第34話「それは小さな願いなの(前編)」






 
 はやては、シャマルと共に買い物をしていた。
 安売りに喜ぶはやて。
「そやけど、最近、あんまり皆お家に居らんようになってしもうたな!」
「えぇ、まぁ、その……なんでしょうね」
 話をはぐらかすシャマル。
「わたしは、別に全然えぇよ!? 皆が外でやりたいこととかあるんやったら、それは別に……」
「はやてちゃん」
「私は、元々ひとりやったしな……」
「はやてちゃん大丈夫です。今は皆忙しいですけど……すぐにまた、きっと……」
「そっかぁシャマルがそう言うんならそうなんやね。今夜は、すずかちゃんも来てくれるし」
 お肉を3パック取るはやて。
「お肉は、こんなもんかな?」
「はい」
「外は寒いし今夜は、お鍋かな?」
「はい」
 買い物を終えて整理をするシャマル。

 皆も、外で寒くないかな?


「強装型の捕獲結界……ヴィータ達は閉じ込められたか」
≪Wahlen Sie Aktion!≫
「レヴァンティン! オマエの主は、ここで引くような騎士だったか?」
≪Nein.≫
「そうだ、レヴァンティン! 今までは、そうしてきた」
 レヴァンティンがカートリッジをロードする。
 

「私たちは、貴女達と戦いに来た訳じゃない。まずは、話を聞かせて」
「『闇の書』の完成を目指している理由を……」
「あのさぁ、ベルカのことわざにこう言うのがあんだよ! 『和平の使者なら槍は持たない』」
 顔を見合うなのは、フェイト、アリシア。
「話し合いをしようってのに、武器を持ってやって来る奴が居るか!? バカ! ってんだよ、バーカ!!」
「なっ!! イキナリ有無を言わさずに襲いかかってきた子がそれを言う?」
「それに、それはことわざではなく、小話のおちだ!」
「うっせぇ!! いいんだよ、細かいことは……」
 其処へシグナムがやって来た。
「シグナム……」
「ユーノくん、クロノくん、ヒバリさん、手を出さないでね? 私、あの娘と1対1だから」
「きっ」

「マジか?」
「マジだよ」
「マジなようですね」

「(アルフ! 私も)」
「(リニス! 私もだから)」
「(彼女と……)」
「あぁ、私も野郎に用がある」
「私も……」
 なのは対ヴィータ、フェイト&アリシア対シグナム、アルフ&リニス対ザフィーラの構図が出来上がる。

「(ユーノ、それなら丁度いい。僕とキミで手分けして『闇の書』の主を探すんだ!)」
「(『闇の書』の!?)」
「(連中は持っていない。おそらくは、もう一人の仲間か、主がどこかにいる。僕は結界の外を探す。キミは中を……)」
「(わかった! 吸血鬼に気をつけて……)」
「(出くわしたら、さつきさんに助けを求める)」


≪Master, please call me “Cartridge Load.”≫
 カートリッジロードを要求するレイジングハート。
「レイジングハート……! カートリッジロード!!」
≪Load Cartridge.≫
 カートリッジがロードされる。
≪Sir.≫
「私もだね!? バルディーッシュ、カートリッジロード!」
≪Load Cartridge.≫
 バルディッシュもカートリッジをロードする。
「じゃあ、私たちも……。ヴァルディッシュ、カートリッジロード!!」

「デバイスを強化してきたか……気をつけろ、ヴィータ!」
「言われなくても……」

 レヴァンティンを構えるシグナム。


「はん? 結局やんじゃねえかよ」
「私が勝ったら話を聞かせてもらうよ? いいね!?」
 ヴィータは、鉄球を出す。
「やれるもんならヤってみろよ!!」
≪Schwalbefliegen.≫
 鉄球を撃つヴィータ。
≪Axelfin.≫
 なのはの足の羽が大きくなって鉄球をかわす。 
「アイゼン!!」
 すぐさま、なのはへ向かうヴィータ。
≪Explosion.≫
≪Raketenform.≫
 ロケットハンマー状に形が変わるグラーフアイゼン。
 ロケット噴射で一気になのはへ迫る。
≪Protection Powered.≫
 レイジングハートが自動でシールドを張る。
 ロケットハンマーとブッツかって火花が飛び散る。
「かてぇっ!!」
 なのはのシールドは硬くなっていた。
「本当だぁ!!」
≪Barrier Burst.≫
 バリアを爆発させて間合いを取る。
「ぐわぁぁっ!!」
 爆発で吹き飛ぶヴィータ。
≪Let's shoot it, Accel Shooter.≫
「うん」
 頷くなのは。
「アクセルシューター」
≪Accel Shooter.≫
「シュートッ!!」
 レイジングハートからアクセルシューターが放たれる。
「ふぇ!?」
「あっ」
≪Control, please.≫
「……………………」
 アクセルシューターのコントロールをするなのは。
「アホか!? こんな大量の玉、全部制御できるわけが……」
 鉄球をなのはへ放つヴィータ。
≪It can be done, as for my master.≫
 アクセルシューターをコントロールしてヴィータの鉄球を全部破壊する。
「……………………」
「約束だよ!? 私たちが勝ったら、事情を聞かせてもらうって……アクセル……」
 ヴィータの周りをシューターが飛び回る。
≪Panzerhindernis.≫
 ヴィータは、障壁を張る。
「シュートォ!!」
 ヴィータの障壁をアクセルシュートが叩く。
 ヴィータの障壁に少しずつひびが入る。

