第32話「ドキドキ!お風呂場は熱き戦場なの!? 後編」






 
「うわぁ、すごい!」
「うん。流石新装開店!! すごい綺麗ね」
「ほんとう!」
「ほらほら、折角なんだから、早く入って楽しもう!?」
「はいっ。ロッカーの鍵」
 鍵を渡す美由紀。
「「「「「はぁ〜い♪」」」」」
「はぁ、もう、楽しみですなぁ〜」
「エイミィは、お風呂好きなんだ」
「うん。お湯に浸かって、マッタリしている時が至福の時だな〜って」
「わかる。わかる」
「だよね? 家でもいつも、ついつい長湯しちゃってね」
「うんうん」
「うん。美由紀ちゃんの長湯記録って最高どの位?」
「2時間くらいかな〜あっ、でも、家族で温泉行ってたりすると出たり入ったりで、もう一日中だったりするしなぁ」
「すぅばらしいっ!! なんか、私の友達って、お風呂早い子が多くって……ウチのクロノくんって、すごい早いの」
「うちの恭ちゃんも……」
「本当?」
「うちでも、ゴシゴシ! ジャブ! はぁいっ、お疲れぇ!! みたいな……」
「あはははっ、恭ちゃんもだよ! なんで、男の子って皆、あぁなんだろう?」

「美由紀さんとエイミィさんって、今日知り合ったのよね?」
「なんだか、もう、ずっと前から友達みたい」
「「あははははっ」」
「なかよしさん」
「で、もって……」
「フェイトちゃんと一緒のお風呂って初めてだね?」
「うん。そうだね」
「どうしたの? 緊張してる?」
「そうなのかな? そうなのかも……」
「にゃはははっ。大丈夫だよ!? 別に怖いこととかないから……」
「うん……」
「一緒に居るから……」
「ありがとう……なのは」
「あっちはあっちで、こっちはこっちでベタベタとぉ」
「みんな仲良しさんだ」
 その時、アリシアがすずかに抱きつく。
「ちょっと、アリシアちゃん?」
 アリシアは、すずかに抱きついたまま離れない。
「ここからは、自由行動! 帰る時間になったら、私とエイミィが探しにくるから……皆は、自由に遊んでいてね」
「「「「「はぁ〜い♪」」」」」
「じゃあ、美由紀ちゃん! レッツゴー!!」
「オォォォーーーーッ!!」
「……二人とも素早い……」
「私たちも早く入ろう?」
「うん!」


