『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』
第四符『(下心+浮気)×愛人=恋人!!?』
宝探し騒動からはや二週間。すでにあの騒ぎのほとぼりも冷め、そろそろ2−Aの生徒も新しい刺激を求め始めている。
しかし、あれだけの騒ぎがあった上に、その罰則の厳しさも相成って、さすがに誰も騒ぎを起こそうとしない。
まあ、あの件については悪ふざけが過ぎただけなのだが。
「たーいくつだなぁ・・・。ねえ、美砂ぁ、何か面白いことないー?」
放課後、桜子が実に退屈そうに、実に物憂げに円にいった。しかし円はそうそう何もあるわけないよと桜子同様に退屈そうに答えるだけだ。
しかし、そんな雰囲気なのは二人だけではない。教室自体がそんな雰囲気なのだ。前回の件であまりに騒ぎすぎたために、
どうも日常になじめないのだ。と寝ればここは彼女の出番だ。
「和美ちゃーん。何か、ネタはないー?」
風香が机に寝そべって和美に聞くが、和美は
「今のところはないねぇ。っていうか、最近、そういう系の話がないんだよねぇ・・・。」
と、最近、不調であるという。が、
「ま、そこまでいわれたら動かないわけにはいかないよねぇ・・・。よし、フィールドワークにでもいってきますか。
鳳くん、忍ちゃん、手伝って〜。」
和美はそういって二人を教室の外に引っ張り出した。
「あの三人に任せて大丈夫でしょうか・・・・。」
その姿をみてのどかが心底心配そうにつぶやく。
「大丈夫だと思いますよ。そんなに騒ぎのネタなんか転がっているわけないでしょうし。」
さよは三人の出て行ったドアを見ながらのどかに言った。のどかはだといいんですけどとやはり不安げに答える。
確かに、のどかのような性格では、前回の件はオーバーワークはなはだしいだろう。
「やれやれ。最近あれだけ騒いでいたにもかかわらず、もう騒ぎたいとはな。全くもって気がしれん。」
そのやり取りを見ていたエヴァが嘆息しながらつぶやく。
「妙に凝り固まっているより、生き生きしているほうがいいんじゃないか?高校生活は一度きりなわけだし。」
恭也はそんなエヴァに言ったが、やはりどこ吹く風。まあ、エヴァ自身、永遠に近い命を持っているわけだから、
あまり実感がわかないのだろう。
「ふん。まあいい。恭也、今日はどうするんだ?」
エヴァはすでにそのことには興味を失っているらしく、恭也のスケジュールを聞いてきた。
「ん?あ、ああ。今日は美由希に稽古をつけてやる日だから、すまないがエヴァのところにはいけそうにない。」
恭也はこう見えても小太刀二刀御神流のほぼ師範クラスの腕前だ。また、妹である美由希も同じ流派を修めようとしているため、
恭也が美由希の師匠ということになる。エヴァもそのことは重々承知している。
「そうか。なら、私は先に帰るとしよう。茶々丸も今日は葉加瀬のところで点検の日だし、たまの一人だ。十分に満喫しよう。」
エヴァはそういうとかばんをもって一人教室を後にした。恭也もエヴァが出て行ってしばらく勇吾と話をしていたが、
20分ほど経って自らの帰宅の途に着いた。
東京、新宿。豪華ではないものの、それなりの値段がするようなホテルも数多く存在する。また、歌舞伎町は日本一の繁華街。
朝も昼も騒々しく、夜は夜で間は一風変わった騒々しさを兼ね備えている。その中でも一際目立つ豪華なホテル。
その一室に意外なくみあわせで意外な人物がいた。
「あ、さよちゃん?私、私。うん。今日は裕奈のところにとまるから、帰れそうにないのよ。うん。そう。
あ、じゃあ、いつものところに鍵を置いといて。うん。ありがとー。」
そういって電話を切った女性はベッドの上で体にシーツを巻いているものの、その下には何も着ていないようだ。
「どうだった?」
そういいながら一人の男性がシャワーを浴びていたのだろうか、ぬれた髪を拭きながらベッドに腰掛けた。
「うん。大丈夫みたい。明日、出かけるって言ってたから鍵だけいつものところにおいといてって伝えただけ。」