 別の場所では、フェイトとアリシアがシグナムと高速空中戦を繰り広げていた。
「はぁぁぁぁっ!」
「お゛ぉぉぉぉっ!」
 お互いに切り結ぶフェイトとシグナム。

≪Plasma Lancer.≫
≪Plasma Lancer.≫
 バルディッシュとヴァルディッシュが同時に魔法を組む。
「「プラズマランサー、ファイヤーッ!!」」
 フェイトとアリシアが同時にプラズマランサーを放つ。
「はぁぁぁっ!」
 フェイトとアリシアのプラズマランサーをレヴァンティンで撃ち返すシグナム。
「「ターン!!」」
 撃ち返されたランサーを反転させる。
 再びシグナムへ向かう。
 間合いを見て上空へかわす。
 しかし、プラズマランサーはシグナムを追う。
「レヴァンティン!」
 カートリッジをロードする。
≪Sturmwinde.≫
≪Blitz Rush.≫
≪Blitz Rush.≫
「えぇぇぇいっ!!」
 炎の剣でプラズマランサーを撃ち落す。
 フェイトとアリシアが左右からシグナムを襲う。
≪Haken Form.≫
≪Haken Form.≫
 同時に釜形態に変わる。
≪Schlangeform.≫
 カートリッジが吐き出されレヴァンティンの形態が変わる。
 剣がバラけ、蛇のような形に変わった。
 一瞬の切り結び……。
 フェイトは、左腕。
 アリシアは、身腕。
 シグナムは、胸に×字の切り傷。
「強いな! テスタッロサ姉妹!」
≪Schwertform.≫
 また形態が変わるレヴァンティン。
「それに、バルディッシュとヴァルディッシュ!!」
≪Thank you.≫
≪Thank you.≫
「貴女とレヴァンティンも……シグナム」
≪Danke.≫
「この身に成さねばならぬことがなければ、心躍る戦いだったはずだが……」
 鞘を出すシグナム。
「仲間たちと我が主の為、いまはそうも言ってられん。殺さずにいる自身がない」
 シグナムは、抜刀の構えをとる。
「この身の未熟を許してくれるか?」
「構いません! 勝つのは私たちですから……」
「それに、私たちは、吸血鬼ですから」

 ユーノは、魔方陣を展開して何かをしている。
 クロノとヒバリも何かを探していた。

 ビルの壁が爆発する。
 アルフとリニスがザフィーラと戦っている。
 ガチの肉弾戦だ。
「このデカブツ! あんたも誰かの使い魔か!?」
「ベルカでは、騎士に仕える者を使い魔とは呼ばぬ!」
「……………………」
「主の牙……そして盾……守護獣だぁ!!」
「同じようなもんじゃんかよぉ!!」
 爆発が起こる。
 爆風で間合いを取るザフィーラ。


「(……状況は、あまりよくないな……。シグナムやヴィータが負けるとは思わんが……。 ここは引くべきだシャマル! 何とかできるか!?)」
「(何とかしたいけど、局員が外から結界を維持しているの! 私の魔力じゃ破れない! シグナムのファルケンかヴィータのギガント級の魔力を出せなきゃ)」
「(二人とも手が離せない! 止む得ない、アレを使うしか……)」
「(わかっているけど、でも……)」
 何かを突きつける音がする。
「!?」
「(シャマル! どうした!? シャマル?)」
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いで貴女を現行犯逮捕します」


 リンディは、巨大モニターで様子を見ている。
「うんっ」

「おっしっ! ナイス、クロノくん、グッジョブ!!」

「抵抗しなければ、弁護の機会が貴女にはある。同意するなら武装の解除を……」
 その時、何者からがクロノの腹を蹴りを入れた。
 蹴り飛ばされたクロノは、フェンスに激突する。

