『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』
第二十五符『希望(ゆめ)ある未来(あした)へ』
沖縄旅行の二日目。この日は忍がクラス合同で何かするつもりのようで、呼び出しがあるまで自室待機ということになっている。
恭也たちも連絡があるまで自室でまったりと和んでいた。
「しかし、月村は何をするつもりなんだ?」
ソファーに座って朝のティータイムとしゃれ込んでいたエヴァが恭也に聞いた。しかし、恭也も何をするか聞いていないため、
わからないと答えるほかない。茶々丸も何があるか検討がつかず、何かあることは確かだと思いますとしか言うことができなかった。
「まあいいじゃないか。何か面白いことをしてくれるんじゃないのか?」
恭也はあくまで何かしてくれるだろう程度に構えている。エヴァもそれもそうだなと軽い気持ちで考えていた。
しかし、すぐにそれが甘かったことに気づかされることになる。忍がやろうとしていたことが遊び程度のものではなく、本格的な行事であるということに。
「そういえば、今朝方見つけたいい紅茶の葉があるのですが飲んで見ますか?」
空になったティーカップを見て茶々丸が戸棚から小さな茶葉入れを持ってきた。
エヴァは飲んでみるかと茶々丸にその茶葉を浸かって紅茶を入れるように頼んだ。茶々丸はわかりましたとその紅茶の葉を使って紅茶を入れる。
二人はそれを口にしてうんおいしいとうなづいた。
「さすがだな。茶々丸の入れる紅茶は一級品だ。」
恭也は茶々丸の入れてくれた紅茶をそのように評した。エヴァもそうだなと茶々丸の紅茶を高評した。
しかし、何かがおかしい。味がおかしいというのではない。何かがおかしい。
「こ、これは・・・・?」
最初に異変に気づいたのはエヴァだった。どうも意識がはっきりとしない。いや、意識が朦朧とし始めている。
エヴァはそう感じるとすぐに恭也の方を向く。しかし、あのエヴァですら意識を朦朧とさせているのだ。
吸血鬼になりたての恭也はすでに耐え切れず机に突っ伏していた。
「ちゃ、茶々丸・・・・お前・・・・・何を・・・・?」
紅茶を入れた茶々丸のほうを見てエヴァは薄れつつある意識の中で何をしたか問いただそうとした。しかし、茶々丸の声が届かない。
エヴァはそのまま意識を闇の中へと落としていった。
「いやー。恭也のところもうまくいってよかったよかった。」
ルームサービスの朝食を三人で囲いながら鼎が突然そんなことを口にした。さよは何のことを言っているかわからず聞き返す。
「いや、この旅行の前に恭也から聞いてたんだよ。この旅行の間にエヴァちゃんにプロポーズするってね。」
鼎の言葉に和美はあまり興味がないのかふーんと軽く流すだけだった。
「でもさ、あの三人、あまりもめるとは思えないんだけど。そんなに安堵するようなもの?」
和美の質問に鼎は安堵するものだよと答える。
「だって、エヴァちゃんは吸血鬼だし、絡繰はロボット。実質二人とも永久的な命の持ち主だ。
恭也がそうなるには吸血鬼になるしかないだろ?でも、吸血鬼になるってのは思いのほか大変なことなんだ。
なにせ永久的に生きるってことは人間として生きないってこと。ぴんとこないかもしれないけどそれってものすごく大変なことなんだ。
同じ町に長いこといることもできないし、常に自分が人間であると偽り続けて生きていかなきゃいけないんだから。」
鼎の説明に和美とさよはなるほどとうなづく。と、和美がふと疑問を投げかけた。
「さよは一回亡くなってて鼎の魔力使って実体化したんでしょ?なら、不死みたいなものじゃないの?」
和美の質問に鼎はそういうわけじゃないよと答える。
「さよはただ実体化したんじゃなくて人間として実体化したんだよ。だから普通の人間と同じように年もとるさ。」
さよはそうですよと鼎の言葉に付け加える。
「実体化してから現に成長してますから。もし、実体化しただけなら成長なんかしませんし。」
和美はそうだねとうなづく。
「それじゃあ。」
和美はそういってグラスにお茶を入れて二人の前におく。二人は先の和美の言葉から何をするのかを先読みし、鼎が音頭をとって立ち上がった。
「生まれてきた日は違えども、逝く日は同じ年、同じ日、同じ時間、同じ場所にならんことを。」
鼎のその言葉と同時にグラスのお茶を飲み干す三人。そして三人同時にその場に倒れこんだ。
沖縄シーサイドホテルのロビー。そこで忍主催の大行事の準備が着々と進められていた。
クラスメイトが総動員され、急ピッチで作業が進んでいる。大きなテーブルがいくつも用意されその上に純白のテーブルクロスがかけられる。
そして、次々テーブルにとおかれる豪華な料理。本来不可能であるはずのロビーを貸しきっての大行事。
