第87話「皇帝カイザー皇帝カイザー。二人の皇帝」






 海鳴市とミッドチルダを騒がせていた吸血鬼事件が解決して数日たったある日……。
「シエル、まだ臭うわよ」
 シエルは、臭うらしい。
「誰のせいで未だに臭うと思っているんですか!! そのお蔭で、全の店に入店拒否されているんですよ」
 シエルは、食事を摂るのも大変なようだ。
「だって、シエルったら起きないんだから」
「私は、お腹を殴られて気絶していたんですよ」
「蛇の因子のおかげで助かったのだから良かったではないか」
「気づいたらカレーの海の中ですよ!! カレーの……」
「大好きなカレーに浸かれたんだから良かったね」
「よくはありません。身体を洗っても臭いが落ちないんですよ」
 シエルの身体にはカレー臭が染み付いている。
「如何してくれるんですか!!」
「シエル、仕事はしなくて良いのか!?」
「そう言う貴女達は、元の世界に帰ったのではなかったのですか?」
「暇だから遊びに来た」
 アルクェイド達は、遊びに来ているらしい。
「仕事サボったら、すずかちゃんに言いつけるわよ」
 それで無くとも減点続きのシエル。
 これ以上、減点されるわけにはいかない。
「では、言いつけられないように貴女を串刺しにして差し上げます」
 シエルは、暴れては月村家の備品を壊していた。
 忍が家にいるときに暴れて忍にO・HA・NA・SHされて事もあった。
 その結果、食うに困る状況になっている。
 それも、海鳴市と周辺の飲食店に手を回した忍とすずかが原因だ。
 海鳴の支配者に手を回すことなど造作の無いことだ。
 それに、すずかは裏の世界の皇帝だ。
「また、借金が増えるわよ」
「うっ」
 アルクェイドの口撃。
 シエルは、ダメージを受けた。
 シエルは、死んでしまった。
「シエル、借金カレーに名前変えたら!?」
 シエルは、死んでいる。
「借金シスターってのも良いわね」
 シエルの名前を勝手に変えるアルクェイド。
「いっそのこと名前を取り上げても良いですわね」
 名前を取り上げようというグリューエル。
「それも良いですわね」
 グリュンヒルデも同意する。
「名前の剥奪は、すずかさんが帰ってきてからにしましょう」
「私の名前は、誰にも剥奪させません!! 私の名前は、私のものです」
「残念ながら決定事項です」
 シエルの名前剥奪決定のようだ。
「いいえ。私の名前はシエルです」
「カレー臭い人は、無視して新し名前を考えましょう」
 無視されるシエル。
「無視しないでください!!」
 だがシエルは無視される。
「だから無視するな!! 串刺しにしますよ」
「無視しましょう」
 また無視されるシエル。
「カレー臭い人は、無視してお茶会の用意をしましょう」
「えぇ」
 タイミングを見計らったかのように侍従長が現れた。
「シエル様、陛下からのお仕事の依頼です」
 侍従長の口撃。
「今日中にこの仕事を終えてください」
 仕事のリストが台車に乗せられている。
「……………………」
 紙の束に固まる。
「では、今日中にお願いします」
 仕事をシエルに押し付けると部屋から出ていく侍従長。
 それに続いて部屋から出ていくアルクェイド、アルトルージュ、グリューエル、グリューンヒルデ。
 一人、仕事のリストと部屋に取り残されたシエル。
 紙の山から束を取る。
 そして紙をめくる。
 シエルは、死んでしまった。
 紙にビッシリ書かれた仕事は、とても一人で片付けられる量ではない。
 当然といえば当然なのだが、その原因が自分にあるのでは文句のいい場所が無い。

「シエルさま、寝ている時間はありません。早く仕事をしてください」
 仕事を催促するイレイン。
「仕事をしないと食券は、発給されません」
 シエルを無理やり働かせようとする。
「カレー禁止、解除してほしくないのですか?」


 カレー……。


「カレー!!」
 シエルは、生き返った。
「カレー!! 私のカレーは!?」
「シエルさま、生き返った所で申し訳ありませんが仕事をして下さい」
「仕事よりも先ずはカレーです」
「貴女の『カレー禁止令』は解除されていません」
 シエルの『カレー禁止令』は、解除されていない。
「陛下に『カレー禁止令』を解除して頂きかったら仕事をして下さい」
 今のシエルは、すずかの所有物である。
「時間はどんどん無くなっていきます。早く仕事を始めやがれ!!」
 無理やり仕事を始めさせられるシエル。


