前書き

これはKanonとBLEACHのクロスオーバーです。

主人公は相沢祐一で、かなり強い設定でいきます。

なので、そういうのが嫌な方はお戻りください。

独自解釈と設定がでてきますので、それが嫌な方もお戻りください。

指摘歓迎、苦情はスルーしますのでご了承ください。





さて、警告はしましたよ?

では始まり〜♪











 









 









 
「………お?」



春になり新学期が始まって、そろそろ新しいクラスや担任に慣れてくるこの時期の早朝、学生の登校時間。

空座第一高等学校校門前で、一人の男子生徒が疑問の声を上げた。

いや、男子生徒とは正直言い難い。

華奢な外見に、やや茶色が混じった艶のある黒髪、黒目、女性に間違われる程整った顔立ち。

見た目男装している麗人なため、初対面の人間ならほぼ100%の確立で女性と断ずる彼の名は相沢祐一。

この空座第一高等学校に通う二年生である。

そしてそんな彼の視線の先には、一人の女子生徒が居る。

美少女と分類される顔立ちだが、明らかに昨日までは見かけなかった顔だ。

そして何よりも、



(………“紅い霊絡”、ね)



祐一の知る限り、この学校で“それ”を持った生徒は、居なかった筈だ。

何故いきなり紅い霊絡を持った女子生徒が―――おそらく転入生―――居るのかが分からず、少し立ち止まって考える祐一。

しかも感じられる霊圧がかなり弱々しい。



(『(ホロウ)』にやられたのか?―――にしては生きているのは不自然だな)



だがそれも一瞬。

まあ別に良いか、とその女子生徒から視線を外すと、祐一はそのまま校舎の中へ向かっていった。









 









 









 


死神の居る世界で流れる追走曲

第1話 動き始める運命











 









 









 
「あら、おはよう相沢君。 相変わらず女の子みたいね」

「ん? 香里か。―――とりあえず、激しく余計で大きなお世話だ」



HR前に自分の席で読書をしていた祐一は、掛けられた声に視線を上げる。

視線の先に、クラスメートであり隣の席で割と親友みたいな付き合いをしている女子生徒―――美坂香里が歩いてくる姿があった。

ブルー系の瞳にウェーブのかかった黒茶系の長い髪、大人っぽい容姿に相応しい落ち着いた雰囲気を持つ彼女は同年代より大人びて見える。



「いつも思うんだけど、何読んでるの?」



窓際最後尾にある祐一の隣の席に自分の鞄を置きながら、香里は訊ねる。

毎朝香里が登校してくると、ほぼ確実に祐一は先に来ており、いつも同じカバーで表紙が隠された本を読んでいる。

それも毎回毎回本の大きさと厚さが違うので、そのカバーは複数持っているものと思われる。



「毎日違う本を持ってきているから、一概にこれだ、と言えるわけではないが……」

「そうね。 いつも大きさと厚さが違うし」

「今日はこれだ」



そういって祐一はカバーを取る。

出てきた表紙のタイトルは―――『美坂香里をからかう方法論 百選!』

その装丁は見るからに書店などで売っていそうな出来のよい表紙であった。



「――ってなによこれ!?」

「おっと」



ふーん、と聞いたのに流すつもりだった香里は、タイトルを目にした瞬間、脊髄反射の領域で本を奪って机に叩きつけようとぶん投げた。

が、それを予め見越していた祐一は、余裕を持って本をキャッチ。



「危ないだろうが、香里」

「そんなことはどうでもいいわよ! 何よこの本は!?」

「見たとおりだ。 如何にして美坂香里をからかうのか、という一点を追及した一冊だな。 いや、素晴らしい」

「そんな本があるわけないでしょ!?」

「しかし現にここにあるだろう? それにしてもよく出来てるな、流石俺」

「自作!?」

「割と自信作だ。 ちなみに、ホレ」



本に手を掛けた祐一が、『美坂香里をからかう方法論 百選!』と書かれた表紙を外す。

そこから出てきたのは、『お手軽家庭料理 百選!』と書かれた本だった。

つまり、中身はなく表紙だけらしい。



「な、なななな………」

「いやいや、予想通りのリアクション、どうもありがとう。 今日この日のために作った甲斐があったよ」

「―――っっ!」



口に手を当てながら、祐一は楽しそうに笑う。

言葉にならない声を上げて俯く香里。

肩を震わせているところを見ると、怒りを抑えようとしているらしい。

そんな香里を見ながら祐一が指でカウントする。









 










 










 










 
―――――瞬間。









 
「相沢君!!」



地の底から響いたような大声と共に、香里の黄金の右拳が祐一の顔めがけて放たれた。








 