「はい。すみません。しつれいしま〜す」
「んっと、脱衣場……ここか!?」
「おぉっ!」
「はぁ〜! すごい!! きれいやね」
「きれい……かっこいい!!」
「車椅子でもスムーズに入ってこれたな」
「段差が全部、スロープになっているのね。車椅子のおき場所もあるって……あそこだわ」
「あっ、本当だ!」
「ナイス、バリアフリーや! さすが、新装開店」
「私とはやてちゃんは、こっちで……ヴィータちゃんとシグナムは、向こうね」
「あぁ!!」
 シグナム、ヴィータと分かれる。
「はやてちゃん、お手伝いしましょうか?」
「えぇよ。一人で、できるから」
「早くはいろうっと」
「こらっ! 家じゃないんだ! 脱ぎ散らかすな!!」
「ちゃんと片付けるんだからいいじゃんかぁ!!」
「公共の場でのマナーを言っているんだ!」
「ったく、うるせぇよな〜うちのリーダーはよぉ!!」
「それ以前に人としての心構えだ! それに、お前は日ごろから少々だらしないところがある」
「あぁ〜もう!! チクチクうるせぇな!!」
「うるさく言われるようなことをしなければいいだろう?」
「あぁっ!!」
「あら?」
「ちょっと、おっぱいがデカイからっていい気になるなよ!?」
「な、なんだ? それは……なんで、そんな話が出てくる!?」
「無闇に胸に栄養をやっているから、心の余裕が無くなるってるんだよ! この『おっぱい魔人』!!」
「おっぱ……! ……貴様! そこになおれ!! レバンティンの錆にしてくれる!!」
「あんだとっ!? そっこそ、グラーフアイゼンの頑固な汚れになりたいか?」
 火花を散らすシグナムとヴィータ。
「うぅ。これこれ、喧嘩する子には、夕食後のデザートがでへんよ?」
「だって、この『おっぱい魔人』が……」
「誰が『おっぱい魔人』だ!? だれが?」
「シグナム!? 貴女、そんな格好で大きな声を出したら、恥ずかしいから……」
「……………………」
「ヴィータも、真っ裸で、そんなん、はずかしいよ?」
「わ、わたしは、別に……」
「つまらんことで、喧嘩したらあかん! ほら、二人とも謝って仲直りや!」
「…………リーダーを馬鹿にするような物言い、わりかった」
「わたしも些細なことで、お互い暑くなったな。すまなかった」
「はい。仲直り!」
「めでたしや!!」
「とりあえず、裸で歩くな! タオルでも巻いておけ!!」
「へいへいっ!!」
 気の無い返事をするヴィータ。
「シグナムも早く脱いじゃって! 皆で一緒に行きましょう」
「あぁ……」
「はぁっ。そやけど、シグナムのは、チョイうらやましい」
「なっ」
 赤面するシグナム。
「あっ、貴女は、これからですから……」
「まぁ、そうやねんけど……シャマルは、かなりナイスな感じだけど」
「ウッフ〜ン!!」
「シグナムは、どないや?」
「えぇ、実は正直、ずいぶん前から微妙な敗北感とひそかなコンプレックスが……」
「シャ、シャマル!! お前まで……」
「そうやろ? わたしも、チョイ触らせてほしいな〜とか思うんやけど……」
「いいじゃないですか。別に……」
「うんっ」
「まぁ、せやけど、わたしがチョイ揉ませて〜いったら、シグナムきっと真っ赤になって切腹する覚悟で、気をつけいして両手を後ろに組んでギューっと目閉じて、どうぞとかいいそうだし……」
「うわぁ! そんなかんじ」
「はやてちゃん、私たちのこと本当によく理解してくれてますね」
「そうやから、いわへんな!? シグナム!」
「ありがとうございま……す」
「なに? 微妙なものいい……」
「もぅ。シグナム、早くして」
「あっ、あぁ!!」
「(まぁ、ほんまは、寝ているときにこっそり触っているんやけどな)」
「あぁ、いいな! 今度、わたしもやろう。シグナムのは、どんな感じ?」
「う〜ん……ポヨポヨっというか、プニプニーっというか」
「え〜!!」
「なんか、気恥ずかしいな!」
「気のせいよ!」


「うわぁっ! うっははぁ〜っ!!」
「すごい、気もいい」
「あ゛っ肩こりに効くぅ!!」
「美由紀ちゃんは、スポーツ少女さんなんだよね? わたしは、デスクワークだけど、時々、肩と背中がきつくて……」
「座りぱなしに効くストレッチあるから後で教えてあげるよ」
「本当? ありがとう」
「うん」
「あぁ〜それにしても……」
「「きもちいぃ〜!!」」

「この泡のお風呂はなかなか楽しそうね。ちょっと込んでいるけど……どこかあいているところは」
 あいている所を探すアリサ。
「あっ! あったあった」

「あぁっ、なんかいい気持ち」
「ごめんね、となりいい?」
 ヴィータに聞くアリサ。
「うぁ、どうぞ」
「あ〜。あははっ、きもちいい」
 顔が溶けるアリサ。
「ねぇ貴女、一人できたの?」
「いうや、あたしは、家のみんなと……貴女は?」
「わたしも、友達と友達のお姉さんたちと。あと一人は少し遅れてくるって」
「そうですか」
「このお風呂気持ちいいわねぇ♪」
「あぁ、そうですね」
 ヴィータもとろける。


