第54話「破壊ロボRX-DXの脅威!」






 
 ダンタリオンが実験を始めて30分が経っていた。
「大分データが集まってきましたよ」
 データが集まってきたようだ。
「それにしても人形の割りに出るところは出ているし柔らかいですね」
 捕らえたイレインの体をくまなく調べ上げている。
 当然、胸も揉んで確かめていた。
「この様な辱め受けたからには唯では済まさないぞ」
 イレインは報復を宣言する。


 1月1日 AM1:30
 ドイツ
「てめぇら、王の城を襲ったからには覚悟できているだろうな!?」
「教授の実験の邪魔はさせません。邪魔するものはすべて破壊します」
「機械風情がオレの手を煩わせるな!!」
 シェーンコップがサラマンドルを構える。
「サラマンドル! オレの甲冑を……」
≪Ja.≫
 黄金の甲冑を着装する。


 別の場所でもローゼンリッターが戦闘を繰り広げていた。
 どういう素材を使っているのかなかなか破壊できない。
「くっ! なんて硬いんだ! こっちの攻撃が全く効かないとは……。これだと将や他の騎士も」


「無駄なのです。私の破壊ロボはどんなことをしても傷つかないので〜す」
 空間モニターで戦闘の模様を見るダンタリオン。
「なぁ〜にしろ最高傑作だからでぇす。あの人のお墨付きもあるのでぇ〜す」
 破壊ロボの勇戦が映し出されている。
「私の最高傑作と互角に戦うあいつらは何者なんですか?」
 破壊ロボと互角に戦うローゼンリッターを見て命令を変更する。
 数機で一人の相手をさせる。
 同レベルの力を持ったものなら数が増えれば戦局は変わるものである。
 いったん変わった戦局を変えるのは並みの力では出来ない。
 はるかに超える圧倒的な力を持つ者が居ない限り……。
 その存在に気づいた時、彼の運命はヴァルハラ逝きになるのである。




 同日 AM10:00
 海鳴市
「お正月だけど、ダンタリオンの捜索及び捕縛を行います」
 リンディが指揮を執る。
「エイミィ、場所は特定できた?」
「いいえ。まだです」
「そう……。いったい何処でしているんだろう?」
 アースラチームが戦闘準備を整えたときにはすべて終わっているのである。



 同日 AM2:20
 ドイツ
「がらくた風情が妾の手を煩わせるな!」
 すずかは、爪で破壊ロボRX-2220を破壊した。
 いとも簡単に粉々に……。
「壊れたくば、掛かってくるがよい」
 すずかの口調は、姫すずかだ。



 すずかの戦闘を見て凍りつくダンタリオン。
「何者なんですか!? あの少女は……」
 すずかによって破壊された破壊ロボRX-2220のデータを急いで分析する。
「私の最高傑作である破壊ボロをいとも簡単に壊すとは……」
 科学者としての火がつく。
 それは、悪い方向でのことだ。
「あんな少女に壊せるような物ではないのです」
 すずかの戦闘データと平行してさつきやローゼンリッターのデータも収集する。
「この二人、いったい何者なんですか? 戦闘能力計測不能って……」
 さつきとすずかの戦闘能力は計測不能だった。
 正式な魔導師ランクの測定が出来ないほどである。
「この女も……」
 忍の戦闘力も高いようだ。
「なんなんだ!? こいつらいったい何者なんだ!」
「そんなに知りたいか?」
「!?」
 掛けられるはずのない声に凍りつく。
「そんなにも知りたいか?」
「何者なんですか!? 貴女達は……」
「妾たちは、吸血鬼の真祖だ!」
「私の破壊ロボたちはどうしたのですか?」
「あのガラクタの事か?」
「ガラクタと言うな!! 破壊ロボという立派な名前があるのです。私の最高傑作シリーズ『RX』です」
「妾から見ればガラクタだ! その方のガラクタはすべて破壊した。確認してみるが良い」
 そう言ってすずかは、請求書をダンタリオンに投げつける。
「なんなんですか? これは……」
 投げつけられた請求書を拾う。
 そして書かれていた金額を見て固まる。
「なんなんですか!? この額は……」
「その方によって当方が被った損害だ!」
「3億って多くありませんか?」
「之から増えることはあっても減ることはない」
「増えること前提で話を進めないで欲しいのでぇ〜す」
「素直に縛につくがよい」
「まだ、実験は途中なのです。実験の完遂にはまだ時間が必要で〜す。之だけは使いたくなかったのですが……」
 ダンタリオンがリモコンのボタンを押す。
 少しすると超巨大ロボが現れた。
「貴様達は……貴様達は、この超巨大破壊ロボRX-DXでミンチにしてやるのです」
 そう言って破壊ロボRX-DXに乗り込む。
『こうなればこの破壊ロボRX-DXで捻りつぶしてあげます』
 自ら操縦をするダンタリオン。
『その前に結界を強化しておきましょう。ドミノ!』
 結界強化を命じるダンタリオン。