 









 
「祐一、今日は何をしたの?」



2時限目が終わり、各々が3時限目の準備をし始めようという時間帯。

一人の女子生徒が、拳の形という珍しい紅葉をほっぺに付けられた祐一のクラスにやってきて、そのまま祐一の席の前まで歩いてくる。

後ろはリボンで結び、横は流したままの長い黒青系の髪、綺麗系の凛々しい整った顔立ちの女子生徒―――川澄舞は呆れたような表情を隠そうともしなかった。



「何故上級生の舞が平然とうちのクラスに入ってくるのかは今更だから言わんが、ちょっとしたお遊戯だ。 何故?」

「今更とか言っときながら言ってることはスルーして………香里の声が普通に三年の教室まで聞こえてきたから、何をしたのか少し気になった」

「成る程。 そうだな、近日稀に見る大声だったな」

「……………本人が隣に居るんだから、そういう話題は出さないでくれる?」



これも割と今更なのだが、香里は羞恥に顔を赤く染めて二人に抗議する。

しかし暖簾に腕押し、柳に風。

意に介さない祐一たちは話を続ける。



「(無視)アレは、女の子だって大きな声は出せるって証だな」

「流石は香里。 ツッコミ女王の名は伊達じゃない」

「そんな二つ名持ってないですよ!?」

「(シカト)で、本題は?」

「ん、今のが本題だったんだけど………こっちはついで、副題。 祐一も気付いた、というよりは見てたでしょ?」

「――ああ、それか」

「……………………はぁ」



ツッコミにも反応しない二人に、香里は溜め息をついて反論するのを諦めた。

こうなってしまったら殆どの言葉が無視されてしまうのを、今までの学校生活で嫌というほど理解している。

ならば、そもそも二人の言動を無視してしまえばいいのだが、悲しいかな、頭では分かっていても魂が反応してしまうのだ。

魂の底からのツッコミ属性である香里に、ことあるごとにからかってくるこの二人は天敵とも呼べるような存在であった。

当然、溜め息をついている香里に気付いているのだが、敢えて無視し祐一たちは話を進めていく。



「―――多分、“ゲタ帽子”の差し金だと思うけど」

「連絡は受けてないから、特に問題ないだろう」

「やっぱり、昨日のアレ?」

「そう考えるのが妥当だな」

「………ねぇ、何の話?」



意味不明な話をする祐一たちに、疑問を投げかける香里。

ここで無視するのをやめた二人は、香里のほうに顔を向ける。



「ん、気にするな。 香里に関係があることも無きにしも非ずだ」

「そう。 それに、どうせ被害を被るのは香里だから気にしないでもいい」

「どっちよ。――って尚更気にしますよ! 舞さん!?」

「……風が呼んでるから、戻る」

「わけわかんないし!?」



問いかけてもまともな答えを返さない舞は、そのまま祐一たちの教室を後にした。

舞の姿が見えなくなると、香里は額を押さえながら深く溜め息をついて机に突っ伏した。



『……………あ、あはは………いつも大変ですよね、お姉ちゃん』



そんな香里を、頭に汗マークを付けながら声を掛ける少女。

しかし彼女の声は香里に聞こえることなく(・・・・・・・・・・・)消えていった。

そして、少女の声が聞こえた(・・・・・・・・・)祐一は、一瞬だけ二人に視線を向けると、すぐにそれを外してチラッと窓から校庭を見下ろす。

丁度そこには、オレンジ色の髪をした男子生徒が鞄を持って爆走しているところだった。





黒崎一護。

オレンジ色の髪(しかも地毛)であるために、不良どもに目の敵にされる新入生。

身体的特徴でなんらかのちょっかいを受けること(祐一の場合、女顔なので女装させられる等)が共通した悩みなので、祐一は割と親近感を持っている。

ちなみに知り合いでもある。



(重役出勤しなけりゃいけないような目にあったみたいだな)



相変わらず霊力を垂れ流しにしているが、特に怪我を負った様子もない。

一般人から見れば何の変化もないように見えるが、祐一の目からはソレ(・・)が一目瞭然であった。



(やれやれ、“紅い霊絡”か)



昨日まではなかった“それ”と、彼の霊圧に混じっている彼とは別人の霊圧。

そしてそれは、転入生らしき女生徒の持っていた霊圧と酷似していた。

そこから推察されることは限られている。

あの女死神がやられそうになったところを、黒崎一護が死神と化して、『(ホロウ)』を倒したか。

何らかの事情で止むを得なく、女死神の力を黒崎一護が借り受けたか。



(前者は不可だな、そうだとしたらあの女子生徒の霊圧が混じる理由がない。 後者の方かな………さらに黒崎の資質が高かったから力を奪われた、とか)



