「僕はね、正義の味方になりたかったんだ。そして君を助けた僕の友人は本当の正義の味方だった。」
「じゃあ、俺も正義の味方になる!!」
義理の父親と命を救ってくれた恩人、二人が歩んだ“正義の味方”という道。10年前、それを聞いた時から、俺は二人の後を追ってその道を追い始めた。
目の前に迫る槍を持った男、普通の人間なら・・・いや、魔術師や完全武装した兵士等であっても、それが人間である限り目の前の男に対して勝てる訳が無い。それは絶対的な脅威そのもの。
「諦めたのか?」
男が不思議そうに問うてくる。そんな男に対し、俺は今向き合っている。放課後の学校の屋上で、目の前の男ともう一人赤い服を着た男の人知を超えた戦いを目撃した俺は(さらに何故かそこに学園のアイドルと言われる遠坂凛の姿もあった)、目の前の男にみつかり追いかけられる事になった。男が俺を殺す気だとは、はっきりとわかった。そして、男の足は速く逃げ切れないと悟った俺は廊下の真ん中で足を止め“立ち向かう”事を決めた。だが、それは男には理解できない事だろう。
「命乞いなら無駄だぜ。運が悪かったと思って大人しく死にな。」
そう言い放ち、槍を向けてくる。目の前の男は強大。しかし、負ける訳にはいかない。何故なら・・・・・・・・・
「せめてくるしまねえよう一撃で殺してやるよ。」
「トレース(変)・・・・・・・・・・・・」
男が槍を放つ。普通ならそれで終わり。だが、俺はその一撃では死なない。何故なら・・・・・・・・
「オン(身)!!」
「なっ!?」
投影の魔術が俺の鎧を形づくり、俺の姿が黒い巨大な昆虫を思わせる姿に変わる。そして俺は放たれた槍よりも高く飛び上がりそれをかわす。
「てめえ、何者だ!?」
男の口調が変わる。それまで余裕のあった口調は厳しいものに変わり俺を睨みつける。俺は答えた。10年前、“彼”に助けられ、切嗣に引き取られた時より、我が身を表す言葉は決まっている。それは“正義の味方”を目指すものと、為ったものに与えられる称号。
「俺は・・・・・仮面ライダーだ。」
「・・・・・・・仮面ライダー?なんなんだ、そりゃ?」
「正義の味方さ!!」
その意味が理解できないと言った感じの男に対し、俺は答えると同時に飛び出す。
「ライダーパンチ!!」
叫びながら俺はパンチを放つ。これは別に意味の無い行動という訳ではない。俺自身の中の“仮面ライダー”という幻想で編まれたこの身体はそれを強く意識する事で力を無限に高めてくれるのだ。
「ぐっ。」
男は槍を横にして俺のパンチを防ぐ。が、その力に押し負け、そのままよろめく。
「てめえ、何て馬鹿力だ!!」
俺が追撃を仕掛ける前に男は素早く体勢を立てなおすと今度は向こうから攻撃を仕掛けてきた。槍の連撃、俺はそれをかわす。男の槍は恐ろしく鋭く、その全てをかわしきれる訳ではないが、それは投影によって生み出された鎧、いや仮面ライダーとしての俺の身体の前にはじいてくれる。
「くそっ、何て硬さだ!!」
男がいらただしげに吐き捨てる。それもある意味しかたがないと思ってしまう。俺の投影で出来るのはそのほとんどが外見だけのからっぽのガラクタばかり。例外として刃物だけは本物そっくりの贋作が作れるが、それにしてもある程度破損すると消えてしまう。だが、この身体は鋼鉄よりも硬く例えどれほど破損しようと俺が消そうとしない限り決して消えない。さらに俺の身体能力を通常の数倍にまで高めてくれる。はっきり言って反則だと自分自身感じている。
「なら!!これでどうだ!!」
男が槍を引き、構えを取った。その瞬間、本能的な危険を感じる。そしてそれを感じとった時、俺は廊下の天井近くまで一気に飛び上がる。
「ライダー・・・・・」
「ゲイ・・・・・・」
男が飛び上がった俺に槍の照準を向ける。その一撃は決してかわせない、そしてこの身体をもってしても防ぎきれない。ならば、出させる前に倒す。俺の右足に太陽の力が宿る。
「キック!!」「ボルク!!」
男が技を繰り出す前に繰り出そうとしたその技は俺の心臓めがけてまっすぐ伸びてくる。そして俺の胸に槍が突き刺さり、しかし貫くよりも早く俺の蹴りが男の胸に炸裂した。
「何なのよ・・・・あれ・・・・。」
私は目の前で展開される信じられない光景に目を奪われていた。横では皮肉屋なアーチャも珍しく驚いた顔をしてその光景を見ている。サーヴァントの強さは先ほど嫌と言うほど見せられた。そのサーヴァントと互角に戦う異形。運悪くサーヴァント同士の戦いを目撃してしまった同級生を追った先で何故このような光景を目にしなければならないのか理解できない。
(同級生・・・?)
