがフェイトちゃん! でも、わたしだって……」

 速いシュートだけど私には止まって見える。
 キャッチされてもワンテンポあるはず。
 その間に着地してみんなのフォローに回れば……!


 あろうことか、すずかはフェイトのシュートをキャッチせずワンアクションで投げ返した。
「えいっ!」
 すずかの投げ返したボールは空中で身動きの取れないフェイトにヒットした。


「ああっ!」
「うわフェイトーっ!?」


「あらあら……大丈夫?」
「ご、ごめんフェイトちゃん……つい……」
 すずかがフェイトに謝る。
 吸血鬼の力を抑えていても余裕で撃墜したのだ。

「すずかも凄いなぁ……」
「さすがは、なのはちゃんの友達だ!」
「でも、すずかとアリシアの対決が残っているけど」
 まだ、すずかとアリシアの対決が残っている。
 すずかとアリシアの対決は結局決着がつかなかった。
 その対決はプロ選手も真っ青になるほどだ。
 プロ選手でもキャッチ出来ない威力のボールの投げあいが授業終了まで続いたのだ。



「きょ、教授! 本当にやるのですか?」
「やるっと言ったらやる。それが我が先祖の野望だ」
「でも、たった三人でですか?」
 彼らは3人組らしい。
「それに活動資金は?」
「活動資金なら幾らでも手に入れてやる。この街には金持ちが何人か居る。そいつ等から頂けばいい」
「流石教授! 頭がいい」
「当然だ! お前達とは頭の出来が違う」
「その前に教授!」
「なんだ?」
「侵入する為の道具を買うお金をください」
「そんな金あるか!」
「じゃあどうやって侵入すれば……」
「シャベルで掘れ! わかったらサッサと行け!」
「「はっはいっ!!」」
 教授の手下達は、どこかへ侵入する為出て行った。
 その侵入目標は月村邸。
 彼等に最凶の月村警備システムが待ち構えていることを知らない。




 そして、海鳴市繁華街である噂が囁かれていた。
「今年の春に起こった連続殺人鬼がもどって来たらしいぜ」
「あっ、その話なら言っているぜ」
「幼女連続誘拐殺人だろ?」
 噂を口々に言う人たち。
「おれが聞いたのは美女が美少年の生き血を吸ったってやつだ」
 其の時、噂が現実になった。
「そなた等の血を貰う」
「酔っているのか? 姉ちゃん」
「セバスチャン!」
「はい。姫様」
 酔っ払いたちの前に歩み出るセバスチャン。
「姫様が血を欲されている。血を差し出せ」
「わっはっはっはっ!」
「血を寄越せだぁ? 吸血鬼でもあるまいし……」
「……吸血鬼?」
「……まさか……」
「妾じゃ!」
「逃げろ」
「逃がすと思うか?」
 次の瞬間には身体を引き裂かれたサラリーマンが地面に転がっていた。
「人殺しだぁ」 
 此処に海鳴市において死徒二十七祖『タタリ』による事件の幕が上がった。


 次回予告

 教授「金、金! 大金は目の前だ」

 ???「シンニュウシャ!」

 ???「シンニュウシャをマッサツせよ」

 教授「何だ!? この機械どもは……」

 ???「観念したらどうですか? モリアーティ教授」

 教授「ホームズ!」

 ホームズ「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第29話『月村邸に侵入なの?』」


無事に目を覚ましたみたいだな。
美姫 「どうして助かったのかという説明もしたみたいね」
なのはやフェイトはパワーアップしなかったのかな。
美姫 「アリサの方がパワーアップした感じよね」
だよな。で、海鳴ではタタリが始まったり、月村邸への侵入者があったりか。
美姫 「どうなるかしらね」
それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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