その女性はベッドからのそりと起き上がるとその男性の隣に腰掛ける。
「でも、いい加減、この関係もどうにかしないといけないんじゃない?話してるといつ『鼎くん』って呼ぶかわかんないし。」
その女性は男性を鼎と呼んだ。
「確かに。俺もいつ『和美』って呼ぶかわかんないね。」
鼎はその女性を和美と呼んだ。驚くべきことにそこにいたのは鼎と和美だったのだ。
「でもさぁ、私たちっていい加減に長いよねぇ・・・。鼎くんがさよちゃんと付き合いだしたのが中等部の三年の中頃で、
それから少しして私とも付き合い始めたわけだから・・・・。かれこれ二年かぁ。」
和美の言葉からすると二人の関係、鼎とさよが付き合い始めたころからすでに始まっていたらしい。
つまり、約二年、鼎は浮気を続けていたらしい。よくもまあ、ばれなかったものである。
「そうだよな。うーむ・・・。さよにも伝えなきゃならんのだが、ことがことだけに難しいよなぁ・・・・。」
どうやら、鼎はこのことをさよに伝えるか伝えないか考えあぐねているようである。
「鼎くんの場合、私もさよちゃんも本気で好きだっていう点で始末悪いから。私はさよちゃんがいてもいいんだけど、
さよちゃんがなんて言うかわかんないしねぇ・・・。」
和美はやれやれ、鼎くんも、女ったらしだからねぇ・・・。とつぶやきながら立ち上がると体に巻いていたシーツをはずした。
「お、おいおい!何も着てないなら、いきなりはずすな!」
鼎は顔を赤らめて目をそらせていった。
「なーにいってるのよ。そんなに恥ずかしがることないじゃない。さっきまで見るどころか、触ってたんたんだし、
夜はまだまだ長いんだよ〜。」
和美はそういいながらシャワールームに向かう。
「ま、そういうウブなところがかわいかったりするんだけど。」
和美はそうい残してシャワールームに姿を消した。鼎はふぅと息をつくとそのままベッドに倒れこんだ。
「さて・・・・。まじめにどうするか、そろそろ考えなきゃいけないよな・・・・。」
鼎はそうつぶやくと目を閉じた。とはいっても、眠ったわけではない。夜は長いのだ。眠れるわけがない。
眠らせてもらえるわけがない。
同じ東京でもところ変わって武蔵野。ベッドタウンとして有名だが、やはりここも東京。夜とはいえそれなりの通行量、
人間が集まっている。そのいくつもの豪華なマンションが立ち並ぶ中、平凡なマンションに男女の姿があった。
「ですが。」
女性のほうが突然話を切り出した。
「どうした?」
男性はなんだいきなりという表情で尋ねる。
「もしもマスターにこのことがばれると、恭也さんの命が危ないのでは・・・・。」
そこにいた女性はなんと茶々丸だったのだ。しかも、恭也と一緒にいる。
「確かに、エヴァにばれたらなにをされるかわからないな。」
恭也も真剣にそう返した。確かに、こんなところでしかも、茶々丸と二人きりでいるということがばれたら最悪
血祭りにあげられかねない。
「でしたら・・・・」
茶々丸が何か言おうとしたが、それを恭也の言葉がさえぎった。
「茶々丸の頼みだ。無下にはできないさ。それに、もし茶々丸に好意を持っていなければこんなことはしない。」
恭也はそういうと茶々丸を抱き寄せた。
「恭也さん・・・・。いえ・・・・恭也・・・・」
抱き合った二人は満月の光の差し込む中、長い口付けを交わした。
ところ変わってエヴァ宅。エヴァはそこで久しぶりに魔法書を読んでいた。今日は茶々丸も恭也もエヴァの元にはいない。
そのため、時間をもてあまして暇つぶし程度に読んでいるのだ。と、エヴァは一冊読み終わったのか立ち上がると本棚にその本を戻し、
そのまま二冊目を取り出すと、再びソファーに戻ろうとしたが、足に何かが当たり、それに目をやった。
「これは恭也の・・・。」
そこにあったのは恭也の稽古用の木刀だった。昨日来たときに忘れていったのだろう。
「全く。これでは妹に稽古をつけるどころの騒ぎではないだろう。仕方がない。もって行ってやるか。」
エヴァはやれやれとため息をつくと、そのまま自分の影の中に沈み込んでいった。影を使ったゲートである。
