瞬間、鋭い剣戟音が鳴り響いた・・・
「ここは、俺が引き受ける・・・。おまえは先に行け!」
「けど恭ちゃん、その傷・・・」
「いいから行け。彼女を守るのがおまえの役目だろ!」
「・・・・・・」
対峙する相手は何も言わない・・・
「ッ!」
私は意を決して駆け出した。
仕事だからとか、じゃない。
私は・・・、
私の大切な人を守るために闘うのだ・・・
1.
「わりと簡単な仕事なんだけど、受ける気はないかい・・・?」
その一本の電話から事が始まった・・・
年が明けてから、2週間ほど過ぎ、やっと正月惚けが抜けてきた頃・・・
よく晴れた休日の昼下がり、ごくありふれた家・・・とは言えない家に住んでいる長男、
その長男・・・つまり私の兄、高町恭也・・・というか恭ちゃんが、日課の盆栽のお手入れをしていると、
唐突に知り合いから一本の電話がやって来た。
「護衛ですか?」
電話越しにそう応える恭ちゃん・・・
ということは、おそらく電話をかけてきた相手はリスティさん。
リスティさんは、警察関係の人(・・・のはずなんだけど、ちょくちょくまったく別の仕事もしてたりする)で、
大学生になってから時間に余裕が出来た恭ちゃんに、人手が足りない時なんかに今みたいに電話をしてくる。
私、高町美由希は、その電話に耳を傾けつつ、自分の愛刀の手入れをしている最中・・・
恭ちゃんの口から発せられる、「えぇ」 とか 「はい」 とか 「そうですね」 とかはともかく、「護衛」
とか 「警備員」の単語から察するに、今回も警備関係の依頼だろう。
そんなふうに邪推していたら、ようやく電話が終わったのか、恭ちゃんは受話器を置いた。
「仕事?」
私は刀の手入れをしながら、顔だけ恭ちゃんのほうへ向いて訊ねた。
その問いに、恭ちゃんは 「あぁ」 と応えながら私のちょうど向かい側のソファーに腰掛ける。
今回の仕事についての話をする気だろう・・・
私はとりあえず、いったん刀を鞘にしまい、テーブルの上に置き、話を聴く態勢をとった。
「警備の仕事だ。 今年は年明けから、警察も民間の警備会社も結構忙しいらしい・・・」
予想的中。じゃなくて・・・
「珍しいね・・・。で、受けるの?」
「あぁ。 今回は平日だから、俺が一人でいくつもりだ」
これまで、基本的に仕事が休日の時などは、私も一緒にいき、平日の時は恭ちゃんが一人で行くというのが普通だった。
まぁしかし、なんとういか今回は状況が今までとは少し違うのだ・・・
「合格もらってるし、一日くらいならいけるよ・・・私」
そう。私は世の中の同い年の人たちが必死に受験勉強している最中、いち早く推薦という形で大学進学の切符を手に入れていたのだ。
というわけで、近頃結構暇・・・
だから、「仕事があるなら一緒にいくよ・・・」という意味を込めて言ってみたのだが・・・
「いや、比較的簡単な仕事らしいし・・・
それにおまえは俺と違って、そっちの道もいけるからな。
勉学をおろそかにするべきではないだろう・・・」
恭ちゃんは少し自虐的にそんなことを言った。
その姿は少し寂しそうだ。
つまりなんだ・・・
いちおう、そのあたりのことに関しては負い目を感じているらしい。
確かに恭ちゃんは、学業優秀とはいえない。
まぁ中の中といったところだろう。
しかしだ・・・
「私から言わせてもらえばさぁ・・・
学校の授業以外で”一切!”勉強したことないのに、
国立大学に現役合格しちゃう恭ちゃんの方がすごいと思うけど・・・」
もちろん、運が良かったということもあるかもしれない・・・
だが、よく言われるように、運も実力の内というやつだろう。
そんなことを考えてたら、恭ちゃんはゴホンっ!と話をきるように咳払いをした。
「まぁ、とにかくだ。当日、おまえは学校にいくように!」
兄は兄で兄なりにいろいろあるらしい・・・
とにかく、そう強く念押されては、もう何もいえない。
しかたなく私は「は〜い・・・」とわざとらしく不満げにそう返事するのであった。
2.
「小笠原グループ・・・」
恭也は手元にある、資料を読んでそうつぶやいた・・・
小笠原といえば、この日本の中でも有数の企業だ。
都市開発から、デパート経営、その他諸々に手を伸ばしていて、とにかく企業としての規模が大きい。
今日は小笠原の傘下、提携の企業の重役が多数この会場に出席している。
恭也がリスティから依頼の電話をもらってから4日後・・・
基本的に今までの仕事は誰かの護衛ということが多かったのだが、
今回は少し勝手が違っていた。
警備なのだ。
もちろん経験はあるが、そう多くはない。
よって、警察官もおらず、恭也以外の警備員は全員が警備会社の人間だ。
本来ならばこういう仕事は、恭也のような部外者が名乗り出る以前に警備会社だけでこと足りる・・・
『ホラ、最近は悪い噂もあるだろ? どこの企業も警戒してるのさ・・・』
これは、4日前のリスティの言葉である。
「悪い噂・・・か」
まぁ自分がそれに合うことは、まずないであろう・・・
しかし用心はしておきたい・・・というのはどこのお偉いさん方でも一緒だ。
(何もなければいいがな・・・)
いつだって、そう思う。
今回だけが特別なことなどもありはしない。
恭也は資料をスーツの内に仕舞い、今自分に課せられている仕事にかかった・・・
3.