 月村城の別の場所では……。
 お茶会の容易が進められていた。
 用意しているのは、侍従長と月村家メイド軍団である。
 そのメイドは、普通のメイドではない。
 月村家警備システムの一端を担っているのだ。
 ありとあらゆる格闘術、護身術を使いこなせる。
 敵意のある侵入者には容赦の無い攻撃を加える。
 敵意ある侵入者の末路は悲惨だ。
 五体満足でもトラウマに苦しむのだ。
「テーブル設置完了!!」
「爆発物、盗聴器、ありません」
 着々と準備を進めるメイド軍団。
 厨房でも下ごしらえが始まっている。
 高級食材が、料理に変わるのを待っている。



 そして、ミッドチルダ……。
「ラインハルト様、本当に行くんですか!?」
 ラインハルトに聞くキルヒアイス。
「命令では仕方あるまい。早く命令できる地位に上り詰めたいものだ」
「では、武勲をあげるしかありませんね」
「どうやってあげろと言うのだ!! 例え武勲をあげたとしてもレジアスの息のかかった者たちに浚われるんだぞ」
 ラインハルト達が武勲をあげても功績はレジアス一派のものになっていた。
「せめて、本局なら良かったですね。地上よりは出世できたかもしれません」
「キルヒアイス! 余は、いつか必ず頂点に上り詰め腐敗しきった地上本部を潰す」
「ラインハルト様、どこに人の耳があるか……」
「分かっている。だが、私にはキルヒアイスとロイエンタールがいる」
「それにヤン・ウェンリーですね」
「あぁ。前世では余の物に出来なかったヤン・ウェンリーも今は余の部下だ」
「ラインハルト様とヤン・ウェンリーに用兵で適う者などいません」
「キルヒアイス、お前もだぞ。余たちに用兵で張り合える可能性のあるのは本局のホームズぐらいだ」
「今は、ホームズだけかもしれません。だが、数年後なら……」
「数年後か……」
「公開されている人材データを見ましたが殆どは見込みがありません」
 ラインハルト達の目に適う人材はいないようだ。
「ふん。万年人手不足だけあって、まともなのはいないか」
「完全に居ない訳ではありません」
「お前の目に適ったのがいるのだな!? キルヒアイス」
「はい。八神はやてと弓塚さつき・ブリュンスタッド、月村すずか、この三名です。ちょうど八神はやてと月村すずかは、指揮官演習中です」
「なら、余の常勝の用兵とヤン・ウェンリーの不敗の用兵を叩き込んでやろう」
 教育しようと言うラインハルト。
「そうすれば、管理局も真面な組織になるだろう」
「65年組は優秀な人財が居るようですよ」
「どうせコネで入った者たちなのだろ!? そんな奴ら使えるものか!!」
「いいえ。この『65年マフィア』と呼ばれている人たちは違うようです」
「『65年マフィア』!? 『730年マフィア』ではないのですか?」
 ヤンが聞く。
「はい。我々が知っている『730年マフィア』とは違います。『730年マフィア』は、宇宙歴での呼び名です。一方、『65年マフィア』は管理局の暦によるものです。双方に共通するのは優秀って言う事だけです」
 なのは達も聞いたことのない単語が出てくる。


 『65年マフィア』か……。
 一度、全員に逢ってみたいな。
 『65年マフィア』……。
 どんな人たちなのかな?


 『65年マフィア』の事を想像するヤン。
 ヤンは、なのは達が自分より年下だということを知らない。
 それどころか、さつき以外、自分の半分以下の年齢、10代だと言うことも知らない。


「ラインハルト様、リンディ提督から転送ポートの使用許可が下りました」
「時間が掛かるかと思ったが仕事が速かったな」
「はい。リンディ提督は、管理局内でも良識派の人間です」
「それに比べ地上は、遅すぎる」
「えぇ。上の腐敗は、思っている以上なのかもしれません」
「事件に対する心構えが欠けている」
「陛下、転送の準備が出来ました」
 ロイエンタールが言う。
「それでは、第97管理外世界とやらに行くぞ」
 転送ポートで第97管理外世界に向かうラインハルト達。


 そして、転送ポートから現れるラインハルト達。
「ここが、第97管理外世界か……」
 周囲を見渡すヤン。
「それにしても城……」
 場間違いな城に目を奪われる。
 それ程、荘厳な城だ。
「ふん。門閥貴族が金を掛けて作った物だろう……。余が壊してやる!!」
 生前からの門閥貴族嫌いのラインハルト。
「ラインハルト様の門閥貴族嫌いは変わらないな」
「我が皇帝カイザー、どうされますか!?」
「知れたこと、破壊する」
「破壊するっと言ってもどうやってですか? 武器を持ってきていないのに……」
 彼らはこの世界に来るに際して武器の持ち込みを禁じられていた。