「はやてちゃん。熱くないですか?」
「うん。へいき。はぁ〜えぇかんじやぁ〜♪」
「大丈夫ですか? こちらへ」
「よいしょっと」
「では、わたしたちも失礼して」
 ザブンっと湯が溢れる。
「いいお湯ですねぇ〜」
「あぁ。本当だ」
「ほんまや」
「でも、この辺は湯気が多いですね。もう少し、見通しが良い方がいいんですが……」
「いや、これも風流でえぇやん」
「ですね」
「あっ、シグナム! 表にプチ露天風呂とかあるんやよ? オープンになってて空を見ながら入れるんやて」
「それは、なんともすばらしい」
「あとで、抱っこして連れて行ってな!?」
「はい。お供します」

「皆は? っと……」
「じゃあ、ばいばい」
「はぁい」
 ヴィータと別れるアリサ。
「アリサちゃん!」
「すずかにアリシア!」
「誰かとお話してた?」
「うん。なんかかわいい感じのちっちゃい子がいたから、世間話とか」
「そっか」
「相変わらず、すずかにベタベタねアリシアは!」
 アリシアは、すずかにベタベタだ。
 その様子をヴィータは、見ていた。
 このことが、アリサが襲撃される原因になることを誰も知らない。
「なのはたち、何処だろう? 皆で、ジェットバス行こうと思ったのだけど……」
「うん。わたしも探していたんだけど」
「あ、いたいた! あそこ!!」


「こんなに広いお風呂なんて、すごいね」
「にゃはははっ! こっちの世界でもこの国の人は、お風呂好きだから……あっ、フェイトちゃん! 背中流してあげる」
「いいの?」
「もっちろん♪ あらいっこは、皆ではいるお風呂の醍醐味だよ?」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん」
 液体シャンプ? を手に出すなのは。
「あ、そう言えばアルフさんとエイミィさんに聞いたんだけど、フェイトちゃん。一人で髪を洗うの苦手なんだって?」
「いや……あの……別に……できない訳じゃないんだよ? ただ……目を開けられないだけで……」
「ひゃはははっ。じゃあ、後でわたしが洗ってあげるね」
「あっ……えっと……うん……」
「あ〜っ。フェイトちゃんの肌は綺麗だね? すべすべだね」
「あっ、ありがとう……なのは」

「……なんだろう? 何でも、気恥ずかしい光景が……」
「もう少し、そっとして置いてあげようか?」
「もう……今だけね! 後で、二人まとめて連行するから」
「じゃあ、それまでミストサウナとか行ってみる?」
「うん!!」


「遅くなったけど、なのはちゃん達、どこかな?」
 用事で遅れてきたさつきがなのはたちを探している。
「いろいろ、あるけどどれから入ろうかな?」
 入る風呂を探す。
 その視線に見覚えのある人物を捕らえた。

 ……あの子が来ている。
 此間、あれだけ痛めつけておいたのに……。
 今度は、もっと……体中の骨を折っておこうかな?


「……………………」
 ヴィータは、微かに殺気を感じた。
「なんか、殺気が……」
「ここ、いい?」
 ヴィータに、声をかけるさつき。
「ど、どうぞ」
「じゃあ、お邪魔するよ」

 こいつ……どこかで……?

