第97話「最悪のタタリの夜開演」






 
「さぁ、開幕と逝こう!!」
 幻想郷にて最後のタタリの幕が明けた。
「タタリたちよ恐怖をばら撒け!!」
 タタリ達が各方面に散っていく。
 各地で騒ぎを起こすために……。
 そして、各地でタタリ達が騒ぎを起こし始める。
 あっちこっちで悲鳴が聞こえる。
 だが、此処は幻想郷だ。
 黙ってやられる妖怪たちではない。
 妖怪たちは反撃を開始していた。
 だが、相手はタタリたちである。
 簡単に勝てる相手ではない。
 今まで戦ったことの無いタイプの敵なのだ。
 弾幕では、歯が立たない。
 力の弱い妖怪たちから戦線離脱が始まる。
「カット!! 退場したまえ」
 退場を宣告するタタリ。
「君たちでは、役不足だ!! 顔を洗って出直したまえ」
「は、春ですよ〜♪」
「目障りだ下がりたまえ」
 タタリの攻撃。
「は、春ですよ……」
 リリイは、退場した。
「食べていいのか?」
「舞台で食べてはいけない。食べたいのなら、退席したまえ」
「じゃあ、食べる」
「カット、カット!!」
 カットを連呼するタタリ。
「観劇中の飲食は控えていただこう」
「じゃあ、お前は喰っていいのか?」
「舞台の観劇中に飲食をする方には、退席願おう……」
「いただきま〜す」
 タタリを丸呑みしようとするルーミア。
「キャスト!!」
 タタリは、爪を振る。
 爪から発生した黒い刃がルーミアを切り刻む。
 ルーミアから血しぶきが飛ぶ。
「舞い上がりたまえ!!」
 タタリは、黒い竜巻を発生させる。
 ルーミアは、黒い竜巻に切り裂かれる。
 タタリは、追い討ちをかけるように爪を振る。
 ルーミアは、タタリの爪にも裂かれる。
「出番が終わった役者は奈落に消えたまえ」
 ルーミアとリリィを投げ捨てる。
「次の場面に逝こう」
 次の場面に移るようだ。
 ルーミアとリリィは退場した。
 だが、まだ役者は残っている。
 まだ、出演者が少ないのだ。
 少ないのに二人を早々に退場させたのである。
「次の場面も殺人で逝こう」



 そして、時空管理局本局では……。
「これから指定する書を検索してください」
 無限書庫で司書試験が行われていた。
 受験生たちが指定書物を検索する。
 その中にヤン・ウェンリーの姿もあった。
「この試験に受かれば、司書になれるな」
 ヤンは、司書の資格試験を受けていた。
 検索書物次第で受験生の命運が決まる。
 それは、担当試験管の気分次第である。
 そして、ヤンの試験官は……。
「ヤン受験生の担当試験官のユーノです」
 ヤンの試験官は、ユーノだった。
「ヤン・ウェンリーです」
「ヤン受験生、司書試験を始めます。ヤン受験生には、ある管理外世界の資料を探していただきます」
 ヤンの課題が発表される。
「探していただくのは、英雄たちの歴史考古の本です」
 その本は、ヤンの世界の本である。
 そして、その本の著者は……。

 ヤンのよく知っている人物の書だった。
 其の人物の書まで収蔵されていた。


 其の名は……。
 ユリアン・ミンツだ。


「本のタイトルは?」
「『ヤン・ウェンリーの英雄考古』です」
 ユーノは、気づいていなかった。
 本人に関する本だと言うことを……。
「あ、あのう……」
「どうしたんですか?」
「本当に、其のタイトルの本でいいんですか?」
「あれ!?」
 ユーノは、気づいた。
 受験生本人に関する本だと……。
「ちょっと待ってください」
 ユーノは、対応をとる。
 受験生本人に、受験生本人に関係する課題が当たるとは思わなかったのだ。
 だが、新しく課題を用意する時間は無い。
 人事部に判断を仰ぐ。
 人事部の責任者は、レティだ。


