*今回はかなり内容がハードです。このssを読む人というかこのサイトに来る人は大概は18歳以上でしょうから大丈夫でしょうが、R指定くらいのつもりで、残虐シーンの嫌いな人は気をつけてお読みください。

 

 

 

「でも、遠坂、イリヤの奴、聖杯のことについて教えてくれるかな?」

 

「多分、無理でしょうね。」

 

イリヤの屋敷のある場所に向かう途中、ふと思ってきいてみるとあっさりと否定の言葉が返ってきた。

 

「おい、それじゃあ、どうするんだよ。」

 

「って、いうか、あなた、素直に話を聞いてくれると思ってたの?その方が驚きよ。今は聖杯戦争中、彼女は敵なのよ。そうでなくても魔術師は秘密主義だって言うのに。」

 

「うっ。」

 

俺は言葉に詰まる。確かに最もな話である。だが、しかし・・・・・

 

「けど、じゃあ、どうするんだ?話を聞きに行くっていったのは遠坂じゃないか。」

 

「そうね。だから、“教えてもらう”んじゃなくて、“教えさせる”のよ。拷問とまでは行かないけど、それなりに脅しつけてね。あなた、一度バーサーカーを殺したのよね?だったら、その間、足止めお願いね。」

 

「おい(汗)」

 

突っ込みどころが多すぎて何処から突っ込んでいいのかわからない。

敵とはいえ、あんな子供に無理やり吐かせるってのもそうだし、遠坂は一度バーサーカーと戦った事があるらしい(その時は一度殺した後、逃走したそうだ)。

その恐ろしさを知っていながら人をあっさり足止めに使う所もかなり突っ込みどころである。

 

「まあ、心配しないでもそんな酷い事はしないわよ。それにいきなりそんな事をする訳じゃなくて、まずは適当にかまかけてみるわ。それで話してくれればよし。そうでなくても反応を見る事ができれば“高確率の予想”を確信に変えられるしね。」

 

「う、うーん。」

 

いまいち納得いかず、うなっていると遠坂が俺を諭すように言ってくる。

 

「士郎、あなたがお人よしだっていうのは十分わかってるけどね、何か大切なモノを守りたいと思うのなら汚れる覚悟も必要よ。それとも、あなたにとって桜はその程度の存在?」

 

「そんなわけ無いだろ!!」

 

俺が叫ぶと遠坂は満足そうに頷く。

 

「それなら、いいわね?それから、いつでも撤退できる準備をしといて、あなたの身体速度からして逃げるだけならどうにでもなるわ。私も足を止めるぐらいの手段は持ってるしね。」

 

「ああ・・・わかったよ。」

 

俺は頷く。その全てに納得したという訳じゃないけど、それは確かに正しさを含んでいた。俺はその言葉を胸にとめ、そしてイリヤの元へ向かった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・何か変な感じがしないか、遠坂。」

 

俺はアインツベルンの、つまりイリヤの屋敷がある森に入って以来、妙な違和感というか嫌な予感を覚えていた。それについて遠坂に尋ねてみる。

 

「そうね。私も妙に思っているわ。侵入者が立ち入ったっていうのに何の反応もない。余裕のつもりかしら。」

 

それに対して返ってきた答えは俺の考えていたものとは少し異なったが言われてみれば確かにそれも妙な話である。

 

「とにかくわからないことをあれこれ言っても仕方ないわ。先に進みましょう。どの道ある程度の危険は敵陣に乗り込むと決めた時から覚悟していた事よ。」

 

遠坂がそう言って先に進み、俺もそれに続く。

そして、屋敷が見えてきた時、俺は嫌な香りを感じて、先ほどから感じていた違和感が一気に強くなる。

 

「これって・・・・・。」

 

「血の匂い!?」

 

そして、俺達は走り出す。そして、そこにはまるで戦闘があったようにあちこち破壊された跡があり、そして“二人分”の死体が転がっていた。

 

「うっ、お、おえ、・・・・・・」

 