「閣下、早く移動した方が良いようですよ」
 ヤンは、狙われていた。
 最凶月村家警備システムに……。
 そして、発砲された。
 何故か、ヤンのみにである。

「何で私ばかり攻撃を受けるんだ!?」
 集中攻撃を受けるヤン。
 運動神経が鈍いヤンは、格好の標的なのだ。


 警備ロボが発射するゴム弾がヤンに命中し続ける。
 警備ロボが発射するゴム弾が雨のようにヤンを襲い続ける。
 移動もままならず被弾しつける。



 月村家警備室……。
 警備モニターを注視している男が二人。
「カイザー、ラインハルト陛下……」
「キルヒアイスとヤン・ウェンリー……。奇妙な組み合わせだな」
 確かに奇妙な組み合わせだ。
「それにしてもヤンは、運動神経が鈍いな」
「面白い映像も撮れましたし、そろそろ止めてください」
 グリューエルが言う。
「了解! システムを停止します」
 ヤンへの砲撃を止めるルッツ。
「ヤンは、あの程度の攻撃もかわせないのか!?」
「用兵では、恐ろしい敵だったが白兵戦は苦手だったらしい」
「それにしても謎だ。キルヒアイスとヤン・ウェンリーは死んだはず。何故、生きている?」
 そう言う彼らも死んでいる。
「確か俺たちも……」
 だが、彼らは生き返った。
 そして、彼らは雇われの身だ。
「これから我が皇帝マイン・カイザーと再会することになるのだろうな」
「そうなるどっちに仕えることになるか」
「今の雇い主もカイザーだからな」
 そう。すずかも皇帝なのだ。
 国をすべる皇帝とは違うが、夜の一族を統べる皇帝だ。
 すでに在位10年になる。
 しかも史上最年少の皇帝だ。
「あの、書類の量は普通ではないな」
「良く身体が持つもんだ」
 すずかのタフさに感心するファーレンハイト。
 そして、この日も大量の荷が届いた。
「またか……」
 荷の送り主を見て呟くルッツ。
「毎週の定期便がこれではな」
 定期便の量も常軌を逸していた。
 さらには、定期便以外もやってくる。
 その定期便以外の量も半端ではなかった。
 ダンボール箱で100箱は当たり前だ。
 その中には、大量の書類が入っている。
 その全てが、すずかの決済が必要なものなのだ。
 すずかの決済がないと予算が出ないのである。
 すずかは、玉座に座していることは出来ないのだ。
 なのは達と同じ学生魔導師 なのだ。
 なのは達と違うのは、一族を統べる皇帝でもある点だ。
「あの書類の山を処理する人材はいないのか?」
「残念ながらいないらしい」
 財務処理を任せられる人材は、すずかの下にいないようだ。
「ルッツ、早く荷を執務室に運び込もう」
「だが、あそこは魔窟だ。書類が山積みにされているから、崩したら大変だぞ」
 すずかの執務室は、書類の山があるようだ。
 運び込むのも大変らしい。
 そして、ファーレンハイトとルッツは、地獄の執務室に運び込んだ。



 月村城小ホール……。
 すでにお茶会の用意も整って、なのは達も席に座っていた。
 すずかの守護騎士、『ローゼンリッター』は、警備要員だ。
「主、はやて! 我々も警備に付きましょうか?」
「今日は、私達はお客さんや! お客は、席について待つもんやでシグナム」
「そうそう。美味い食いもんも喰えるんだから……」
 既に食い気のヴィータ。
「貴女、卑しいですわよ」
「あんだとっ!!」
 吼えるヴィータ。
「卑しい子には、今夜のデザートはでんで」
 はやての口撃。
 ヴィータは、ダメージを受けた。
「は、はやて……」
 ヴィータは、慌てる。
 ヴィータは、食べ物に弱い。


「ラインハルト様、あの人たち貴族でしょうか?」
 キルヒアイスが、ラインハルトに聞く。
 アルクェイド達の服は目立っていた。
「あんな派手な服を着るのは貴族以外にいるか」
 だがラインハルトは知らない。
 アルトルージュ、アルクェイド、グリューエル、グリュンヒルデが王族だということを……。
 そして、さつきとすずかも……。
「あんた達から吸血鬼の臭いがするんだけど……」
 アルクェイドがラインハルトに聞く。
 だが、ラインハルトは答えない。
 と言うか、答えられないのだ。

