第69話「降臨! ブリュンスタッド姉妹」
「アルテミスシュート!!」
すずかが巨大ロボに向け一発のシュートを撃った。
シュートは、巨大ロボのAMFに隔たれたように見えた。
だが、シュートはAMFを突き抜け巨大ロボを貫通した。
貫通した箇所から部品が吹き飛ぶ。
穴が開き断線したケーブルがスパークしている。
『おのれぇ!!』
怒りの声を上げる。
『その程度の攻撃では、このロボは止められんぞ』
スピーカーからは、モリアーティ教授の声がする。
事実、巨大ロボには大したダメージは与えられていなかった。
それにAMF下での戦闘だ。
魔力操作が上手くできない訓練生たちは、攻撃することも出来ない。
「何!? 第4陸士訓練校に巨大何が現れたって!?」
「ですから、巨大ロボです」
「たかがロボがどうした!?」
「どうやら、指名手配中のモリアーティ教授が関わっているようです」
「モリアーティが現れただと!?」
「はい」
「何がなんでも我ら地上本部の手で捕らえるのだ!! 本局の奴らに逮捕させてたまるか」
「訓練生たちは如何なさいますか?」
「訓練生をこき使ってでも逃走を阻止しろ」
「しかし、未確認情報ですがAMFも確認されています」
「近隣の武装隊を向かわせろ!!」
「畏まりました」
そう言って副官は出ていく。
部屋に残る高官。
彼は武闘派の先鋒レジアスだ。
『素直にホームズを出せ!!』
モリアーティの作ったロボはホームズを探し続けて攻撃をする。
非殺傷設定などない殺傷設定で……。
殺傷設定の攻撃に訓練生に負傷者がで始める。
『ホームズ、隠れていないで出てこい!!』
「なのは、全力全壊の一撃をお見舞いしてやりなさい」
「うん」
なのはは、砲撃の準備に入る。
それは、最大の隙でもある。
その隙を突いて巨大ロボの腕が伸びてくる。
≪Master.≫
レイジングハートが警告を発する。
「えっ!?」
レイジングハートの警告もむなしく……。
「う゛っ」
なのはは、巨大ロボに捕まってしまった。
チャージ中は、完全無防備になってしまうのだ。
『先ずは貴様を血祭りにしてやる』
巨大ロボがなのはを握る力が強くなる。
メキッ!!
なのはの骨が折れたようだ。
骨が折れただけではない。
食べたものを吐いたのだ。
バリアジャケットの上から内臓を圧迫されたようだ。
「うぇ」
胃の中の物が圧迫され押し出される。
バキッ!!
ボキッ!!
巨大ロボに握られなのはの体中の骨が折れる。
「なのはっ!!」
フェイトが、巨大ロボに飛びかかる。
『貴様も殺してやる』
巨大ロボは、なのはを握っている手とは反対でフェイトを叩き落とした。
叩き落とされたフェイトは地面に激突した。
普通の人間なら即死だ。
『ホームズ、出てこい!! さもないとこの小娘の命はないぞ』
モリアーティは、通信越しに脅迫する。
当然、ホームズは居るはずもない。
よってなのはは、さらなる苦痛を味わうことになった。
「うぶっ」
さらに強く握られた為、なのはは目を大きく見開いて吐いた。
胸部、腹部は千切そうだ。
肋骨と背骨は、粉々に折れているようだ。
同時に両腕の骨も……。
「こうなったら……」
其のとき聞いたことの無い声が聞こえた。
「やっと見つけたぁ」
声の主を探す。
「さっちん、飛ばされた筈の世界に居ないんだもん」
「アルクェイドさん!?」
「アルクェイドだけではないぞ」
「アルトルージュさんまで、どうしたんですか?」
「退屈だから遊びに来た」
なんとブリュンスタッド姉妹が現れた。
「其れよりもあの子助けないと死んじゃうよ!?」
なのはを助けないのかと聞く。
「なんか、貴女から死徒の臭いがするんだけど……」
アリシアに言う。
「この話は、後でします。其れよりもあのロボをなんとかしましょう」
「わかったわ」
アリシアに事情を聞くのを後回しにするアルクェイド。
「せぇのっ!!」
アルクェイドは、巨大ロボを上空に蹴り飛ばした。
そして上空にジャンプをして……。
「落っちろ!!」
巨大ロボをたたき落とした。
巨大ロボに掴まれたなのはを下にして……。
グチャッ!!