「結界出力100%から800%までアップ!」
 結界出力を大幅に上げる。
 機械的にである。


『さて、誰からミンチにしてほしいですか?』
 破壊ロボRX-DXに乗ったダンタリオンが強気になる。
「王よ! 命令を……」
「そのガラクタを破壊せよ!」
「了解!」
 ローゼンリッターが一斉に倒しにかかる。
「爆ぜろぉ!!」
 カートリッジも使用し魔力を上乗せする。
 サラマンドルで斬りかかるシェーンコップ。
 だが……。
『無駄なのです。この破壊ロボのシールドは簡単には破れないのでぇす』
ソード!」
 すずかがソードのカードを使う。
『唯の剣では、この破壊ロボのシールドは……』
 その言葉は遮られる。
 すずかのソードによって斬られたからだ。

「なっ!! 破壊ロボのシールドが……」
 原因を探す。
 だが原因は分からない。
 ソードで斬られただけでシールドが壊れたのだ。
「破壊ロボRX-DXのシールドは簡単には破れないはずなのですが……」
 ダンタリオンは知る由もない。
 ソードは使う者の気持ち次第で何でも斬れるという事を……。


「奴を守るシールドは消えた。行くぞ!!」
 ローゼンリッターの総攻撃が再開される。
 それでも装甲が固く攻撃が通らない。
「シールドの次は固い装甲だと!」
 破壊ロボRX-DXは固い装甲に守られていた。
 シールド同様強固らしい。
『この装甲を破れる者はこの世にはいないのです』

 だが、ダンタリオンは気付いていない。

『なにしろ、最高傑作シリーズの最高傑作なのです。この装甲を傷つけれる者が居るとすれば化け物です』

 だが、ダンタリオンは気付いていない。

『なぁにしろ私は天才だからなのでぇ〜す』

 だが、ダンタリオンは気付いていない。



『ドーミノ! 捕獲した自動人形をスカリエッティのラボに送っておきなさい』
「了解しました。スカリエッティのラボに転送しておきます」
 そう言って、捕えた自動人形を転送した。
 その自動人形が後の大事件の切っ掛けになるのである。



「之でも喰らいやがれ!」
 ケルヴェロスが破壊ロボに向け火炎を吐く。
「如何や!?」
『無駄無駄! その程度の炎、熱くありません!!』
「ワイの炎が……」
 感傷に浸っている時間はない。
 破壊ロボの拳が迫ってくるからだ。




「マインカイザー! 非戦闘員の避難完了しました」
「貴方も後退して待機してて! アレは貴方でも敵わないから……」
「では、後退させて頂きます」
 すずかに報告に来た男が後退する。
 すずかは、再び破壊ロボへ意識を向ける。


 美姫ブリュンヒルトは、修理中……。
 『創世の書』も調整で使えない。
 使えるのは、『すずかカード』と吸血鬼の能力だけ……。
 どうやって倒そうか?


 策を巡らせる。
 打てる手を考える。
「空想具現化は、使いたくないな」
 空想具現化は、吸血鬼としての最後の切り札である。
「すずか、あいつは私が相手をするから……」
「お姉ちゃん!」
「心配しなくても私には、これがあるから」
 すずかにデバイスを見せる忍。
「ブルートザオガー!」
≪ja.≫
 ブルートザオガーが忍のデバイスの名前のようだ。
 ブルートザオガー……ドイツ語で吸血鬼である。
 ベルカ語も同じらしい。
 吸血鬼が吸血鬼を持つのだ。
 ブルートザオガーの刃は血のように赤い。
「ブルートザオガー! カートリジロード!!」
≪Jawohl.≫
 ブルートザオガーがカートリッジをロードする。
 ブルートザオガーから魔力が溢れる。
「覚悟はいい? この子は、私でも驚くほどの高出力があるから……」
 そう言って正眼に構える。
 吸血鬼の能力を開放している為に眼は紅い。
「でも、そのガラクタは私の最高の力で破壊するわ」
 忍の眼が紅から黄金へと変わる。
 真祖としての力を解放したのである。
「逝くよ!」
 


 破壊ボロのコックピットのモニターから忍の姿が消えた。
「何処へ行った!?」
 あまりに早い動きのためにカメラでも捕らえきれないのだ。
 次の瞬間、硬いものに殴られる音が聞こえる。
 何度も絶え間なく聞こえ続ける。
 あまりにも忍の攻撃が早いので一撃のように聞こえるのである。
「ガンガン五月蝿いですね……」
 音が五月蝿いようだ。
「捕まえたら踏み潰してやります」
 忍を踏み潰すと宣言するダンタリオン。



「遊びは終わりよ。ブルートザオガー!」
≪Explosion.≫
 再びカートリッジを使って魔力を上乗せする。
 破壊ロボへ一直線に突っ込む。
 待ってたとばかりに巨大ハエ叩き叩き落す。
 叩き落された忍は地面にクレーターを作ってめり込む。
「し、しまった」
 そんな忍を無常にも破壊ロボが踏み潰した。
 踏み潰された忍から腸や脳髄など色んなものがはみ出て血の海を作った。
 忍の豊満な胸は潰れ原型を留めていない。


