第29話「月村邸に侵入なの?」






 
『今朝、海鳴市にて再び発生した一連の殺人事件の被害者と思われる死体が発見されました』
 連続猟奇殺人のニュースを伝えている。
『今朝発見された被害者で一連の事件の犠牲者は数十人に上る模様です。今後も被害者が増えると見られ、海鳴警察では住人に注意を呼びかけています』
 テレビは、再び起こっている連続猟奇殺人のニュースを流している。
「物騒ですね」
「ファリンも気おつけてね」
「はい」



「教授、今夜侵入するんですよね」
「口を動かしている暇があったらキリキリ穴を掘らんか!」
 部下二人に渇を入れる教授。
『昨日、彼のホームズ氏が来日しました』
「なにぃ!! ホームズだと」
 ホームズの名に驚く教授。
 如何やら教授とホームズには何か関係があるらしい。  
「どうしたんですか? 教授」
「ホームズだ! ホームズが私を追ってきた」
「ホームズがどうしたんです?」
「バカたれ! 私を追ってきたんだよ。私を……」
「それってマズイんじゃ……」
「ホームズが来る前に仕事を終わらせるんだ!」
「その割りにホームズに勝ったためしは無いよな」
「五月蝿い! 『犯罪界のナポレオン』であるワシの言う通りにしていれば良いんだよ」
「自称でしょ?」
「誰が自称だ!! 誰が!?」
 自称と言われるのが嫌いなようだ。
 月村邸へ侵入するべく穴を掘る教授一味。



 その頃、ホームズは……。
「ふむ。ここが海鳴市ですか」
 ホームズが海鳴の地に降り立った。
「モリアーティ教授を探す前に腹ごしらえでもしますか」
 ホームズは、食事を摂る店を探す。
 有名人だけあって、行く道で声をかけられサインを求められる。
「ここで食事を摂るとしましょう」
 ホームズが店に入っていく。
 その店は、喫茶翠屋だった。
 翠屋でもサイン攻めにあうホームズ。
 新聞を手にとって読む。
 読む新聞のすべに自分のことが書かれていた。
「ここのコーヒーは、なかなかいけますね」
 感想を述べるホームズ。
「感想に浸っている場合ではありませんでした。『あんにゃろうめ』を探して陰謀を阻止しなくては……」

「あぁ、ノエルさんいらっしゃい。今日は何か御用でも?」
「はい。コーヒーを切らしてしまいまして……」
「何時ものでいいよね」
 ノエルが、切らしたコーヒー豆を買いに来たようだ。
 コーヒー豆を買うとノエルは店を出て行った。
「あのう。今の御仁は?」
「ノエルさんが如何したのですか?」
「いえ。私が追っている人物が何処にいるかわからないので……もしかして裕福な家の方ですか?」
「えぇ。ノエルさんは、月村さんの所の人ですけど」
「そこだ!! あぁ、すみません。さっきの人の家までの場所を教えてもらえませんか?」
「場所を聞いて何をするんです?」
「『あんにゃろめ』をとっ捕まえます」
「『あんにゃろめ』?」
「モリアーティ教授です」


 食事後、ホームズは海鳴の町を月村家へ歩いていた。
 その道すがら、連続殺人事件と猟奇殺人の話が耳に入ってきた。
「『あんにゃろめ』もだが、物騒な事件が発生しているようですね。事件の解決に手を貸してあげますか」 
 吸血鬼が起こしている事件に介入しようとするホームズ。




 その頃、モリアーティ教授は……。
「トッド、スマイリー! 何をサボっている! 掘らんか! 何億と言う金が目の前にあるんだぞ」
「成功したら松坂牛の最上級ステーキ……」
「わかった。好きなだけ食わせてやる」
「本当ですね、教授……」
「約束してやる」
 約束に張り切る部下達。
 この先に待ち構えているのが栄光の未来ではなく、地獄だということを……。
 彼等の名が本当に有名になるのは、次元世界を渡ってからのことである。
「ステーキ、ステーキ」
 涎をたらしながら穴を掘るスマイリー。
「教授、今どの辺まで掘っているんです?」
「一寸待て!」
 そう言って懐からなにかを取り出す。
「そろそろ、敷地内に入るはずだ!」
 如何やらGPSのようだ。
「お宝は、目の前なんですね」
「あぁ、そうだ!」
 俄然力が入るトッドとスマイリー。
 其の時、何かに鍬が当たる。
「教授! 何かに当たりました」
「何!? 退け! 私が掘る」
 そう言って鍬を振り下ろす。
 振り下ろされた場所にあったのは……。
「なんだ? ただの箱か……」 
 それはタダの箱ではなかった。
 新月村警備システムの中継サーバーだった。