「……と、言うわけなんです」
『そう。受験生本人に、本人に関する課題が当たるとは思わなかったわ』
「無限書庫を度々休館にする訳にはいきません」
 無限書庫も人手不足なのだ。
 其の上、今までのずさんな管理のツケを支払わされている。
「資料請求が、ひっきりなしなんですよ」
『再試験と言っても時間は作れないわよね。忙しいから……』
「はい。今日の試験の為に無理を言って頂いたくらいなんです」
 ユーノは、各方面に無理を言って一日だけ休館日にしてもらっていた。
 無論、一般開放区画を除いてだが……。
『しかたないわね。そのまま試験を続行してちょうだい』
「わかりました」
 レティ提督との話を終えるユーノ。
「ヤン受験生、試験を続行します」
 司書試験が続行される。



 幻想郷では、タタリによる劇が続いている。
「カット!! 演技が全然なっていない」
 ダメ出しを続けるタタリ。
「舞台から下がりたまえ」
 タタリの足元には、戦いを挑み敗れた妖怪たちが血まみれで倒れている。
「その程度の力で私たちに挑むなんて、身の程知らずね」
 タタリなのはが言う。
「そうね。うち等に勝てると思っておるんか?」
「あたし達に勝てないと判っていて挑んでくるなんて馬鹿な連中ね」
 倒れている妖怪たちは、タタリなのは達に総攻撃を受けたようだ。
「これじゃ、O・HA・NA・SHも出来ないね」
 O・HA・NA・SHしたいタタリなのは。
「うん。悲劇じゃない劇は、面白くないね」
 タタリなのは達は、悲劇を好むようだ。
「お腹もすいたし、血を飲んじゃおうか」
 倒れている妖怪たちに牙を突き立てて血を飲むタタリなのはたち。
 飲み終えるとゴミの様に放り投げた。
「次なる悲劇の場面に逝ってみよう」
 タタリは、次なる場面に移る。



 異世界……。
「終わりだ。普通の局員ならまだしも、金髪の孺子と『65年マフィア』の筆頭に目を付けられたら……」
 絶望の色を浮かべる犯罪組織のリーダー。
「如何するんですか!?」
「如何することも出来ん。金髪の孺子の部隊に目を付けられた時点で終わりなんだよ」
 金髪の孺子の部隊に壊滅させられた組織の末路をしているリーダー。
「それに『65年マフィア』にも目を付けられたら……」
「単独で、いくつもの組織を潰したと言うあの戦闘狂集団!?」
 ガクガク震えだす犯罪組織の部下たち。
「うち二名は、本物の化け物だそうだ」
「化け物……」
「その二人に捕まった奴らは、どうなったんだ?」
 末路が気になる犯人たち。
「そんなに知りたい?」
 突如かけられる声。
 恐る恐る振り返る。
 そこには……。
「犯人がどうなったか知りたい?」
 口を開けたまま、ガクガク震える。
 恐怖で呼吸も出来ないようだ。
「自ら投降して逮捕されるのと、痛い思いをして逮捕されるのとどっちがいい?」
 選択権を与えるさつき。
「何をしているか!!」
 選択権すら与えないラインハルト。
「全員逮捕だ!! キルヒアイス、ロイエンタール!!」
「はい。ラインハルトさま」
「御意」
 投降すら許されず逮捕される犯人たち。
 犯人たちは、あっという間に魔力錠で魔力を封じられる。
 逮捕され、次々連行されていく犯人たち。
「ラインハルトさま、全員の逮捕、完了しました」
「よくやった、キルヒアイス」
 キルヒアイスを労うラインハルト。
「如何した!?」
「首謀者を取り逃がしたようです」
「手分けしてでも捕えよ」
「何処へ行こうと逃がさないんだから!!」
 さつきの知覚範囲は広い。
 そう言って、殺気を放つ。
 歴戦の勇士であるラインハルト達ですら息苦しさを感じる物だ。
 これが、ラインハルト達だから、動けるでのである
 普通の魔導師なら呼吸も出来ずに気絶している。
 最悪、ヴァルハラに逝ってもおかしくないのだ。
 当然、犯人たちにも言えることである。


 その首謀者は……。
「私の考えは正しかったようだ……」
 首謀者は言う。
「手駒は失ったが、ローエングラム部隊の情報は手に入った。この情報を依頼主に渡せば、今回のミッションは終わりだ」
 依頼主は、誰なのか?
「転移を使いたいけど、転移の使用は危険だな……」
 転移は、危険だ。
 不用意な転移は、自分の居場所を知らせることになる。
 今、ここで捕まるわけにはいかないのだ。
 そして、彼の手には、謎の魔導書があった。


 無限書庫では、ヤンの試験が続いていた。
 そして、ヤンは、見つけてしまったのだ。
「『同盟軍英雄列伝』!?」
 無限書庫には、『同盟軍英雄列伝』まであった。
「何で、こんな本までヒットするだ?」
 ヒットする筈のない本までヒットしていた。
「誰かに妨害されているんじゃないよな」
 ヤンの試験は、何者かに妨害されていた。
 その妨害者は……。

「ヤン・ウェンリー!! 貴様は、この私に従えばいいんだ」
 ヤンを妙に目の敵にしている男。
「邪魔してやる。燃えろ!!」
 本を燃やそうとする。
「書庫内での火の使用は禁止ですわよ」
「君は、この私を誰だと思っているのかね?」
「誰かは知りませんが、無限書庫内での火の使用は黙認できませんわ」
「此処で私が何をしようが私の勝手だ!!」
「しかたありませんわね。ここで何をしようとしてたかお話してくれますよね? “はい”か“イエス”でお答えください」
 アンゼロットの口撃。
「答える義務も必要もない」
 返答を拒絶する男。
「よって、答えない。わたしは、ヤンの妨害に忙しいのだ、消えたまえ」
 どうやら、ヤンの妨害が忙しいようだ。
「そうは、いきません。書庫荒らしを目の前にして阻止しないなんてことは出来ませんわ」
「其の程度の力で私に勝てるとでも思っているのかね?」
「思っていますわ」
「其の思い違い、身体に教える必要がありそうだな、小娘」
「こう見えても、わたくし、数千年は生きていますわよ」
「じゃあ、ババアだな」
 何かが切れる音が聞こえる。
「年のせいか、耳が遠くなってますの。もう一度言って下さいます?」
「何度でも言ってやるよ。ババア!!」
 アンゼロットをババアという男。
「今、ババアと言いましたわね」
「言って悪いか!? ババア!!」
 アンゼロットも手に一冊の魔導書が現れる。
「今、この場で死にたいか“はい”か“イエス”でお答えください♪」
 笑顔で言っているが、完全に怒っているアンゼロット。
「私は、忙しいのだよ。よって、ババアに構っている時間は無いのだよ」
 この男、まだ自分の過ちに気づいていない。
「銀天の書よ」
 アンゼロットの手にある書は、『銀天の書』と言うようだ。
 『銀天の書』を開くアンゼロット。
「そんな、本で私に勝てるとでも?」
「貴方には、本を破壊した責任をとっていただきます」
 アンゼロットが、魔導書の呪文を唱える。


 異世界……。
『と、言うわけで、そっちに落としますので好きに使ってください』
「……………………」
 好きに使えと言われても困るラインハルト。
 其れよりも、謎の男が亀甲縛りにされているからだ。
 そして上空に穴が開き、穴から亀甲縛りにされた男が落ちてきた。

 グチャ!!


