「あら、こんな夜更けに何の用かしら?」
「頼む。これ以上、無関係な人から力を奪うのはやめてくれ。それと、一成達に危害を加えたりしないでください。」
境内に待ち構えていたローブを纏った女性に対し、人間の姿に戻った俺はそう率直に切り出した。普段はへっぽこ魔術師の俺だが変身した状態では知覚能力が跳ね上がる。その感覚がこの神社に複数の人間の生命力が溜め込まれている事、一成達は少なくともまだ危害を加えられていない(魅了の類はかけられているかもしれないが)事を伝えていた。
「そういう訳にはいかないわ。私はこの戦争、何としてでも勝ちあがらなければいけないのよ。あの人と一緒にいる為に。それに、私は命を奪うほど力を奪ってはいないわよ。」
その言葉に俺は考える。彼女の言葉は嘘ではないと感じた。そして聖杯に願いたい何か切実な願いがあるのだとも。話している内に思い出したが、新都の方でガスが原因と思われる原因不明の昏睡事件があったという、おそらくはそれは彼女の仕業なのだろう。死者は出ていなかったと言う。そういう意味で彼女は最後の一線をきちんと守っている。だが、元から身体の悪い人ならもしかして死んでしまうかもしれないし、その日体調を狂わせた事で人生そのものを狂わせてしまう人が現れる可能性と皆無ではないのだ。殺していないという理由だけで見逃すわけにはいかない。
「・・・・・やっぱり駄目だ。活動するにはここに溜め込んだ魔力だけでも十分だろう。これ以上無関係な人に危害を加えないと約束してくれるなら俺はあんたに敵対しない事を約束する。他のマスターの命に関しても無闇に奪わないと約束してくれるなら協力してもいい。」
「へえ、アサシンを倒したあなたの協力が得られるなら、それは確かに魅力的ね。」
そう言って、女性がゆっくりと近づいてくる。そして、俺の方に手をのばした。
「!?トレース・オン(変身)」
そしてその瞬間に俺は変身した。女のローブの影から光る刃物が見えたのだ。同時に女の手から刃がのびる。その刃は俺の身体を刺した瞬間、変身が解除される。
「なっ!?」
俺は驚愕しながら何とか後ろに跳び引く。その瞬間、側方から飛び出す影が視界に入った。
「トレース・オン(投影開始)!!」
俺は原因不明に解除されてしまった変身ではなく、投影によって剣を生み出し構える。飛び出した影はその俺の剣を破壊し、そのまま俺を殴り飛ばした。
「ぐわあああ。」
吹っ飛び地面に叩きつけられる、俺。影は更に追撃をかけてくる。
「トレース・オン(変身)!!」
俺は変身し、その攻撃を受け止める。先ほどと違い変身は解けない。どうやら先ほどキャスターが使用したナイフのようなものが原因らしい。そして、そこで、俺は初めてその影の姿を確認した。
「葛木先生!?」
それは俺の学校の教師だった。ここの寺に住んでいる事は知っている。だから、ここにいてもおかしくはない。そう、いるだけなら。
「葛木先生、まさか操られ・・・・。」
自分に攻撃を仕掛けてきたと言う事実に操られているのかと思ったがすぐにそれに違う事に気付く。彼の目は正気だった。そして、何よりも彼自身からの明確意思を感じる。
「まさか、葛木先生がマスター何ですか!?」
「そうだ、私は彼女の願いをかなえる為に全力を尽くす。」
まさかと思い尋ねた問いに対し、葛木は肯定し、飛び掛ってきた。放たれた突きを俺は身体でまともに受け止めた。
「!?」
葛木が驚いた顔をする。葛木の動きは確かに人間を超えるほどで、また、特異な流れで読み難い。だが、こと身体強度に関してはサーヴァント以上である俺ならば不意を突かれたりでもしなければ大きなダメージを受ける事はない。
「RXチョップ!!」
攻撃が相手にHITした時、それは同時に最も隙ができる時でもある。動きの止まった先生に俺は一撃放ち昏倒させる。
「宗一郎様!!」
それを見て女が叫び、怒りをあらわにする。唱えていた呪文まで、中断して。
「許せない・・・宗一郎様を傷つけるものは絶対に許せない。」
そう言って、怒りをあらわにした彼女は呪文を唱えると強大な魔術を放とうとする。俺はそれに備えた。
「・・・・・・・ウェイブ!!」「トレース・オン(変身)!!」
強烈な衝撃波が生み出される。同時に俺はバイオライダーに変身して俺は上空にかわす。
「フレイム!!」
女は上空に跳んだ俺に対し、さらに追撃を仕掛けてきた。とてつもない熱量の炎が俺を襲う。まさかシングルアクションでこれ程強力な魔術を放ってくるとは思っていなかった俺は驚愕し、それをまともに喰らい、飲まれた。
「これで・・・・なっ!?」
