『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』





 


          第六符『カウントダウン!!!麻帆良祭まで一週間!!!』



「ちょっと、いい加減にしてよ!!!さっさと何するか決めないと本当に麻帆良祭に間に合わないよ!!!」

 麻帆良祭を一週間後に控えた2−Aの放課後。何の因果か学級委員になってしまった忍が教壇で大声を上げた。

すでに学園は麻帆良祭ムード一色。どのクラスも麻帆良祭の準備に激しく追われている。

しかし、2−Aだけはいまだ何をするか決まらずこうして議論が続いているのだ。別に、誰しもやる気がないわけではない。ただ・・・・。

「だからぁ、男の子が女装してゲイバーがいいって!!」

「そんなのじゃお客が入んないって。このクラス、女子のレベル高いんだから、ネコミミメイド喫茶のほうが儲かるってば!!!」

「それよりもコスプレ喫茶だよ!!!前できなかったから、今度こそやろうよ!!」

「待て待て!ここは王道の劇だろう!!」

 と、この有様。これが約一週間続いている。全くもってまとまりがないクラスだ。

いうまでもないが、最後のひとつの意見を除いて順番に風香、桜子、文伽の発言だ。

「もう!!いい加減、多数決にするよ!!って、何ではじめっからこうしなかったのよ私は!!!!」

 とうとう忍が切れた。あまりに意見がまとまらないことにヒステリーを起こした忍は教卓を思いっきり手で叩く。

その剣幕に教室が今までの喧騒がうそのように静まり返った。

「これで決まったら文句なし。誰がなんと言っても、これで終了。それでいいね。鳴滝姉妹、桜子!!」

 忍のあまりの剣幕に風香も文伽も桜子も思いっきり引いている。それもそうだろう。一週間もこんな議論を続けられているのだ。

進行役としてのストレスもかなりのものになるはずだ。それからすぐに多数決がとられた。当然だが、状況が状況。

多数決に参加しないものはいなかった。

「じゃあ、ネコミミメイド喫茶に決定!!男子は裏方で教室の改装!!女子はメイド服の手配とメニューの手配!!さっさとする!!!」

 切れたままの忍がそのまま指示を飛ばす。しかし、主に男性人の不満の声が上がる。しかし、今の状況の忍にそれはタブーだった。

「ガタガタ言うな!!!!さっさと準備に取り掛かる!!!!!!!」

 忍の堪忍袋のそこが抜けた。大声とともに黒板を思いっきり殴りつけた。忍もまがいなりにも吸血鬼の子孫。

理性を失ったその一撃で壁にたてつけられているはずの黒板が外れて床に落ちた。その光景に教室は水を打ったかのように静かになった。

「よ、よーし、早速準備を始めよう!美砂と円と私は今日中に教室のデザインを考えるわよ!