「な、なかま?」


『エイミィ、いまのは?』
「わかりません。こっちのサーチャには、なんの反応も……なんで? どうして?」


「貴方は?」
「使え!」
 使えという仮面の男。
「えっ?」
「『闇の書』の力を使って結界を破壊しろ!」
「でも、アレは……」
「使用して減った頁は、また増やせばいい。仲間がやられてからは遅かろう?」
 使おうか迷うシャマル。

「(皆! 今から、結界破壊の砲撃を撃つ!! 上手くかわして、撤退を……)」

「おう!!」


「何者だ!? 連中の仲間か?」
 クロノは、仮面の男と対峙する。
 何も答えない仮面の男。
「答えろぉ!!」

「『闇の書』よ、守護者シャマルが命じます。眼下の敵を撃ち砕く力を、今ここに……」
 『闇の書』から力が解き放たれる。

 結界外に暗雲がたちこめる。
「あっ」
 目を逸らした瞬間、仮面の男の蹴りが迫る。
 また、モロに蹴りを貰うクロノ。
 地面に叩きつけられる直前で飛行魔法を再起動させる。

「今は、動くな!!」
「……………………」
「時を待て!! それが正しいとすぐにわかる」
「何!?」

「撃って! 破壊の雷!!」
≪Geschrieben.≫
 破壊の雷が結界に落ちる。

「……まずい……ここで防御を」


「すまない、テスタロッサ姉妹。この勝負、預ける」
「「シグナム!」」

「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士ヴィータ! あんたの名は!?」
「なのは……高町なのは!」
「高町なぬ……なぬ……えぇ〜いっ呼びにくい!!」
 何故かキレるヴィータ。
「逆ギレ?」
「そもアレ、勝負は預けた! 次は殺すからな、ぜってぇだ!!」
「あっ、え〜と……ヴィータちゃん!?」


「仲間を守ってやれ! 直撃を受けると危険だ!」
「え゛ぇ? あっ……あぁぁ」


『状況は?』
「魔力爆撃!? 物理被害は、ありません。でも、ジャミングされて、サーチャとレーダーが……」


「(なのは、フェイト、アリシア、アルフ、リニス、大丈夫!?)」
「う、うん。ありがとうユーノくん……アルフさん」


「ひゃはははっ。おいでおいで〜」
 猫をあやすはやて。
「すずかちゃん家のニャンコは皆えぇこやなぁ」
 黒猫がはやての顔を舐める。
「そやけど、ゴメンな。急にお邪魔してしもうて」
「ううん、うん、全然。来てくれて嬉しいよ」
 はやては、猫を抱いている。
「はやてちゃん、吸血鬼に殴られたお腹はまだ痛い?」
「まだ、ちょっとだけ痛むわ」
「じゃあ、もう少し私の血を入れてあげようか?」
「すずかちゃんの血はええわ。図書館で飲ませてもろうたし……」
「それでもダメージは早く抜いた方がいいよ」
「せやけど、うちが吸うとすずかちゃんが……」
「心配しなくてもいいよ。私、真祖だから……」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもろうて」
 すずかの指を噛んで血を飲むはやて。
「ぷはぁっ。すずかちゃんの血は美味しいな! おかげで、お腹の痛みがなくなったわ」
「よかったね、はやてちゃん!」
 その時、はやての携帯がなる。
「私が……」

「もしもし? 私です。シャマルです」
 シャマルは、八神家の電話から話している。
「はやてちゃん、本当に……本当にごめんなさい! すぐに済むと思ってたのですが、皆と中々落ち合えなくて、それで時間が掛かっちゃって……えぇ……携帯も置いててちゃって……えぇ、今帰ってきたんですけど……はい、はい。皆一緒です。その……なんて謝っていいか」

「ほんなら、よかった。あはっ、全然怒ってへんよ。平気や! 謝らんでえぇって! すずかちゃんと二人で鍋は、チョイ寂しかったし……すずかちゃんがさそって ……うん! それだけやから……! うふっ、すずかちゃん家でご馳走になった! オマケに血も飲ませてもろうた」


 冷蔵庫には、はやてが用意した材料があった。
『冷蔵庫に材料切って入れてあし、お出汁も鍋にとってあるから、すぐに食べられるよ? 皆で食べてな』
「はい。本当にすみません。はい、はい。じゃあ、ヴィータに……」
 ヴィータに変わるシャマル。

