設定は、とらはの方はAllエンドで恭也は誰とも付き合っていません。
With Youの方は、乃絵美は拓也に振られています。
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とらいあんぐるハート3×With You(伊藤 乃絵美)
ずっと二人で・・・
第一章 新しい位置 前編
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乃絵美に氷川神社まで案内してもらい、その帰りのことである。
「恭也さん。そのコート、暑くないですか?」
「慣れれば、そんなに気にならないと思うのだが・・・」
どこの誰から見ても見るからに暑そうな格好をしているが、本人は涼しい顔をして歩いている。
「私じゃあ、真似できないよ」
「うちの家族達にも同じ事を言われた。俺も色々とあるから」
「色々?」
「ああ。そういえば、乃絵美は知らなかったのだな・・・・」
「何を?恭也さん、何を知らないのですか?」
「乃絵美。世の中には知らないほうがいいこともある」
「知らないほうがいいこと?」
「ああ、そうだ。知らないほうがいいことだ」
そう言い放つ恭也は普段の恭也とは違っていた。冷たさが表に出ていたのである。
「それでも知りたいです。私は恭也さんの秘密を」
「知らないほうが幸せだ。それでも、知りたいと言うのなら、それなりの覚悟がいる。今の乃絵美にその覚悟があるとは思えない。
乃絵美が知ると言うことは家族を危険がさらされるかも知れないし、乃絵美自身が危険に陥るかも知れない。
そんなことを教えられない」
「・・・・・・・恭也さん?」
「相手を受け入れることはそんな簡単なことではない。それがどんなに小さなことでも」
「うん。そうだね。恭也さんの言うとおりだよ」
「乃絵美・・・・・」
乃絵美を見ると真剣な目でこちらを見ていた。
「む・・・・・・・」
微々たる殺気を感じて、そちらを見るとあからさまにこちらに敵意を剥き出しにしている不良の集団がにやにやしながら、
こちらに歩いてきている。
恭也は誰の目から見ても優男。腕もそんなに太いわけでない。さらに、コートと服で隠れた筋肉質な身体。
そんな恭也は中学に上がる頃から、不良達によく目を付けられては喧嘩を売られていたのである。
恭也はそのたびに、逃げるか逃げられないときは殺気を向けて撃退していたのである。悪ぶっているだけの不良なので
剣術使いとしての鋭い殺気をぶつけるとすぐに逃げてしまうのである。
不良たちはこのカモを逃す手はないという感じで、恭也と乃絵美の周りを四方八方から囲むように詰め寄った。
その数、約20人近くであった。
恭也は乃絵美を庇うようにして立っている。内心ではため息をつきながら、心の中で思った。
(ハァ。最近はなかったのだが、やはり、新しい土地に来るとくだらないことを考える輩がいるのだな)
「ようよう。兄ちゃん。俺達さ、お金がなくて困っているんだわ」
「5万ほどでいいから、貸してくれ」
不良の代表格がそう言って近寄ってくる。
「そこをどいてくれると嬉しいのだが・・・・」
「はい。そうですかって開けられるか。なぁ、みんな」
『おう』
「ハァ・・・・。どこにでもいるのだな。馬鹿者どもは」
「おいおい。今の状況を見て、どうしたら、そんな言葉が出てくるんだ?」
「もう一度言う。そこをどけ」
「金を出せば、通してやるよ」
恭也は乃絵美の目を見ると、少しこわばっているのがわかった。
(乃絵美。少しの間、目を閉じてくれ。それとこれから、何が起きても騒いだりしたら駄目だ。いいな?)