まあ、エヴァにしてみれば初級呪文と同じぐらい簡単な呪文である。当然であるがすぐに高町家の前に着く。
「さて。インターホンとやらは・・・・」
エヴァはインターホンを探すが、どこにも見当たらない。仕方ないので、ドアをたたくことにした。しかし、聞こえないのか、
誰も出てくる気配はない。しかし、インターホンが見当たらない以上、これ以外方法がない。しかし、いくらたたいても出でこないので、
エヴァはどうしたものかと考えあぐねていた。と、ドアが勢い欲開いた。
「あれ・・・?誰もいない・・・・。」
そういってエヴァよりも上できょろきょろと周りを見回しているのは美由希だ。おかしいなという顔で見ているが、
エヴァに気づく気配はない。
「おい・・・・おまえ、恭也と稽古に出てるんじゃなかったのか?」
エヴァはここだと美由希に言うよりも先に意外な顔で訪ねた。
「あっ、エヴァさん。こんばんは。」
美由希はやっとエヴァに気づいて挨拶をした。しかし、エヴァにとってそんなことはどうでもいい。
それよりも、稽古をしているであろう美由希が稽古をせずに出てきたのかということのほうが大事である。
エヴァはもう一度、稽古はどうしたと美由希に尋ねた。
「え?今日は恭ちゃん、用事があるからって夕方ぐらいから出て行きましたけど・・・。エヴァさんのところに行ってたんじゃないんですか?」
どうやら、恭也は出かけているらしい。しかも、聞くと、いつも金曜日は稽古を休みにして出かけるらしい。
美由希は今までエヴァのところにいると思っていたようである。エヴァも金曜日は妹の稽古だと思い込んでいたため、
なんら不信感は持っていなかったものの、美由希がi言っていることが正しければ、恭也は自宅にも、エヴァにも嘘をついていたことになる。
(そういえば、茶々丸も金曜は葉加瀬のところにしょっちゅう行っているな・・・。)
エヴァはそう思うと引きつった笑みで美由希に礼を言い恭也に木刀を渡してほしいと木刀を美由希に渡すとそのまま高町家を後にする。
「ほほう・・・・。私というものがありながら・・・・・。そうか・・・・そうか・・・・・ふふ・・・・ふふふ・・・・・。」
エヴァは一人になるとぶつぶつとそうつぶやきながら一人、人目のつかない公園にやってきた。そこで誰かに電話をかけ終わると、
「ふ・・・・ふふふふ・・・・」
エヴァは不気味に笑いながら再び自分の影に沈みこんだ。・・・・・恭也の命日まで後数分(?)。
「なあ、茶々丸。少し聞きたいんだが、これって、いったいなんの役に立つんだ?月村たちはメイドロボでも作るつもりなのか?」
恭也はベッドで横になっている茶々丸に尋ねたが、茶々丸はわかりませんと簡単に答えた。
「じゃあ・・・・」
と、恭也が何のためにと聞こうとしたそのとき、ドアが勢いよく開けられた。その突然の出来事に茶々丸もベッドから起き上がり、
ドアの先を見る。その先にいたのはマジ切れのエヴァだった。恭也もその姿を見て一気に体温が奪われていくのを感じていた。
エヴァは一歩部屋の中に入るとその状況を見て一言。
「・・・・・楽しそうだな・・・・・。」
一言だけだが、十分な威圧感。さすがの恭也も今のエヴァの怒りようは半端ではないと身をもってひしひしと感じていた。
「ま、マスター・・・・こ、これはその・・・・。」
さすがに、あの茶々丸ですらあわてている。しかし、そんな茶々丸を気にせず淡々と続ける。
「葉加瀬に聞いたが、調整は月一のようだな。そんな嘘をついてまで私の恭也といったい何をしていたのか、是非聞きたいな。」
エヴァのその言葉に恭也が驚いた。
「嘘だったのか?」
恭也は茶々丸に聞いたが、
「恭也は少し黙ってろ。」
エヴァにしゃべるなといわれてしまった。どうやら、かなりキているらしい。
「まあ、何をしていたかは状況を見ればわかる。だが、ひとつ教えろ。おまえ、恭也のことが好きなのか?」
エヴァは恭也を無視して茶々丸の前に立つとそう尋ねた。
「・・・・・ハイ・・・・。」
茶々丸は小さな声で一言そう答えた。