 外に出るシャマルとシグナム。
「寂しい思いをさせてしまったな」
「うん」
「それにしてもお前を助けた男は何者だ!?」
「わからないわ。少なくとも当面の敵ではなさそうだし……」
「管理局の連中もこれで本腰を入れてくるだろうな」
「あの砲撃で大分頁も減っちゃったし」
「だが、あまり時間もない。此間、ヴィータをボロボロにしたあの女の魔力が手に入れば、お釣りがくるだろう……」
「うん」
「一刻も早く主はやてを『闇の書』の真の所有者に」
「そうね……」

「シグナム!? はやてが代わってて……」
「あぁ」
 電話を代わるシグナム。
「もしもし? シグナムです」


「カートリッジシステムは、扱いが難しいの。本来なら、そのこ達みたいに繊細なインテリジェントデバイスに組み込むような物じゃないんだけどね……」
 なのは、フェイト、アリシアに説明をするエイミィ。
「本体は、その危険も大きいし、危ないって言ったんだけど……そのこ達がどうしてもって……よっぽど悔しかったんだろうね? 自分がご主人様を守ってあげられなかったこととか、ご主人様の信頼に応えられなかった事が……」
「ありがとうレイジングハート!」
≪All right.≫
「バルディッシュ!」
≪Yes, sir.≫
「ヴァルディッシュ!!」
≪Yes, sir.≫
「モードはそれぞれ3つずつ! レイジングハートは、中距離射撃のアクセルと砲撃のバスター、フルドライブのエクセリオンモード……バルディッシュとヴァルディッシュは、汎用のアサルト、釜のアサルト、フルドライブはザンバーフォーム! 破損の危険があるから、フルドライブはなるべく使わないように…… 特になのはちゃん!?」
「ふぇ?」
「フレームを強化するまでは、エクセリオンモードは起動させないでね」
「はい」
「それで、すずかのデバイスは?」
「すずかちゃんのデバイスのモードの数は4つ。すずかちゃんのは、近接砲撃のクレセント、中長距離砲撃のハーフ、超長距離砲撃のフル、そして究極殲滅砲撃のトランジッションモード」
「トランジッションモード?」
「実を言うと、すずかちゃんのデバイスは、とても普通の魔導師が扱えるような代物じゃないの」 
「普通の魔導師って、私たちでも?」
「そう。反動がすごいらしいわ。コンピュータ上での計算によると普通の魔導師だと反動で全身粉砕骨折するって!」
「それで、すずかのデバイスは?」
「すずかちゃんの希望で超高性能演算装置……ECIシステムを追加で搭載したの。開発室は、手に負えないって、シロウ・サナダの所に回されたって」
「ECIシステムは完成したんですか?」
「えぇ、微調整から、基礎構造の強化から何まで全部!」
「すずかちゃんにはいつ渡すんですか? すずかちゃんは、吸血鬼事件をまかされているんでしょ?」
「すずかちゃんには、明日渡す予定よ。夜には、吸血鬼事件で試運転してもらうつもりだから」


「問題は、彼らの目的よね?」
「えぇ。どうも、ふに落ちません! 彼らは自分の意思で『闇の書』の完成を目指しているように思えますし……」
「それって、何かおかしいの? 『闇の書』ってのもようは、『ジュエルシード』見たく凄い力がほしい人が集めるもんなんでしょう? だったらその力をほしい人の為にあのこ達ががんばるってのもおかしくないと思うんだけど……」
「第一に『闇の書』の力は『ジュエルシード』みたいに自由のな制御の利くようなものじゃないんだ!」
「完成前も完成後も純粋な破壊にしか使えない……少なくともそれ以外に使われたという記録は、一度もないわ」
「そうか……」
「それからもう一つ……あの騎士たち、闇の書の守護者の性質だ! 彼らは、人間でも使い魔でもない」
「「「あっ」」」
「『闇の書』にあわせて魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて行動するだけのプログラムに過ぎないはずなんだ!」


 次回予告

 なのは「なんだか事態は、ますます複雑に……」
 フェイト「造られた命、決められた定め、真実は何処にあるのだろう?」
 なのは「それは、騎士達の過去の中に……」
 すずか「そして、吸血鬼との戦いが始まる」
 アリシア「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第35話」 
 なのは「『それは小さな願いなの(後編)』に」
 なのは、フェイト、アリシア、すずか「「「「ドライブ、イグニッション!!」」」」


今回はなのはサイドのお話か。
美姫 「こちらは大きな変化も特になくって感じね」
だな。吸血鬼絡みの事件は後編みたいだな。
美姫 「みたいね。それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。



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