その推測は完璧に的を射ているのだが、現状の祐一にそれを確かめる術はない。

一護が校舎内に入っていくのを見届けると、祐一は視線を教室内に戻す。

未だ突っ伏している香里と香里と鎖で繋がっている(・・・・・・・・・・・)少女を視界の端に捉えながら、次の授業の準備を始める。

授業が始まる寸前に、校舎の外で一護と例の女子生徒が接触していることが分かったが、特に気にすることなく祐一は教科書とノートを机の上に出して授業開始のチャイムを待つのだった。









 









 









 
少し時間を戻って、空座第一高等学校の敷地内のとある場所。

周りに他の生徒がまったくいないそこで、



「こんな人気のない所に連れ込むなんて………私、なにかされるのかしら?」

「その気色の悪い喋り方はやめろ!」

「気色悪い? 心外ね。 一晩で習得したにしては上出来じゃなくて?」

「うるせ! どういうつもりか説明してもらおうか!」

「説明?」



男子生徒と女子生徒が言い争いをしていた。

もっとも、言い争いと言うよりは、傍から見ると、不良が女子生徒に絡んでいるように見えなくもない。

何故なら、男子生徒が荒い口調で女子生徒を問い詰めている上に、彼の髪の色はオレンジ色なのだから。



目つきの悪い男子生徒―――黒崎一護と、一見普通の女子生徒―――朽木ルキアは少し特殊な事情を持っている。



一護は、幼い頃から幽霊が視えたりするし、ルキアはその霊を成仏させる『死神』である。

この世界における死神とは、現世を彷徨う霊『(プラス)』とその『(プラス)』が悪霊と化した『(ホロウ)』を『尸魂界(ソウル・ソサエティ)』と呼ばれる死んだものの魂が住まう場所に送ることを生業とする。

本来、肉体を持たず魂の存在である死神は普通の人には視えない。

幸か不幸か一護は幽霊が視える人間で、一護の部屋に入ってきたルキアが視え、視える人間が故に『(ホロウ)』に襲われる羽目になった。

家族が襲われ、カッとなった一護の無謀な啖呵が原因で、ルキアが戦闘不能に陥る。

絶体絶命の状況下での唯一の打開策―――一護の死神化によって、その場は何とか事なきことを得た。

翌朝、『(ホロウ)』との戦闘の被害が、「トラックが家に突っ込んできた」となっており、事情を聞こうにもルキアも見当たらなかったので、『尸魂界(ソウル・ソサエティ)』とやらに帰ったのだろうと思った一護だったが、



「そうだ! てめえの仕事はもう済んだだろ!? 何でうちのクラスに潜り込んでいる? 『尸魂界(ソウル・ソサエティ)』とかいう所に帰ったんじゃなかったのかよ!?」



なんとルキアは、同じ高校の、しかも一護と同じクラスに転入生として来ていたのだ。

これには一護でなくても驚くだろう。

そんなわけで、一護は事情を説明させるためにルキアを人気のない場所に連れ込んだのだ。―――言葉だけ見ると怪しいな気がしなくもない。



「たわけ! 『尸魂界(ソウル・ソサエティ)』に戻れるのは死神だけだ! 今の私にはあそこに戻る術がない」

「あん? どういう―――」

「私が………死神の力を失ったからだ!」

「!?……………な………に?」



予想外の答えに一護は絶句する。

昨日の説明では、死神の力を一時的に得る(・・・・・・)と言われた。

一時的なはずなのに、何故死神の力が失われているだろうか。



「で……でも俺はもう死神じゃねえぞ!? 何処いったんだよ、その死神の力は?」



もう着物も着てないし、と服を捲くりながら一護が捲くし立てる。

あれっきりと思っていた一護にとって、この話は好ましいものではない。



「おまえの中だ。 おまえの『肉体』ではなく『魂』が死神化しているのだ」

「―――っ!」

「とにかく! 何故かは知らぬが、昨夜のあの時に私は死神の力を殆ど貴様に奪われてしまったのだ!」



ルキアにも原因が分からないらしく、少々困惑している様子が見て取れる。



「今の私に残っているのは、僅かな鬼道を使う力のみ………今もこうして義骸に頼らねばならんほどだ」

「ギガイ?」

「緊急用に我々死神に支給されている仮の肉体のことだ。 極度に力の落ちた死神は、これに入って力の回復を待つのだ。 肉体に入っているのだから、当然普通の人間にも姿が見える」

