『ネギまちっく・ハート〜Love and War〜』






     第十帖『守護者検定(ガーディアン・テスト)・一時間目 不破かな〜Shadow Garally〜』



 眞莉紗とかなは廃校の一室、机もまだ残っている教室で互いに黒板を背にするように向かい合っていた。

かなは無造作に構えることなく影を身にまとって眞莉紗の動きを一分たりとも見逃すまいと凝視する。

一方、眞莉紗は左肩を見せる左半身にかまえ、右に持った魔剣レーヴァテインによる一撃を意識させていた。

5分ほどたったろうか、このままでは埒が明かないと思い、かなが常人では見切れない微動で事前動作を済ませ、

そして、常人にはノーモーションで飛び掛るようにしか見えない、床からかすかに浮く、すべるようなダッシュで眞莉紗に接近する。

しかし、眞莉紗はそれを見てから軽く足踏みし、一瞬でその場から姿を消した。速いとか、そんな生半可な表現が通じるものではない。文字通り、姿が消えたのだ。

(消えた・・・です・・・・。でも・・・・!)

 かなはしかし動揺することなく眞莉紗のいた場所に疾走る。瞬時に反応できる自信があるからこそ、下手に止まるより動き続けることを選んだのだ。

次の瞬間、かなの眼前に右手に持ったレーヴァテインを既に左からいつでも薙ぎ払える状態で姿を現した。

かなは構えと武器の大きさからして右から左への薙ぎ払いが初撃と読んでいたため、想定外の状態で現れた眞莉紗に少なからず驚いた。

(でも・・・・です!!)

しかし、モーション的、巨大剣から見てガードも間に合うし、避けることも造作ない。かなはガードでは自分不利で進むとかんがみ、

剣閃を避けられるだろう場所に軽く身を浮かせる。常人ではできない動きだが、かなは影を巧みに操りそれを可能にした。紙一重でなく

、十分に余裕を持った回避だったつもりだった。しかし、レーヴァテインはかなの想像以上の速度でかなのいた場所を切り裂いたのだ。

十分の余裕を持ったはずだったが、それで紙一重の回避になる。ひきつけて避けようとしていれば間違いなく真っ二つだったはずだ。

(尋常でない速度です・・・・。でも、今度はこっち・・・・)

 眞莉紗の武器は巨大すぎる大剣。一方のかなは無手状態。攻撃速度からして段違いなのは明白で、それをわかりきっているかなは体を捻りながら右腕を眞莉紗に振り下ろす。

腕とともに眞莉紗を襲ったのは大きな影。それは影であるにもかかわらず、質量を持ち、周りの机ごと眞莉紗を押しつぶした。

否、押しつぶそうとした。確かに、眞莉紗のいた場所はものの見事に砕かれ、下の階の教室がのぞいている。しかし、えぐったと同時にかなは何かに後ろからつかまれ、

そのまま後ろの壁に向かって無造作に投げ飛ばされたのだ。もちろん投げたのは眞莉紗。その大きすぎる腕でかなを鷲掴みにし、振り向きざまに放り投げたのだ。

放り投げたとはいえ尋常で無い力の持ち主。軽く壁を打ち抜き隣の教室にかなは放り出された。かなをしても相当なダメージで、

即座に起き上がるというわけにはいかなかった。

(なんて力ですか・・・・・。)

 かなが軽いといっても、人一人をまるでボールでも投げるように投擲するにはとんでもない力が必要である。しかし、眞莉紗は鬼。

それくらいできてもなんら不思議は無い。かなは手をつき立ち上がろうとした。が、かなは顔を上げて起き上がることより回避を優先させた。

壁にあいている穴はあまり大きくない上に、叩きつけるような感じで投げられた為、穴自体壁の下に近い部分に空いている。

しかし、眞莉紗はかなを見下ろすように宙に舞い、大剣を振りかぶっていた。穴から抜けてきたにしては、どう考えてもいる場所も、

大剣の振りかぶり方もありえない。かなは机があるがころがって大剣を避けようとする。やはりそれでも紙一重の回避。

しかし、剣が床に着いた瞬間、爆発した。眞莉紗の炎を操る能力によるものだ。当然、かながそれを知るよしもなく、回避しようが無かった。

いや、爆発自体が教室を吹き飛ばすほどだった為、どこにいたところで回避などできなかっただろう。かなは爆発により教室から外に放り出された。

(くっ・・・)

