魔法少女リリカルなのはA's――sideKYOUYA




       

           

――――かくして全ての札は揃った。雪の舞う街。白く染まる街でそれは捲られる。

 

 

 

――――開かれたカードは幾重にも交差する。そうして複雑にしてその実、単純明快な一つの解を見せる。

 

 

 

――――涙と、悲しみと、絶望。笑顔と、幸せと、希望。それらは裏返り、表返り、それを繰り返しつつしかし結局全て裏返る。

 

 

 

――――幸福と不幸は等価だ。幸せになるものがいればその数だけ不幸になるものが現われる。それは覆せぬ真理にして秩序。

 

 

 

――――だが、それは今回に限り通用しない。そう今回ばかりは違うのだ。ばら撒かれたカードの中のたった一枚・・・・・・・

 

 

 

――――たった一枚だけ、まだ開かれぬカードが盤上には存在する。本来ならばありえぬカードが。

 

 

 

――――運命を壊すことを望む破壊者。神の如き理不尽を認めぬ鋼の刃。その血に『神』の文字を含むもの。

 

 

 

――――真理(ルール)秩序(ルール)が覆う盤を問答無用でひっくり返すとっておきの『切り札(ジョーカー)』が。

 

 

 

――――そうして音もなく、切り札は開かれた。物語の、終わりと始まりを前にして。

 

 

 

 

運命の12月24日。とても、とても長い一日が、はじまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第9話     『幸せのカタチ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭也さん。話とはなんでしょうか?僕はちょっと調べたいことが―――」

「――――仮面の男がグレアム提督の使い魔のリーゼロッテとリーゼアリアかもしれない、ということか?」

「!!!」

クロノの顔が隠しようもないくらい驚愕に染まる。

「・・・・図星か。なら俺の話を聞く意味はあると思うぞ」

「・・・そういえば恭也さんはグレアム提督と面識があったんでしたっけね」

クロノはそう言いつつ恭也に視線を向ける。そのまなざしは真剣そのものだった。

その視線を受けて恭也は頷くとコートのポケットから何枚かのディスクを取り出しクロノへと渡す。クロノは一瞬困惑の表情を向けるがすぐに恭也の意図を汲み取り渡されたディスクを部屋の機器に入れデータの読み出しを開始する。

データの読み出しはすぐに終わりディスプレイに複数のウィンドウとともにデータが展開された。

「!!恭也さん!これは!?」

・・・驚きもするだろう。なにせただの民間協力者が重要機密レベルのデータを所持していたのだから。だが驚いたのはそれだけではない。

「・・・八神・・・はやて・・?」

写真が添付された一つのデータ。そこに彼女の名前があった。歳はちょうどなのはやフェイトとおなじで―――

「現在の闇の書の・・・主だ」

「っ!・・・・・・・・・・・・提督は、知っていたんですね・・・・」

どこか苦しそうに、悲しそうに、クロノは視線を落とす。恭也も壁に寄りかかりながらその表情は苦しそうだった。

しばらくの間、沈黙がその場を支配する。カチコチと時計の時を刻む音だけが耳に響く、強く。

「闇の書の主は・・・・・・・・・」

「ん?」

重苦しい沈黙が降りた後ようやくクロノが口を開いた。依然として視線は下を向いたままだったが。

「闇の書の主は、たとえ暴走し始めたとしても、其の時点では永久封印をされるような犯罪者じゃない・・・・・違いますか?」

「そうだな・・・・だがグレアム提督いやグレアムさんには、それを理解しつつもそうしたい何かがあったのではないかと俺は思う」

さっきのデータの中には当然「永久凍結封印」に関する詳細なデータもあった。それを見てクロノは判断し理解したのだろう。

恭也は壁から背を離し、クロノの元に歩いていく。

「クロノ」

「なんですか?」

「・・・・・・教えてくれないか?昔、グレアムさんになにがあったのか多分だが君も関係があるような気がしてな・・」

その言葉にはっと顔を上げ

「・・・・恭也さんは鋭いですね」

そう言って、クロノには珍しい微笑みを浮かべながら恭也を見た。それを受けて恭也も薄く微笑み

「家族には散々鈍感やら朴念仁やら枯れてるやら言われているがな」

それにはクロノは乾いた笑いを受けべるだけだったが。

「わかりました。お話します」

そう言うと真剣は目をしながらクロノは話しだした。闇の書の騒動の一端である、とある事件を。

 