「いい、お湯!」
 いい湯加減と言うさつき。  
「て、てめぇ!!」
 突如、大声を上げるヴィータ。
「あの時は、何度も私の腹を殴りやがったな!! あん時、すんげえ苦しかったんだぞ!!」
 ヴィータに恐怖の記憶が蘇る。
「思い出しただけで腹が痛くなってきた」
 恐怖の記憶に腹がいたくなった。
 ヴィータは、腹を抱えて蹲る。
 殴られてもいないのに強烈な吐き気が襲ってきた。
 そんな吐き気を堪え、さつきに襲いかかる。
「てめぇにも同じおもいをさせてやる!!」
「ここ、人目があるけど?」 
「血一杯吐いて、死ぬほど苦しかったんだぞ! 実際に死にかけたんだ」
「あまり大声出すと、周りの人に迷惑になるよ」
「うるせぇ!! てめぇをミンチにして、魔力を頂くぜ!!」
「どうしてもと言うのなら、夜に一人でおいで。肉片ひとつ残して戯れてあげるから……」
「うっせぇ!!」
 聞く耳をもたないヴィータ。
「仕方ないな……」
 ため息を吐くさつき。
「ならば死ぬがよい!!」
 さつきの眼が黄金に変わる。
 黄金の眼で強烈な殺気をヴィータに向けるさつき。
 その強烈な殺気に当てられたヴィータは、湯船からあがって走って逃げた。
「走ると危ないよ!?」
「うっせぇ!!」
 走って逃げるヴィータの足元になぜか石鹸があった。
 そして、石鹸を踏んだヴィータはスケートのように滑った。
 その先には……。

 ドボォーン!!

 『火傷注意』と注意する内容が書かれた看板があた。
 ヴィータが落ちたのは、『地獄風呂』だった。
「うわぁち!」
 あまりの熱さに飛び跳ねるヴィータ。
「あっち! あっち!」
 『地獄風呂』で飛び跳ねて踊るヴィータ。
 『地獄風呂』でヴィータの体は、みるみる内にまっかに変わる。

 注意書きに、十分に体を慣らしてからお入りくださいと書かれていた。

 暫く『地獄風呂』で踊り跳ねているヴィータの姿があった。


「エイミィ! 次は、露天風呂!」
「あぁ、いいねぇ♪ ……ちょっと待って!」
 タイムを掛けるエイミィ。
「いようにのぼせた」
「大丈夫!?」
「へいき、平気!」
「脱衣場に行って少し涼もうか?」
「うん」
 脱衣場で涼む美由紀とエイミィ。
「いあや〜デスクワークで体力落ちてダメだわぁ。学生時代は、こんなことなかったんだけどなぁ」
「あっ、そっか。エイミィは、もう社会人なんだよね?」
「通信関連で〜す♪」
「えらいねぇ〜私は、親元で呑気に暮らしているよ」
「でも美由紀ちゃん、家のお手伝いとかしているでしょう?」
「私はまぁやりたいことがあって、たまたまそれに近い働き口があって、勉強しないとならないことが特になかったから、こっちに進んだだけだもの」 「うん。大変だけど、多分楽しい」
 話を変えるエイミィ。
「仕事と言えばぁ……あのぉ……ゴメンね!! なのはちゃんをよく連れ出しちゃって」
「あは、それは、全然……。やっていることの内容はわからないのだけど、フェイトちゃんやエイミィと一緒なの、なのはは嬉しいみたいだし。なんか、やりたいこと見つけている見たいし……」
「うん。なのはちゃん、才能あるから……」
「そうなんだ」
「なのはちゃんが、家のフェイトちゃんと仲良くしてくれているのもうれしいかな? 私にとってもフェイトちゃんとアリシアちゃんは、もう妹みたいなもんだから」
「で……えっと、フェイトちゃんとアリシアちゃんは、クロノくんの妹さんで、でもエイミィは、クロノくんのお姉さんではないん? だっけ?」BR>
「大体あっているけど……微妙なニアンスは……待って! 図で書いて説明するから」
「……図で……?」