そこで気付く追いかけた同級生、衛宮士郎の姿がどこにも見えない事に。彼はランサーに追われていた。状況を考えれば可能性はかなり限られる。一つはランサーが彼を追っている途中あの異形が邪魔に入り、彼はそのまま逃げおおせた可能性。それから、既にランサーか異形に殺された可能性、だが、これは時間的な事や近くに遺体はおろかその痕跡すらみつからないことなどを考えれば可能性は低い。そしてもう一つ、目の前の異形が衛宮士郎である可能性・・・・・。
(いくらなんでもそれはないわね。)
私はその考えを頭から捨てる。直接話した事はないが、彼の事は知っている。そして彼から魔力などを感じた事はない。そんな彼が目の前のような異形になり、サーヴァントと互角に戦うなど考えられない。
(と、なると、やっぱり彼は運良く逃げ延びたってのが一番可能性がたかいわね。記憶処理なりなんなりは後で考えるとして、今は目の前のランサーとあの化け物に集中しなくちゃ。)
その時気配が変わった。ランサーが槍を構え、アーチャとの戦いの時にも感じた嫌な予感を覚える。そして異形の怪物が飛び上がった。ランサーの槍と男の蹴りが交差し、そして両者は吹き飛んだ。
「ちっ、何て威力だ。」
男は俺の蹴りを喰らった部分に何やら文字を書いている。ルーンだというが半人前の俺にもわかった。おそらくは怪我を癒す為の回復のルーンか、それを補う為の防御のルーンだろう。
「あんなやり方でゲイボルグを防いだのはてめえが初めてだぜ。もっともお前の方も無傷って訳じゃないみたいだがな。」
男の言葉どおり槍を指された部分からは出血があり、傷口はかなり痛む。だが、俺には今のうちに聞いておかねばならない事があった。
「お前は一体何者なんだ!!校内で戦ったりして一体何を考えている!?」
「?なんだ、おまえ、魔術師じゃなかったのか。魔力を感じたからてっきりそうかと思ったんだがな。よし、いいだろう、俺の槍をかわした褒美に教えてやるぜ。この街では今、聖杯戦争つう魔術師同士の戦争やってんのさ。まあ、正確にいえば、今はまだ前哨戦みたいなもんだけどな。後の細かい事はそっちの嬢ちゃんにでも聞きな。」
そう言ってランサーは視線を横にやった。反射的にそちらを見るとそこには遠坂と赤い服を着た男の姿が。そして、そちらに気をつかれている間に男が飛び出してしまった。
「じゃあな、てめえとの決着はいずれつけさせてもらうぜ!!」
「あ、待て!!」
止める間もなく走り出してしまった男。男の足は変身した俺と比べても速く、今から追いかけても間に合わないだろう。しかたなく、俺は遠坂達の方に向き合う。俺を警戒したのか遠坂達は構える。
「トレース(変身)・・・・・・・・・オフ(解除)」
「衛宮君!?」
俺は変身を解除して元の姿に戻った。胸の出血は俺の身体の中にある力の源である“石”のおかげで既に止まっていたがそれでも痛みはまだ治まっていない。元に戻った俺の姿を見て一瞬驚いていた遠坂はすぐに厳しい目つきになり再び警戒態勢をとる。それから赤い服を着た男からは警戒だけでなく殺意と・・・・何故か憎しみのようなものを感じる。できれば、逃げ出したいような雰囲気だが、こちらも事情を聞かねばならない。どう切り出したらと悩んでいると遠坂の方から話を切り出してきた。
「あなた・・・・何者なの?」
静かだが冷たく嘘や言い訳を許さないという声。まあ、もとから嘘をつく気は無いが。
「えーと、衛宮士郎。この学校の生徒で・・・。」
「そんな事は知ってるわ!!」
順番に話していこうとする俺に彼女は怒鳴りつけてきた。普段の優等生然とした彼女とは思えないほど凶悪ではっきりいってかなり怖い。しかし、学園のアイドルといわれる彼女を俺が知っているのはともかく、特に目立たない生徒であり、クラスも違う筈の俺の事を何故彼女が知っているのだろう?
「えーと、じゃあ・・・・。」
「さっきの姿の事よ!!あんな魔術は聞いた事もない、それにサーヴァントと互角に戦える人間なんてのも魔法使い以外には聞いた事がないわ。それにあの強大な魔力!!あなた何者なの!?本当に人間?」
俺がどこから話したものかと悩んでいるとまたも彼女の方から切り出してきた。しかし“本当に人間?”という言葉にちょっとグサッっとくる。割と言われなれてきた言葉であるが、それでもやっぱし傷つく。
「一応人間だよ。ま、ちょっとばかし腹に変なもの埋め込んでいるけどな。」
「変なもの?」
「石だよ。太陽と同質の力を持った最高クラスの“神秘”って事らしいけどそれ以上は俺も知らない。」
“神秘”それは“裏”の世界に関わる者にとっては深い意味を持つ言葉である。そして、その言葉を聞いて遠坂は顔色を変えた。
「神秘!?」
「ああ、石だって事以外は何が埋まってるかは俺も本当に知らないんだ。昔、俺が死にかけた時、俺の命の恩人が埋め込んだらしいんだけど、俺の神経とくっついていてとりはずせないらしい。」
「それで、さっきの姿もその“石”の力って訳?」
「ああ、その石の力と投影を組み合わせて変身した姿だ。」
あの姿は石の中に残されていた俺の恩人がかって“仮面ライダー”として活動していた時の記憶をもとにイメージしたもので、単に姿を真似るだけでなく、その能力や戦闘経験まである程度模倣できる。素人の俺が戦えるのも半分以上はそのおかげだ。
「衛宮君・・・・・あなた死にたいの?」
その時、遠坂は先ほどよりも厳しい表情になって、俺を睨みつけてきた。何かまずいことを言っただろうか?
