第53話「ダンタリオン襲来なの」
12月31日 PM8:00
ドイツ
「忍、元気!?」
「フィアッセ!」
パーティにフィアッセが呼ばれているようだ。
「フィアッセ、仕事を再開するって本当?」
「復帰最初のコンサートを海鳴でやるよ」
「きっとなのはちゃん達も喜ぶよ」
「すずかちゃん、先ずは即位おめでとう」
「ありがとうございますフィアッセさん」
「それで、何時なの?」
「年明け早々、1月7日よ。チケットは買ってくれた?」
「ちょっと色々あって買えなかったの」
「必要な枚数は!?」
「なのはちゃんたちが5枚でアリサちゃんが1枚、私たちが9枚で後フェイトちゃん達が4枚ではやてちゃん達が6枚……」
必要な枚数を計算する。
「30枚は要るかな?」
「招待してあげるわ」
「可也の額だけどいいの?」
「いいのよ。私から皆へのお年玉よ」
「すずか、ありがたく招待を受けましょう」
こうして、フィアッセ・クリステラのコンサートに行くことが決まった。
「じゃあ、今から何曲か歌うから」
そう言うと特設ステージに向かった。
フィアッセの歌が始まる。
喉を痛めて活動休止してたとは思えない歌声だ。
此処にいる者たちはいち早く聞くことが出来たのである。
1月1日 AM4:40
海鳴市
「あれ? こんな所で寝ているんだ!? とりあえずベットに入って寝よう」
クロノは、何も考えずにフェイトとアリシアの部屋に入っていった。
酔い潰れたクロノは、寝ぼけていた。
酔い潰れているが為、正月早々に悲劇がおこる。
その悲劇まで、後1時間。
後1時間でクロノの身に『双金の死神』の制裁が待っているのだ。
12月31日 PM9:00
ドイツ
フィアッセのミニコンサートが続いていた。
酔っ払いがフィアッセに近づこうとする。
「フィアッセちゃん、おっぱい触らせて」
それは禁句だった。
「貴方、死にたい!? それとも……」
忍が吸血鬼の力を解放して聞く。
「完全に酔いを醒まそうか……」
すずかの眼が黄金に変わる。
「へ、陛下……悪ふざけですよ」
「悪ふざけで済まされると思って居るのか?」
「い、いえ……」
「酔いが覚めるまで外に出ておるがよい!!」
悪ふざけした愚か者は、すずかの命令で外に連れ出されていった。
悪ふざけしたために寒空の下、酔いを醒ます羽目になったのだ。
「すずか、もうすっかり陛下って感じね」
「からかわないでよお姉ちゃん」
からかうのが楽しい忍。
「何で我が給仕紛いのことをしなければならん!!」
シェーンコップが怒鳴る。
「貴方達に仕事を与えてあげているんですよ。感謝しなさい」
「仕事ではなく雑用だろうが!!」
「あら? 気づいていたのですか?」
「気づかなくては将は務まらん」
どうやら気づいていたようだ。
馬鹿では将は務まらない。
「それでは、私に紅茶を淹れて来なさい!」
お茶の要求をするアンゼロット。
お酒より紅茶派のようだ。
1月1日 AM5:40
海鳴市
クロノは、寝ぼけてフェイトのベットの中に入って寝ていた。
フェイトの寝巻きの胸元をはだけさせていた。
そして、寝ぼけたままフェイトの胸を揉んだ。
「ぅぅ〜ん」
胸を揉まれて眠りから呼び覚まされる。
「く、クロノ!?」
自分の胸を揉んでいるクロノの姿が眼に入る。
「クロノ、いつまで……」
フェイトの顔が真っ赤になる。
「どうしたの!? フェイト……」
眠い眼を擦るアリシア。
次の瞬間アリシアの眼に入ったものは、フェイトのベットに入り込んでフェイトの胸を揉むクロノの姿だった。
「(アルフ! フェイトが大変だよ)」
アルフに念話を送るアリシア。
「(フェイトがどうしたって……)」
「(だから、フェイトがクロノの毒牙に掛かって汚されかけているんだって)」
「(わかった)」
同じ部屋で寝ていたアルフが起きる。
「あんた、何時までフェイトの胸を揉み続けるきだい!?」
クロノに言うが聞こえていないようだ。
「正月の早朝からフェイトの胸を揉んだんだから、もう想い残すことはないよな」
フェイトの胸を揉んだ!?