 月村家警備室では、異常警報がなった原因をノエルが調べていた。
「ファリン、B-35ポイントの中継サーバーが故障した。見に行ってきてくれ」
「了解です。お姉さま!」
 敬礼して見に行くファリン。
 この事がドジメイド、ファリンの運命を左右することになる。
 更にモリアーティ一味の運命も決定した。




「B-35、B-35と……。この辺りのはずですが……」
『ファリン、変わったところは無いか?』
「はい。今のところ、変わったところは……」
 そして、ファリンがある場所を踏んだ。
「きゃぁっ」
 モリアーティが掘った穴に落ちた。



「ぐひゃっ!」
 間抜けな声を上げる教授。
「どけぇっ!! どかんかぁ」 
 乗っかっているファリンに言うモリアーティ。
 ファリンに押しつぶされているモリアーティ教授。
「教授の上から早くのいてくれないかね?」
 ファリンをモリアーティの上から退かそうとするスマイリー。
 むにゅと言う柔らかい感触が両手に感じる。
「きゃぁ」
 メイド服の上からファリンの胸を鷲掴みにし揉んでいた。
「教授! この娘、結構大きいですよ」
 ビリビリとメイド服の胸元を破る。
 するとファリンの胸が露になった。
「ちょうど良い。そいつを人質にする」
「何時まで触っているんですか?」
「五月蝿い! 黙れ!!」
 モリアーティは杖をファリンのお腹に突き入れた。
 杖は、思いのほかファリンのお腹に深くめり込んでいた。
「うっ!!」
 ファリンは意識を失って崩れ落ちた。
 メイド服の胸元が破られた状態で……。
「教授も触ります? この娘、結構大きいですよ」
「誰が触るか! って、待て!!」
 そう言ってファリンの胸へ手を伸ばすモリアーティ。
 ファリンの胸を触って揉み始める。
 しかも生を……。



 モリアーティ一味にファリンが人質にされたとも知らないノエルは……。
「ファリンのやつ、何処へいっているのだ」
 ファリンに呼びかけているが応答は無い。
「まったくどれだけ心配をかければ気が済むのだ!」
 ファリンを探しに行こうとするノエル。
 其の時、チャイムが鳴る。
 誰かが門のチャイムを鳴らしたようだ。
 その対応も対応するノエル。
「どちら様でしょうか?」
『私は、ホームズと言う者です』
「どう言ったご用件で……」
『ご家族の方ですか?』
「いいえ。使用人です」
『ご家族方は?』
「今は、外出中です」
『何時ごろ戻られます?』
「わかりません」
『上がらせて、待たせてもらうことは出来ますか?』
「私の判断では出来ません」
『そうですか……のちほどまた伺わせていただきます』
「ファリンのヤツ、庭で迷っているのではあるまいな……」



「さて、困りましたね。家の人が留守なのでは仕方ありませんね」
 ホームズは、海辺を街へ歩いていた。
 その頃には、ホームズの噂は海鳴市中に広がりつつあった。
 その噂がモリアーティ教授を襲うのをホームズ自信も想像していない。


 そして、すずかはファリンが攫われたの知らずに学校生活を送っていた。
「ねえ、今海鳴にホームズが来ているって」
「ホームズって誰?」
 なのはがボケをかます。
「なのはちゃん知らないの? 凄い有名人だよ」
「流石は本の虫、すずかね」
「酷いよアリサちゃん」
 なのはをからかうアリサ。
 そして彼女達はバニングス家の車の中にいる。
 そんな車中から噂の人物を見かけた。
「アレ?」
「如何したの? すずか」
「今、ホームズさんが……」
「鮫島! 止めて!」
 アリサが、鮫島に命じる。
 そして停車するバニングス家の車。
 停車した車から飛び降りるすずか。
 ホームズ目指して……。
「すずか!?」
 アリサがすずかを呼び止める。

「あのう。ホームズさんですよね?」
「はい。確かにホームズですが」
 如何やらホームズ本人だった。
「お嬢さん、私に御用でも?」
「もしかしてモリアーティ教授を追っているのですか?」
「確かにモリアーティを追っていますが……」
「やっぱり」
「やっぱり?」
 何故、目の前の少女が知っているのか疑問に思う。
 実はすずかは使い魔の猫を通じてみていたのだ。
 唯の猫ではない。
 すずかの血を送り込んで創った吸血猫なのだ。
 その吸血猫を複数放っていた。
 其処へ、すずかが放った吸血猫の一匹がやって来て報告をした。
 その猫の目は赤い。
「貴女は小学生ですよね?」
「はい。現役の小学生です」
「一寸、すずか!」
「貴女のお友達ですか?」
「貴方、誰?」
「これは、失礼。申し送れました。私シャーロック・ホームズです」
「ホームズね……。そのホームズが何のよう?」
 アリサが喰ってかかる。
「私は、ある人物を追っていまして」
「誰を追っているわけ?」
「モリアーティです」
「100年以上も追いかけっこをしているの?」
「代は変われど100年以上も追いかけています」
「ファリン?」
「如何したのすずか!?」
「ファリンがモリアーティ教授に人質にされちゃった」
「あんにゃろめ、尻尾をつかみましたよ」