「人間がサーヴァントと互角に戦えるような力をもった神秘、そんなものを持っているだなんて知れたら世界中の魔術師があなたを狙いにくるわよ!!それなのに、よく知りもしない魔術師である私にそんな事を話すなんて迂闊もいいとこよ!!」
・・・・・・ああ、なるほど、遠坂は迂闊な事を言った俺を諌める為に怒った訳だ。つまり、遠坂は・・・。
「遠坂っていい奴だな。」
「なっ!?」
遠坂の顔が真っ赤になる。普段の優等生然とした遠坂も綺麗であこがれるが、俺としてはこう言った自然な感じの彼女の方が可愛いと思う。
「だってそうだろ?遠坂は俺の事を心配してそう言ってくれたんだろ?ありがと、これからは気をつけるよ。」
そう礼を言った。しかし、いかんな。アルクェイドや青子さんにも注意されたってのに、またやってしまった。ほんとに気をつけないとな。
「ところで、遠坂、今度はこっちから聞きたい事があるんだが、サーヴァントとか聖杯戦争ってなんだ?さっきの奴は魔術師の戦争なんて言ってたが。」
「はっ?」
とりあえず、これで遠坂の聞きたい事は終わったんじゃないかと思って今度は俺の疑問をきりだしたのだが、遠坂は呆気に取られた顔をしている。そんなに非常識な質問だったのだろうか?
「ねえ、衛宮君、あなた・・魔術師よね?」
「ああ、俺は魔術師だぞ。まあ、変身以外は大した事のできない半人前だけど。」
「それで、この街に住んでいるのに聖杯戦争もサーヴァントも知らないと?」
「応!!」
あれ?何か遠坂、黙っちゃったなあ。どうしたんだろう?
「はああーーーー。」
何か盛大な溜息をつかれたぞ。何気にショックだ。
「いいわ。それじゃあ、聖杯戦争について話してあげる。聖杯戦争ってのはねえ・・・・・・。」
そして、俺はこの街で行なわれる魔術師同士の殺し合い、聖杯戦争の事を知り巻き込まれる事となった。
(後書き)
結構希望をいただけたのでとりあえず、4話までの短期集中連載として投稿したいと思います。実際に本編を見ていただいておもしろい、続きを見たいと言ってもらえたならばその後も考えます。ちなみに予告スケジュールです。(仮)がついてるのは見習いみたいなもんってことで(笑い)
1話:仮面ライダーシロウ(仮)VSランサー
2話:仮面ライダーシロウ(仮)VSバーサーカー
3話:仮面ライダーシロウ(仮)VS仮面ライダー??
4話:仮面ライダーシロウ(仮)VS(秘密)
本来士郎が得意とする刃物の投影が原作より弱いのは力に目覚めた為に原作のような無茶(毎回魔術回路を作成しての訓練)を繰り返さなかった為、特化が進まなかったという設定です。あと、この話の士郎は既に“正義の味方”としての活動を実際に行なっていて“現実”の厳しさをある程度知っているので理想家ではあっても原作程夢想家ではありません。それからこの作品には士郎の他にマスターやサーヴァントとして原作ライダーをだそうか考案中ですが、希望があれば参考までにお聞かせください。(平成はクウガと剣しかしりませんが。(RXも一応平成?))
いやー、士郎が強いね〜。
美姫 「さすが、仮面ライダー」
う〜ん、仮面ライダーと聞くと、あの黒い戦闘員…。
美姫 「えっと、ショッカーで良いのよね」
多分。それを思い出すな〜。
美姫 「いや、思い出すって、アンタ仮面ライダーはそんなに知らないでしょう」
おう。だからこそ、ライダー=ショッカーが浮ぶんじゃないかな?
美姫 「最近のライダーには、そんなのはないってKが言ってた様な気もするけど」
そうなのか。じゃあ、ショッカーって、いつのライダーまで?
美姫 「いや、私に聞かれても。多分、初代とかじゃないのかな」
そうなのか!?
驚きだよ〜。
美姫 「いや、本当に驚いてる?」
何を仰るウサギさん。
美姫 「誰が兎よ、誰が」
ライダーをあまり知らなくても、充分に楽しめるSSだね。
美姫 「本当ね。素晴らしいわ」
続きが気になるな。
果たして、バーサーカーとはどんな戦闘を見せてくれるのか。
美姫 「次回も期待してますね」
それでは。