「折角のお茶が冷めてしまいますわよ」
 グリューエルが言う。
 なのは達は優雅にお茶を飲んでいる。
 既に優雅さが板についているようだ。

 そして給仕は、ファーレンハイトとルッツ、月村家メイド軍団だ。
 今は、ファーレンハイトとルッツは、執事としての仕事中だ。
 そんな姿がラインハルトの目に入る。
「ファーレンハイトにルッツ! こんな所で何をしておるのだ!?」
「へ、陛下!!」
「キルヒアイスにヤン・ウェンリー……」
 死者であるキルヒアイスとヤン・ウェンリーがいることに驚くルッツ。
「ファーレンハイト、ルッツ!! 再び余の元で働け!! 」
「恐れながら陛下、今の我らは雇われ身、雇い主との契約を反故にするわけにはいきません」
 今のファーレンハイトとルッツは、すずかに雇われている。
「そんな契約、破棄して余と共に来い!!」
 ファーレンハイトとルッツを誘うラインハルト。
「人の雇用人を無理やり無理やり奪おうとするのは良くありませんわね」
「何を言うか!! 民衆から搾取するだけの貴族が……! 貴様らもそうなのだろう?」
 なのは、はやて、フェイト、アリシア、アリサは貴族ではない。
「貴方、偉そうに言っているけど何様!?」
「余か!? 余は、銀河帝国皇帝ラインハルト・フォン・ローエングラムだ」
 皇帝だと言うラインハルト。
「銀河帝国!? なのはちゃん、聞いたことあるか?」
「ないよ、はやてちゃん!!」
「フェイトちゃんとアリシアちゃんは?」
「私も聞いたことないよ」
 なのは達は、誰も知らないようだ。
「グリューエルは?」
「残念ながら私も聞いたことありません」
 グリューエルも知らないようだ。
「爺なら知っているかもしれんな」
 アルクェイドの言う爺とは、ゼルレッチのことである。


 そして、当のゼルレッチは……。
「あの者たちをヴァルハラから生き返らせたは良いが、上手くやっているだろうか?」
 ゼルレッチは、どこかわからない場所に居る。
「それにしても、人類が宇宙に出ている世界とはのう」
 ここは、人類同士が銀河系で戦争をしている世界らしい。
「あのラインハルトとヤンとかいう人物、なかなか面白いわい」
 ラインハルトとヤンを面白いと言う。
「他にも色々生き返らせて、あの世界に送ったが、どうなったか……」




「その方たちの名は?」
 名を聞くアルトルージュ。
「ジークフリード・キルヒアイス」
「オスカー・フォン・ロイエンタール」
「ヤン・ウェンリー」
 それぞれ名乗る。
「次は、敬らが名乗る番だ!! 余は、上官だ!! 上官として命じる。官位と氏名を名乗れ!!」
「戦技教導隊所属、高町なのは一等空尉」
「本局次元航行部隊所属フェイト・テスタロッサ・ハラオン執務官」
「同じくアリシア・テスタロッサ・ハラオウン」
「武装隊所属、アリサ・バニングス。階級は二尉」
「うちは八神はやて。特別捜査官や」
「八神!?」
「ラインハルトさま、あの時の魔導師です」
「あの時のか……」
 興味がないことは忘れるラインハルト。



 噂の『65年マフィア』がこんな子たちだったとは……。
 強面の軍人風の人たちかと思ってたが違ったようだ。
 あの年で『65年マフィア』と呼ばれているのだから余程優秀なんだろうな。



「そこの小さいの、名は?」
「私ですか!?」
「そうだ、お前だ」
「わたしは、管理世界『セレニティ』星王家、第7正統皇女グリューエル・セレニティ」
「セレニティ!?」
 ラインハルトも聞いたことのない世界の名前だ。
「管理世界と言いましたが、特定接触禁止管理世界です」
「特定接触禁止と言うぐらいだから、何か問題でもあるのか?」
「このことは、一部の限られた人しか話していませんし、話すことも出来ません」
 セレニティの事は、機密事項に指定されているらしい。
「何れ余が、管理局を掌握すればわかること……」
 今は、聞かないらしい。
「そっちも皇女か?」
「セレニティ星王家、第8正統皇女グリュンヒルデ・セレニティ」
 ドレスのつまんで優雅に一礼する。
 所作から見ても普通とは違う事がわかる。
「その子らに手、出したら犯罪やで」
 顔が赤くなったラインハルトにツッコむはやて。