本屋ちゃんとさよちゃん、木乃香ちゃんはメニュー担当、残りは服の担当で!ささ、早速動くよ!!」

 桜子のその言葉が起爆剤となって再び2−Aに活気が戻る。こうなると後は早い。

まとまりにくいが、一度まとまるとその行動力たるやすさまじい。一瞬のうち全生徒が動き出して今できること、

さくさくっと円たちが済ませたテーブルの製作や机の運び出しを始めている。そしてすぐに材料が足りないだの、脚立がないだの、

机運び出すの手伝えだの、釘がないだの、木がないだのと教室内に怒号が飛び交ってい始めた。

「まったく・・・。一から十まで騒がしい連中だ。」

 その一部始終を見ていたエヴァがやれやれとため息をつく。しかし、状況が状況。

手伝いたくなくとも巻き込まれてしまうのは目に見えている。

「まあ、一年に一度だ。それもいいだろう。」

 エヴァの隣に立っていた恭也もそういうと喧騒の中に入っていく。

「とはいえ、私にはわからんがな。」

 この言葉はしかし、エヴァも和美たちに捕まって服の調達にいくことになってしまう。





 翌日。桜子達の店舗イメージが完成し男子生徒は作業に躍起になっている。それもそのはず。三人のイメージ店舗は正直、

麻帆良祭当日に間に合いそうにないデザインなのだ。

「おい!そこの机、一回外に出してくれ!!バーカウンターの邪魔になる!!」

「こんなところにダンボールおいたの誰だよ!!!さっさとかたずけろ!!」

「赤のペンキなくなっちまった!!誰か買ってきてくれ!!!」

「釘がねぇぞ釘が!!!」

 教室の中からは男子生徒の怒号しか聞こえてこない。状況が状況だけに女子生徒は別途避難して各生徒の部屋で自分の分の服を作っている。

「あ、恭也、釘とって。」

 その中に、当然、鼎と恭也の姿があった。鼎はテーブルの製作に携わっていて、恭也もその補佐をしている。恭也は鼎に釘を渡す。

当然、鼎はその釘を打ち付けるのだが、コントよろしく手を打ってしまった。

「いってぇ!!!!」

 加減なしの突貫作業。集中力の低下の所為か。いや、鼎のことだ。天性の不器用さで打ちつけたに違いない。

「おいおい、大丈夫か・・・?」

 指を押さえて悶絶している鼎に恭也が心配して声をかける。しかし、鼎の指、よくみると絆創膏だらけだ。すでに傷だらけらしい。

恭也は仕方ないと鼎から金槌をとると変わりにテーブルを作り始めた。鼎はありがとうというと再び指に絆創膏をはって今度は恭也の手伝いに回った。

「本当に不器用だな。」

 恭也はその指先を見て鼎にいう。鼎も自分でもびっくりだと笑いながら恭也に釘を渡す。

「しかし、そんなのでよく出る気になったな。」

 恭也はそんな鼎をみて釘を打ちながらいった。

「当たり前じゃん。和美とさよに何でもできる権利がかかってるんだから。」

 鼎はそういうと握りこぶしを作る。

「何でもできる権利って・・・・おまえ、二人の彼氏だろう。」

 恭也が手を止めて鼎にいう。それもそうだ。何の話かわからないが、鼎の頼み、さよと和美が拒むようには思えない。

「いやいや、そうでもないよ。どうしても二人に制服を着せたままシてみたいんだ。」

 鼎のとんでもない発言に恭也が間違えて自分の手を打ちつけた。鼎の発言に対する驚きと手の痛み。恭也はダブルパンチを食らっていた。

「ほら、麻帆良学園の制服ってかわいいじゃんか。あの二人が着てるのを見るとこう・・・・なんていうのかな、

専門用語で言うところの『萌え』ってやつ?ぜひともってお願いしてるんだけど、今まで首を縦に振らなかったからさ。

で、今回の件が転がり込んできた。これはもういくっきゃないでしょ。」

 邪な願望が入りまくりだ。それを聞いていた恭也もあきれるというか非難するような目で鼎を見ている。まあ、当然といえば当然だが。

「なんでだろうなぁ・・・俺としてはスク水とかブルマとかのほうが恥ずかしいと思うんだけど・・・。」

 そんな恭也を尻目に鼎が一人続ける。しかし、恭也との距離はどんどん離れていっている。

いつの間にか教室内の男子も鼎のほうをジト目で見ている。それは仕事サボるなよという非難というよりもうわぁ・・・

という引いている目だ。

「ん?恭也もしたことぐらいあるだろ。エヴァンジェリンとかだと、ゴスロリ服とか似合うんじゃない?

