読んでくれている皆さん、ありがとうございます。
この「Quadrille(カドリール)」ですが、「An unexpected excuse 〜夜明け前より瑠璃色な フィーナ編〜」の
続編として読んでいただけるとうれしいです。
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Quadrille(カドリール)
中編 恭也たち、月へ
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ここは月のスフィア王国。
フィーナは自分の部屋に居た。
手近の椅子にすとん、と腰をおろす。
腕をだらりと前へ垂らし、背を丸めてため息をつく。
「あーあ」
頭をあげて、天井にほどこされたレリーフを見つめる。
その力ない表情と、どこを見ているのか分からない視線は普段のフィーナとはまったく違う。
「恭也たちは来てくれるかしら・・・・」
フィーナが地球から帰ってきて、二ヶ月が過ぎようとしていた。
その間、フィーナは王女としての責務を立派に果たしていた。
それが自分に定められた運命だったのなら、受けるしかない。
自分にできることは、せいぜいその中でいかに毎日を後悔しないように精いっぱい生きていくこと、それだけ。
そう思い切って、いままでやってきたのに。だからこそ、ここまで生きてこられたのに。
だからこそ、フィーナは思う。
後悔だらけの私がいる。
恭也を失うことにおびえている臆病な私がいる。
恭也の瞳を見れなくなる事。
ふとした瞬間に孤高の魂に隠された不器用な優しさを見つけられなくなる事。
そして、フィーナは知っていた。
恭也が孤高の魂を抱いて家族や友人たちを影から守っている事。
フィーナの瞳はみるみるうちに潤みはじめ、しかし外に流れ出すことはなかった。
地球出発まであと一週間となった日の夕方。
その日も高町家の道場ではダンスの練習が行われていた。
一ヶ月ほどの練習で社交ダンス界の人並みに踊れるようになっていた。
「もう、みんなも踊れるようになったわね」
「そやなぁ〜。ゆうひさんもびっくりやで」
「そうですね。一時はどうなるかと思いました。みんなの踊りを見て・・・」
アイリーンさん、ゆうひさん、恭也がみんなのダンスを見ながら、言う。
その日の夜。
ティオレさんに連絡を入れた。
「ティオレさん。いつ、こちらに来られますか?」
「そうね。出発の日だとバタバタしちゃうから、出発の前日に鳴海に行くと思うわ」
「わかりました」
「みんなのダンスはどうなのかしら?」
「全員、社交ダンス界の人並みには踊れるようになりましたよ」
「アイリーンとゆうひは役に立ったのかしら?」
「ええ。二人とも、真剣に教えていましたので、それが実を結んだのだと思いますよ」
「こちらも、一通り、ダンスの練習をしていたから、大丈夫だと思うけど・・・」
「そちらは、何人で来る予定なのですか?」
「八人かしら・・・・」
「メンバーは、どうなっていますか?」
「メンバーはね・・・。私とイリア。ティーニャ、リーファ、クレスピー、アムリタ、エレン、静よ」
「はい。わかりました。ところで、泊まる所はホテルですか?」
「ええ。そのつもりよ」
「ティオレさん。うちに泊まりませんか?」
「それも考えたけど、人数的に無理じゃないかしら」
「月に行くメンバーと話し合った結果、前日に集まってダンスの総仕上げをしたいということになりましたので、
ティオレさんたちも一緒にどうかなと思いまして・・・」
「おもしろそうね。それはいいとして、みんな、帰らずにいるのでしょ?」
「ええ。そうですよ」
「それじゃ、ますます、無理じゃないかしら」
「その点について、ご心配いりません。道場に雑魚寝でいいということになりましたので」
「そう。わかりました」
「それでは」
「ええ、ありがとう」
招待状をもらってから、三週間、恭也はフィーナの誕生日プレゼントを考えていた
電話してから三日間悩んでいたが、答えは出ない。
どんなに考えても答えが見つからなかった。
それを見かねた桃子が恭也を呼ぶ。
「恭也。ちょっといい?」
「ああ」
「あんた。まだ、フィーナさんのプレゼントを買っていないんだってね」