なのはは、巨大ロボの下敷きになってミンチになった。
潰れたトマトのように中身をぶちまけた。
「もしかして人質、殺しちゃった?」
無邪気に聞く。
「人間なら助からぬであろう」
すずか達の方に視線を向けるアルトルージュ。
すずかは、心配したそぶりすらしていない。
それ所か怒りを感じる。
其れによって、すずかが強大な力を持つことに気づく。
「そなたから妾達と同じ気配を感じるのは気のせいか?」
アルトルージュがすずかに迫る。
「確かに同じ気配ね。貴女、私達と同じ真祖!?」
「はい♪」
「やっぱり。さっちんんと気配が似ているんだもん」
すずかの気配は、さつきに似ていた。
「そんなに似ています?」
「似ていると言うか私達とまったく同じなんだもん」
「其れよりも巨大ロボを壊してなのはちゃんを助けないと……」
「詳しい話はあのガラクタを壊してからって事ね」
戦闘態勢に入る。
「あいたたった」
瓦礫の中からフェイトが出てくる。
「貴女、死んだんじゃないの」
瓦礫から出てきたフェイトの傷は見る見る回復していく。
まさしく復元呪詛だ。
「貴女、吸血鬼でしょう」
「えっ?」
「素直に答えなさい。じゃないと散り一つ残さず葬るわよ」
「はい。吸血鬼です」
「その割りに太陽の下でも平気みたいね」
フェイト達は、何故か太陽の下でも灰になるようなことはない。
真祖と同じように行動できる。
「さっちん、後で説明してもらうからね♪」
「は、はい」
さつき、戦闘後、説明することになった。
フェイト達を吸血鬼にしたことについて……。
「それじゃ真祖4人の舞踏会を始めましょうか」
「その前に邪魔者を下げさせよう」
訓練生たちに視線を向けるアルトルージュ。
「あの、私たちは?」
「そなた達は、あの者たちを守ってやるがよい」
「あいつに一発ぶち込んでやらないと気が済まないわ」
アリサも参戦したいようだ。
「アリサが戦うなら私も……」
アリシアも参戦希望する。
「気持ちは嬉しいんだけど、私たちの本気の攻撃に巻き込まれたら肉片も残らないわよ」
「そう言うわけだ。下がっているがよい」
アルクェイド、アルトルージュ、さつき、すずかが巨大ロボに歩を進める。
真祖4人が戦うのだ。
周囲への被害も予想される。
「それじゃ、一寸戯れようか」
それが戦闘開始の合図だった。
目にも止まらぬ速さで拳や蹴りを繰り出す。
何かを殴ったり蹴ったりしている音だけが聞こえる。
当然、なのはは、激しい衝撃に襲われ続ける。
真空の刃が飛び交う。
巨大ロボの装甲に傷を付けていく。
「落っちろ!!」
巨大ロボが地面に激突する。
「今度は、飛んでゆくけ!!」
地面にめり込んだ巨大ロボをいとも簡単に上空へ放り投げる。
重力に逆らって上空高くまで投げ上げられる。
上空で真祖4人の舞踏会が続けられる。
真祖4人の攻撃で壊れた巨大ロボの破片が降り始める。
肉弾戦の前にAMFは役に立たない。
物理攻撃の前にはAMFは効果を発揮しない。
攻撃で血飛沫が飛ぶ。
よく見るとロボの手から飛び散っている。
なのはも一緒に殴っていたようだ。
「ふっふっふっ」
すずかが笑いながら巨大ロボの腕を引きちぎる。
引きちぎった腕を地面に投げる。
投げられた腕にはなのはが居る。
なのはを掴んだまま地面に突き刺さる。
「ウォーミングアップも終わったし、そろそろ本気になろうかな?」
まだ本気では無かったらしい。
アルクェイドの魔力が高まる。
アルトルージュ、さつき、すずかの魔力も……。
「さっさとこのガラクタを片付けよう」
「そうだね」
「「「「星の息吹よ!!」」」」
真祖4人が同時に叫ぶ。
何もない空間から鎖が現れ巨大ロボを絡めとる。