絡繰だと、茶道部だし、和服とかいけるかもね。っていうより、もうシたでしょ?」

 その一言に恭也の顔が赤くなった。図星のようだ。同時に、教室中の目線が恭也にも注がれる。

「うわぁ・・・・高町もかよ・・・・・・。」

「鳳はわからなくもないけど高町までとは・・・・。」

 そんなひそひそ話が聞こえてくる。恭也は違う俺は断じて違うと精一杯否定しているが誰しも信じようとしない。

「ほれ!みんな手が止まってるぞー!!手を動かす動かす!!そんなんじゃ、前夜祭に間に合わないぞー!!」

 そんな風潮どこ吹く風、腕の止まっている男性陣を鼎が叱責する。と、現実に引き戻された男性陣は再び作業に取り掛かる。

「ま、そういうわけだから。とにかく今はこっちをかたさないと。」

 鼎はそういうと再び恭也に釘を渡す。恭也は後で覚えていろよという目で鼎を見たが、それに鼎が気づいている感じはない。

その日も終日準備が続いたが完成する様子はない。麻帆良祭本番まで後、五日。すでに広大な学園内は麻帆良祭一色。

早く準備を終わらせてみて回りたいという意見の一致から学園側の許可なし徹夜作業が決行されることになった。





 一方、さよの部屋。自分のメイド服は自分で作るということで、さよも和美も自分の部屋にこもって作ってはいるのだが・・・・。

「いたっ!もー・・・あたしこういうの本当に苦手〜。」

 両手の指を絆創膏だらけにした和美がぼやいた。仮縫いはできていてメイド服の形はしているものの、まだ着ることができない。

ミシンがあればいいものの、いまどきの学生がそんなものを持っているはずもないし、学校のミシンは手芸部が使っていて、

すべて手縫いをする羽目になっているのだ。

「和美、私がやりましょうか?」

 そんな和美をみて器用に縫っていたさよが声をかけた。やはり一世代昔の女性だけあって、裁縫が上手だ。

おそらく母親にでも習ったのだろう。和美は今までは大丈夫大丈夫といっていたものの、さすがに根負けしてお願いとさよに続きを任せた。

「ほんとに裁縫上手ねー・・・」

 自分の指を刺すこともなくかなりのペースで服を縫い上げていくさよを見て和美が感心して言った。

さよはお母さんに習ってましたからとぬいながら答える。

「そういえば、鼎は本気で出るみたいだけど、大丈夫かなぁ・・・。」

 さよの作業を見ながら和美がさよに尋ねた。

「大丈夫だと思いますよ。相当自身あるみたいですし。」

 さよは袖を縫い終わってひと段落着いたところで腕を休め和美のほうを向いて答えた。

いったい何の話なのかはわからないが鼎が何かをしようとしていることだけは確かだ。

「そうだといいんだけど、鼎、本当に運動音痴だからねぇ・・・・。

むしろ、体育の時間あれだけボールが直撃したり転んだりしてなんで今まで大怪我してないのか不思議だし。」

 和美はベッドに腰掛けてため息をついて鼎の運動音痴振りを説明した。鼎の運動音痴ぶりはすさまじい

。サッカーでは蹴ろうとしても空振りしたり、ヘディングで顔面直撃は当たり前。

百メートルそうに関しては学年でもトップクラスなのだが、たいてい途中で足がもつれて転倒。

バスケットではドリブルしながら走ることができない、バレーではスパイクは当然のことサーブ、レシーブ、トスと

すべてにおいて全くできない。長距離走では体力不足で学年でも最下位。運動とは縁がないのだ。

「それもそうですね。でも、本人が出るっていってるんだし、意気込みが違いますから、案外本当に優勝してしまうかもしれませんね。」

 さよは裁縫セットを片付けながらそういった。

「それだとマズイなぁ・・・。いや、確かに優勝商品副賞のデジカメはほしいけど、

見返りに何か人としてすっごい大切なものを失っちゃいそうな気がするんだよねぇ・・・・。」

 そう言う和美の顔は複雑だ。鼎の話が事実だとすると、スク水、ブルマあたりですでに人として大事なものを失っている気もするが。

「まあ、かもしれませんっていうだけだから。今までの鼎の運動能力から考えてみると優勝どころか予選通過もできませんよ。」

 さよは少し冷酷のように見えるが、事実を口にした。

「ま、あのデジカメは自分のお金をためて買いますか。確かに、そんな都合のいい話、うまくいくわけないもんね。」

