「遠坂、桜を頼む!!変(トレース)・・・・・・・・身(オン)!!」

 

 

戦闘の気配を察知した俺は、それまで抱きかかえていた桜を地面に下ろすと変身し、一跳びで階段の中ほどまで跳び上がり、さらに一跳びで境内の中にまで階段を全て跳び越す。

すると、そこには重症を追ったキャスターと葛木の姿、とそうしたであろう“ぬえ”、いや言峰とランサーの姿があった。

そして、言峰の腕の中にはぐったりとして意識があるのかどうかもわからない虚ろな目をしたイリヤの姿があった。

 

「貴様・・・・」

 

それらの光景を見て、さらに殺された二人の事が思いだされ、俺の身体中から怒りがあふれてくる。

 

「ふむ、思ったより早かったな。これでは予定が狂ってしまう。」

 

それに対し、言峰は全く困っていない態度で困ったような台詞を口にする。

そして、ランサーに命じた。

 

「ランサー、しばらく時間を稼げ。私は儀式の準備をしなくてはならんのでな。」

 

「ああ、てめえの命令は気にいらねえが、こいつとは一度決着をつけたかったからな。」

 

ランサーが答え、言峰が走り出そうとする。

 

「待て!!」

 

俺は言峰を追おうとして、しかし、ランサーによって阻まれた。

 

「悪いが、お前の相手は俺だぜ。」

 

「くっ。」

 

槍を突きつけ、道を阻むランサー。

その時、アーチャー達が追いついてくる。

アーチャーは俺の代りに桜を抱きかかえてきたらしく、その直ぐ後ろに遠坂がいた。

 

「一人で突っ走るんじゃないわよ、馬鹿!!」

 

いきなり罵声を浴びせかける遠坂、しかし、今はそれどころではなかった。

 

「それより、イリヤが連れて行かれた!!この先だ!!」

 

そう言って、言峰が走り去った方を指し示す。

その言葉を受けて遠坂は直ぐに行動に移った。

 

「アーチャー、追って!!桜は私が面倒みるわ!!」

 

「了解した。」

 

そう言ってアーチャーが走り出す。

それをランサーが妨げようとするが今度は俺が止める。

 

「お前の相手は俺なんだろ?」

 

ランサーの槍の腹を腕で止め、俺が言う。

それに対してランサーはニヤリと笑った。

 

「そうだったな。なら、まずはお前から片付けさせてもらうぜ!!」

 

言葉と共に槍を振るうランサー。

俺は後方に飛び引きながら同時に武器を投影する。

 

「投影開始(トレース・オン)!!」

 

攻撃をかわされると同時に前に進み、さらに追撃を仕掛けてきたランサーの槍を俺はシャインセイバーで防ぐ。

それに対し、感心したように口笛を吹くランサー。

 

「ほお、武器を使うようになったのかい。腕前の方はいまいちだが、その身体能力で繰り出されるんじゃ、馬鹿にできねえな。」

 

そう言って、今度は連続で槍を放ってくる。

そして、俺はその動きに驚愕させられた。

一撃一撃が以前戦った時よりも遥かに早く、そして破壊力があり、俺はその全てには対応しきれない。

 

「くっ。」

 

防ぎきれない攻撃が身体を突いていく。

この身体でなければ、何度殺されていたかわからない。

 

「うおおお!!!」

 

何とか状況を変えようと、何撃かまともに喰らうのを覚悟で突っ込み、大降りの一撃を放つ。

しかし、そんなやけくそなような一撃が当たる筈もなかった。

あっさり、かわされ、そしてカウンターで放たれた槍が俺の目の前に迫る。

 

ズガアアアアアアアアン

 

だが、その槍が俺に突き刺さる事は無かった。

その時、キャスターが放った魔術がランサーにぶちあてられたからだ。

吹き飛び、そして起き上がるとキャスターを睨みつけるランサー。

 

「てめえ・・!!」

 

「まさか卑怯などとは言わないでしょうね?」

 

それに対し、皮肉るような表情を浮かべるキャスター。

ランサーの憤怒がさらに強くなり、途中から嘲るような表情に変わる。

 

「別にそんな事はいわねえさ。だが、横槍なんてのは俺が最も嫌いな事の一つだ。まず、お前の方から殺ってやる・・・・・っと、思ったが、今のが最後の一撃だったみてえだな。やっぱ、お前は後回しだ。」

 

「くっ。」

 

キャスターが呻く。

そこで、気付いた。キャスターの魔力がもうほとんど残されていない事に。

そして、ランサーは再び俺の方に向き合って言った。

 