恭也が真剣な目をして伝えると、乃絵美はうなづくと目を閉じる。
乃絵美が目を閉じるのを見て、恭也は美由希との鍛錬のときの顔になる。どこか、冷たい顔でその表情の奥にあるのは、
冷徹さだけである。
「忠告はした。だが、通さなかったのはおまえたちだ。いいのだな」
次の瞬間、恭也は鍛錬の時の10分の1の殺気を四方八方に向けて放つ。
不良たちは恭也の殺気に当てられて、カタカタと震えだし、固まってしまった。
恭也は一瞬で不良たちの群れの穴を探して見つけると、乃絵美を抱きかかえて一点突破で逃げ出した。
不良たちから逃げ切った恭也は乃絵美を落ち着かそうと近くにあった小さな公園に来ていた。
「・・・・・・・」
「恭也さん?」
「ああ。すまない。俺のせいでこんなことになってしまって」
「恭也さんのせいじゃないよ。あの人たちが悪いと思うよ」
「ふむ。そうだな。最近はあういうことがなかったから、俺も油断してしまっていた」
「最近?」
「ああ、そうだ。中学に上がったころに少しと高校に上がったころに少しだな」
「恭也さんも苦労したんだね」
「おかげで変な異名までついていたな。乃絵美、勘違いしないために言っておくが、こっちからは仕掛けていない」
「うん。それはわかってるよ。恭也さんは自分から喧嘩しないもん。変な異名ってどんな異名なの?」
「風校の黒い衝撃とか、風校の黒い死神とかって聞いた気がする」
恭也自身は、喧嘩を好まない。平和を愛する青年である。
自分の家族や友人が危機に陥れば、別の話だが、普段の恭也は喧嘩はしない。それに伴い、裏家業である護衛の仕事や
剣術家であることは公表していない。担任の教師と仲の良い友人達以外は知らないのである。
だが、そんな恭也でも、不良たちに絡まれることもある。
恭也は見た目が優男で強くないように見せている。不良たちにしてみれば、強くないから勝てると思っているのである。
そんなこんなで絡まれても喧嘩せずに撃退してしまうところから黒い衝撃やら黒い死神がついてしまったのである。
不本意ながらの異名。苦笑いを浮かべながら、乃絵美に教える。
「あははははははは。すごい異名だね」
「あまり、気にしないようにしていたがその異名があだになってしまい、関係のない喧嘩に巻き込まれることもあった」
「本当に苦労したんだね」
「落ち着いたみたいだな。そろそろ、帰らないと駄目な時間になってしまったようだ」
「うん、わかったよ。それからありがとね。恭也さん」
「む・・・・。お礼を言われるようなことはしていないのだが、受け取っておくよ」
恭也と乃絵美はロムレットへと歩いて帰っていく。
ロムレットに着くころには19時前になっていた。
「ただいま。お母さん、帰ったよ」
「俺はただいまでいいのか?」
「おかえり。乃絵美。恭也くん、ただいまでいいわよ」
「それじゃ、二人も帰ってきたことだし、始めるとしますか。歓迎会を」
「ええ。そうね」
「それでは、私ミャーコこと信楽美亜子が乾杯の音頭を取らせてもらいます」
「今日という日の出会いに乾杯!!!」
『乾杯!!!』
「長期バイトの高町恭也くんに自己紹介してもらいます」
「紹介に預かりました高町恭也です。四ヶ月という長い間、こちらでお世話になります。至らないところも多いかと
思いますが、よろしくお願いします。学校のほうは二学期だけ、こちらのエルシア学院の三年に通うことになります」
「恭也くんと呼ばせてもらっていいかな?」
「ええ。いいです。信楽さんでしたっけ?」
「私の事はミャーコと呼んでくれるとうれしいかな」
「ミャーコさん?」
「うーーーーん。まだ、硬いかな。でも、そのほうが恭也君らしくていいかな」
「私は恭也と呼ばせてもらうかな。私は、田中冴子。サエと呼んでくれ」
「ああ。よろしくな。サエ」
「じゃあ、次は私かな。氷川菜織です。私の事は氷川さん以外ならなんでもいいよ」
「む・・・・・・。菜織さん。よろしく」
「恭也くん、私は天都みちるです。エルシア学院で教師をしています。よろしくね」
「天都先生、よろしくおねがいします」
「天都先生・・・・。みんなからはみちる先生と呼ばれているので苗字だとピンと来ないです。あはははは」
「む・・・・・・。それは素晴らしいですね。下の名前で呼ばれている先生はそんなに居ないですからね」
「一応、みんなの自己紹介も終わったし、ここからは恭也くんに質問タイムでいいかな?」
ミャーコちゃんがそういうとまわりはうなづいている。
「でわ、まず、誕生日と年齢と家族構成を教えてください」
「誕生日は一応4月29日になっているが本当のところは知らん。父さんと初めて会った日が誕生日になっているらしい。
年齢は19歳だ。家族構成は、母と妹二人に姉的存在一人、妹的存在二人の七人だ」
「まぁ、あまり詳しく聞くのはやめるけど・・・。家族構成の姉的と妹的というのは何かな?それに19歳ってダブり?」