思い残すこと?
そこで、クロノの意識が覚醒する。
覚醒と同時にフェイトの胸を揉むのを辞める。
「やっと、お目覚めかい?」
「あれ!? ここは?」
クロノの手はフェイトの胸に手を置いたままだ。
「何時までフェイトの胸に手を置いているつもり?」
「わっ」
慌ててフェイトのベットから飛び降りる。
「うわっ! お酒臭っ」
クロノは、お酒臭い。
「それはそうと、覚悟はいい!? フェイトの胸を揉んでただで済むとは思わんことだね」
「フェイト、大丈夫!?」
「うん。大丈夫……アリシアお姉ちゃん」
「フェイト服を着て! 着たらO・HA・NA・SHしないといけないから……」
「うん」
クロノによって脱がされた寝巻きを着なおすフェイト。
その間、クロノはアルフに正座させられている。
「言い残すことがあったら聞いてあげるよ」
「言い残すことって言われても……」
言い残す言葉が思い浮かばないようだ。
「服、着なおしたよ」
「じゃあ、死なない程度に血を吸うよ」
「うん」
「「いただきま〜す♪」」
アリシアとフェイトは、クロノの首に噛み付いて血を吸い始めた。
クロノからどんどん血の気が引いていく。
二人同時だから、失血も早い。
これ以上は危険というところで血を吸うのを辞める。
クロノへの制裁はまだ終わっていない。
血を吸った事で魔力が増えた二人がその魔力で肉体を強化する。
「アルフ!」
「あいよ」
どうやら三人でクロノを袋にするようだ。
吸血によって意識が朦朧としているクロノに回避することは出来なかった。
顔や腹を殴ったり蹴ったりする。
吸血鬼の力で殴るから顔が変形し青紫の痣が出来ていく。
腹のほうは内臓が破裂しない程度に殴る。
数分間の制裁を終えると部屋から出てダイニングに向かった。
「クロノの血不味かったね」
「うん。今までにないくらい不味かった」
クロノの血が不味かったと言うアリシアとフェイト。
「何時もは美味しいのに……」
「息が臭いのと関係あるのかな?」
息が臭い原因が分からない二人。
同日 AM6:00
時空管理局本局
「ドーミノ、何時まで準備に時間を掛けているのです」
「済みません教授!!」
「早くしないと、皆が動き出してしまうではありませんか」
苛立つダンタリオン。
「教授!? 機材は、先に送りましたけど……」
「それを先に言わないのですか?」
ドミノに拳骨を喰らわせる。
12月31日 PM10:30
ドイツ
ドイツは、時差の為まだ新年を迎えていない。
フィアッセのミニコンサートも終わり本格的な宴会の様相を呈してきた。
「そろそろ新年を祝うパーティの調理を開始するか……」
調理場は、戦場だった。
料理や酒の追加が次々来るのだ。
ワインなどもかなりの本数を冷やしているが追いつかなくなりつつある。
「おいっ! ワインを300ほど急いで冷やしておけ」
コック長が指示を出す。
彼らは、まだ忙しいのである。
1月1日 AM6:40
海鳴市
「おはよう。アリシアさん、フェイトさん」
「リンディさん……」
「「あけましておめでとうございます」」
「はい。おめでとうどざいます」
「アリシアちゃん、フェイトちゃん、おめでとう」
「おめでとうございますエイミィさん」
「あれ? クロノは?」
クロノは、まだ起きてこない。
待つこと20分……。
「おはよう……」
やっとクロノが起きてきた。
「クロノ! その顔、如何したの?」
リンディが聞く。
クロノの顔は腫れ上がり痣が出来ていた。
其の上、青白い。