「先ずは一人! 次は誰をミンチにしてやりましょうか?」
 次のターゲットを見定めるダンタリオン。
「その前にもっとミンチにしておきます」
 原型を留めていない忍を更に踏み潰して完全なミンチにする。


「お姉ちゃん!!」
 すずかが叫ぶ。
『心配せずとも貴様達もあの世に送ってやります』
 あの世に送ると言うダンタリオン。
『あの世で再会しなさい!!』
 すずかもあの世に送ると言う。


 ダンタリオンは、忍とすずかが吸血鬼の真祖だと言うことに気づいていない。


『泣かなくてもいいのです。直ぐにあの世で会わせてあげます』

 ダンタリオンは、気づいていない。

『お譲ちゃんも踏み潰してミンチにして差し上げます』


 だが、ダンタリオンは気づかない。

『ミンチにしてあげるからかかってきなさい!』
 ダンタリオンは、次をミンチにしたいようだ。
「そこの馬鹿! そのガラクタから出てくるが良い!!」
『ガラクタではありません! 破壊ロボRX-DXです』
 そう言ってすずかとさつきを踏み潰そうとする。
「そのガラクタで妾たちを踏み潰すことは出来ん」
『言ってくれましたね!? 貴女から踏み潰して差し上げます!』
 破壊ロボでさつきを踏み潰そうとする。
 その時、破壊ロボの足元で異変が起こる。
『!?』
 踏み潰されてミンチになった忍の体が再生され始める。
『な!? 完全にミンチにしたのに……。もう一度ミンチにしてやります』
 そう言うと忍を踏み潰す。
 再生とミンチ化が同時に行われる。
 そのミンチ化の速度を再生が上回り始めた。
 ミンチにされながら徐々に体が復元されていく。
 そしてミンチにされる前の状態に戻る。
 戻るや否や破壊ロボを投げ飛ばした。
「再生するのに殆どの魔力使ったじゃない」
 忍の眼は、黄金ではなく元の普通の眼に戻っていた。
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫だけど、魔力を再生に使い切っちゃったから戦闘は無理かな?」
 忍は、戦闘継続は不能だった。
 立っているのがやっとの状態だ。
「シェーンコップ!」
「何だ!?」
「離れた所でお姉ちゃんの護衛をして」
オレの戦力が減っても良いのか?」
「戦えない者を守るのも騎士の勤めだよ」
「判った!! お前の姉はちゃんと守ってやるから王はそのガラクタを片付けろ!!」
「ちゃんと倒すから、ちゃんと護衛するが良い!」
「御意!」
 シェーンコップは、忍を抱えると後方へ下がった。




 同日 PM0:00
 海鳴市
「エイミィ、まだ掴めないの?」
「まだです。日本には居ないようです」
 海鳴のリンディ達は、ダンタリオンの居場所を掴めていない。
「北米は?」
「北米にも居ないようです」
 ダンタリオンの包囲網が徐々に狭まり始める。
 ダンタリオンの居場所が判明するまで後、3時間ほど掛かるのである。




 同日 AM4:20
 ドイツ
 破壊ロボとの戦いはまだ続いている。
『ちょこまか鬱陶しいハエですね』
 叩き落とそうにも全く攻撃が当たらない。
 さつきとすずかは、コックピットを集中的に攻撃する。
 高性能なバランスシステムが搭載されている為かバランスを崩して転倒しない。
 転倒させようと足を集中的に狙う。
 それを踏み潰そうとする。
 かわしながらの攻撃だから精神力を多く消耗する。
『大人しく私に捕まり実験材料になりなさい!!』
 まだ、実験材料にしたいようだ。
「その方の実験材料になる気はない」
『いやでもなってもらいます』
 どうしてもモルモットにしたいようだ。
 だが、モルモットにされるようなさつきとすずかではない。

 もう直ぐダンタリオンは、地獄を味わうことになる。
 地獄……いやヴァルハラと言ったほうが良いかもしれない。



「(お姉ちゃん! 完全回復まで後どのくらい掛かる?)」
『(もう一寸……後30分ぐらいかな?)』
「(じゃあ、もう30分ほど戯れているね)」
 もう少し戯れると言うすずか。
 戯れることが出来るのも次元違いの戦闘力を持つ真祖だから言えることである。
 真祖でなければ完全にミンチになっていてもおかしくないのだ。



「ガラクタ! もう少しだけ戯れてやろう……」
「妾たちの戯れで壊れるでないぞ」
 さつきとすずかの戯れは続く。
 その戯れが終わる時、真の恐怖が彼を襲うことになるのである。


 次回予告

 すずか「倒す手段が見つからない破壊ロボ」
 さつき「そのガラクタを壊してやる」
 すずか「その方は生かしては帰れぬと知るが良い!!」
 忍「吹き荒れる真祖の魔力」
 すずか「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第55話『殺人舞踏、ヴァルハラへの招待!』」
 さつき「命を賭した遊戯、愉しませてくれ!」



リンディたちも探索を始めたみたいだけれど。
美姫 「見つかる前に決着かしらね」
しかし、ここまで暴走する者を管理局に置いておくって。
美姫 「どうなっちゃうかしらね」
それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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