士郎の後ろには寝かされた彼が庇った凛の姿があった。構えた双剣が崩れ落ちる。

 

「投影開始(トレース・オン)」

 

そして再び双剣を生み出す。その日本の剣はアーチャーの使っていたそれを参考に仮面ライダーシロウの武器としてうみだされたもの“光(こう)”と“陰(いん)”。

 

「その剣で、私を切るの?お兄ちゃん。」

 

それを見てクイーンオルフェノクとなったイリヤは言う。それは嘲りとも悲しみとも付かぬ声だった。それに対して士郎は静かに答えた。

 

「いや、俺はイリヤを助けてみせる!!」

 

「無理よ。」

 

その言葉と共に、炎の魔術が放たれた。士郎はそれをかわし、剣で払う。神秘はより強い神秘によって打ち消される。イリヤの生み出した炎は俺の剣によって打ち消された。

 

「イリヤ、もうやめるんだ!! 俺達が戦う必要なんてないだろ!! すべてを憎むなんてそんなのだめだ!! 俺が言える事じゃないかもしれない。俺がイリヤから最初に幸せを奪ってしまった人間なのかもしれない。けど、だったら俺が親父の代りになる。一緒に暮らそう!!」

 

俺はイリヤに呼びかける。支離滅裂な言葉を、ただ、訴えたい想いを投げかける。だが、それを見てイリヤは笑った。

 

「お兄ちゃん、馬鹿ね。そんな事で私が今更、元に戻れると思ってるの?見せてあげる私がどこまで人間から離れてるのか。」

 

その瞬間、魔方陣から“影”が現れた。そして、それが士郎に迫る。

 

「超変身(トレース・オン)!!」

 

赤い戦士から青い戦士へとその姿が変わる。そして、その手にあるのはランサーの槍だった。そして、本家ランサーの如き、いや、身体能力だけ見ればそれ以上の俊敏な動きでこれを交わす。

この力、衛宮士郎の“変身“とは元々あった固有結界が変質したものであり、戦士の象徴たる武具を媒体とする事で、その力を継承し、自らに重ねる事ができるという魔術であり、また、衛宮士郎の内部とその表面にのみ展開する事で世界からの干渉を最小限にしか受けないものでもあった。

 

「くっ。」

 

凛を抱きかかえて、さらに影をかわす。そして、僅かに影が触れた時、士郎は急速に力が奪われていくのを感じた。

 

「!!・・・なんだ!?」

 

「不思議? ふふ、教えてあげるよ。この影はね、アンリ・マユって言うの。それは“この世の全ての悪”そういう概念を押し付けられたもの。自分達が善と信じたい者達が生み出した生贄。前々回の聖杯戦争でアインツベルンが召喚したんだけど、その時は何の力も持たないただの人間と同じような存在だったわ。けど、聖杯の魔力と一体化したら・・・・」

 

 そこで、言葉を止め、影を放つ。今度はそれが手をかすり再び力が奪われる。

 

「こんなに凄い存在になっちゃったの。全ての悪として定められた概念のこの存在は、善を飲み込み、悪と一体化するわ。概念の要素が強い英霊にとってはまさに天敵ね。今のお兄ちゃんのその姿、見た目からして英霊を模倣してるんでしょ? 本物よりは影響が少ないでしょうけど、その影響は無視できないわ。」

 

楽しそうに笑いながら説明するイリヤ。そして影はさらに侵食し、次第に周囲全てを飲み込んで言き、士郎はそれに囲まれてしまった。

 

「くそっ!!」

 

 飲み込まれる、そう思った時だった。士郎の後方より、彼の前に一つの影が飛び出した。

 

「何?」

 

 イリヤの驚いた声、全身黒い姿をした一人の存在が、影を食い止めていた。その腰のベルとより、生み出された光が影を受け止めている。そして、その姿は士郎のよく知るものだった。

 

「光太郎さん!?」

 

 仮面ライダーBlackRX、かってそう言われた存在、かって士郎の命を救った存在が今、目の前にあった。そして、彼は口を開く。

 

「士郎、今がチャンスだ。」

 

「チャンス?」

 

 その言葉に思わず問い返す。光太郎は仮面ライダーBlackRXは頷いた。

 

「僕は結局、一つの世界を滅ぼすことでしか世界を救えなかった。君も、そうなのか、あるいは違うのか、君の答えを示してくれ。」

 

 士郎はその言葉に頷く、凛を足元に寝かせると、再び、その姿を赤の戦士に変えた。

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

 そして、高く飛び上がり、影を飛び越えようとする。それを見て、影を伸ばし妨げようとする。それを士郎は刀を振るって打ち消す。

 

「真(受け継がれし)・・・・・・」

 

 キングストーンの力を最大源にまで引き出す。今まで歩んできた正義の味方という道、自分自身の信念、変身という魔術、それらが“悪を討つ”という概念を積み重ねてきた戦士の技と一体化し、一つの形へと昇華する。

 

「ライダーキック(正義の技)!!!!!!!」

 

 キングストーンと聖杯、二つの特大の神秘より引き出された絶大な魔力同士がぶつかり合う。

 

「イリヤ!!」

 

「嘘、こんな魔力がありえる訳ない!!」

 

 イリヤの名を呼ぶ士郎。予想外の事態に発狂に近い叫びをあげるイリヤ。その叫びに応じるように影の力が強くなる。

 

「くっ・・・・・」

 

「士郎なんて・・・士郎なんて・・・・・」

 

 幼い頃より、自分でもはっきりとは気付かない感情を内に秘め、言峰に壊され、アンリ・マユと結びつく事で変異していた心が乖離し、彼女本来の心が見えてくる。そして、士郎は叫んだ。

 

「イリヤ、俺が親父の代わりにお前の家族になる!! 一緒に暮らそう!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、イリヤの目から一粒の涙がこぼれた。そして、その瞬間、膨張した魔力が影を貫き、そして、イリヤを貫いた・・・・・・・・。

 

イリヤの身体が崩れていく。蜂のオルフェノクとなった姿のなかから、元の人の姿が現れ、そして彼女は崩れた。

 

ポス

 

 それを士郎が抱きとめた。いつの間にか、彼も元の姿に戻っている。そして、抱きとめた士郎にイリヤの心臓の音が伝わってきた。

 

 

 

“悪を討つ”という概念を持つ技は、士郎の信念と一体化し、“悪のみを討つ”という技へと昇華し、聖杯の魔力と共にイリヤと一体化したアンリ・マユの、それのみを、しかも、その中の“悪”という概念のみを討ち貫いのだ。

 

「士郎・・・・・・」

 

 そんな彼の姿を光太郎は羨望の目で見ると、そのまま何も言わず、立ち去って行った。そして、それから数ヶ月の月日が流れた・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、本当にいっちゃうんですか?」

 

「ああ。どうしてもやらなくちