第55話「殺人舞踏、ヴァルハラへの招待!」






 
 1月1日 AM5:00
 ドイツ
 さつきとすずかは、まだ戯れていた。
 忍が回復するのを待っているようだ。
 忍が回復した時が全力全壊の総攻撃開始の合図なのだ。
『ちょこまかと鬱陶しいですね』
 もう直ぐ鬱陶しいと言っていられなくなるのだ。

「待たせたわね!」
 忍の体力が回復したようだ。
「さっきのお礼を何倍にもして返してあげる」
 忍が戦線に復帰した。
 忍が復帰したことで舞踏会の幕が上がる。
 殺陣という名の……。



『こうなれば、実験などどうでもいいのです。全員ブッ殺してやります』
 実験など関係ないと言うダンタリオン。
『今度は完全にミンチにして焼却してあげます』
 予定通りに実験が出来ないことに苛立っているようだ。
「之から全員で戯れてやる」
 それが、ダンタリオンの地獄の始まりだった。
「王よ命令を……」
「そのガラクタを徹底的に破壊せよ」
「雑種!! 王の命令だ、覚悟しろ!!」
「それじゃ、舞踏会を始めようか」
 すずかのせりふを合図にリンチと言うなの舞踏会がはじまった。
 手加減なしの全力全壊の総攻撃が開始される。
 スピードは、今までの比じゃない。
 あまりのスピードに破壊ロボが翻弄される。



「なんですか!? このスピードは……」
 あまりの速度に処理能力が限界を超える。
「この超高性能レーダーで捉えられないほどの速度で攻撃しているとでも言うのですか?」
 受け続ける攻撃によって損傷箇所が出始める。
 センサーも処理能力を超え機能しなくなる。
 次々、表示されるダメージも処理しきれなくなる。

 ガァン!!

 凄まじい衝撃が破壊ロボを襲った。
 次の瞬間、破壊ロボの右腕がなくなった事が表示された。
「右腕がなくても、まだ余裕なのです」
 右腕がなくてもまだ余裕らしい。
「ドミノ! 実験データはちゃんと取ってますか?」
『データ収集は問題ありません』
 戦闘データの収集は順調なようだ。
 収集したデータは、リアルタイムでラボに送られているのだ。
 そのデータを分析することは出来ないとも知らずに……。



「次は、左腕をもいでやろう……」
「覚悟しろ! ガラクタ!!」
 各所に付けられているカメラを集中的に壊していく。
 カメラで外の様子を把握しているからだ。
 その目を奪われた形だ。
 目を奪われたら、熱センサーに頼らなければならない。
 そのセンサーも配線が寸断したら感知できなくなるのだ。
 そして、確実に情報収集手段を断っていく。
「両腕は、無くなったぞ! それでどうやって戦う!?」
 破壊ロボの両腕は既にない。
 壊された個所から潤滑油が流れ出ている。
 その潤滑油は、さながら血のようである。

「ふっふっふっふっ」
 妖艶に笑う忍。
「今度は、首を落としてあげる」
 次は、破壊ロボの首を落とすようだ。
「どのように落として欲しい?」
『……』
「首を折られて落とされるのと一刃のもとに斬り落とされるのとどっちがいい!?」
 二者択一を迫る忍。
 ミンチにされたのを根に持っているようだ。
 ロボットは、人と違って首を落とされただけでは死なない。
 需要な機器を積んでいない限り……。
 不幸なことにこのロボは、頭部に重要機器が設置されていた。
 その理由は、胴体部分にコックピットと駆動炉があった。
 それも嘗てプレシアが携わった魔力炉の小型改良版が搭載されていた。
 何を隠そうダンタリオンは、プレシアを破滅させて一人なのである。
「じゃあ、首を斬りおとしてあげる」
 ブルートザオガーを一閃する。
 それだけで破壊ロボの首は地面に落下した。
 それは、同時に視覚情報を断たれたことを意味している。