「一寸、いろいろありまして……」
言いあぐねるクロノ。
「クロノくん、アリシアちゃんとフェイトちゃんの寝込みを襲ったんだって」
「クロノ! エイミィが言ったことは本当?」
「はい。母さん」
「クロノは初詣の後で折檻です」
クロノは、正月早々にお仕置きが待っている。
「はぃ」
「では、アリシアさんとフェイトさんにはお年玉をあげるね」
二人にお年玉を渡すリンディ。
「「ありがとうございます」」
異世界で始めてもらうお年玉に喜ぶ二人。
「さあ、二人とも着替えていらっしゃい。なのはさんたちと初詣に行くから……」
「「はぁい♪」」
12月31日 PM11:10
ドイツ
「此処が第97管理外世界ですか」
ダンタリオンが第97管理外世界に降り立った。
「さぁて、グズグズしている時間は有りません。早くじぃ〜けんをしなくては……」
実験を始めるダンタリオン。
「実験をするには自動人形とやらを捕獲せねばなりません。破壊ロボRX-2199からRX-2220で襲撃します」
「教授! 調整には後、1時間はかかります」
「仕方ありませんね。早く調整をしなさい」
急いで調整するドミノ。
1月1日 AM7:30
海鳴市
フェイトたちはなのはと合流して初詣に行った。
地元の神社も正月とあって人出が多い。
「おめでとう。フェイトちゃんアリシアちゃん」
「おめでとう、なのは」
ハラオウン家と高町家の合同の初詣だ。
その中にプレシアの姿もあった。
「クロノくん。その顔どうしたの?」
顔が腫れ上がったクロノに聞く。
「ちょっと、いろいろあって……」
本当のことを言えばなのはからO・HA・NA・SHされかねないからはぐらかす。
「後で血、吸わせてね」
アリシアとフェイトに血を吸われた直後になのはからも血を要求される。
正月から踏んだり蹴ったりのクロノである。
人が多い為、なかなか前に進まない。
「もう少しで、すずかも新年迎えるね」
「初詣終わったらおめでとうメール送ろうよ」
「うん。おくろう」
初詣の後、すずかにメールを送ることになった。
そのメールを直ぐに見ることが出来ないとも知らずに……。
12月31日 PM11:50
ドイツ
年越しパーティも間もなく終わろうとしている。
例のごとく、子供達は休んでいる。
「後10分か……」
新年まで後10分だ。
「ド〜ミノ! 調整はまぁ〜だですかぁ!?」
「もうすぐ終わります」
「急ぎなさい! サナダやハラオウン親子に気付かれる前に……」
実験の用意を急ぐダンタリオン。
実験のせいですずかにボッコボッコにされるとも知らずに……。
そして時計の針が0時を指す。
「皆のもの、陛下からのお言葉を賜る静かにせよ」
ざわついていた室内が静かになる。
再び壇上にすずかが上がる。
「新年にあたり妾から言うことがある」
挨拶を始めるすずか。
「昨年は色々あったが今年は良い年にせねばならぬ。特に新たな子孫を増やす必要がある。理由はわかっておるな!?」
話を続けるすずか。
「適齢期の者には子供をたくさん作ってもらいたい」
事件で減った一族を回復させなければならない。
「本年より一族出産倍増計画を継続して行う」
出産数を増やすよう言うすずか。
「新年の挨拶は此処までじゃ。皆のものグラスを持つが良い!!」
ワインが注がれたグラスを手に持つ。
「新年を祝して乾杯!」
「「「「「「「「「「プロージット!!」」」」」」」」」」
新年を祝うパーティーが始まる。
始まって1分もしない内に事件は起きた。
ドゴォン!