「そうしてくれるとありがたい。姉的と妹的というのは家族ぐるみの付き合いで預かっているだけだ。ダブりとか言うな。
ダブりとか。中学時代に自分の中に余裕がなく、無茶をしていてそれの代償だな・・・」
(膝のことは隠していたほうがいいだろうな。ばれたときに言えばいいか)
恭也は心の中で膝のことは黙っていることにした。
「でわでわ。続きまして、趣味と特技を教えてください」
「趣味は、盆栽と釣りと散歩だ。特技は・・・・・・・・・・。ない」
特技のところで目一杯時間をかけて「ない」ということにした。
周りはずっこけそうになっていたが気にしていない。
「えっと・・・・。それは、いわゆる冗談?この歳で盆栽って・・・・。枯れ過ぎだよ。恭也君」
「家族にも「枯れている」とか「おじいちゃんだね」とかよく言われるけど、そんなに変なのか?乃絵美」
「どうだろう?人によって趣味も特技も違うから、間違いではないと思うけど・・・・」
「じゃあ、次ね。うーーーーん。音楽聴きそうにないけど、どうなの?」
「む・・・・・。失礼な。音楽ぐらい聴いている」
「どんな音楽?演歌?クラシックって顔じゃないし・・・・」
「ミャーコさん、失礼過ぎる。CSSって分かる?ミャーコさんだし、知ってるはずだ」
「CSS・・・・。クリステラ・ソング・スクールかな?」
「ああ、そうだ。CSSのメンバー全員の歌は聞いている」
「へぇ。なんだか、意外だな」
ミャーコたちは本当に意外そうな顔をしていた。
「じゃあ、次で最後ね。好きな女性のタイプは?というか、彼女いるでしょ?」
「む・・・・・・。俺を好きになってくれる人なんかはいない。タイプは・・・・・・・・・・考えたことがないから
わからん」
「恭也くんって。すごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉく鈍感だね。おまけに、表情が硬い。例えるなら、昔の侍とかかな」
またまた、家族に言われることを当てられてしまい、恭也は苦笑いを浮かべている。
「む・・・・・・・・・・・・」
「鈍感・無表情・寡黙の三拍子がそろった平成の侍かな」
「うん。そうだね。そういう感じかも」
「恭也だし」
「む・・・・・・・・・・。サエ、それはどういう意味だ?」
恭也の質問はあっさり流されてしまった。
それからしばらくは談笑が行われていた。
ふと、時計を見ると21時を回っていたので、そろそろ解散しましょうかというながれになっていた。
「貴美恵さん。少しいいですか?」
「ええ。いいわよ。恭也くん」
「昔、父から聞いていると思うのですが、俺も剣術をやっています。毎朝毎晩、鍛錬を行っています」
「ああ。じゃあ、鍵を渡しておけばいいかな?明日にはスペアの鍵が届くから」
「ええ。わかりました。お借りします」
「女性達ばかりの夜道は危険なので、俺が途中まで送りますね」
装備の入ったコートを着て、店から出る。
「恭也くん?」
「はい。何でしょう?ミャーコさん」
「この時期にコートって暑くない?」
「む・・・・・。夕方、乃絵美に同じ事を聞かれたが、慣れているので暑くないですよ。それに、見かけより薄いですから」
「へぇぇぇ。コートに触っていい?」
「む・・・・・。駄目です」
困ったような顔をして言う。だが、内心は違っていた。
武器があるので触らせたくない。怖がるだろうから。
「恭也くんのケチ」
「ミャーコ。恭也が困っているぞ」
恭也達はたわいもない世間話に花を咲かせながら、四人を送っていく。
途中でミャーコとサエとみちる先生と別れた。
菜織については、この街での鍛錬場ということもあり、最後まで一緒だった。
第一章 新しい位置 後編に続きます。
あとがき
今回の前編は恭也の紹介だけで終わっちゃいました。
あはあはあはあはあは↓ガックシ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
うーーーーーーーん
何か、変だな。
小鈴「あんたの頭がおかしいのでしょ」
うっうっうっうっ
ヒドす。
まぁ、確かに頭が悪いのは認めるけど・・・・。
小鈴「お仕置き決定」
ぇー
なぜ、お仕置きされなくてはいけないのだ。
認めただろ。
小鈴「京梧。認めても認めなくてもお仕置きするつもりだったし」
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシ
バシバシバシバシバシバシバシバシ
小鈴「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ。お仕置き終了」
・・・・・・・・・・・・
小鈴「でわでわ。感想は掲示板に」
小鈴「よろしくね」
とりあえず、無事に恭也の紹介も済んだみたいだね。
美姫 「次回はどんなお話になるのかしらね」
転入の話になるのか、それともその前に何かあるのか。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」