「教授! 変なメカが一杯集まって来ますよ」
「変なメカだと?」
 モリアーティが穴から外を覗く。
「確かに変なメカだな」
 其の時、怪レーザーが発射された。
 怪レーザーはモリアーティのシルクハットに穴を開けた。
「わ、私のシルクハットが……」
 教授に怒りの炎が灯る。
「許さんぞ、私のお気に入りを」
 怒りの炎を燃やす教授。
 その怒りの炎に反応して警備メカが集まってきた。
 警備メカは魔力にも反応するように改造されているのを知らない。
 如何やら教授は、魔力を持っているようだ。


 そしてすずか達は……。
 ホームズをバニングス家の車に押し込めて飛ばしていた。
 向かう先は月村邸。
 通称、『海鳴の魔城』だ。
『海鳴の魔城』と言えば一部の人たちから恐れられているほどだ。
 その餌食にモリアーティ一味がなろうといている。


「お前達、キリキリ掘れ! 屋敷までもう少しなんだぞ」
 モリアーティ達は、まだ穴を掘っていた。
 ファリンを人質にしたまま……。
 そして、モリアーティ達が恐怖を味わう時が近付いていた。


「お帰りなさいませ、すずかお嬢様! なのはお嬢様、アリサお嬢様、フェイトお嬢様、アリシアお嬢様、いらっしゃいませ」
 ノエルがすずかとなのは達の対応をする。 
「ファリンの居場所は?」
「まだ見つかっていません」
 ファリンはまだ見つかっていない。
「一寸宜しいですか?」
「確か、ホームズ様でいらっしゃいましたか?」
「昼間に伺わせていただいたホームズです」
「相変わらず、すずかん家は警備が厳重よね」
「うん」
「私とアリシアも今では普通に入れるけど、最初に来たときは襲われたから」
「あの時は、すずかのお陰で事なきを得たわよね」
「モリアーティとか言う奴は馬鹿よね。最凶の警備システムがある家を狙うなんて……」




「後ちょっとだ、あと少しで億万長者だ!」
 そして再び警備システムを破壊する。
「しあったぁ!」
 だが後の祭り……。
 教授たちの居場所は月村家警備室に通報された。



『敷地内に侵入者!』
 異常個所が赤く点滅する。
「あんにゃろめ、遂に見つけました」
「ノエルは、ここでモニターの監視をしてて」
「はい。すずかお嬢様は?」
「侵入者を絞めてくるね」
「すずか、絞めるって……」
 すずかからは静かながら殺気が上っている。
 その殺気に使い魔の猫が集まってくる。





「トッド、スマイリー! あの機械を何とかしろぉ!!」
「何とかって言われても……」
「そうですよ教授!」
「いいから出て行って壊すんだ!」
 壊せと命じるモリアーティ。
「きょ教授!?」
「何だ!?」
「上にホームズが……」



「この下ね……」
 すずかが、拳を握って地面を殴った。
 ドゴオンと言う音共に地面に穴が開いた。
 周囲には土煙が舞っている。


「ゲホッゲホッ」
「ゴホッゴホッ」
 土煙で咳き込むモリアーティ一味。



「大人しく出てきたら如何ですか? モリアーティ教授」
 咳き込みながら這い出てくるモリアーティ一味。
「ホームズ!」


 次回予告

 すずか「モリアーティさん、覚悟はいいですか?」 

 モリアーティ「何の覚悟だ?」

 すずか「こういうことですよ」

 モリアーティ「な゛ぁぁぁぁぁっ」

 忍「身の程を知れ!」

 さつき「肉片も残さないよ」

 すずか「泣いて謝ろうが許さぬ」

 なのは「すずかちゃんの様子が……」

 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第30話『姫すずか降臨なの?』」



 次回予告

 すずか「モリアーティさん、覚悟はいいですか?」 

 モリアーティ「何の覚悟だ?」

 すずか「こういうことですよ」

 モリアーティ「な゛ぁぁぁぁぁっ」

 忍「身の程を知れ!」

 さつき「肉片も残さないよ」

 すずか「泣いて謝ろうが許さぬ」

 なのは「すずかちゃんの様子が……」

 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第30話『姫すずか降臨なの?』」



やっぱりというか、警備システムに引っ掛かったみたいだな。
美姫 「みたいね」
侵入したのが見つかったけれど、一応人質もあるし。
美姫 「とは言え、すずかたちを相手に上手くそれを使えるかよね」
さて、どうなるかな。
美姫 「それじゃあ、この辺で」
ではでは。



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