「へぇ…」

「弱体化した死神は、『(ホロウ)』に狙われやすいからな」



自分の父親が見れず、何故クラスメートがルキアを見ることができたのか。

些細な疑問が晴れた一護だが、まだ本題には入っていない。



「………で? その弱りきった死神サマが俺に何の用だ?」

「話が逸れてたな。 本題に移るが…貴様にはこれから私の力が戻るまでの間、死神としての仕事を手伝ってもらう!」

「………………………は?」

「だから! 貴様にはこれから私の力が戻るまでの間、死神としての仕事を手伝ってもらう、と言ったのだ」

「あァ!?」



なんでだよ!と一護の心境を表すならこの一言で十分だろう。

一護としては家族を護るために死神とやらの力を借りて戦っただけなのだから。



「当たり前だろう。 今死神の力を持っているのは貴様なのだから………勿論、私が補助はする。 言っておくが貴様に断る権利はないぞ。 元はと言えば―――」

「断る!」



拒否権はないと宣言したルキアに逡巡もせず返事をする一護。

そして話は終わりだ、と言わんばかりに手を振りながらルキアに背を向けて歩き出す。



「………何だと?」

「断るって言ったんだ。 あんなバケモノと戦うのなんて二度とごめんだ」

「ちょっ………ちょっと待て! 貴様」

「昨日、俺があんなのと戦えたのは………襲われていたのが身内だったからだ」



言い募るルキアを無視して、一護は話し出す。



「見ず知らずの他人のために、あんなバケモノとなんて戦えねえ! 俺はそこまでやれるほどできた人間じゃねぇんだよ」



とは言っても実際にそんな場面に遭遇すれば一護は助けに入るだろう。

ただ下手に厄介ごとに首を突っ込んで、昨日のように家族を巻き込むわけにはいかないのだ。



「期待を裏切るようで悪いけどな」

「………………そうか」



その返答を聞いて諦めたと思ったのか、一護はそのまま校舎内へと戻ろうとした―――が



「―――ならば致し方ない!」

「………? 何を―――!?」



不穏な気配を感じた一護が振り返ると同時に、ルキアの右手の掌底が顎に炸裂する。

普通なら多少の痛みを感じるのだがそれもなく、その掌底が発揮した効果は



「おわあ!? 何だこりゃ!? タマシイが抜けてやがる!?」



一護の肉体から死神化した魂を抜き出す、というものだった。



「おい! しっかりしろ俺の本体!!」

「ついて来い」



狼狽する一護を無視して、ルキアは端的にそれだけ伝えると歩き始める。

自分ではどうしようもないので、仕方なく一護はルキアの後に続いて歩き始めた。









 
「………おい」

「待て…もうじきだ」



児童公園に着いた二人は、公園に入らず、何をするわけでもなく突っ立っていた。



「何がもうじきなんだよ!? もう二十分も………」

「この公園の近くに霊は出るのか?」

「あーーー、そういや出るな」



脈絡のないルキアの質問に気勢を削がれた一護は、少し考えて該当する事柄に思い当たった。



「どんな奴だ?」

「五歳くらいのガキだ。 いつも十二時近くになるとここで遊んでんだ」

「友達か?」

「何でだよ…三・四回見かけただけだ。 喋ったこともねーよ………それがどうしたっていう」



その質問に答えるでもなく、ルキアは携帯電話らしきものを一護に渡す。



「……? 何だこりゃ」

「指令だ。 『尸魂界(ソウル・ソサエティ)』からの」



画面には「弓沢児童公園 20m 12:00p.m. +−15min」と表示されている。



「午前十二時十五分前後、弓沢児童公園から半径二十メートル以内に『(ホロウ)』が出現すると言う意味だ」



妙に端折っている指令だ。

20mの前にはrくらいつけたほうがいいような気もする。

時計の分のほうもわざわざ分ける必要があるとは思えないのだが。



「恐らく…その子供が襲われる」

「!!」



驚き、一護がルキアに聞き返そうとする、が



「「――――――っ!」」



何かを察知したように振り向く二人。

視線は公園の中に。



「うわあああああっ!!」



直後、子供の叫び声が公園に響き渡る。

視線の先には声の発生源―――先ほど話題に上がった子供が、蜘蛛みたいな形を取った『(ホロウ)』に襲われていた。

咄嗟に、一護は背中に背負った斬魄刀を引き抜いて『(ホロウ)』に斬りかかろうとする。



「待てっ!!」



しかしそれを制止する声が、よりにもよってルキアの口から発せられた。



「助けるのか? “赤の他人”だろう」

「な…何言ってんだてめぇ!? 他人でも目の前で襲われてんのに、助けないなんてできるわけ」