それを見た遠坂が口元を抑え、そして離れた所まで移動すると、そこで耐え切れなくなったように吐き出した。

幾ら彼女が魔術だったとしても無理の無い事、それほどに遺体の状況は酷かった。

顔面は原型がわからぬほどに破壊され、一人は目玉をえぐられ、一人は潰された痕がある。

傷は全身に及び、しかも、傷のほとんどが急所を外されている。これでは楽に死ぬ事すら出来なかった筈だ。

死に対し、ある種の抵抗を持つ俺ですら、眼をそむけたくなる。

 

「イリヤじゃない・・・・。彼女達は一体・・・・。」

 

それが誰かははっきりしなかったが体格からしてイリヤでないことはわかる。

場所を考えれば彼女の関係者、屋敷の立派さを考えれば使用人か何かなのかもしれない。

だとしたら、彼女達は聖杯戦争とは直接的には無関係な人間という事になる。

その事に対し、身体中から怒りが湧き上がってくる。

だが、今はやるべきことがあった。だから、その怒りを必死で抑える。

 

「遠坂、俺はイリヤを探してみるけど、・・・・・・大丈夫か?」

 

「・・・ええ。みっともない所をみせちゃったわね。大丈夫よ。」

 

吐き終わった遠坂の側により、声をかける。遠坂はまだ、気分の悪そうな表情をしながらも気丈にも頷いた。

そして、俺達は二人一緒に当たりを探し始めた。

 

 

 

 

 

「特に気になるものもないし、誰も居ないわね。」

 

1時間ほど当たりを探ったが結局何も発見できなかった。

遠坂が小さく溜息をつく。

 

「ああ、状況からしてここでサーヴァント同士の戦いがあったのは間違いないと思う。それで何かあったか・・・・。」

 

「敵サーヴァントが彼女達を殺したのかしら。」

 

「いや、それは無いと思う。残りのサーヴァントはキャスターとランサーとセイバーだけど、ランサーにはこんな大破壊を起こす能力は多分ないし、セイバーやキャスターもこんな事はしないと思う。」

 

「それはあなたの信用しすぎじゃないの?」

 

遠坂は疑う。だが、俺は彼女達を信じていた。

 

「そんな事は無い。あいつらはそんな事をする奴らじゃない!!」

 

「まあ、いいわ。それに関しては議論したって答えが出る訳じゃないでしょうから。それより、イリヤの姿がどこにも無いって事は連れ去られた可能性が高いわね。殺さず、連れ去る。これで彼女が聖杯である可能性はますます高いわ。」

 

「そうか・・・・。イリヤ、無事だといいけど。」

 

俺は遠坂にも聞こえない位の小さい声で呟き、そして尋ねた。

 

「それで、これからどうする?」

 

「そうね、とりあえず一回家に戻ってアーチャーとも話し合ってみましょう。」

 

「わかった。けど、その前に・・・・・。」

 

俺は答え、変身すると穴を掘り始めた。二人の亡骸を埋めるためにだ。

 

「あんた、見ず知らずの人の相手の為に何、そんな事してんのよ?今は時間が惜しいっていうのに。それにそんな行為に意味なんて無いわ。死者を悼むなんていうのは唯の自己満足よ。」

 

それを、見て呆れた様子の遠坂。俺は穴を掘り続ける。

 

「・・・けど、こうせずにはいられないんだ、俺は・・・・・。」

 

俺がこの場所にもっと早く来ていれば彼女達は死ななかったかもしれない。

それが自惚れた考えだって事はわかっている。

こうして、墓を掘る行為も遠坂の言うように単なる自己満足に過ぎないのかもしれない。

それでも、・・・・・・・せめて、そうせずには居られなかった。

 

「・・・・・はあ、全くあなた、心の贅肉つきすぎよ。」

 

そう言って、遠坂は溜息をつく。

だが、それ以上何も言わずただ、黙って待ち続けてくれた。

それから十分な大きさの穴が掘れると二人を並べるように埋めると、黙祷をささげ、俺達はその場所を立ち去った。

 