 

 

 

それは闇の書の護送中に起きた。

護送中に闇の書が暴走。艦の操舵システムはおろかアルカンシェル射撃システムまで闇の書に侵食。

最悪なことに既にチャージ態勢で他の護送艦隊にその射線を向けていた。

そこでその艦の艦長だったクロノの父クライドは自分以外の全てのクルーを退避させグレアム提督に自らの艦ごとアルカンシェルを撃って闇の書を封じてほしいと頼み・・・・・・そのまま彼、クライドは帰らぬ人となった。

 

 

 

「多分、提督は今でもその責任を感じているんだと思います。母さんも父さんが死んだとき僕の前や他の人の前ではいつも笑っていましたけど・・・・・一人の時には泣いていましたから。声を必死に押し殺して」

恐らくは、その時から彼の、グレアムの時間は止まったままなのだろう。押し寄せる後悔の念。

なぜクライドが死ななければならなかったのかと、なぜあの時闇の書を載せた艦が自分のではなかったのかと、なぜ闇の書が突然暴走をはじめたのかと、なぜなぜなぜ何故何故何故ナゼナゼナゼ!!?

そして後悔の念はそのまま怨嗟の叫びへと変わる。

だがその狂気のままに自らを振るうにはグレアムは歳をとりすぎていた。長い年月を生きてきたが故に今までの経験と肥大した理性は狂気をたやすく封じ込める。狂気のままに振舞おうともそれができない。理性を捨てようとも身体が拒絶する。だからグレアムは再び苦悩する。

そしてその繰り返しが延々と続き―――現在に至る。

「でも!僕も、母さんも、きっと父さんだってそんなことは望んでない・・・・!たった一人の、何も知らない少女を永遠の孤独の中に置き去りにして闇の書を封じることなんか!そんなことをしても、何も戻ってきたりしない・・・・・ただ、闇の書の犠牲者が一人増えるだけだ・・・」

拳を硬く握り締めクロノにしては珍しく感情を顕わにする。クロノとて、この方法が闇の書を封じる手段として有効なのは十分に理解している。

だけどそれでも、甘いのかもしれないけれど。時空管理局の執務官として。何より一人の人としてこの方法を認めるわけにはいかなかった。

「ああ、そうだな。――――――だからとめるぞ、グレアムさんを。なんとしてでも」

その言葉はクロノの予想していたものとは違った。

真剣なまなざしで、クロノを甘いと批判するでもなく、それどころか励ますように、奮わせるように、力強く。恭也はクロノへと言葉を紡いだ。

そのことに一瞬呆けた表情を浮かべ

「―――はい!」

しかしクロノは力強く頷いた。

 