 和美も半ばあきらめたようにため息をつきながらいった。鼎は一体何に出るつもりなのか。それはいまだに明らかにされていない。





「おい、茶々丸。お前、本気でこれを私に着ろというのか?」

 エヴァの自宅でも当然のことメイド服が二人分作られていた。当然、茶々丸が作ったものであるが、

それを見たとたんエヴァが凍りついた。確かにゴスロリ服を着たこともあるが、それは恭也の頼みだったからで、

今回は全く関係ない。しかもネコミミのカチューシャつきだ。これをつけて接客しろというのだから、エヴァにしてみれば冗談ではない。

「はい。今年の麻帆良祭の出し物はネコミミメイド喫茶なので。」

 茶々丸は淡々と答えた。

「あいつら、本気だったのか・・・・。」

 エヴァは頭を抱えた。まさか本気でやるとは思っていなかったのだろう。逃げようにも逃げられない。

逃げたところで恭也に着るように言われてしまうのはわかりきっている。

「とりあえず着てみてください。おそらく寸法は合うと思います。」

 茶々丸にそういわれてエヴァもしぶしぶながらそれに袖を通す。やはり似合っている。もともと日本人ではないし、身長も低い。

メイド服を着たエヴァはさながらお人形のようだ。

「これでいいか?」

 着替えたエヴァに茶々丸が手渡したもの。ネコミミのカチューシャだ。

エヴァはそれを見て正気かと半ば信じられないといった表情で茶々丸に聞く。茶々丸は仕方ありませんとエヴァに言った。

エヴァはなぜ私がこんなことをとぼやきながらそれをつけた。そして茶々丸のほうを向いたとき、写真を撮られた。

茶々丸の手にはデジカメが。

「なっ・・・お前、何をとっている!!!」

 エヴァは顔を真っ赤にしてそのカメラを奪い返そうとするが茶々丸のほうが身長が高いので上に上げられてしまっては当然奪い返せない。

「恭也に写真を頼むといわれましたので。」

 茶々丸のその言葉はエヴァを静めるには十分な台詞だった。エヴァは落ち着きを取り戻すとそうか、

恭也が言ったのかとほっとした様子で言った。

「しかし、あいつにもそんな趣味があったとはな。」

 エヴァはメイド服を脱ぎながら茶々丸に言った。

「恭也様も男性ですので。」

 茶々丸は冷静にそう返事をした。ちなみに、エヴァは服を脱ぐ前に恭也が撮れといっていたならと

フィルムを使うまで茶々丸に写真をとらせたという事実もある。



 こうして、2−Aの麻帆良祭の準備も着々と進んでいった。学園の準備も佳境を迎え、

麻帆良祭当日に向けて生徒のボルテージも激しく上昇していった。

そして、麻帆良祭の中でも指折りに入るビックイベントの幕もまた静かに、それでいて着実と、開き始めていた。












あとがき


ということで麻帆良祭の前哨戦の第六符でした。

(フィーネ)今回は短めね。

まあな。でも、次回からはこのシリーズ初の戦いに突入だ。

(フィーラ)麻帆良祭で戦いといえば・・・

その通り!!

(フィーリア)お兄さんの本領発揮ね。

本領発揮はできないって。そんなのしたら死人が出ちゃう。

(フィーネ)今回は人が死なないのがモットーだからね。

そうそう。でも、ちょっとは痛々しくなるかも。

(フィーラ)それは仕方ないんじゃない?戦いなんだから、そのくらいは。

そうだな。でも、あんまり激しくはならないように注意はするぞ。

(フィーリア)じゃあ、そろそろ次回予告ね。

おう!!次回、ネギまちっく・ハート第七符『PRIDE〜麻帆良祭り〜@』!!!

(フィーネ)最強の生徒を決めるため、自らの武に絶対の自信を持つ猛者たちが激突する!!!

(フィーラ)ルールはバーリトゥード!!参加資格は強いこと!!!投げあり、絞めあり、武器もあり!!!

(フィーリア)最後にたっていられるのはただ一人!!!最強の称号を得るのはいったい誰だ!!!!

(フィーネ&フィーラ&フィーリア)『PRIDE〜麻帆良祭り〜』開催!!!!!



麻帆良祭に向けて盛りがる面々。
美姫 「そして、もう一つの戦いもまた…」
次回は、血湧き肉踊る?
美姫 「早く次回が読みたいわ〜」
うんうん。次回も、楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」
ではでは。



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