恭也は、警備会社の人間というわけではなく、あくまで協力関係としての参加なので、その行動に制限は課せらていない。
一応所持品として、警備会社の人間と連絡がとれるように、無線通信機を持たされている。
ただ、それを渡された時のことを考えると、恭也はあまりいいようには思われてはいないようだった。
『リスティ・槙原さんの紹介だから信用はするが・・・』
と、現場の主任は言っていたのだが・・・
(たぶん、半信半疑にも満たないだろうな・・・)
しかし、それも今までによくあったことなので問題はない・・・
問題はないのだが、これからもずっとそうだと、げんなりするというのが本音のようだ。
この問題の根本的なところの改善はまず不可能なのだ。
御神流を扱う人間は、単純な筋力よりも持久力を重要視する傾向がある。
それが奥義到達への道でもあるし、一対多の戦闘において重要なことだからだ。
もちろん、恭也の筋力は人並みはずれているが、それでもちゃんとバランスをとれるように意識して鍛えている。
そう、御神流を扱うには筋骨隆々な人間はあまり適さないのだ。
白色筋と赤色筋をバランスより鍛え、結果として絞りこまれた体つきとなる。
だから、一見すると細身に見えてしまうところがある。
恭也の場合はそれに輪をかけて、長身かつ年中長袖なのでさらに、わかりにくい。
だから・・・
―知り合い(同級生の性悪・・・)に、女装させられ(遊ばれ・・・)たことは、一度や二度ではない・・・
かなり余談ではあるのだが・・・。
「ックシュンッ!」
「大丈夫ですか?お嬢様・・・」
「あ〜大丈夫大丈夫・・・。 今のは、う〜んそうね・・・たぶん仕事中の高町君が、私のことを悪く思ったんでしょ・・・」
「はぁ・・・なぜそこまで的確なんでしょう・・・?」
「なんか、それっぽい電波が届いた・・・。 っと、時間ないや。いってきま〜す」
「はい、いってらっしゃいませ。お気をつけて・・・」
・・・
会場の中、周りにアタリをつけながら巡回する・・・
特に、異質な気配は感じない。
会場の方を気にしてみると、おそらく小笠原の人間であると思われる人物が
壇上で巨大なスクリーンをバックに、なんらかのプレゼンテーションを行っている。
『このようにニュータウンでは、従来よりも遥かに高速にして高品質なネットワーク回線網を・・・』
どうやらパーティは終わって本題の発表会に入っているらしい。
壇上にいる人物は、とても意気込んで抑揚のある声で説明をしている。
(ニュータウンというのは、確か新しく埋め立てられて出来る街のことだったか・・・。
ネットワーク・・・たしか、ホームページとかメールとかのことだったか・・・?)
仕事に集中するべきではあるのだが、こうも大きな音で会場内全体に響き渡らせられると嫌でも意識してしまう・・・
『IT・・・と聴くと、中高年の方々には、難しく思われる傾向がありますが・・・』
(IT・・・。むぅ、こっちもホームページとかメールとかのことではなかっただろうか・・・
となると、【IT = ネットワーク】ということか・・・?)
と、中高年ではない若者が実は、まったくついていけてないのだが、プレゼンテーションはまだまだ続いていく。
ついていけていないと、気づいていない恭也の頭の中では、街中を目に見える形でホームページやらメールやらが飛んでるというようなSFチックな情景が展開されていた・・・
(さすがは、小笠原グループだ・・・。 帰ったら、なのはに教えてやろう・・・)
恭也は心から、小笠原グループの凄さ(?)に敬意の念を抱く。
どんどん間違った方向へ進んでいく若年寄一名・・・
その頃・・・
(恭ちゃん大丈夫かなぁ〜・・・)
ボ〜と、学校の窓から外を眺めながら思う。
― 別の意味で今、危ない・・・(;つД`)
つづく・・・といいなぁ。
あとがき・・・
スイマセン。いや本当にスイマセン。
パクリです。まんまです。
けど、なんか久しぶりに書きたくなったんです。
3年程前に一回だけSSかいたけど、その後にプログラムの勉強しだしたんで、
それっきり離れたまんまだったんですけどね。
「マリとら」がすごくおもしろかったんですよ・・・。
刺激されたのもありますし、逃避というところもあったり・・・
なんとか差別化を図って別のモノになれるように努力を・・・
とにかく、読んでほんの少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
04/09/12 クロネコ
クロネコさん、ありがとうございま〜す。
美姫 「マリとらとは、違うモノになってますよ」
うんうん。文章も上手だしね。
美姫 「そうそう。いつも言ってるけど、誰かさんも見習って欲しいわね〜」
本当だね〜。その誰かさんっていうのは、よっぽど間抜けなんだね〜。
美姫 「そうね。間抜けに加えて、馬鹿が付くのよ。しかも、その上には大が付くの」
なるほどね〜。しかも、口よりも手が先に出るタイプで、特技は剣技で趣味は人を殴る事なんだろう。
美姫 「…………」
…………。
美姫 「うふふふふふ」
あははははは。
美姫 「殺す!」
逃げる!
美姫 「待ちなさい!逃がさないからね」
クロネコさん、続きを待ってます。
では、火急な用件があるのでこれで!(ダダダダダダッ)
美姫 「クロネコさん、楽しみにしてますね。
では、取り急ぎの用件がありますので。またね〜♪」