そうしてどう動くか恭也とクロノが思案している時だった。

『クロノ君!きこえてる!?』

通信機から響くエイミィの切羽詰った声がふたりを急速に現実に引き戻した。

「エイミィ、一体どうしたんだ?」

彼女の声に含まれる緊張具合からただ事ではないことが聞いている二人には理解できたが

「なのはちゃんとフェイトちゃんと連絡がとれなくなって、しかもなのはちゃんの世界から膨大な魔力反応が出てて・・・!」

「「!!」」

自体はもっと深刻だったらしい。

膨大な魔力反応、しかもなのはやフェイトとは通信がとれない・・・・・・となれば答えは一つだ。

「闇の書が・・・・起動した?」

「だろうな」

「くそっ!」

ガツン!とクロノは拳を振り下ろす。結局後手にまわってしまった。いまから転送してもかなりの時間を食ってしまい間に合うかどうかすら微妙だ。だけど―――

「恭也さん・・・・・・・いきます。僕が、リーゼ達を止めてきます」

「わかった、グレアムさんはまかせろ。とはいっても俺は局員ではないから拘束したりはできないから早めに頼む」

クロノはそう言ってデバイスを片手に見慣れたいつものジャケットを纏い部屋から転送ポートへと行こうとして

「まった」

突如として恭也に呼び止められた。

「転送ポートをつかった移動だと時間がかかるだろう。ならここから行けばいい・・・・・・白姫」

待機状態の白姫がデバイス形態をとる。恭也がそのまままっすぐに突き出すように構えるとクロノの足元に白い大きめの、しかし見たこともない魔法陣が展開される。

「恭也さん?これは―――」

「直通だ」

「・・・・・・・・・・」

唖然とする。だが恭也の言っている事はおそらく正しい。クロノでも自分の足元に展開されている魔法陣が見たこともないほど緻密で複雑な術式から構成されているのがわかる。そして感じる魔力量。これなら次元間移動も容易いだろう。

何故恭也がこんな複雑な術を扱えるのか、見たこともあらゆる文献にすら載っていないそのデバイスは一体なんなのか、そして

(あなたは・・・・一体何者なんだ)

聞きたいことは山ほどあった。管理局の局員として。しかし一方で今自分がやらなければならないことも理解している。優先順位を間違う程クロノは愚かではなかった。

なのでただ一言だけ。

「行ってきます」

それだけ言うとクロノは白い光に包まれながら転移した。なのは達の、そして自らの師匠達がいるであろうその世界へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リノリウムの床をコツコツと歩く音が響く。

「・・・・白姫か?管理局に情報をリークしたのは」

『はい。とはいってもばら撒いておいた探知機のいくつかをアースラのシステムにリンクさせただけですけど』

あの仮面の男達――変身魔法を使ったグレアムの使い魔のリーゼ達はもちろんのこと守護騎士達の金髪のおとなしそうな女性も通信妨害をすることができる。

その為彼らがまとまって動く時は発見が遅れていたしリーゼ達もセンサーにすら反応しないという有様だった。もっともリーゼ達においてはアースラの一部システムを改竄していたのだろうことが簡単に予想できた。

八神はやてが闇の書の主と判明してからはなのはと恭也の居る世界に大量の探知機(サーチャー)をばら撒いた。それらの全てが白姫にダイレクトリンクでつながっている。ダイレクトリンクである以上、ちょっとやそっとの通信妨害は無効化されるし高度な通信妨害でも通常よりは早期に発見できる。

とはいえ、今回は結果的に二重の通信妨害がかかっていたためかなり発見や補足はおくれてしまったわけだが。

『主。着きました』

随分と思考の海に身を浸していたようでいつの間にか目的地は目の前だった。

さっき管理局のシステムに軽いハッキングをしかけて局員の現在地を調べた結果、目の前の扉の向こうにグレアムが居る事が判明した。そして奇しくも、その部屋は恭也が管理局に来たときにグレアムと会話した部屋だった。

一呼吸おいて目の前の扉に近付く。すると扉は自動でスライドし恭也を部屋へと誘う。・・・・ロックはかかっていなかった。

部屋に1歩ずつ足を踏み入れる。そしてそのままグレアムが座る椅子の正面まできて、歩みを止めた。

グレアムは先ほどから恭也に視線を向けたままで恭也もまた同じようにグレアムに視線を固定したままいる。そのままどちらともなく

「やはり君が来たか・・・・・恭也君」

「ご無沙汰しています・・・・・グレアムさん」

言葉を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

「恭也君の事だ。もう全てつかんでいるのだろう」

「ええ。申し訳ありませんが、調べさせてもらいました。クロノに既に渡してあります」

「そうか・・・・」

またも部屋を沈黙が包む。しかしそれも長くは続かず、ポツポツとグレアムは語りだした。

「今でも鮮明にあの時の情景は思い出せる。・・・・・・私のミスだった・・・・」

両手を膝の上で組み、俯きながらその唇は言の葉を紡いでいく。まるでそれは神父に懺悔する罪人のよう。

「あの時の彼の顔が、彼の死を知らされた時の彼女の顔が脳裏から離れない」

己の命を犠牲にすると、言外に語ったあの時のクライドの。そしてクロノの前だからか必死に母として毅然と夫の死を受け入れようとする表情と―――妻としてなにより女として愛する人の死に今にも泣き崩れてしまいそうな、そんな二つの表情がごちゃまぜになったあのリンディの顔が。