 さすがに相当なダメージを受けたらしく、瞬時に体勢を整えることができないかな。とはいえ、実質くらったのは投げと爆発のみ。

それから考えて一撃の重さが容易に見て取れる。かなは首を捻り、自分がついさっきまでいた教室に目を向ける。

眞莉紗がいつそこから追いかけてくるかを視認し、そして、追撃を防ごうという魂胆だ。しかし、かなの体が落下を始める前に、

空を仰ぐように宙に待っていたかなの体を、眞莉紗の持つレーヴァテインが背から貫いた。かなの口から血がこぼれる。

眞莉紗がいつ来てもいいように、気構えはできていた。しかし、眞莉紗が教室から出で来ることを視認できなかったのだ。

そのため、完全に不意打たれるような形になってしまった。眞莉紗はそのまま剣を校舎側に振り、突き刺さったかなを無造作に放り投げる。

完全にどうしようもないかなはそのまま校舎に打ち付けられ、壁を貫き、校舎内に放り込まれた。立ち上がるにも、常人なら間違いなく死ぬような一撃を受け、

さすがのかなも急には立ち上がれない。

「けほっ・・・けほっ・・・・」

 力なく廊下を転がるかな。何とか手に力をこめ、体を起こす。四つんばいになり、口から血を吐きながらも顔を上げて廊下の先に目をやる。

と、何もないところから眞莉紗がフェードインするように姿を現したのだ。

「やっぱり・・・・ですか・・・・。」

 かなはふらつきながら立ち上がる。不完全ながら、傷を修復し終え、眞莉紗をまっすぐに見据えた。

「さっきからありえないところばかりから攻撃してくると思えば・・・。『瞬間移動』ですか・・・。

『戦闘』における『切り札』を連発できるなんて、いい加減にして欲しいです・・・。」

 かなの言葉に眞莉紗はそうでしょ?と自慢げな顔をする。しかし、その一瞬でかなは眞莉紗の懐に潜り込み、その細い腕で一撃する。

影を纏った右拳の一撃。その一撃の威力は今更語るものでもなく、かなはさすがの眞莉紗もこの一撃なら十二分なものだと確信していた。

「ん〜。申し分ない一撃だねぇ。あんなのまともにもらったら肉片一つ残らないかな。」

 しかし、眞莉紗はあろうことか避けることもなくその場に立っているのだ。かなの拳はなんと眞莉紗の体をすり抜けていた。

かなも今までに経験のないことで、一体何がどうなっているのか把握できず、そのまま固まっている。

「『瞬間移動』っていうのは私の、いや正確には眞莉慧の能力のひとつでもあるけどね。正確にいうと眞莉紗の能力は『存在を操る能力』。

つまり、こんな風に自分の体の『存在』を少しいじって自分を立体映像みたいにすることで攻撃を避けることだってできるんだよね。」

 『存在を操る能力』。自らの存在を消し、瞬間的に移動したり、ホログラムのようにし、攻撃を回避したりできるというのだ。

眞莉紗の戦闘能力だけでも反則に近いものがあるというのに、それに加え眞莉慧の『存在を操る能力』。反則も大概である。

(こんなの、そもそもどうやって倒せというですか・・・・。)

 いくら考えても打開策の見つからないかな。そもそも、攻撃が通じない時点でどうやって戦えというのか。

(・・・・攻撃が読めなければ・・・・あるいは・・・・)