「・・・・・・・・・」
「何にしていいか、わからないって顔ね」
「どうしてわかる?」
「あんたの母親を何年やってると思ってるの。それぐらい、わかるわよ」
「・・・・・・・・・」
「誕生石って知っているわよね?」
「誕生・・・・石・・・・・?」
「あははははは。ハァ〜。あんたね、もうちょっと、世間に興味を持ちなさいよ。フィーナさんに嫌われるわよ?」
「かあさんに言われたくないなぁ」
「まぁ、いいわ。9月は確か・・・・サファイアだったかしらね」
「ふむ、サファイアか・・・」
「29日は・・・・」
「む。日付によって違うのか?」
「そうよ。なんだったかしらね・・・・」
「かあさんもと・・・・・」
スパァァァァァァァァァァァァァァン
恭也の頭をスリッパが襲う。
「痛いじゃないか。かあさん、なにをする?」
「あんたが変なことを言うからよ」
「だから、と・・・・・・」
桃子がスリッパを持つ。
「いえ。ナンデモアリマセン。桃子様、続けてください」
「わかればいいのよ。わかれば。本当になんだったかしら・・・」
「む・・・・・・・・・・」
「あっ。ブルーサファイアだったかしら」
「ほう。ブルーサファイア・・・・。ふむ、ペンダントや指輪と言ったところか」
「どちらでもいいけど、女性としては指輪のほうがうれしいかな・・・」
「ふむ。参考して選ぶか」
「早く決めなさいよ。後二日しか、ないんだから」
恭也は悩み抜いた結果、かあさんが言っていたブルーサファイアの指輪に決定した。
その指輪をめぐる問題が起きたのは言うまでもない。
月と地球で双方同時にだ。外交問題ではないのだがそれなりに大きな問題として取り上げられたのである。
その話は別の機会にでもできればいいのだが・・・。
そして、出発前日の夕方。
高町家道場にはCSSのメンバーやさざなみ寮のメンバー・友人たちが集まった。
総勢30人近く居た。
赤星と藤代さんがこの豪華なメンバーを見てつぶやいていた。
「俺たちが高町の知り合いって信じたくなくなるなぁ。これだけ、有名な人たちがいると」
「本当ね。どこで何をしていたのだろうね。高町君って。本当はすごい人なのかな」
「確かに、剣の腕は天下一品だけど、普段の高町を見てると・・・・」
「本当に不思議ね・・・。あまり、考えないようにしようか」
「ああ、そうだね」
集まったメンバーでダンスの最終チェックと総仕上げを行っていく。
恭也はダンスの最終チェックを見ながら、フィーナのことを考えていた。
(フィーナ・・・。俺は距離に負けてしまった。誰かに会える事がこんなに嬉しいと思ったことはなかった)
(フィーナに会えば、このもやもやの答えがわかるかも知れない)
ふと、思考をやめると、赤星が呼んでいるのに気づく。
「・・・・まち。高町。どうした?」
さすがは、赤星である。俺が思考の海に沈む様な気配を感じ取ったのである。
「む。赤星。何か、呼んだか?」
「ああ。なんか、考え込んでたようだけど、どうかしたか?」
「・・・・・・いや。別に、何でもない」
「高町。まあ、いいか。カドリールの練習をしようと思って呼びに来たんだ」
「ふむ。了解。俺の相手は誰がやるんだ?」
「フィアッセさんがやりたいとかってもめてた」
すると、恭也は頭を抱えてしまった。
「む・・・・(なぜ、そんなことで争う?)」
「高町にはわからなくていいことさ」
赤星は恭也の思考を読んでいたのか、そんなことを言ってくる。
「藤代さん。赤星にお仕置きをしておいてくれ」
「高町君。わかったよ」
「ふ、藤代」
「くっくっくっくっくっ」
「高町」
「あはははははは」
「藤代」
赤星は涙を流しながら。やめてくれと懇願していた。
「む。向こうも決まったらしいな。じゃあ、やりますか」
「うん。やろうか」
「高町。藤代ぉぉぉ(涙」
「赤星。いつまでほおけているつもりだ?」
「元はといえば、高町が悪いんだぞ」
「じゃあ、やりますか」
「うん。そうだね」
「俺の相手は静か」
そして、軽快な六拍子の音楽が流れてくる。
そんな中、恭也と静、赤星と藤代さんは揺れ動きながら踊る。
「ふむ。赤星と藤代さんは踊れるようになったようだ」
「恭也。私は?」
と、静が聞いてくる。
「さすがはティオレさん。ぬかりがないなぁ」