「何よりも、全てを投げ捨てて復讐に狂ってしまえない自分の心を呪った」

その日からグレアムは後悔の波に押しつぶされ拉げてしまいそうな心をおさえつけながら独自に闇の書について調査を続けた。自分にはそれなりの権限があったし管理局の上層部も闇の書の危険性は熟知していたため気付いていても彼の行為をとめるものはいなかった。

そして

「あるとき、闇の書の転生先が判明した。・・・・・彼女の身の上を知り身体を悪くしている彼女を見て良心は痛んだが―――運命だと思った」

ぴくりと、いままで静かに聴いていた恭也の表情が僅かに動いた。

その後は自分の使い魔であるリーゼロッテとリーゼアリアを使いスムーズに―――闇の書が暴走するまでにもっていけるようにし、一方では封印に使うための最新技術を投入した氷結魔法特化型ストレージデバイス『デュランダル』をつくりあげた。あとは恭也達の知るとおり。

そこで一息つき、しかしまた口を開く。

「孤独な子であればそれだけ悲しむ人は少なくなる」

「・・・・・・彼女の生活の援助をしていたのは」

ここで初めて恭也が口を挟んだ。何気ない言葉だったがその言葉は鋭利にグレアムの胸をつく。

「・・・永遠の眠りにつく前に、せめて幸せにしてやりたかった」

「・・・・・・」

グレアムはここでようやく口を閉じた。懺悔を終えた罪人は静かに息をつく。だが神父は無言。そしてその口から許しの言葉が出ることはない。

―――おそらくは、永遠に。

 

「では、俺は行きます。おそらくは間もなくクロノがこちらに来るでしょう」

「そうだな・・・・」

だがグレアムは座ったまま。おそらくいや間違いなくクロノが来るまでここで待つつもりなのだろう。

そんなグレアムを背に恭也は部屋のドアへと歩いていき

「俺は、運命なぞ信じない・・・・」

扉が反応するちょうど1歩手前で立ち止まった。俯いていたグレアムの視線が動き、恭也に向けられる。

「彼女の幸せは彼女が決めるものだ。他人が勝手に決めていいものではない。なにより―――」

言いながら恭也は振り返りその視線は精確にグレアムを貫きながら

 

 

 

 

 

 

 

 

「それであなたは満足できましたか?『幸せ』になれましたか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと復讐が果たせるというのにどうして彼はこんなにも苦しそうなのか。

クロノがリーゼ達の元に行っていると知ったときどうしてあんなにもほっとしていたのか。

その答えを恭也は知っている・・・というよりわかっていた。彼が、この部屋にいた時に。

 

 

『頼んだぞ・・・・・』

 

 

初めてこの部屋を訪れたときにかすかに聞こえたあの言葉の意味。

それはきっと―――

 

 

 

 

 

その言葉に込められた真意にグレアムが気付けたかどうか、それはわからない。それすら確認せずに恭也は静かに部屋から退室していった。

一人室内に残されたグレアムはたった今、恭也が出て行った扉を見つめながらやがて人知れずひっそりと微笑む。

・・・・・彼は去り際、もう一言だけこう告げた。

 

 

 

 

 

『運命だろうとなんだろうと。俺の大切な人達を傷付けると言うのなら、この御神の剣で斬り裂くのみ・・・・だから、安心してください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・フェイト、ちゃん・・・・」

たった今目の前で起こった出来事に頭が真っ白になった。

闇の書に向かって駆け出していくフェイト。ソニックフォームから繰り出される疾風が如き一撃。それを三角形を基とした魔法陣で受け止める闇の書。

そして―――光に包まれ粒子を振りまきながら消えていくフェイト。

呆然とするなのは。しかし闇の書の精とも言うべき彼女はその美しい銀の髪を揺らしながら片手に存在する書のページを捲る。

「・・・・刃をもって、血に染める――――――ブラッディダガー」

なのはの周囲、それだけでなく闇の書自体のまわりにも赤い刃が整列する。その数は夥しく、さっきの比ではない。

今度はバリアジャッケットだけでは防ぎきれないだろうそれにレイジングハートの声でなのはもやっと気付いたがもう、遅い。

「・・・・闇に、沈め・・・・・・」

レイジングハートが単独で防御障壁を展開しようとするが放たれる赤い刃は視認すら許さないほどの超高速。闇の書周辺に展開されていたものは既に赤い軌跡となっている。

それはすなわち・・・・・・なのは周辺に展開されたものは既に防御不能だということを意味する。

なのはは次の瞬間にも襲い掛かってくるだろう衝撃に思わず目を瞑り

「鋼糸!」

鋼鉄(アイア)(ンメ)処女(イデン)