「目の前だろうが! どこか遠くだろうが! 『(プラス)』が『(ホロウ)』に襲われているという事実に変わりはない!」

「あうっ!」



恐怖で足がもつれたのか、襲われている少年は転んでしまう。



「っ!」

「助けるな!」



振り向いて駆け出そうとする一護を、ルキアが制する。



「今ここでその子供を助けても、貴様が死神としての己を自覚しなければ同じこと! 目の前で襲われているから助けたいだと!? 甘ったれるなよ!!」



都合のいいことを言うな、というルキアの言葉が、ぐさり、と一護の胸に言葉の刃となって突き刺さる。



「死神は全ての霊魂に平等でなければならぬ! 手の届く範囲、目に見える範囲だけ救いたいなどと都合良くはいかぬのだ!」

「―――っ!」

「半端な気持ちで、その子供を助けるな! 今そいつを助けるというのなら………他の全ての霊も助ける覚悟を決めろ!!」



ルキアとしても、今すぐにでも助けに駆けつけたいのだ。

が、その衝動を、震える手と共に必死で抑えつける。

弱っている彼女では何も出来ることはないし、一護に自覚を持たせるためには出て行くわけにはいかない。



「どこまでも駆けつけ―――その身を捨てても助けるという覚悟をな!」



―――――身を、捨てても



(………そうだ……俺は)



昨日の情景―――ルキアが一護を庇った姿が脳裏に蘇り、踏ん切りがついた一護は少年を助けようと斬魄刀を強く握った。









 









 








 
(………遅いな。 あの程度の『(ホロウ)』なら、力押しでも楽に片付くのに)



屋上へと続く階段の踊り場で弁当を広げながら、祐一はとある方向―――弓沢児童公園のある方角―――を見ていた。

感じたのは一護の霊圧と、雑魚レベルの『(ホロウ)』の霊圧。

彼らのやり取りまでは察知できなかった祐一は、接触してからの時間が経ちすぎていることを怪訝に思っていた。



「まあ、素人だから、しょうがないと思う」

「…それもそうだな」



祐一の心情を察した舞がそうフォローすると、祐一はそれで納得することにした。

それから程なくして、『(ホロウ)』の霊圧が消滅する。



「それよりも問題は香里のほう。―――“鎖”の具合からみて、今日明日くらいから徹夜かも」

「ああ、今までよく持ったほうだな。 まったく、睡眠不足はお肌に悪いんだがな」

「何で祐一が―――って、“ユウナ”?」

「そ。 愚痴愚痴、ついでに真琴姉も参加してくるに違いない」

「ご愁傷様」

「くそ…他人事だと思いやがって」

「だって、他人事」



恨みがましく睨んでくる祐一を無視して、舞はお弁当のタコさんウィンナーに手を付ける。

常人の目に止まることのない速度で動いたそれは、なぜか(・・・)祐一の弁当の中のタコさんウィンナーめがけて突き進む。

だが、そうはさせまいと祐一の箸が舞の箸を掴んで止める。



「む」

「甘い」



一度箸を引く舞だが、今度はフェイントも入れながら再びタコさんウィンナーを目指して箸を向ける。

駄菓子菓子―――だがしかし、それに翻弄されることなく的確に祐一は舞の箸を弾く。



「ふっ…!」

「ぬっ!?」



とはいっても全てを弾けるわけではなく、二、三個おかずを持っていかれる。

そこで祐一の保有スキル“負けず嫌い”が発動。



「ただでは転ばん!」←祐一:ひょい、と軽快な動きで舞のシュウマイを攫う。

「――っ!」←舞:咄嗟に攻撃に使わなかった左手で防ごうとするが、暗黙ルール“手は箸を持っているほうのみ使用可能、使用する箸は一膳”により手が出せずに歯噛み。



おかずを奪う時に生じた隙を突いて、逆に舞のおかずを奪う。



「………」



今度は舞が、保有スキル“負けず嫌い”を以下食事終了までエンドレス。



「………………………………………はぁ」



そんな二人の上級生と一緒に食事を取りながら、その様を客観的立場から見ていた一人の女子生徒は、深く深〜く溜め息をつきながら昼食を再開するののだった。









 









 









 









 
To Be Continue.....









 









 









 









 


ひとこと

これで更新のお茶を濁してみたり。

『神の影』以上に不定期ですので、続きは反応次第。





BLEACH主軸かな?
美姫 「みたいよね」
意味深な祐一たちの会話からすると、香里に何かが起こるみたいだな。
美姫 「今のところ、一護の事情を知っている事は秘密みたいだから、何か起こるかもね」
いやー、次回はどうなるんだろう。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る