 

 

 

 

「戻ったか。その表情では、成果は無かったようだな。」

 

遠坂の家に戻った俺達の顔を見てアーチャーは開口一番にそう言ってきた。

確かに、俺達は今、浮かない表情をしているだろう。

 

「ええ。成果・・・・と呼べるものはなかったわね。ちょっと予想外の状況はあったけど。それより、アーチャー、私達が留守の間、こっちでは何か特別な事はなかった?」

 

「ふむ、しいていうなら客人が尋ねてきたことぐらいかな。」

 

遠坂の言葉にアーチャーがそう答える。

“客人?”っと、心当たりが無いのか不思議そうな顔をする遠坂。

 

「うむ、敵のマスターとサーヴァントだ。」

 

「「なっ!?」」

 

いきなり飛び出した重大な事実に俺と遠坂は同時に声をあげた。それに対して、アーチャーの奴は平然とした表情をしている。

 

「それで、どうなったの!?桜は無事!?」

 

「その点に関しては心配いらない。と、いうか、君が居ないとわかると直ぐに帰ってしまってな。何でも話しがあるらしい。」

 

「話?一体何のはなしをするっていうのよ?それに、あんたはそれを黙って帰したっていうの!?」

 

訝しげな顔をする遠坂。聖杯戦争中にマスター同士が話し合いというのはどうも異常な事らしい。

 

「話の内容は聞いてはいない。それから後者の質問に関してはこちらも今は間桐桜を守る事が至上命令だと思ったのでね。特に深追いはしなかったのだが、まずかったかね?」

 

「・・・いえ、その判断で文句は無いわ。それにしても一体・・・・・・。」

 

その目的が掴めず考え込もうとする遠坂。その時、アーチャーが口を開いた。

 

「どうやら、答えが向こうからやってきてくれたようだな。」

 

「!! サーヴァントか!?」

 

サーヴァントはサーヴァントの気配を敏感に感じられる。急いで外へと向かう俺達。

そして、そこには・・・・・・

 

「ふむ、どうやら今度は入れ違いにはならずにすんだようだな。」

 

「バゼットさん!!」

 

そこにはバゼットさんとその後ろにセイバーの姿があった。彼女達も俺の姿を見て驚いた表情をしている。

 

「シロウ!! 何故、君がここに・・・・。だが、まあ、好都合だな。」

 

そして彼女は一人で納得したような表情を浮かべる。

それに対し、遠坂が彼女を睨みつける。

 

「それで、何のようかしら?何か話す事があるとかふざけた事を言っているようだけど。」

 

「ふむ、その通りだ。」

 

睨む遠坂に対して平然とした表情で答えるバゼットさん。

そして彼女の一言で遠坂の表情が変わる。

 

「君は此度の聖杯戦争において聖杯が何であるか知っているかね?」

 

「!!」

 

「ふむ、その表情からしてどうやら少なくとも感づいてはいるようだな。そう、イリヤ・スフィール・アインツベルン、彼女が、正確に言えば彼女の心臓が聖杯だ。それを踏まえて言う。あれは今、言峰の手にある。休戦を申し入れたい。」

 

そう、彼女は言ったのだった。

 

 


(後書き)

うわっ、やっちゃった。当初はここまで酷いシーンはいれるつもりは無かったんですが・・・・・。残るはあと、4話の予定です。いよいよ、全ての結末が明らかになっていきます。

 




今度はイリヤが攫われてる〜〜!
美姫 「イリヤを攫った言峰。その意図は……」
まあ、意図は一つだろうけどね。
美姫 「それよりも、イリヤは無事なのかしら」
そっちの方も気になる。
後、4話の予定みたいですが、続きが気になる〜。
美姫 「でも、4話で終わってしまう」
うぬぬぬ。
美姫 「兎も角、次回も楽しみに待ってます」
ではでは〜。



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