「恭也!!!!私も褒めなさい!!!!!!!」
と怒声が響くが、当の恭也は軽く流している。
そんな調子で前日の練習は過ぎて行った。
そして、出発当日。
ここは、満ヶ崎中央連絡港。
大人数なのでバスをチャーターしてここまで来た。
恭也は知った顔を見つける。
「達哉。元気か?お前たちも誕生パーティに呼ばれたのか?」
「恭也。久しぶりだな。俺たちは元気だよ。呼ばれたよ」
「そうか」
「ところで、恭也・・・。あそこにいるのはCSSのメンバーなのか・・・・」
「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」
世界的に有名なCSSのメンバーと恭也が知り合いだと知り、達哉たちは絶句した。
達哉たちのメンバーもフルメンバーだった。
達哉はもちろんのこと、さやかさん、麻衣ちゃん、菜月、仁さん、佐門さん、翠。
達哉たちと合流し、しばらく話していると放送がなる。
『月連絡船が到着しました。搭乗受付は第二ゲートです』
「みんな、そろそろ、行こうか」
『はい』
恭也たちと達哉たちは搭乗手続きを終え、月連絡船へと乗り込んでいく。
ここでも恭也のとなりに誰が座るかでもめていたのである。
例のごとく、そんな事ともしれずに恭也は一人用の椅子に腰を下ろし、思考の海に沈みこんだのである。
そんな恭也を桃子はどこか、懐かしげに見ていた。
あれは、士郎さんと知り合って、三人で遠出をしたときである。
いつものように、士郎は桃子の隣をキープしていたので、恭也は仕方なく、一人用の席に腰を下ろした。
そして、恭也は流れていく景色と人ごみをじっと見ていたのである。何も言わずにじっと、それだけを見ていた。
恭也はどこを見ているのか、それとも、考え込んでいるのか、桃子にはよくわからなかった。
あのときのような感覚に陥っている。
桃子は今にも消えてしまいそうな恭也をただただ悲しげに見ていた。
そんなこととはいざ知れずに恭也は飛び立つ船から地球を、だんだん、小さくなっていく建物と空の色が青から黒に変わる瞬間を
どこか切なげに見ていた。
そして、中央連絡船は地球を飛び立った。
月までは約2時間ほどの宇宙旅行。
その間、高町家と友人たち、CSSのメンバー、達哉たちは恭也に声を掛けられずにいた。
2時間後、恭也たちは月のスフィア王国に立っていた。
スフィア王国からは地球がよく見えていた。
「地球はあんなに青く綺麗だったんだな。それを俺たち、人間が壊そうとしているのだな」
「そうですね。未来にこの青く綺麗な地球を残していきたいですね」
耕介さんと赤星が話していた。
そのことにみんなも賛同していた。
しばらく歩いていると、迎えの人が立っていた。
後編「四人のカドリール」へと続きます。
あとがき:
その人物とはいかに・・・?
もう、皆さんはわかっていますよね?
ぼかっばきっぼかっ
痛いじゃないか
小鈴「痛くて当然でしょ。殴っているんだから」
あ、あの小鈴様。なぜ、私が殴られないといけないのでしょうか?
小鈴「今回の切り方は何?」
・・・・・・・・・
小鈴「お仕置き決定」
ヒィィィィィィィィィィィィィ
だって、切らないと長くなるし・・・・。
小鈴「切り所じゃないでしょ」
いやいや。ちょうどいいところだったし。切れるかなって。あはははは
小鈴「まぁ、いいわ。後でお仕置きするから。美姫師匠もこちらに来て下さい。お仕置きしましょう」
ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ
浩さん、助けてください。
小鈴「感想は掲示板に」
おたすけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
小鈴「京梧。うるさい」
ぼかっ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ごめんなさい、無理です。
私にはとても止めるなんて……。
美姫 「うふふ、よく分かっているじゃない」
あ、あははは。さーて、迎えに来たのは誰かな〜。
美姫 「それは次回で明らかになるわよ」
まあな。後編がどうなるのか、今から楽しみです。
美姫 「次回も楽しみに待ってますね〜」
ではでは。