「なぜ好きになった?」
エヴァは追及の手を緩めない。茶々丸は顔を赤らめながら
「あのとき・・・・。」
茶々丸は一言そう答えた。
「そうか。あのときか・・・。」
『あのとき』。それは恭也がエヴァを助けたとき。いや、それだけではない。
恭也はエヴァと恭也を逃がすために一人残った茶々丸を助けたのだ。そのとき、恭也は左膝を砕いた。
しかし、それでも、茶々丸も助けて俺も助かると最後まであきらめなかった。その結果、恭也の、エヴァの、茶々丸の今があるのだ。
当然、茶々丸がそのときから恭也に好意を寄せていたわけではない。それから先、恭也とエヴァとともにいる間に恭也の実直さ、
その心の強さに惹かれていったのだろう。しかし、それらすべてを含めて、『あのとき』が起源であるのに違いない。
「お前の気持ちはわかった。なるほど、そうか・・・。」
エヴァは二、三度うなづくと恭也の前に立った。
「まあ、お前たちが何をしていたかは大体わかった。恭也のことだ、茶々丸に好意を持っていなければそんなことはすまい。
ということで、恭也。ちゃんと責任を取るように。」
恭也はそういうエヴァを見てわかったとしか言うことができなかった。さすが吸血鬼。
恭也ですら黙らせるプレッシャーをかもし出している。
「そういうわけだ、茶々丸。次からは抜け駆けは無しだからな。」
再び茶々丸のほうを向いてエヴァが言った。茶々丸はありがとうございますとエヴァに頭を下げる。
「さて。そういえば今日は金曜日だったな。土、日とまだまだ時間はあるわけだ。たっぷり楽しませてもらうぞ。恭也。」
エヴァはそういうと恭也の体がソファーから浮かび上がってベッドの上にゆっくりと下りた。その後、どうなったかは言うまでもない。
翌日、鼎と和美は東京から学園に戻ってくると、そのまま和美とさよの部屋に向かった。女子寮ではあるが、出入りは結構自由で、
よく女生徒が彼氏を連れ込んだりもしている。かく言う鼎も何度も入ったことがある。
今回、さよが外出しているということなので和美についていくことにしたのだ。二人は仲睦まじく、手をつないで部屋まで歩いてきた。
完全に他の生徒に対するアピールも含まれている。なぜそんなことをしているかというと、今朝話し合った結果、
いい加減に二人の関係をさよに打ち明けようということになったのだ。
「じゃあ、さよちゃんもまだいないだろうから、中で待ってようか。」
部屋の前で隠してあった鍵を使ってドアを開けた。
「あ、おかえりなさい。和美ちゃん、鼎くん。」
が、しかし、部屋の中にはさよがいたのだ。いないものと思っていた二人は驚いて状況把握に時間をとってしまった。
しかも、さよの言葉をよく考えてみると、まるではじめから鼎と和美が一緒に帰ってくるとわかっていたような感じを受ける。
鼎と和美はついに意を決してさよのいる部屋の中に入っていき、三人で小さなテーブルを囲んだ。暫く沈黙が続いた。
やはり、ことがことだけに言いにくいことこの上ない。
「あー・・・・。さよ、実は・・・・」
意を決して鼎が切り出そうとしたが、やはり言いにくいのか、そこでとまってしまった。
「えっと、やっと話してくれるんですよね?二人の関係。」
黙りこんでしまった鼎の代わりにさよが言った。しかし、その言葉に鼎たちは驚いた。さっきといい、今といい、さよの言葉、
まるではじめから二人の関係を知っていたかの様な言葉振りである。
「さよちゃん、何時から気付いて・・・。」
和美がまるで始めから知っていてそれでいた気付かない振りをしていたかのようなさよに驚きを隠しきれない表情で聞いた。
「何時からって・・・私が実体化したのは鼎くんから魔力をもらったからで、そのために感覚を共有してるから、
二人の関係は始めから知ってますよ。」
さよはにこやかにそう答えた。しかし、その表情は怒って笑っているという感じはまったく受けない。
「ふぇ?そうなの?」
魔力を渡した本人である鼎は実に意外そうな、えっ、そうなの?という表情で言った。和美はし、知らなかったの?