「このままでは、破壊ロボが壊されてしまうのです。之だけは使いたくはないのですが、プチアルカンシェルをお見舞いします」
 プチアルカンシェルのチャージボタンを押すダンタリオン。
 プチアルカンシェルと言っても数キロは地図上から消し去るだけの威力がある。
「地図上から消え去りなさい!!」
 そう言って発射トリガを引いた。
 破壊ボロの胸が割れ発射装置が現れる。
 そこからプチアルカンシェルが発射された。


「身の程を知るが良い!」
 凶悪な魔力を放つすずか。
 凶悪な魔力は、プチアルカンシェルを飲み込んで発射口へ逆流する。
 そしてそのまま発射口へ流れ込んで……。


 ドォン!!


 大爆発を起こした。
 プチアルカンシェルの発射口は大破。
 それも原型を留めないぐらいに……。


『魔導炉に異常!』
 コンピュータが異常を伝える。
「異常!? 私の破壊ロボに異常が起るはずは……」
 急いで異常を探すダンタリオン。
 其の原因は、超高出力のエネルギーが魔導炉に逆流したためだ。
「魔導炉が暴走しているではありませんか!」

 ガァン!!


「うぉっ」
 激しい衝撃の後、凄まじいGが襲ってきた。
「目、目が回る」
 破壊ロボは、すずかに足を持たれグルグル回されている。
 それも数十トンもあるロボをである。
「こ、これ以上は……」
 Gに耐えられないようだ。
「お、おぇっ!!」
 Gに耐えきれずに吐いてしまう。
 不幸なことに、吐いた物がコックピットの中で不規則な動きをして飛び回る。
 更に不幸なことがダンタリオンを襲う。
 非常脱出用のハンマーがダンタリオンの腹部に直撃したのである。
 コックピットに座っているため、エネルギーのすべてが腹部で炸裂した。
「ごぇぇぇぇっ」
 胃液と共に血を吐きだした。
 ハンマーは予想以上にダンタリオンの腹部にめり込んでいた。
「や、やめでぐれ」
 まともに喋れないようだ。


 すずかは、振り回すのを止め上空へ放り上げた。
 放り上げられた破壊ロボの中ではダンタリオンが気絶していた。
 腹部の痛みと凄まじいGによって白目をむいている。
 口からは止めどなく血が溢れ続けていた。
 そして、ハンマーがめり込んだ腹部からも……。

 上空へ放り投げられた破壊ロボは、なかなか落ちてこない。
 上空を見上げるとさつき、すずか、忍は上空へ飛び上がった。
 あっという間に放り上げられた破壊ロボに追いついてしまった。
 今度は破壊ロボを蹴り落とした。
 一転、地面へ落下していく破壊ロボ。
 重力によって落下速度が増す破壊ロボ。
 その破壊ロボへ攻撃を続ける。
 拳や蹴りが繰り出される。
 激しい攻撃に破壊ロボの装甲が凹んでいく。
 そしてついに拳が装甲に穴を開けていく。
 あれほど鉄壁を誇っていた装甲の姿はどこにもない。
 いまやボロボロの紙と化していた。
 それでも普通の人間には傷つけることもできない強度はある。
 すずかたちの攻撃力に耐えられなくなったのだ。
 吸血鬼……それも真祖の力でやられたら鉄壁の装甲も強度が落ちる。
 いまや破壊ロボの至る所にさつき、忍、すずかの攻撃で出来た破口がある。
 その破口からオイルや部品等と一緒に空気も漏れで続ける。
 重力によって落下速度が増し、地面に激突しクレーターが出来た。
 地面との激突の衝撃で地震が起きたのは言うまでもない。
 その地震が元でリンディに居場所が知られることになった。