 その子たちに手を出したらタダじゃ済まないだろうな。
 あの紫の髪の子、表情に出してないけど、『手を出したら殺すぞ』と目で言っているし……。
 ここは、手を出さないほうが良いだろうね


「因みに私と姉さんとさっちんとすずかちゃんも王族だから……」
 アルクェイドの口撃。
「王族だと!?」
「そう。今はいないけど、すずかちゃんの姉も王族だから……」
「王族がそんなにもいはずなかろうが!! 嘘を言うな!!」
 激高するラインハルト。
「嘘じゃないわよ。私と姉さんは、平行世界の王族だから……。それにさっちんも……」

「へ、陛下……」
 何故か、ラインハルトに怯えているカーテローゼ。
「怖がることはないよ」
「陛下♪」
 ラインハルトは、耳を疑った。
 陛下は、自分なのだから……。
「陛下と呼ばれるのは銀河帝国皇帝である余だけである」
 皇帝は自分だけだというラインハルト。
 皇帝は、ラインハルトだけではない。
 この場所には、もう一人皇帝がいた。
我が皇帝マイン・カイザー
 すずかに膝を折るルッツ。
「ルッツ、ファーレンハイト、何故そのような小娘に膝を折る!!」
「既に我々は、働き口も得ています」
「その上、戦艦に乗り組んでいます」
 ルッツとファーレンハイトは、戦艦の乗員だった。
「名という船だ!!」
「それは、言うことが出来ません」
 乗り組んでいる戦艦の名はいう事が出来ない。
 公式には存在しない部隊の戦艦だからである。
「陛下も我らの部隊に来られましたらお教えできます」
「そうか……」
「ラインハルトさま、もっと出世して配属変更願を出すしかありませんね」
「あぁ」
 ラインハルトの願いが叶うのは3年後のことである。

「まだ問うてなかったが、貴女の名は?」
「妾は、夜を統べる一族の皇帝、月村すずか。そして言う。この我のものとなれ!!」
 すずかの口撃。
「断る!!」
 すぐさま拒否するラインハルト。
「本当に拒絶するんですか?」
 支配されることが嫌いなラインハルト。
 過去に生前に姉を奪われたことがあるからだ。


 今の言葉には裏がある筈……。
 言葉の意味することを考えるんだ。


 同時に思考を巡らせるキルヒアイスとヤン。


 考えるんだ。
 今の言葉の意味を……。
 考えようによっては配置変換も出来るぞともとれる。
 それには、裏がある筈。
 それが分からなければ答えられない。


 そして、答えが見える。
「そうか。今の問いの答えは……」

「ラインハルトさま!!」
「判っている」
 ラインハルトは、わかっている。
 だが、他者に屈することなどできない。



 フェイト達は……。


「(あの人、拒んだよ)」
「(折角、戦艦に乗れる機会だったのにね)」
「(うん)」
「(今でしたら、艦長席が空いてましたのにね)」
 念話で話すなのは、フェイト、アリシア、アリサ、はやて、グリュウーエル、グリュンヒルデ。
「(せやけど、あの戦艦は、すずかちゃんの物やろ?)」
「(何があろうと、あの戦艦は、すずかさんの物ですわ)」

「それでは、本題に入ろうか?」
 本題に入ろうと言うアルトルージュ。
「異世界の王族が集っておるのだから、王族会議を開こう」
「さんせい♪」
「良いですわね。王族会議」
「えぇ」
「すずかちゃん、私たちは?」
 なのはがすずかに聞く。
「なのはさん達も参加してください」
「でも……」
「聞いていても悪い話ではありませんよ」
 グリューエルの提案で参加することになったなのはたち。
 果たして何が待ち構えているのだろうか?


 次回予告

 なのは「グリューエルの提案で参加することになった王族会議」
 はやて「その場で話される上に立つ者に必要なこと」
 フェイト「その場で始まる用兵学講座」
 ラインハルト「用兵のなんたるかを余が叩き込んでやる」
 はやて「あかんわ。眼が完全に逝ってるわ」




 グリューエル「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第88話『王族会議』」

 すずか「この我のものになれ」



こうしてみると、結構な数の王族がいるな。
美姫 「まあ、複数世界があれば、それぞれの世界に居ても可笑しくはないからね」
確かにそう考えると珍しくもないのか?
美姫 「ともあれ、いきなり戦闘になるような事態にはならなかったみたいね」
だな。次回は会議みたいだけれど。
美姫 「どうなる事かしらね」
ではでは。



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