爆発音が轟く。
「陛下! あぶのうございます。どうか、ご避難を……」
「逃げぬ。この騒動の犯人が分かるまでは……」
「さぁ、じぃっけん開始!!」
ダンタリオンが実験を開始する。
破壊ロボRX-2199から2220がイレインを捕獲する為に行動を開始した。
「私の研究のために最高のデータを提供していただきますよ」
「教授、データの収集開始しました」
同日 AM8:30
海鳴市
「はいはぁ〜い。エイミィで〜す」
『技術部のサナダだ! リンディ提督は居られるか?』
「何かあったのですか?」
『技術部の問題児、ダンタリオンが実験をする為にそっちに行った』
「それで、場所は!?」
『分からない! 転送の履歴を消されているから、場所の特定が出来ない』
「あの変態教授がこっちの世界に!?」
『早く捕らえないとどんな実験をするか分からん!』
「エイミィ、なにがあったんだ!?」
「あっ、クロノくん! 変態教授がこの世界に来ているんだって」
「なんだって!? あの変態教授が……」
『クロノ執務官、はやくダンタリオンを探して捕らえてくれ! その世界が滅ぶかもしれん』
「分かりました。休暇中ですが直ぐに事態に当たります」
『ところで、執務官! その顔は……?』
クロノの顔は、未だに腫れたままだ。
『とにかく急いで見つけてくれ! 発見し次第、拘禁してくれ』
「了解しました。捕らえ次第、そっちに連行します」
『よろしく頼む』
通信が切れる。
「クロノ、何かあったの?」
「一寸、問題が起きただけだ!」
「一寸した問題!?」
「フェイトちゃんとアリシアちゃんは知らないかもしれないけど、技術部の超問題児がね……」
フェイトとアリシアに説明するエイミィ。
「その人がこの世界に侵入したんですか?」
「そうらしいの」
「私達も何かすることある?」
「フェイトちゃんたち、デバイスのメンテ中でしょう?」
フェイトたちのデバイスはメンテナンス中だ。
「となると、動けるのはエロノくんとさつきさんとすずかちゃんだけか……」
「すずかのは修理中じゃ」
「すずかちゃん、別の魔法が使えるの忘れていない!?」
「あっ」
「それにローゼンリッターもいるじゃん」
ドイツにダンタリオンが現れて実験しているとも思っていない。
同日 AM0:50
ドイツ
「エ〜クセレンッ! 最高のデータが取れてますよ」
ダンタリオンは最高だった。
「どんな自動人形かと思いましたが、わたしにもわからない事がおおいです」
「教授! 破壊ロボは予定通り城を攻撃させています」
「ドミノ、ちゃんとデータは取ってますか?」
「順調に取れてます」
「陛下も地下へご避難ください!」
「出来ぬ! その方は、早く避難するがよい」
「しかし……」
「賊は妾が処理する。折角のパーティを台無しにした報い、受けてもらわねばならぬ」
「王よ!」
「我が騎士たちよ騒動を起こした賊を捕らえ妾の前に連れてくるがよい」
「「「「はっ! 我が主!!」」」」
ローゼンリッターがダンタリオンを捕らえにむかった。
之から数時間、破壊ロボとの激戦が続くのである。
次回予告
すずか「パーティを台無しにした謎の襲撃者」
シェーンコップ「我らが王には触れさせん」
シェーンコップ「ガラクタ風情が我の手を煩わせるな」
すずか「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第54話『破壊ロボRX-DXの脅威!』」
すずか「妾と踊りたくば腕を上げてから来るが良い」
フィアッセ登場。
美姫 「どうやらコンサートをするみたいね」
だな。だが、それ以前にドイツで襲撃が。
美姫 「って言うか、これって実験っていうよりも犯罪なんじゃ……」
さてさて、どうなるのか。
美姫 「それじゃあ、この辺で〜」
ではでは。