 同日 PM2:30
 海鳴市
「エイミィ! まだ見つからない?」
「まだです。ヨーロッパとか言うところに居ることまでは分かったんですけど……」
 その時、リビングのテレビが地震の速報を流していた。
『本日午後2時、現地時間午前7時頃ドイツでM7.9の地震があった模様です』
「ドイツって、すずかが行っている所じゃ……」
 フェイトが言う。
「すずかに連絡はつく?」
 アリシアに聞く。
 すずかに教えられた番号に電話を掛ける。
 地震の影響か通信状態が悪いようだ。
「なかなか繋がらないよ」
『この地震による邦人の安否に関しての情報は入っていません。外務省は、現地と連絡を取り安否確認を急ぐことにしています』
 各放送局も地震に関して速報を伝えていた。
「まさかとは思うけど……」
 そのまさかである。
 地震もすずかたちの戦闘の影響だと気づくのにさほど時間は掛からなかった。
「クロノ! 武装隊を直ぐに手配してドイツへ送って!」
「手配するだけで数時間は掛かります」
「それにすずかさんからも異世界へ追放させたい人が居るって頼まれているから……」
 そう言いながらお砂糖ミルク入り緑茶を飲む。
『新たな情報が入り次第、ドイツで起きた地震に関するニュースをお伝えします』


 同日 PM2:40
 時空管理局本局
「武装隊の派遣ですか? 準備に2時間はかかりますが」
『超特急で頼む』
「分かりました。急いで装備の整備をします」
 クロノからの依頼で武装隊の装備の整備を大急ぎですることになった。
「はぁ。さて大急ぎで武装隊の装備をチェックするか……」



 同日 PM3:00
 海鳴市
『日本時間、午後2時にドイツで発生した地震について続報をお伝えします』
 情報が集まったのかテレビが続報を報じている。
『震源地に関しては現在調査中です』
 震源に関しての情報はまだ入って来ないようだ。
『尚、現地では多数の負傷者が出ている居る模様です』
 相変わらずテレビは地震のニュースを伝えている。
「クロノ! 武装対は!?」
「後、2時間ほど掛かります」
「時間の掛かりすぎね。クロノ、今すぐにドイツへ行きなさい!!」
「母さん!! そんなお金ありません」
 クロノにドイツへ飛ぶための資金はない。
 クロノの財布は空なのだ。
 それ以前に旅券を持っていない。
「この際、ドイツに居るさつきさんたちに任せちゃいましょう♪」
「母さん!!」
「じゃあクロノくん。応援に行く!? 其れとも血を抜いてもらう?」
「いや。血を抜かれるのは勘弁してほしい」
 一日に二度も血を吸われるのは嫌なようだ。
 輸血用パックを入手するのも大変なのである。
「血を吸ってほしい時は何時でも言ってね♪」
「限界まで吸ってあげるから……」
 アリシアとフェイトの言葉にガタガタ震えるクロノ。
 執務官が年下の少女に恐怖を抱いているのである。



 同日 AM7:20
 ドイツ
 すずか達の猛攻で破壊ロボは殆ど原型をとどめない位壊されていた。
 既に勝負は決まっている。
「さっさとそのガラクタから出てくるがよい!!」
 ダンタリオンにガラクタから出てくるように命じるすずか。
「出てこねば、踏み潰す」
 そう言ってコックピット部分を踏み潰す。

 メリッ!!


 グシャッ!!

 破壊ロボのコックピットが潰れた。
 そして更なる激痛がダンタリオンを襲った。
 壊れたコックピットが腹にめり込んでいるハンマーをより深く押し込んだのだ。
「おげぇ」
 圧迫されたことによって胃にたまった血を吐き出した。


「早く出てくるがよい。さもなくばもっと踏み潰すぞ」
 だが、ダンタリオンはコックピットに圧迫されて出ることができない。
 それよりも激痛で動くことが出来ないのである。
 動けば激痛が襲ってくるのだ。
「出てこれぬというのなら、妾が出してやろう……」
 そう言って、コックピットに腕を突っ込んだ。
 飴のように装甲を溶かしダンタリオンの首を掴んで強引に引っ張り出した。
 強引に引っ張り出したために破片が刺さり傷が出来るダンタリオン。
 引っ張り出されたダンタリオンは、虫の息だ。