半ばあきれ気味に鼎に聞いた。しかし、鼎は知らなかったときっぱり答える。
「でも、二人が隠したがっていたみたいだから聞かなかったんです。二人が言ってくれるまでは気付かない振りをしようって。」
さよはにこやかに言った。しかし、普通この状況、怒らないはずがないのではなかろうか。鼎も気になってそのことを尋ねる。
「私のお父さんにもお母さん公認の愛人が何人もいましたし。ですから、ある意味これも当然じゃあないんですか?」
さよは何でそんなことをという表情のまま答えた。
(そういわれれば、さよちゃんの時代って、普通に愛人がいたりする時代だっけ・・・・。たまにだけど、ずれてるよなぁ・・・・。)
和美はなるほどとうなづく。確かに1930年代、地主などの有力な家庭の家長には普通に愛人がいた。
それすら今とは決定的に違うのだが、それ以上に驚くべきことなのは、それが正妻の公認であることがあるということだ。
また、家長も今のようにコソコソせず、堂々と愛人と付き合っていたし、妻のいる家に愛人を住まわせるものもいたのだ。
さよもそういった家に生まれなのだろう、そういうことが当たり前と思っているのだ。
「あーと・・・・でも、いいのかさよ?」
現代っ子の鼎がさすがにそう聞いたが、さよははいと答えるだけだ。しかも、何でそんな質問を?という表情で。
「ということで、和美ちゃんも鼎くんの恋人ってことですね。これからもよろしくお願いします。」
さよはそういって和美の手をとる。予想していた事態と違う展開に和美の毒気を抜かれてこちらこそといった。
「えっと・・・・これでよかったのか・・・?」
鼎も想像とは違う展開に少しついていけてない。さよはこれでよかったんですよと鼎の手をとる。
「一人より二人のほうが楽しいし、幸せなんですから、二人より三人のほうがもっと楽しくて、もっと幸せになれますよ。」
さよは笑顔で鼎に諭した。鼎はそうか、そうだなと。軽く笑って答えた。
「あ、そうそう。前からひとつ言いたかったんですけど、鼎くんのこと、『鼎』って呼んでいいですか?」
さよが鼎にそう聞いた。鼎はもちろん。あ、和美もそう呼んでいいよ。と答える。
「じゃあ、私もさよちゃんのこと、『さよ』って呼ばせてもらっていいかな?」
和美がそういってさよの手を握る。
「それじゃあ、これからは『和美』って呼びますね。」
そういいながらさよも和美の手を握り返す。
「万事解決・・・・ってことでいいのか・・・?」
修羅場を想定していた手前、予想外の結末に鼎はちょっと拍子抜けしたようだが、これでいいんだという安堵感も同時に感じていた。
「と、言うことで、まだまだ土曜日ですし、明日も日曜日なんで、満足いくまで楽しみましょうね。」
さよはそういうと鼎の手をとる。
「ちょ、ほ、本気でいってるのか!?まだ昼間だぞ!!しかも、明日も!?俺を殺す気か!!」
鼎はあわててその手を振りほどこうとするが振りほどけない。
「いいじゃない。時間はたーっぷりあるんだし、新しい関係の始まりなんだから親睦を兼ねて、ね♪」
和美も乗り気で鼎の手をとる。
「和美は知らないんだよ!!さよの激しさを!!!さよを一日以上も相手してたらマジで死ぬって!!!」
鼎の叫びは、しかし、聞き入れられることはなかった。そのままベッドに押し倒されると、後は・・・・いうまでもないだろう。
月曜日、2-A教室。やはりいつもと同じようになんとなくだらーっとした雰囲気が漂っている。
しかし、それどころではない生徒が三人いた。鼎とさよと和美だ。鼎は机に突っ伏して死んだように眠っている。
しかも、その顔には精気がない。まるで誰かに吸い取られたかのように。
