PAST REMINISCENCE 〜CHIKA〜




 

 

わたしは一人ぼっち

記憶の中の小さなわたし

いつも一人だった

小さな窓のついた狭い部屋

その窓から日の光が射す事はなくて

薄暗くて少し湿っぽい

そこがわたしの居場所

 

部屋に人が来ることはほとんどなくて

たまに来るのはマユキという女の人

それと一人のお医者さん

あとの人は誰もここに来ない

 

 

なぜ?

自分で自分に問いかける

なぜ…なの?

そのときわたしは小さくて

でもその答えを知っていて

それゆえに弱かった

 

 

なぜ?

 

 

それは

わたしは

人と違っているから

人ではない力を持っているから

たったそれだけ

 

 

なのに

人はこういう

 

 

こんなのは人じゃない

化け物め

こいつがみんな悪い

草薙の家もこれで終わりだ

 

 

でも

それはしょうがないこと

小さなわたしは自分にそう言い聞かせる

 

 

町を歩けば

人はわたしを避ける

後ろから指を指される

どこからかコソコソと声が聞こえる

 

 

それもしょうがないこと

わたしは人とは違ってるのだから

小さなわたしは何度も自分にそういう

 

 

けれども

わたしはまだ小さくて

自分の感情を制御できなくて

ある日

何かがわたしの中で崩れた

 

 

突然込みあげる破壊の衝動

 

 

壊れちゃえ

みんな無くなっちゃえ

わたしも消えちゃえ

 

襲い掛かる衝撃と音

土煙、瓦礫

 

 

気がついて

辺りを見渡す

 

 

地面がえぐれてて

塵が宙を舞っていて

建物にはひびが入っていて

そして

小さなわたしの背中には

白い

大きくて

綺麗な

羽根が生えていた

 

 

わたしは

怒っているわけでもなく

悲しくもなくて

もちろん楽しくなんかなかった

 

 

ただ

どうしようもなく

自分が

怖かった

すべてを壊すことができる

力が

 

 

そして

小さかったわたしは気づいた

 

 

人に会えばわたしの中で何かが崩れる

崩れると物が壊れる

人が傷つく

だったら

誰にも会わなければいい

 

 

小さなわたしは狭い部屋に

自分だけの世界を作った

 

 

自らにとを拒んだわたしに

他人が気を留めるはずがなくて

 

 

私は一人ぼっちになった

部屋に人が来ることはほとんどなくて

たまに来るのはマユキという女の人

それと一人のお医者さん

あとの人は誰もここに来ない

 

 

そんな日がずっと続くと思っていた

あの秋の日までは

 

 

その日はなぜか家全体が騒がしかった

朝から怒鳴り声や打撃音が響いていた

 

でもわたしには関係ない

そう思いつつ小さな窓を見る

外に見えるのは四角く区切られた北の空

決して日の射すことのないそこから涼しい風が吹き込む

そこにふすまが開く

マユキという女の人が立っていた

でもマユキはいつもとは違っている

全身汚れていて手には木刀が握られていた

マユキはわたしに出かける準備をしろという

遠いところへ行くよ

そういった

わたしに会いに来るたった一人の人

わたしはその人について行くことにした

 

電車に乗った

いったいいくつの駅を通り過ぎて何回乗り換えたかはわからない

わたしたちが着いたのは大きな綺麗な町だった

そしてバスに乗り降りる

歩いて立ち止まる

わたしとマユキは新しい家の前に立っていた

 

 

ここに来る間にいろんなことを聞いた

マユキがわたしのお姉ちさんだということ

わたしはHGSっていう病気だっていうこと

わたしたちが家出をしてきたっていうこと

とても多かった

よくわからなかった

でもひとつだけは判った

 

 

わたしたちはここでこれから生活するんだ

このさざなみ寮で

 

 FIN

 

 

 


<あとがきの皮を被った落書き>

初めて送らせていただきましたコウです。

読んでのとおり知佳の昔の話です。

へったくそなSSですが最後まで読んでくれた方。

本当にありがとうございます。

謝謝(笑

ちなみにこれは一話になる予定です

たぶん…

今後もコウをよろしくお願いいたします!!!!




コウさん、ありがとう!

美姫 「知佳視点で、さざなみに来る前の話よね」

うん。知佳の心情が書かれていて、とても良いんだよ〜。

美姫 「どうどう」

特に、『怒っているわけでもなく 悲しくもなくて もちろん楽しくなんかなかった』って所がお気に入り♪
コウさん、ブラボー!

美姫 「これを1話として、続く予定という事で、とても楽しみにしてますね」

コウさん、次回を楽しみに待ってます!

美姫 「ではでは〜」








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