「「「「我が手、我が爪こそ星の息吹と知るがよ!!」」」」
4人の攻撃は凄まじかった。
巨大ロボを粉微塵にしてしまった。
大小無数の欠片が地面に降り注ぐ。
落ちてきてはクレーターを作る。
ロボは、AMFも貼ることが出来ない。
だが、強大なエネルギーを生む動力炉は生きている。
『ホ、ホームズ……』
「ねぇ。この変な装置を壊せば終わり?」
「多分終わりだと思います」
「じゃあ、壊すね」
渾身の力を込めてアルクェイドは、動力炉を壊した。
だが、動力炉からあふれ出たエネルギーによって……。
消し炭になった。
魔力炉の爆発によってと言った方がいい。
アルクェイドは、魔力炉の爆発で顔も髪も服も真っ黒になっていた。
「あ、アルクェイドさん、真っ黒……」
「よく似合っているぞアルクェイド」
「姉さんまで……」
全身真っ黒のアルクェイドが言う。
「さつきも似合っていると思うだろ!?」
「えぇ」
「さっちんまで……。すずかちゃんは?」
「お似合いですよ」
「すずかちゃんまで、ひどぉい!!」
「ば、化け物だ! あいつ等、化け物だ……」
「あの化け物みたいなロボを壊したぞ」
「ここに居たら、俺たちまで殺されるかもしれないぞ」
逃げようとする訓練生達。
そんな訓練生達を無視してアルクェイド達は……。
巨大ロボの腕に掴まれ地面に突き刺さった所にアルクェイド達は居た。
其処には、フェイト、アリシア、アリサの姿があった。
なのはは、地面の中だ。
「なのはを助け出してやるか……」
さつきが片手で巨大ロボの腕を引き抜く。
「アレだけボロボロだったのにもう傷が治っているわね」
なのはの傷は、殆ど回復していた。
その為に魔力は殆ど使い切っていた。
「貴女、結構丈夫ね」
「貴女は誰ですか?」
なのはが聞く。
「私? 私は、アルクェイド・ブリュンスタッド」
「ブリュンスタッド!? さつきさんもブリュンスタッドって言っていたような……」
「さっちんに真祖の血を与えた本人と言えばわかるかな? 姉さんもだけど」
「アルクェイドさんと……」
アルトルージュの名前が分からないなのは。
「妾はアルトルージュ……アルクェイドの姉だ」
「姉さんは、完全な真祖じゃ無いんだけど……さっちんに真祖の力を与えた一人よ」
「さつきさんって、最初から真祖じゃなかったんですか?」
「うん。死徒って言っても分かるかな?」
?マークを浮かべるなのは、フェイト、アリシア、アリサ、すずか。
「さっちん、ある事件で死徒に襲われて死んでいるの。でも、いろいろあって直ぐに死徒として蘇ったの。その時に、爺の目に 留まって色々教育したってわけ」
さつきが元人間だと言う事実……。
「元人間の死徒上がりの真祖ってさっちんが初めてなの。んで、帝王学を学ばせたの」
「さつきに教育したのは、殆ど妾だぞ」
「私だって教えたじゃん」
「お前の場合、遊んでいただけであろう」
アルクェイドは教えず遊んでいたらしい。
訓練生達を他所に話を続ける。
「すずか、だっけ? 空想具現使っていたけど、彼女も真祖なの?」
「そうらしいです。昔、こっちの平行世界に渡った真祖の末裔だそうです」
「私が全滅させたとばり思っていたんだけど生き残りが居たなんて……」
「妾達も暫くこの平行世界に居るとしよう。その間に力の制御を出来るようにしてやろう」
すずかの真祖としての教育が決定した。
「当然、お前たちもだ!!」
「「「「えっ」」」」
なのは達の教育も決定した。
「さつき相手に一撃を入れることも出来るであろう? 何発も重い一発を貰って死ぬほど苦しい思いをしたことがあるだろう」
なのは達に悪夢が蘇る。