「ちょっと、飲み物でも買って来ようかな?」
「さて、次は何処へ参りましょう?」
「露天は、最後の締めですよね♪ やっぱり……」
「サウナとか行ってみる?」
 『地獄風呂』で身体が真っ赤になったヴィータが合流してた。
 『地獄風呂』に子供が飛び込んだと言う騒ぎの声を聞いてシグナムが様子を見に行ったのだ。
 ヴィータは、シグナムに助けられて現在に至っている。
「う〜ん? そうやなぁ」
「……はやてちゃん!?」
「あっ、すずかちゃん!!」
「あっ……」
「紹介するな! この子、家の一番末っ子のヴィータ!」
「あっ、えっと……ヴィータです。よろしくお願いします」
「こんばんわ。月村すずかです。よろしくね? ヴィータちゃん」
「はい」
「シグナムさんとシャマルさんもこんばんわ」
「はい」
「すずかちゃんもどなたかとお風呂ですか?」
「そうなんです」
「あぁ、なんや、偶然とは言え運命的な出会いやな」
「すごいよね?」
「あっ、すずかちゃん!! この後、予定とかあるか? よかったら、晩御飯ご一緒にとか……?」
「うん。友達の家族の皆さんと外に食べに行こうって事になっているんだけど、もし良かったら……」
「あぁ〜残念……。家は、もう用意してしまっているんよ」
「鍋の中でおでんが待っているんだ」
「いいね。おでん」
「はい。鍋の美味しい季節です」
「ふん。ほんなら、また今度かな?」
「近いうちに是非……」
「私は、いつでも都合のいい日に呼んでくれたら……」
「はやての鍋は、超美味いぞ?」
「ヴィータ、私にプレッシャーかけたらあかん!」
 プレッシャーをかけるヴィータ。
「あはははっ。クシュンッ!!」
「ゴメンね!? こんなところで立ち話ししちゃって……えっと、シグナムさんもすみません」
「お気になさらず……」
「……すずかちゃんがお友達と来てるんやったら、あんまり引き止めてもあかんね。帰ったらメールするな!」
「うん! 友達も今度ちゃんと紹介するね」
「楽しみにしてる!」
「あっ、それから一つ警告を」
「警告?」
「今、この街に吸血鬼が何匹か入り込んでいるの。それも力のある吸血鬼が……」
「吸血鬼がですか?」
「はやてちゃん、足が悪いんでしょ? なるべく夜は、一人にしない方が良いよ」
「ご忠告ありがとうございます」
「吸血鬼って映画とかで人の血を吸う化け物だよね?」
「そうやヴィータ! 若しかして、ヴィータ、吸血鬼が怖いんか?」
 ヴィータに最悪の記憶が蘇る。
 真祖の吸血鬼、さつきに痛めつけられた記憶が……。
「きゅ、吸血鬼なんて怖くねぇぞ!!」
 だが、声は震えている。
「どうした!? ヴィータ、震えているのか?」
「さ、寒くはないぞ!!」
「ヴィータちゃん、寒いのなら早く温まりなさい」
「うん……」
「それで、吸血鬼は夜に行動するのですか?」
「大概は、夜に行動するけど、中には日中にも行動できるのもいるから……」
「昼間に行動って……」
「シグナムたちが外出しとる時に襲われたらどないしよう……」
 はやての予感が後に現実のものになることを誰も知らない。
「吸血鬼のことで知りたいことがあったら連絡して! 私で教えてあげられることがあったら教えてあげるから……」
「その時は、お願いします」
 すずかもこの時、はたてに、吸血鬼の血を……自分の血を与えることになるとは思っていなかった。
「じゃあ、またね。すずかちゃん」
「失礼します」
「またね」
「ほんならな♪」
「はぁい!」


「すずかぁ〜」
「アリサちゃん」
「誰か一緒にいない!?」
「前に話したはやてちゃん!!」
「あぁ〜何だぁ!! もう少し早く来ていたら挨拶できたのに」
「でも、こんなところで挨拶もなんだから、また近いうち……」
「そうだね」
 今度、アリサを紹介するようだ。
「で、さぁ……なのはたちが、また見当たらないんだけど、どこだろう? そろそろ、皆で色々回りたいのに……」
「さっきとは、別の洗い場にいたよ?」
 なのはたちは、別の洗い場にいる様だ。
「えっと……ほら、あそこ」
「あぁっ!! まだ、ヤっているのね? あの二人は……ったく、もぅ……」
 桶を手に取るアリサ。
「アリサちゃん!? 桶なんか取ってどうするの?」
「こうするの!!」
 桶に冷たい水を張る。