そして、和美とさよは床にシートを敷いて桜子と美砂に腰をマッサージしてもらっている。
「いたたたた!!!もうちょっとやさしくしてよ!!」
マッサージをしてもらっている和美があまりの痛さに叫び声をあげた。
「いったい何したのよ?そんなになるまで・・・。」
そんなになるまでいったい何をしたのか理解に苦しむ美砂が和美に尋ねたが、さすがになんで痛めたかいえるわけがない。
「あうう・・・さすがに、やりすぎましたぁ・・・・。」
さよも涙声でそういった。どうやら二人とも張り切りすぎたようだ。ちなみに、鼎は今朝松葉杖をついて登校した。
歩くこともままならないほど腰が痛いらしい。
「まったく。あいつらも、少しは考えてすればよかったろうに。なあ、恭也。」
エヴァはため息をつきながら恭也のほうを見る。が、その恭也も鼎ほどではないがやつれていて、机に突っ伏して眠っている。
「やれやれ。あれぐらいでへばるとは情けない。もっと鍛えねばならんか。」
エヴァはまだまだだなとため息をついて恭也を見る。薄笑みを浮かべて。
昼休み、恭也と鼎は屋上にいた。普段は彼女と一緒に食べるのだが、鼎が恭也を屋上に引っ張り出したのだ。
「冗談抜きで死ぬかと思った。」
鼎はまじめな表情で恭也に言う。恭也も俺も今回ばかりは死ぬかと思ったと答える。
「でも、覚悟を決めないと。」
鼎はそういうとパンの入った袋からマムシ印の栄養剤を二本取り出し、一本を恭也に渡す。
「すまないな。」
恭也はそれ受け取ると一気に飲む。
「まあ、こういうことはそうそうないとは思うが、たまにでもつらいもんだ。」
恭也は空き瓶をくずかごに投げ入れて鼎にいった。
「確かに、いいにはいいんだけど、さよの相手はいくらあがいても一日3回が限度だ。あいつ、マジで激しいから。」
鼎はそういうと恭也のように空き瓶を投げ入れようとしたが、空き瓶はぜんぜん違うところに飛んでいった。
鼎はやれやれとベンチから立ち上がって律儀にそれを拾うとゴミ箱に入れる。
「まあ、何だ。その・・・・・がんばるか。」
鼎は恭也のほうを向いてそういった。恭也もそうだなとベンチから立ち上がる。
「あ、いましたー。鼎ー、一緒に昼ごはん、食べませんかー。」
と、屋上のドアが開いてそこからさよが入ってきた。いや、さよだけではない。和美とエヴァと茶々丸が入ってきた。
「たまには一緒に食事をとるのも悪くはなかろう。」
エヴァはそういいながら恭也の座っていたベンチに座る。茶々丸はその前にシートを引いて恭也に進める。
「ほら、鼎も座って、座って。」
和美は鼎の後ろに回るとシートまで背中を押して座らせた。
「ま、いいよな、こういう形でも。」
鼎は恭也に向かって微笑んでいった。
「ああ。これもひとつの形だ。」
恭也もにこやかな顔でそう答える。空には雲ひとつなく突き抜けるような青空が広がっていた。
あとがき
(フィーネ)さて、今回は怪盗Xが浩さんのとこに行ってるから、私たちがあとがきね。
(フィーラ)鼎たちもやるわねぇ。若い若い。
(フィーリア)そういう問題じゃないと思うんだけど・・・。
(フィーネ)そうね。普通、愛人なんか認めないよね。
(フィーラ)でも、確かにさよちゃんが生きてた時代にはそういうのが当たり前だったかもね。
(フィーリア)いや、そこじゃなくて・・・・。
(フィーネ)じゃあどこ?
(フィーラ)まあ、それはおいといて。
(フィーリア)お、おいといていいの?
(フィーネ)オッケーオッケー。っていうか、今回話題がないわねぇ。
(フィーラ)じゃあ、怪盗Xが書こうとしてるSSについては?