さつきにお腹を殴られ血を吐いて苦しい思いをした記憶が……。
「肉体強化位は出来るようになってもらうぞ」
「そうね。すずかちゃんに映像見せてもらったけど、今の貴女達じゃ死徒にも勝てないわね」
アルクェイドは、美姫に記録されていた映像を見せてもらったようだ。
「丁度、さっちんが良い物持っているしね」
「さくらが作った『王族の庭園』か……。あそこなら時間を気にせず教育が出来るな」
「そうと決まったら、特訓開始よ」
王族の庭園でなのは達の教育が決定し早速教育が始まった。
知識関係の帝王学……。
吸血鬼の力の制御等の訓練が連日行われる。
外との時間の流れが違うため気兼ねなく教育できる。
「今日も、そのデバイスと言う物の使用は禁止だ!! 己が魔力で肉体を制御せよ」
アルトルージュが指示を出す。
それに従ってなのは達は、訓練する。
真祖である、さつきとすずかは別教導だ。
なのは、フェイト、アリシア、アリサはバトルロワイヤル形式での訓練だ。
今のところ一番有効な肉体制御訓練だ。
さつきとすずかは、真祖としての教育中だ。
さつきの場合、教育の途中で平行世界に飛ばされた為、再教育もあるようだ。
なのは達のお腹を殴りすぎて殺しかけたこともある。
戦闘は二の次。
真祖は、一応王族だ。
帝王学と王侯貴族としての振る舞いを叩き込む。
「すずかも王侯貴族の喋り方が板についてきたな」
すずかは、仕事柄やむ得ない。
夜の一族の長なのだから……。
必然と喋り方が王侯貴族になってしまう。
表の顔もあるためスイッチの瞬時切り替えの特訓している。
王族の庭園での教育は、数十年にも及んだ。
外の時間で数十分程の時間だ。
なのは達がどれくらい成長したのかは分からない。
成長したなのは達の戦闘力は未知数だ。
「外に出たことだし、すずかちゃんの最終試験でもしようか」
「そうだな……さつきもブリュンスタッド城の具現化は苦労したからな」
すずかの真祖教育の最終試験、ブリュンスタッド城の具現化が始まる。
すずかは、目を閉じ精神を集中する。
周囲に風が騒ぐ。
平行世界からブリュンスタッド城を呼び寄せる。
何も無い空間に建物の影が現れ始める。
其れは、だんだん形を成す。
数瞬の後、荘厳なブリュンスタッド城が姿を現した。
具現化成功である。
「すずかちゃんにもブリュンスタッドの姓を名乗らせてあげようか?」
「そうだな……。ブリュンスタッド城の具現化も出来たしな」
ブリュンスタッド姉妹は、すずかにもブリュンスタッドの姓を名乗らせるようだ。
「ゆっくりして行かないんですか?」
「ゆっくりしたいけど、もう帰るわ。志貴に心配かけたくないから」
アルクェイドには恋人が居るようだ。
「じゃあ、また遊びに来るね」
そう言うとブリュンスタッド姉妹は、元の平行世界に帰っていた。
次回予告
なのは「訓練校を無事卒業したわたしたち」
アリサ「どうせなら皆でお花見しようよ」
なのは「そうだね」
すずか「じゃあ、アルクェイドさん達を呼ぶ?」
フェイト「平行世界から再び遊びに来る姉妹……」
アリシア「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第70話『これから 前編』」
アルクェイドにアルトルージの登場。
美姫 「流石にこの二人が現れたらどうしようもないわね」
だな。運が悪いというか。
美姫 「それはなのはたちもかもね。二人の特訓を受ける事になったのだし」
うーん、でも鍛えられたのは鍛えられたし、運が悪いとまではいかないんじゃ。
美姫 「かもね。何はともあれ、なのはたちも更に強くなったって所かしらね」
だな。それでは、この辺で。
美姫 「まったね〜」