「なのは、大丈夫!? くすぐったくない?」
「あはははっ、ちょっとだけ……」
「……あ……えっと……! これなら!?」
「あはっ! いいかんじ!!」
「……じゃあ、こんな感じで……」
「きもちいいなぁ〜♪ うれしいな♪」
「……よかった」
「ひゃはははっ!!」
 二人でクスクス笑うなのはとフェイト。

「よし!! 周辺に迷惑のかかる人なし! ターゲットロックオン!!」
 アリサのターゲットは……。
「せーのっ!!」
「(なのはちゃん!! なのはちゃん、逃げて!!)」
「(ふぇ?)」
「うりゃぁぁぁぁあぁぁぁっ!!」
 冷水をかけたアリサ。
「うにゃぁぁぁぁぁっ!!」
「命中♪」
「あ、アリサ?」
「アリサちゃん?」
 やっと二人が元の世界に戻ってきた。
「もぉぅ! いつまで洗いっこしているの? すずかとアリシアでさえ止めているのに……!!」
「アリサちゃん……早く皆でいろんなお風呂に入りたいって」
「あはははっ……うへへへへっ……ごめん!」
「ごめんね、アリサ! つい……」
「そんな、洗いっこなんて家が近所なんだから家庭の事情が許せば毎晩だって出来るでしょう!? せっかくスパラクーアに来てるんだから、ここならではの施設を楽しまなくちゃ!」
「あっ、そうだね」
「毎晩でも……」
 顔が真っ赤になるフェイト。
「今日も譲り合ってないで、一緒に入ればよかったんだね」
「うん」
「じゃあ、練習の後とか、家とか、フェイトちゃん家で一緒に入ろうか!?」
「うん!!」
「わたしも、すずかのところに行こうかな?」
「フェイト! さっきエイミィさんに聞いたのだけど、一人で髪を洗えないとか……?」
「……あっ……。エイミィ! なんで、皆に言いふらしているの?」
「フェイトちゃん、髪長いものねぇ〜」
「私は、ちゃんと洗えるよ」
 ちゃんと洗えるというアリシア。
「洗えなくはないんだよ? 本当だよ!?」
「ひゃははははっ!!」
 皆がフェイトのことを笑う。

「どうもありがとうございました〜!!」
「はぁ〜ぁ、堪能した!!」
「楽しかったね?」
「うん!」
「本当!!」
「エイミィ!? 待ち合わせって何処だっけ?」
「駅前のお店なんだけどぉ……地図は……」
「駅前なら詳しいよ? 案内してあげる」
「ありがとう……美由紀ちゃん♪」

「はぁ。お風呂は、楽しかったし、温まったけど、お腹すいたぁ」
 そう言っているけどヴィータは、『地獄風呂』で火傷している。
「うふっ。お家でザフィーラとおでんが待っているで?」
「うん」
「しめようのおうどんもあるし……ゴハンも少しあったかな?」
「よぉし! 全部食う!!」
「ヴィータちゃんってば」
「意地汚いのは、考え物だぞ!? 騎士として……」
「うるせぇよ」
「せやけど、今夜は皆と一緒で楽しいな〜。晩御飯食べて、のんびりして、一緒に眠って……実に家族らしい暮らしや!」
「これからもずっと、これから続いていく暮らしですよ」
「うん。ヴィータ! 『地獄風呂』で大火傷したそうやけど大丈夫なん?」
「帰ったら、ヴィータちゃんは裸になって、火傷の治療ね」
「寒いのに嫌だよ裸になるなって……」
「ヴィータ、シャマルに治療してもらわんと食後のデザートお預けやで?」
 デザートで釣るはやて。
「わったよ!」