 最終的にかながたどり着いた答えは眞莉紗に攻撃を読まれないことだった。いくら存在を操作して攻撃を回避するとはいえ、

それはあくまで何をされるかがわかっていればの話。読まれない、反応できない速度で攻撃すれば、回避は不可能のはずである。

かなは試してみる価値はありと眞莉紗に拳を振るう。

「っと・・・!」

 眞莉紗はかなのすばやい、懐に潜った拳を難なくかわし、バックステップで間合いをあけようとした。しかし、かなはそのまま眞莉紗をすべるように追いかけ、

拳を放つ。が、かなの攻撃はそれだけではない。徒手空拳もさることながら、かなの纏った影はまるで意思を持っているかのように触手のように眞莉紗を襲い、

時には鰐のような爬虫類の頭を形成し、眞莉紗を喰らおうとする。しかし、眞莉紗はその尽くを、時には捌き、時には体を透過させ、

時には剣で受けるという神業で防ぎきった。

(回避方法がパターン化してるですね・・・・)

 かなはその怒涛の攻めの中、冷静に状況を分析していた。かながフェイントに混ぜて放つ本命の一撃は体の透過ではずされ、

そして、必ずといっていいほどその次の攻撃は回避に回る。パターン化する回避方法から眞莉紗の能力を測るなか、かなは少しずつ自分なりに能力を把握し始めた。

(おそらくあの体の透過で回避しているのは間違いなくぼくの本命のみです。このことからおそらくは体を透過させ続けるのは一定時間以上不可能、

もしくは連発不可能ということなのです。そして、眞莉紗さんの能力は間違いなく『炎を操る能力』であり、

眞莉慧さんの能力が『存在を操る能力』である以上、残る眞莉亜くんも何らかの能力があるはずですね・・・。

本命の一撃が尽く避けられていることからかんがみて『先を視る能力』・・・・。かっこよく言えば『運命を視る能力』と言ったとこなのです。

となれば眞莉亜くんが『運命を見る能力』でぼくの本命の一撃を視、だから同時に眞莉慧さんが『存在を操る能力』で体を透過させ回避する・・・・。

眞莉慧さんの能力が一定時間以上不可能だと考えるなら眞莉亜くんの能力で次の一撃を眞莉紗さんが確認し、回避になるわけですね。)

 かなは能力を把握しながらもつくづく反則ですとため息を漏らした。

(そもそも、この想定が正しければ眞莉紗さんは反撃できるはずなのにしてないと言うことになるですからね・・・・。)

 かなはそれはそれで腹が立つですが・・・と、ここで一つ思い立った。

(眞莉亜くんの『運命を視る能力』は次のワンシーンを見るもので、眞莉慧さんの『存在を操る能力』に時間制限があるなら・・・・。

本命の一撃を連続で行えばあるいはですね・・・・。)