そう、鳳鼎、相坂さよ、朝倉和美と高町恭也、エヴァンジェリン.A.K.マグダウェル、絡繰茶々丸の結婚式という2-Aのみんなにとってもっとも大きな、
もっとも大切な行事を行わんがために。
「おーい、みんなー着替え終わらせて連れてきたよー♪」
修羅場の続くロビーに風香の声が響いた。その声に呼応するかのようにみんなが顔をそちらに向ける。
その視線の先にはウェディングドレス、ウエディングスーツに身を包み、椅子に座ったまま目を閉じた恭也たちの姿。
茶々丸はエヴァたちを眠らせるために企画を伝えていたものの、今は動力を停止していて眠ったような状態になっている。
そんな6人を見て残りのクラスメイトは準備のペースを一気に上げた。自分たちの大切な友達だからこそ、自分たちの手で祝ってやりたい。
誰もがそう思って最後の作業に取り掛かった。
「ん・・・・。」
体に違和感を感じ、恭也は目をこすった。何があったのか、頭がついていかない。しかし、どうにもまぶしい。恭也はとにかく目を開けようとその目を開いた。
「ここは・・・・?」
睡眠薬のようなものを飲まされて意識を失ってからそんなに時間はたっていないはず。エヴァはしまったと思い目を開いた。
「スリープモード解除。起動します。」
忍に動力を切られスリープモードになっていた茶々丸が起動と共に目を開ける。
「んあ?」
お茶を口に含んでそのまま昏倒した鼎は何があったのかもわからないまま目を開ける。
「あれ・・・・?」
鼎同様お茶を飲んでから先の記憶のないさよはわけもわからず目を開けた。
「ふぇ?」
鼎、さよをけしかけて桃園の誓いをもしったことをして以降の記憶のない和美は何があったのかわからないまま目を開けた。
『結婚、おめでとー!!!!』
目を開けた恭也たちを前に2-A の生徒がいっせいにクラッカーを鳴らし、大声で祝福した。
恭也たちはわけがわからないまま目を点にしていたが、だんだんと事情が飲み込めてきたのか、だんだんと笑い始めた。
「はははははっ♪月村の仕業だな♪」
一番最初にその場に順応したのは鼎。鼎は笑い、手をたたきながら席を立つ。
それにつられるようにさよ、和美も自らがウェディングドレスを着ていることに驚きながらも、笑いながら椅子をたって鼎のそばによる。
「おい、恭也!いつまでボーっとしてるんだよ!?みんなが祝ってくれてるんだ!早く来いよ!!」
いまだに何があったのかわからず、ほうけている恭也たちをけしかける。恭也は状況を把握し、少し笑って立ち上がるとエヴァと茶々丸の前に立って手を差し伸べる。
「行こう、エヴァ。みんなはいつまでも俺たちの友達だ。」
エヴァはその手をとって立ち上がる。
「みたいだな。」
茶々丸もその手をとって立ち上がる。
「楽しみましょう。」
恭也は二人と手をつないだまま前に出てその手を上げた。それに答えるかのように上がる歓声。
と、その中から忍が前に出てきた。どうやら司会進行は忍のようだ。
「はいはーい♪司会は忍ちゃんが行いますよー♪ではまず・・・・。・・・・といいたいけど、堅苦しいのは全部なし!!!いつものようにさわいじゃおー♪♪♪」
忍の司会は、しかし本人の一言で意味のないものになってしまった。結局はいつものように無礼講の大騒ぎ。しかし、これが2-Aなりの祝い方。
恭也たちもそれを承知の上でその輪に加わって騒いだ。
「おい、恭也、少し出ないか。」
あまりの騒ぎようにエヴァと茶々丸は風に当たらないかと恭也を誘った。恭也はそうだなとエヴァたちと共に二階のテラスに足を運んだ。
「いい景色だな。」
テラスからの景色を見てエヴァがつぶやいた。恭也はそうだなとエヴァの肩に手を回していった。
「恭也とみるからこれほどまでにきれいに見えるんでしょうか?」
恭也の隣にたって茶々丸が行った。恭也はそうだとうれしいなと笑顔で答える。
「俺たちの未来にはまだまだ面白いことや楽しいこと、うれしいことがいっぱいまってる。だから、一緒に歩んでいこう。」
恭也はそういってそこからの景色に改めて目をやった。エヴァはそうだなと恭也に体を預けた。
「はい。いつまでも、あなたと一緒に歩いていきます。」
茶々丸もそういって恭也の肩に頭を乗せた。
「そうだ、恭也。やってみたいことがあるんだが。」
エヴァはそういって恭也に耳打ちをした。恭也はそうだなと茶々丸にも言って忍に頼み、それをしようと決めて一階に下りようとしたが、
それよりも先に階段から鼎たちが姿を現した。
「おう、こんな所にいたのか。」
恭也は少し風に当たろうと思ってなと鼎にいい、何かようかと訪ねた。
「ブーケを投げようと思うんですよ。高町君たちも一緒にどうですか?」