しかし予感した衝撃はなく。あるのは耳をつんざくような爆音だけだった。目を凝らせば自分の周囲を銀色の線が縦横無尽に張り巡らされているのがわかっただろう。

 

なのはと闇の書はほぼ同時に上空を見上げる。

「おにい、ちゃん・・・?」

その声はあくまで疑問系。だがそれも当然。上空にいるその青年はなのはの記憶にある恭也とは違いすぎていた。

髪はそのほとんどが雪のように白く染まり、瞳は海の青よりもなお深き蒼。身に纏う闇色のコート。なにより両手にはあのデバイスの姿はなく、その代わりに両手に厳つい黒と白の篭手のようなものがある。またその二つには同じような黒と白の宝玉がはまっている。

「・・・・融合(ユニゾン)デバイス・・・・?」

ぽつりと闇の書が呟く。その顔に一瞬だけ困惑が浮かぶがそれもすぐに消えた。

 

 

――――――第2(セカン)制御(ドリ)状態(ミット)

今の白姫と黒姫の状態をそう呼ぶ。

そして闇の書の判断はただしい。今の彼女らは見ての通り恭也と融合している。二つのそれぞれ独立した思考を持つデバイスを恭也という術者を介して接続することで『並列(デュアル)処理(システム)』というこの白姫と黒姫というデバイスの真価がこの時初めて発揮される。

 

 

恭也はそのままなのはの隣へと舞い降りる。

「大丈夫か、なのは」

「おにいちゃん・・・・!」

その声を聞いて安心する。この声は間違いなくなのはのよく知る兄の声だ。恭也が隣にいることに安心し、抜け出た意思の力が戻ってくる。だが同時にさっきまで自分の隣にいたフェイトを思い出し瞳が翳るが今は恭也に現状を伝えなければと思い俯きかけた顔をあげようとして

「にゃ!」

恭也の大きな手がぽんぽんと軽くなのはの頭を手のひらでたたいた。

「・・・状況は理解している。それとフェイトなら大丈夫だ。親友なのだろう?だったら信じてやれ」

「うん・・・!」

恭也の言葉に頷きながら、思う。

『そうだ、私が信じてあげなきゃ。フェイトちゃんは負けたりしない・・・・!』

今度こそ正面にあげた顔はいつものなのはの顔になっていた。とても小学生とは思えないほどの強い意志を持つ、つよくてやさしい少女がそこにいる。

その表情にどこか満足気に恭也は笑うと闇の書へと視線を移し、瞳には戦意が映し出される。

「なのははどうしたいんだ?」

視線はそのままになのはに問う。目の前の闇の書からは魔力が再び膨れ上がっている。

「私は助けたい。フェイトちゃんも、はやてちゃんも・・・・・・・・・闇の書さんも!」

「そうか・・・・・なら、おもいっきいりいけ。俺がなのはを守る」

言いながら恭也の両の篭手の宝玉が光り、両手に柄から刀身までの全てが光で出来た小太刀サイズの正真正銘、光の剣を握り締める。

「私もお兄ちゃんを守るよ」

なのはもそう言うとレイジングハートを構えながらマガジンを差し替える。

そして声を揃え

「いくぞ!」

「うん!」

二人の、(しろ)深海(くろ)の魔導師は空を駆けた。





闇の書事件もいよいよ大詰め。
美姫 「一体、どんな結末が待っているのかしら」
うーん、次回も気になる所。
美姫 「続きを首を長くして待っていますね」
って、それは俺の首!
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ち、ちぎれるぅぅぅ〜〜。



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