「はぁっ、フェイトちゃんちにお泊りさせてもらうと夜の練習に出やすくていいなぁ!」
「心配かけないように外出するの大変だもんね」
「それに凶悪な吸血鬼が居るし……」
 今、海鳴には凶悪な吸血鬼がうろついている。
『はい。練習用の結界準備OKだよ』
「ありがとうエイミィ」
『なのはちゃんも魔力が戻ってきているとは言え、まだ無茶しちゃダメだよ?』
「はぁい♪ でも、本当に今日は楽しかったし……」
「レイジグハトとバルディシュとアリシアのヴァルディッシュ、ユーノとアルフとリニス、予定より早く戻ってこられそうだし……」
「すずかちゃんの美姫ブリュンヒルトは?」
「ECIシステムも積むから、時間が掛かるみたい」
「ECIシステムって……?」
「わたしもよく解からないんだけど、すずかの新魔法を使うさいに必要なんだって」
「すずかちゃんのデバイスって、超高性能機だったんでしょ!?」
「詳しくは解からないけど、高性能機なのは間違いないよ」
「いろいろ、これからだね!? 全力全壊でがんばろう? フェイトちゃん!!」
「うん。一緒に強くなろう! 昨日よりもっと……ずっと」
「でも、すずかちゃんは……」
「すずかは、強いよね? ハンデ付きで組み手をしても勝てないから」
「組み手でも、すずかちゃんにお腹を殴られた時、暫く息が出来なくて苦しかったよね」
「うん。私も殴られた時、食べた物、吐いちゃったから、なのはの苦しさも解かるよ」
「すずかちゃんも手加減をしてくれているんだけど……」
「うん。すずかは、真祖の吸血鬼だからね」
「すずかちゃんは、手加減してても私のお腹に手首まで入ってたから……」
「明日は……」
「すずかちゃんとの組み手の日だよね?」
「また、お腹殴られて、吐いて、暫く苦しい時間が……」
 明日は、二人に悪夢の苦しみが待っているようだ。


「はい。カートリッジ!! シグナムとヴィータに6発ずつ……」
「うん……」
 カートリッジを渡すシャマル。
「すぐにまた作っておくから……遠慮なく使い切っちゃってね」
「あぁ!」
「では、シャマル! 留守を頼む!!」
「皆、気をつけて」
「夜明け前には戻る」
「行って来ます……」
「吸血鬼が襲ってきたら連絡をしてくれ」



「はやてちゃん、風邪を引きますよ?」
 布団を掛けるシャマル。
「こんな幸福な時は、私たちの生涯で、もう二度とないかもしれない。どんな宝物より尊いはやてちゃんがくれた今のこの暮らし……だから、守るの! 私たちに、こんな暖かな幸せをくれた、この子を……。どんな悲しい運命からも、きっと救い出してみせる。それが、私たちの誓いです」
「う〜ん……」
 スヤスヤ、寝息をたてるはやて。
「おやすみなさい、我が主!」


 次回予告

 はやて「シグナムたちが留守の夜、吸血鬼に襲われてしまううち……」
 はやて「お腹を滅茶苦茶殴れて死んでしまうんやろうか?」
 すずか「はやてちゃんは死なないよ」
 なのは「姿を現す最悪の吸血鬼! そして、新たな戦い」
 フェイト「どっちも準備は万端です」
 なのは「無事に治って帰ってきたレイジングハートとバルディッシュとヴァルディッシュなんだけど……」
 なのは「ふぇ〜!? これって……」
 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第33話『新たなる力、起動なの』」

 なのは&フェイト「に、ドライブイグニッション!!」


何気にとんでもない特訓しているな。
美姫 「手首が埋まるぐらいって」
まあ、何はともあれ銭湯での鉢合わせはなかったな。
美姫 「さつきとヴィータは出会っちゃったけれどね」
とは言え、戦闘になる事もなかったしな。
美姫 「そうね。次回はどんな話になるのかしらね」
それでは、この辺で。



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