「前回はクソな命令の所為で全力が聖杯戦争の参加者かもしれねえ奴には全力が出せなくってな。思いっきりやれる今回の戦いは楽しみにしていたんだが・・・・・。期待外れか?」

 

ランサーは少し落胆したように言う。そして、奴は続けた。

 

「見た目は随分様変わりしたようだが、強さはあまり変わっていないようだな。いや、むしろ前より弱くなったんじゃないのか?もっと、俺を楽しませてくれよ。」

 

俺に対する失望の言葉。それは多分正しい・・・のだろう。

恥ずかしい事に今になって俺はその事実に気付かされた。

かって、Black、そしてBlackRXを模倣していた頃の俺はその戦闘経験までもある程度模倣していた。

故に英雄たるサーヴァントとも渡り合えた。

だが、今の固有の姿を得た俺は基本スペックこそ大幅に上がっているものの技術模倣に関しては前よりもできなくなっていたのだ。

アーチャーに勝てたのは接近戦において大きな火力を持たない奴との相性の差が大きかったのだろう。

ここ数戦の俺はただ、その強大な身体能力に頼って戦ってきたに過ぎない。

自分がどれほど未熟だったのか。また、自惚れていたのかを自覚する。

 

「けど・・・・・。」

 

声に出して呟く。

けど、俺は負ける訳にはいかなかった。

例え、相手がどれほど強大だろうが、仮面ライダーを名乗る以上、何かを守ろうとする戦いにおいて負けは許されないのだから。

そして、自分とて、伊達に今まで幾多の戦いを繰り広げてきたのではないのだから。

俺は静かに構えなおす。

 

「ほう。」

 

俺の雰囲気が変わったのを感じてランサーが嬉しそうな声をあげる。

以前のような反則的な模倣能力は無くとも、身体で積み重ねてきた経験は身について宿っている。

自分の僅かな経験と、先人の遺産、その全てを持って戦う。

 

「いいねえ。さっきまでとは雰囲気が違うぜ、お前。今度は楽しめそうだな。」

 

嬉しそうな笑みを浮かべるランサー。

そして俺とランサーは同時に飛び出した。

 

ギィィィン

 

自らの優位たるパワーを生かそうと全力で放った一撃はランサーに簡単にいなされてしまう。

だが、そこで、俺は剣を捨てた。

 

「何!?」

 

驚愕の声をあげるランサー。

そして、俺は奴の懐にもぐりこんで腹に一撃を見舞う。

 

「ぐふっ。」

 

まともに喰らい、口から体液を噴出すランサー。

そこに更に追撃を加えようとするが、ランサーもそこまで甘くは無い、攻撃を喰らいながらも手放さなかった槍を凪いでくる。

 

ビュン

 

俺はそれを飛び上がってかわす。

そして、俺は上空に舞い、くしくも前回と同じ形になる。

お互いの必殺の“突き”俺の蹴りとランサーの槍が交差しようとする。

 

「フルチャージ・・・・」

 

「因果逆転の(ゲイ)・・・・」

 

だが、その時、ランサーの表情が突然歪み、その槍の照準の先が変えられた。

 

「槍(ボルク)!!」

 

槍は一直線に向かってキャスターの方に飛んでいく。

そして、俺の方ももはや蹴りをとめられない。

 

ズシャ

 

ランサーの槍がキャスターの心臓を貫くと同時に俺の蹴りがランサーを貫いた。

 

「くそ・・・・言峰の野郎・・・。」

 

ランサーが表情を歪め、口から血を吐きながら毒づき倒れる。

 

「おい、ランサー、何であんな事を」

 

俺はランサーは抱き起こし問い詰める。

それに対し、ランサーは身体が消えそうになりながら答えた。

 

「あの野郎・・・、言峰の奴が令呪を使いやがったんだ。くそっ、あの野郎最初からこれを狙ってやがったな。」

 

その言葉に俺は拳を振るわせる。

奴はマスターでありながらランサーをとことん侮辱したのだという事がわかったからだ。

 

「おい、小僧、お前、名前を何ていうんだ。よく、考えれば、今までてめえの名前すら知らなかったな。」

 

「衛宮、衛宮士郎だ。」

 

その時、突然、名前を尋ねてきた俺に対し、俺は名を名乗る。

それに対して“士郎か・・”と一言反芻した後、ランサーは自分の槍を差し出してきた。

 