そして、今度は女の方が驚愕する。バイオライダーの姿を形成していた魔力は女の魔術と相殺されて、変身を解除させたが、俺の本体までには届かなかった。そして、俺は炎を抜けると再び変身し、女に向かって蹴りを放ったのだ。
「RXキック!!」
女を貫く。だが、手ごたえ(足ごたえ)は無かった。ローブだけを残し、女は脱出したらしい。周囲を見回し、その姿を葛木の側に見つける。
「もう、やめてくれないか。」
ここまで見ていて葛木と女、あれほどの魔力を使う事からしておそらくはキャスターは信頼しあい、そしてお互いを大切に思いあっている事がわかった。それに、彼女達は人に危害を加えていない訳ではないが、それでも殺してはいない。だから、俺はこれ以上彼女等を傷つけたくは無かった。
「余裕のつもりですか?勝った気でいるので?」
「そうじゃない。けど、俺はできるなら傷つく人は失われる人は一人でも少ないでいて欲しいと思っている。だから、避けられる戦いは避けたいんだ。」
?・・・・そう言葉を発した後、俺は今の俺自身の言葉に何かひっかかりを覚える。今の言葉の中に俺自身が探している信念があるようで同時に何か一枚足りないような感覚を覚えたのだ。
「傲慢ですね。一体何様のつもりですか?」
「何様のつもりでもないさ。ただ、俺は・・・・・。」
ただ俺は何だ?俺は自分の中で探し続けた答えを見つけようとする。だが、その時だった。
「甘いな。そんな志では何も救えんぞ。」
その場に第3者の声が響き渡る。そして、次の瞬間、黒い影が舞い、女の身体が切り裂かれた。俺は突然の事、そしてあまりの速さに反応する事も出来なかった。そして、異形の化け物が俺の前に立ち、そして言葉をつむぎだした。
「衛宮士郎、犠牲を少なくしたいと真に願うなら、切り捨てる覚悟が必要だぞ。衛宮切嗣は世界を救う為に数百の犠牲をだした、南光太郎は一つの世界すら滅ぼした。それをお前はサーヴァント一人殺せず、為そうと言うのか?」
だが、そんな言葉は俺の耳に入らない。俺の胸に走る思いは唯一つ。
「何故、殺した・・・・・。」
「私は君を助けてやったのだ。彼女は決して君の言葉に耳を貸さなかっただろう。そして君に攻撃を仕掛けてきた筈だ。」
俺の言葉に化け物は平然とそう返す。その言葉に俺の中で怒りが増す。
「そんな事をお前が決め付けるな!!」
「お前は正義の味方なのだろう?ならば、無関係な者に害悪を為すこの者達を処断するのが役目であろう?」
正義の味方が害悪を為す者を処断するのを役目とする者?違う、それはすくなくとも俺が目指す道じゃない。俺が目指すのは・・・・・・・・。
俺の中に10年前の光景が蘇る。
目の前で大勢の人が死んだ。大勢の人がその先の可能性を奪われた。
死は絶望だ。なぜならば、その先には何もないから。その人が手に入れる筈だったもの、為す筈だったもの、可能性としてあったそれら全てが失われてしまう。
全ての人を幸せにする事など俺には出来ない。自分は万能とは程遠いし、人の幸せの定義などそれぞれである。万人に本当の意味での幸せを与えることなど例え万能でも程遠い。
けど、その先の可能性を守る事ぐらいはできる。その先にその人が幸せを掴む望みを残す事は不可能じゃない。
だから、俺が守るのは人の命でも幸せでもない。俺が戦う相手は悪じゃない。俺が守るものは・・・・・、俺が戦う者は・・・・・。
「俺は・・・・」
呟いたその言葉を詠唱とし、俺の姿が変化していく。黒と緑で形成されたその姿は黒と白の織り交ぜた姿へと変わる。胸から腕にかけて何本ものラインが生まれる。それはあたかも未来の可能性を示す無数の道を示すかのように。これが借り物でない俺の姿。
「俺は仮面ライダーシロウ!!!目の前の可能性を守る為に戦うもの。それを理不尽に奪おうとする者と戦うものだ!!!」
(後書き)
ついに、ついに真の主人公が登場しました。本当は最終話で登場させる予定でしたが、ここで登場させずにどこで登場させる!!ってなもんで変身させちゃいました。代りにRX形態の寿命が短くなってしまいましたが。
仮面ライダーシロウ(自らの信念を確立したシロウのライダーとしての唯一の姿、ただしRXとその変化タイプには変身不能になっている。)
ジャンプ力50メートル
パンチ力6トン
キック力18トン
100メートル2.4秒
必殺技
ライダーパンチ B−
ライダーキック B+
ライダーきりもみシュート B
ストーンフラッシュ A
フルチャージライダーキック A+
投影オリジナル武器 ?
おおー、仮面ライダーシロウの誕生の瞬間か。
美姫 「果たして、どんな力を見せてくれるのかしら?」
異形の化け物との対決の行方は!?
美姫 「こんなに温かいのは冬じゃないよー、と叫びつつ、次回を待て!」
では、次回を待ってます。