大きなブーケを持ったさよが恭也たちの前に出てそういった。
「ちょうどよかった。エヴァたちもやりたいっていってたところなんだ。」
恭也はそういうとさよからそれじゃあと手渡されたブーケをエヴァに差し出す。
エヴァと茶々丸はそれを受け取ってテラスから下のスペースに目をやる。するとそこにはすでに2-Aの面々がスタンバイOKの状態で待っていた。
「一度、やってみたかったんだよ。」
少女のような笑顔を浮かべてテラスの柵ぎりぎりに立つエヴァ。
「これを投げるんですね。」
微笑んでテラスの柵に近づく茶々丸。
「ブーケを投げるの、憧れだったんですよ。」
にこやかな笑顔で柵に近づくさよ。
「えへへ、なんか照れくさいけどうれしいね。」
はにかみながら柵に近づいて手を振る和美。
「よーし♪それじゃあ、3,2,1,GOのカウントの後にみんなで投げよう♪」
そういうと鼎は恭也にもブーケを渡して柵の前に立つ。
「いいのか?普通はこういうのをするのは女性だけじゃないのか?」
恭也は戸惑ったが、鼎が気にするなよといわれそれもそうだなと柵の前に立った。
「それじゃーいくぞー♪」
鼎の掛け声で恭也が、エヴァが、茶々丸が、鼎が、さよが、和美がカウントダウンを始める。
「「「「「「3,2,1,!!!ごー!!!!!」」」」」」
宙を舞う6つのブーケ。
美しい花びらがひらひらと舞いながら2-Aの面々の中に落ちていく。
明るい、温かい、優しい友達に囲まれて。
恭也はエヴァと茶々丸と共に。
鼎はさよと和美と共に。
希望(ゆめ)ある未来(あした)へ歩き続けていく。
ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜 『完』
to be continued to next story...
あとがき
遂に完結しましたネギまちっく・ハート。いかがだったでしょうか。
(フィーネ)結構綺麗に終わらせられたじゃない。はじめてにしては上出来よ。
そういってくれると嬉しいな。結構苦労して書いた作品だから終わるとひとしおだ。
(フィーラ)そうね。名残惜しくもやっとここまで来たって感じだもの。
だな。でも、本当はもっと書きたい話もあったし、こうすればよかったなって言うのもあるよ。
(フィーリア)それでいいんじゃない?書き上げた後って言うのはそういうものだと思うよ。
そうなのかな。それじゃあネギまちっく・ハートの裏話に参りますか。
(フィーネ)とはいえあんまりないじゃない。
それもそうなんだけど、苦労話とかあるじゃないか。
(フィーラ)なら一番苦労したのはどの話?
ふつうに苦労したのは麻帆良武道大会編かな。アレは書いてるときが時期的にちょうど始まったばかりぐらいだったから、
強さの設定とかがまるでできなかったし。俺、刹那とエヴァは戦うだろうって思ってたけど、まさか刹那が勝つなんて思ってなかったし、
クウネルがあんなのだとは思わなかったし、もう書いてる途中でどうすんだこれ・・・って思ってたよ。
(フィーリア)でも、完全無視の方面で行ったよね。
そうでもしないと一から書き直しになるから。だって、武道四天王、俺は最初、真名>楓>刹那>古菲だって思ってたのに、
原作見ると刹那>>>>>楓>>>真名>>古菲って感じじゃない。もうこれだけでどうすんのよ状態だ。その中に恭也と鼎が入るわけだから
もうパワーバランスがたがただ。
(フィーネ)そうよね。ただでさえ強いの多いんだから。
ああ。それでも最後は恭也VS鼎って決めてたし、その後も考えてたからそこのところを除けば苦労ではなかったな。
(フィーラ)じゃあ異常に苦労したのは?
そりゃ風香と文伽と勇吾の恋物語だ。正直言って死ぬかと思った。
(フィーリア)現実的経験に基づいてないからねぇ〜。
そ、それをいわないでくれ・・・・。
(フィーネ)でも、苦労したのって事実そこでしょ?
そうなんだよなぁ・・・・。だから結局そこの所はあいまいにせざるをえなかったんだ。
(フィーラ)さて、それじゃあそろそろ時間みたいね。
ああ、みたいだな。それじゃあ、次回作で・・・・
(フィーリア)もうできてるみたいだけどね♪
おわ、それはまだオフレコ!!!
(フィーネ&フィーラ&フィーリア)まったねぇ〜〜〜〜〜〜♪♪♪♪♪♪
かってにしめるなぁ〜〜!!!!
完結おめでと〜。
美姫 「でも、最後のnext storyが気になるわね」
こらこら。
美姫 「最後はとっても綺麗に纏まっていたわね〜」
うんうん。見習いたいものだ。
美姫 「本当に」
……容赦なしだな。
美姫 「あたりまえよ〜!」
へいへい。それじゃあ、次回作を期待して…。
美姫 「今回はこの辺で幕!」
ではでは。
美姫 「本当にお疲れ様でした〜」