 そう思い立ったかなは連撃からまず一撃本命を放つ。当然避けられることが前提である以上、この一撃は回避されるのはわかりきっている。

眞莉紗は当然のように体を透過させてそれを回避する。かかった。とかなは確信した。

「もらったです!!!」

 かなの渾身の一撃が、どんな回避をも不能にする巨大な影が、槌のように眞莉紗を押しつぶす。かなもさすがに今度こそはと確信めいたものを持っていた。

油断していたと言えば油断していた。しかし、それは勝利を確信したからこその油断であった。

が、眞莉紗はそれほど甘くないことを直後、認識することになる。かなは背後からの爆炎の拳の一撃でトラックに轢かれたかのように弾き飛ばされた。

「さっすが♪紅光龍を継ぐだけあって、いとも簡単に私たちの能力を見破ったわね。そう、かなちゃんの想像通り、眞莉亜は次の運命を視てるし、

眞莉慧の『存在を操る能力』も連発できない。でも、眞莉慧の能力で連発できないのは同じ行動だけ。つまり、透過でスカしたあとに瞬間移動はできるのよ。」

 眞莉紗はでもま、合格点を十分以上に満たしてるね。と、納得したように微笑んだ。

「とりあえず、今の説明とこれまでの経緯でわかったでしょ?かなちゃんじゃ私を倒すことは不可能。

もっといえば、私たちをこの世界の誰かが倒そうだなんていうのは全くの不可能。一人ひとりじゃ限界があるけど、私たちは3人いるからこそ最強なんだから。」

 眞莉紗の言葉にかなが起き上がり歩いて眞莉紗のほうに近づく。

「ですですね。眞莉紗さんの言葉、嘘ではないでしょうから。とすれば今の私では倒すはおろか、戦うことすら危ういです。

相手の力量を測れないのはただの馬鹿とかあさんも言ってるですし、ここは素直に平伏するですよ。」

 かなはそういって素直に負けを認めた。眞莉紗もそれを聞き、うん、いい選択だねと戦闘モードを解除し、いつもの眞莉紗の姿に戻った。

「それじゃ、修学旅行、よろしくね。」

 眞莉紗はかなの頭を撫でながらそういう。しかし、かなは何のことかわからず首をかしげた。

そもそも、手伝ってもらうとはいわれたものの、内容については何も知らされていないのだから。

「説明すると長くなるんだけどね。ま、説明しないと話しにならないか。」

 眞莉紗はそれもそうだねとかいつまんで修学旅行で何が起きるか、何でかなの力が必要なのかをかいつまんで説明した。

「ふむ。わかったです。ゆーなが巻き込まれるかもとなると黙ってられないですね。」

 かなはそれならそうと始めからいってくれればと拗ねた顔をする。

「かなちゃんの力がきちんとしたものかどうか知りたかったし。半端な力じゃ協力なんてさせられないでしょ?」

 眞莉紗の言葉にそれもそうですねとかなは納得したように頷いた。

「では、授業も始まるですし、僕はこれでおいとまするです。眞莉紗さんはどうせまだ試す人がいるようですし、先生にはうまくいっとくですよ。」

 かなはそういうと影で器用に拘束服を着込み、眞莉紗に背を向けた。眞莉紗はそうだね、それじゃよろしく。とかなにまかせて、かなの背中を見送った。

「さて、それじゃ次の試験を始めるかな。」

 眞莉紗はそういうと誰にしようかなとどこから持ってきたのか、生徒名簿を開き目を通す。

「うん。やっぱりこの娘だな。」

 眞莉紗の指が指した名前は「桜咲刹那」。

「木乃香ちゃんのガード役なんだから、しっかりみとかないとね。」

 眞莉紗はそういって適当に椅子を引き出してすわり、校舎の外に目を移す。

その目に映っているのは校舎に向かってくる刹那の姿。守護者検定(ガーディアンテスト)の2時間目は桜咲刹那。

早くもその火蓋が気って落とされようとしていた。







あとがき


さて・・・何とか更新できました第十帖です。今日はあの三姉妹が旅行にいってるので私一人であとがきります。

さて、第十帖の第一間一試合目は不破かなでした。書いててなんでしたが・・・かなって本来相当強キャラ設定だったはずなんですけどねぇ・・・

まぁ、最強キャラを前にして強キャラじゃやっぱり限界がありました・・・。さて、次の検定は刹那ちゃん。・・・って、そもそもまともに

眞莉紗・顕正モードと戦っても勝てるわけないんですが・・・。まあ、かなと違って刹那に求めるのは覚悟であって、強さじゃないですから。

当然強さも求めますが限界もあるんで・・・。

さて、次回ネギまちっく・ハート第十帖第二間『守護者検定(ガーディアンテスト)・二時間目 桜咲刹那〜Wing Knight〜』。

MHもひと段落しつつありますので何とかペースを上げたいと思います・・・。




かなは無事に合格〜。
美姫 「次にせっちゃんはどうなるのかしらね」
にしても、強いな。
美姫 「最強だからね」
果たして、次回はどんな戦いが繰り広げられられるのか!?
美姫 「次回も楽しみに待ってますね〜」



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