(フィーリア)これ以上、かかないと思うけど・・・。
(フィーネ)まあ、書かないでしょうね。大体、最近、HOLY CRUSADERSも書いてないんだし。
(フィーラ)人の死なないSSのほうが面白くなってきたのかも。
(フィーリア)多分、そうかな。
(フィーネ)じゃあ、そろそろ次回予告ね。
(フィーラ)次回、第五符『さよと和美と恭也と契約(パクティオー)』!!!
(フィーリア)次回は契約(パクティオー)の話ね。
(フィーネ&フィーラ&フィーリア)乞うご期待♪♪♪♪♪♪
え、えっ!?
美姫 「怪盗Xさん、本人が来るの!?」
ど、どうしたら良いんだ?
美姫 「わ、私に聞かれても」
そ、それもそうだよな。えっと、とりあえず、剣技禁止な。
美姫 「……えっ!?」
何で、そんなに意外なことを言われた、って顔をするんだ?
美姫 「いや、だって」
禁止と言ったら、禁止。
美姫 「はいはい、分かったわよ」
ピンポ〜ン
とか言っている間に、来たみたいだな。
美姫 「開いてるわよ〜」
怪盗X 「どもども〜、お邪魔します」
いらっしゃい〜。
美姫 「で?」
怪盗X 「で? と聞かれましても」
その手は何だ、その手は?
美姫 「えっ!? お土産ないの」
催促かよ!
怪盗X 「勿論、ちゃんと持って来てますよ」
すいません、すいません。
美姫 「気にしなくても良いわよ」
お前が言うな!
怪盗X 「あははは〜。後書きのまんまですね」
美姫 「まあ、それはね」
うぅぅ、察して下さい。
怪盗X 「分かりますよ〜。僕も、あの三人には……」
美姫 「さーて、お茶でも淹れよう〜」
…………。
怪盗X 「…………」
美姫 「あれ? もう終ったの?」
もう、良いです。シクシク。
怪盗X 「強く生きましょうね、お互いに」
美姫 「まあ、良いけどね。所で、この次はどんなお話になるのかしら?」
怪盗X 「それじゃあ、この辺で…」
ああ、お疲れ様です。
美姫 「ちょっと、待ちなさいよね。さっき、来たばかりでしょう」
怪盗X 「いえ、その、何と申しましょうか。そう! 用事です、用事を思い出しまして!」
美姫 「そんな、とってつけたような言い訳、通じる訳ないでしょう」
怪盗X 「あ、あはははは〜」
美姫 「まさか、まだ未定とか言わないわよね〜」
怪盗X 「えっと、えっと。浩さん〜」
わっわっわ。お、俺に泣き付かれても…。
美姫 「浩も同罪ね」
な、何で!? そ、それに剣技は禁止って…。
美姫 「ええ、剣は使わないわよ、剣はね」
はぅっ! しまった!
に、逃げるんだ、怪盗Xさん!
怪盗X 「は、はい!」
美姫 「逃がさないわよ!」
落ち着け、美姫! 相手は、一般人!
美姫 「そんなの知らないわよ! えいえいえいえい!」
ぐげ、ぐが、げは、ごほっ!
怪盗X 「ひ、浩さん!」
お、俺のことは、……い、良いから、逃げるんだ!
俺の犠牲を無駄にするな!
怪盗X 「う、うぅぅぅ。ありがとう、浩さん!」
美姫 「あ、こら、逃がさないわよ!」
ここから先へは行かせん!
どうしても、行くと言うのならば、俺を倒し……ぐらばぁ!
美姫 「倒したわよ。じゃあ、後を追うから」
…………せ、せめて、最後まで言わせてくれ。
美姫 「って、人の足を掴むんじゃないわよ」
ぐぬぬぬぬ。せ、せめて、逃げるまでの時間ぐらいは……。
美姫 「って、何処に触ってるのよ!」
……う〜ん、天国?
美姫 「…………死ね!」
ぐがぁぁぁあああああああっ! じ、地獄だったか!?
美姫 「はぁ〜、はぁ〜。ちっ、逃がしたわね。まあ、良いわ。その分、浩に……。ふっふっふ。
と、その前にフィーネたちに連絡して、っと。くすくす。これで良しっと。
それじゃあ、また次回でね〜。……無事だったらだけどね」