 虫の息のダンタリオンを地面に転がす。
 そしてもう一人……。
 ドミノである。
「その方らの自由を奪わせてもらう」
 ダンタリオンとドミノをロープできつく縛り上げる。
「そなたらには、後で賠償を支払ってもらう。覚悟しているがよい」
「さっさとリンディの所に転送してしまおう」
「すずか、さっさと送ってしまいましょう。騒動の事後処理もあるし……」
 すずかには騒動の事後処理やら建物の修復の費用やら決済しなければならにことがある。
 それに裏の世界の重鎮達からも新年の挨拶もあるのだ。
「月の力を秘めし鍵よ、真の姿を我が前に示せ、規約の下すずかが命じる。封印解除レリーズ!!」
 三日月をモチーフにしたような物がついた長い枝の杖があらわれた。
 そして、呪文を唱える。
 唱えているのは、転送の呪文だ。
 意識を失って血まみれで瀕死のダンタリオンとドミノが光に包まれて転送されていった。
 その転送先は、海鳴市のハラオウン邸だった。




 同日 PM3:50
 海鳴市
「エイミィ、ちゃんと仕事しろ!」
「ちゃんとしていじゃん。どこかの盛りのついたエロスケと違って」
「だから、アレは不可抗力だって……」
 クロノとエイミィは漫才を繰り広げる。
 その時、アラームが鳴る。
「何かが転送されて来る!」
「何かって何が!?」
 エイミィに問うクロノ。
 それは、クロノの頭上に現れ……。


 グシャッ!


 見事にクロノの上に落ちた。
 その時、クロノの首からヤバイ音がしたのは言うまでもない。
「ちょっとエロスケ……って、行方が分からなかった変態教授じゃん!」
 クロノを押しつぶしたのは変態教授ことダンタリオンだった。
「フェイトちゃん、アリシアちゃん! 身柄を確保して!!」
 エイミィに言われて身柄を確保するアリシアとフェイト。
 何故かクロノも一緒に抑えられていた。
「僕まで一緒に縛るな!」
「クロノくん! 首が曲がっているよ」
 クロノの首はダンタリオンが落ちてきた影響で変なほうに曲がっていた。
 まるで寝違いをした首が元に戻らない状態だ。
「クロノが居るとは思わなかったから……」
 だが、アリシアとフェイトは確信犯である。
 クロノが下敷きになったのを知ってて縛ったのだ。
「だったら、この縄を解いてくれ!!」
 クロノの縄が解かれる。
「さて、聞くがダンタリオンとドミノで間違いないか?」
 クロノがダンタリオンとドミノに聞く。
 クロノがアリシアとフェイトに血を吸わせると脅したらあっさりと本人だと認めた。
 ここに送られてくるまでに余程のことがあったらしい。
「管理局局員ダンタリオン! 管理外世界への無断侵入及び現地住人への魔法攻撃で逮捕する」
 大人しく逮捕されるダンタリオンとドミノ。
 こうしてダンタリオンが起こした事件は幕を閉じた。
 多くの問題を残して……。


 次回予告

 フェイト「ダンタリオンが逮捕され戻ってくる平穏な時間」
 アリシア「そしてドイツから帰ってくるすずか」
 フェイト「すずかと一緒にいる子は誰!?」
 なのは「大人数で行く旅行」
 すずか「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第56話『旅行も全力全開!』」



威力は抑えてあるとは言え、アルカンシェルって。
美姫 「色々とまずいんじゃないのかしら」
以前に実装している時点で問題になりそうだけれどな。
美姫 「しかも、現地にとんでもない被害でてるわよね」
それによる直接的な物ではないがな。
美姫 「それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。



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