 空から落ちてきた男は、ミンチになった。
 だが、男は人間ではなかった。
 ミンチになった身体が再生していく。

「あのババア、帰還したらタダじゃ済まさないぞ」
 そして、ソレが男の頭に落ちてきた。

 グワアン

 男の頭にタライが直撃した。
 男は、空を睨んで言う。
「帰ったら最高評議会にかけてやるからな」
 この男、最高評議会と強い繋がりがあるようだ。
「貴様、今は任務中だぞ!! 卿の名前と所属を言え!!」
 ラインハルトが、男に聞く。
「わたしは、アンドリュー・フォーク!!」
「?」
「ラインハルトさま、アムリッツアで同盟軍を壊滅させた張本人です」
「それだけではないぞ、キルヒアイス」
「どういうことですか? ロイエンタール提督」
「そいつは、ヤン・ウェンリー暗殺にも関与している」
「暗殺とは、心外な」
 暗殺を否定するフォーク。
「軍律に則った処置をしたまでだ」
 ヤンの暗殺を正当化する。
「あくまで、軍律と言うか!!」
 ラインハルトは、軍律に厳しい。
 特に軍律を乱すような者は……。
「私に何が言いたいのかね?」
「貴様のような奴が嫌いだと言っておるのだ」
 フォークは、同盟軍を大敗させた張本人である。
「貴様のような奴は、余が追放してやる」
 フォークに怒るラインハルト。
 フォークに気を盗られ大事なことを忘れている。
 血が頭に上れば、周囲が見えなくなるようだ。
 戦好きのラインハルト。
 戦いたい病なのだ。


「くっくっくっくっ。誰かは、知らんが私から注意をそらしてくれたことを感謝するぞ」
 礼を言う首魁の男。
「逃走する時間を稼いでくれているのだからな……」
 フォークの出現は、彼に逃走の時間を与えた。
 そう言って、首魁の男は何処かへ姿を消した。



 幻想郷は、もっと悲惨な状態だった。
「カットカットカットッカット!!」
 タタリに切り刻まれる妖怪たち。
 それに攻撃を加えるタタリなのは達。
「劇が始まったばかりで役者を退場させたのでは終演を迎えられないではないか……」
 劇は、まだ始まったばかりだ。
 タタリなのは達が強すぎる為、予定より早く役者の退場が多い。
「そこ!! やり直したまえ」
 タタリの劇は、悲劇度を増していく。
 タタリなのはの砲撃は、無関係な人も吹き飛ばす。

 タタリ達も好き放題、暴れられたわけではなかった。
 すずか、アルトルージュ、アルクェイドに見つかった者は。その爪で消滅させられれていた。
 また、こよみのタライの餌食にもなっていた。
「いい加減に飽きちゃったな」
 早くも飽きたアルクェイド。
「飽きるのが早いぞ」
「だって、姉さん」
 お天気、真祖は飽きるのが早いようだ。
「話している時間はないぞ、アルクェイド」
 アルトルージュ達の前には新たなタタリ達が現れていた。
「倒しても倒しても湧いてくる」
 倒してもキリが無いようだ。
「妾達以外も暴れておるようだな」
 なのは達が暴れていることは魔力からも分かる。
 各所で、魔力の衝突が起こっている。
「飛んでけぇっ!!」
 アッパーカットを放つアルクェイド。
 殴られたタタリは、天へと飛んでいく。
 重力があるのか疑いたくなるほど……。
 どこまでも高く……。
「飛ばし過ぎちゃった!?」
 罪悪感のないセリフを言うアルクェイド。

 そして、各所にタライが降る。
 タライにされたタタリ達である。
 それは、アルクェイド達の所にも降る。
 そして……。

 ガァン

 アルクェイドの頭に命中した。
「今の、何!?」
 タライに興味があるようだ。
 頭にタライを載せたまま考えている。
「もっと降ってこないかな?」
 普通、タライが降って来ることは無い。
 だが、今はタライ召喚師がいる。
 森下こよみである。
 コードを全てタライにしてしまう魔法使い殺しだ。
 そして、アルクェイドの頭上にそれは現れる。
「アルクェイド!!」
「何!? 姉さん」


 ゴン!!

 アルクェイドの頭に再びタライが直撃した。


 次回予告

 はやて「各所で暴れまわる、うち等の偽者たち」
 なのは「タタリに挑み倒れていく妖怪たち」
 タタリ「カットカットカットカットカット!!」
 アリサ「カットカット五月蝿い!!」
 アリシア「少しカットしようか」




 フェイト「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第98話『カット』」



タタリが暴れ放題だな。
美姫 「幻想郷では止めれる者がいないみたいね」
幻想郷以外でも色々と起こっているみたいだし。
美姫 「果たして無事に終わるかしらね」
どうなるのやら。
美姫 「それじゃあ、この辺で〜」
ではでは。



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