「おい、士郎、てめえにこの槍くれてやる。この先、何かの役には立つだろう。その代わり、俺の変わりにあの野郎をぶっ飛ばしてくれ。そうじゃなきゃ、俺の気がおさまらねえ!!」

 

「・・・・・わかった。必ず奴を倒す。」

 

答え、俺は槍を受け取る。“頼んだぞ”それだけ言い残してランサーは消えた。

 

 

 

 

 

「キャスターの方は?」

 

「消えた。」

 

ランサーに誓いをささげ、振り返るとそこには既にキャスターの姿はなかった。

葛木の奴がポツリと答える。

 

「士郎・・・・。」

 

「遠坂、俺はアーチャーの奴を追う。」

 

そこで話しかけてきた遠坂に対し、俺はランサーの槍を握り締めそう答える。

だが、その時だった。

 

ゾクン

 

悪寒と共に圧倒的な魔力を感じ取った。

そして、それと同時に今まで仮死状態だった筈の桜が目覚め、激しく痙攣を始め苦しそうな呻き声をあげ始める。

 

「あぅぅぅぅ!!・・・あっあぅぅう!!!・・・・。」

 

「なっ、どうしたんだ、桜!!」

 

「な、何これ!!」

 

遠坂にも原因がわからないらしい。

俺は解析をかける。

 

「聖杯の欠片が反応してる!?」

 

俺は声にだす。だが、それ以上はどうすればいいのかわからなかった。

このままでは桜は危険かもしれない。だが、どうにもできない。

 

「・・・・・士郎、桜の中の蟲をすべて殺して。」

 

それに対し、遠坂がそう言った。

俺はその意図が理解できず、驚く。

 

「えっ!?」

 

「桜は聖杯の欠片だけでなく全身を聖杯として改造されている。聖杯である事が原因ならそうで無くせばこの状態をどうにかできるかもしれない。

 

「け、けど・・・・。」

 

俺は反論しようとする。

遠坂の言ってる事は一見、理に適っているように思える。だが、・・・・・・・・・

 

「そう、これは賭けね。完全に専門外だから、私はこの蟲がどんな機能を担っているのかわからない。蟲を除去すればもっと酷い事になる恐れもあるわ。けど、この状態のままでも恐らく桜は助からないし、最悪もっと酷い事になる恐れもある。賭けは私の趣味じゃないけど、ここは試してみるより他ないわ。」

 

「そんな、賭けなんて・・・・。」

 

俺がそれに躊躇っていると、遠坂が冷たい一言を放ってきた。

 

「もし、士郎ができないって言うなら私はここで桜を殺すわ。」

 

「!!」

 

その、あまりに予想外な言葉に俺は硬直する。

 

「状況はわからない。けど、あの蟲じじいがつくるようなものがまともであるとは思えない。このままでは桜は“害”になる可能性が高いわ。だったら、私は桜を殺す。それが冬木の町の管理者としての私の役目よ。」

 

「遠坂、お前本気で言ってるのか?」

 

害であるという“可能性”があるだけで、桜を実の妹を殺すというのであろうか。

 

「ええ、本気よ。本来なら有無を言わず、ここで殺すのが正しい。けど、私はあえて、ここで心の贅肉を持つわ。あなたがこの娘を救える手段を試すのなら、その結果がでるまで見逃してあげる。言っとくけど、私を止められるなんて思わないほうがいいわ。確かにあなたは私より強いかもしれない。けど、私には切り札があるの。1戦だけなら、勝てるわ。」

 

そうはっきりと断言する遠坂、そして決意をした。

 

「わかった。桜の中の蟲を殺す。けど、その結果、悪化したとしても桜が本当に害な存在とわかるまでは俺はけっして彼女に手出しはさせない。」

 

「そう、その時は私達、敵同士になるかもね。」

 

そこで、桜を寝かせ、俺は力を集中し、そして放った。

 

「・・・・・キングストーン・フラッシュ!!」

 

 

 


(後書き)

あー、今回ちょっと設定改変をしてしまいました。すいません。ラスト2話です。後、予告していたアーチャーの活躍が次回に伸びてしまいました。

 

それにしても今回自分で書いて違和感があるんですが、それがどこだかわからない。ですんで、ここはこうじゃないかと、ここがおかしいという意見があればよろしくお願いします。




桜の中の蟲を殺した時、一体、どうなるのか。
美姫 「果たして、賭けに勝つ事ができるのかしら」
そして、アーチャーの活躍は。
美姫 「全ては次回のお話ね」
うんうん。大人しく、次回を待つとしよう。
美姫 「では、また次回をお待ちしてます」



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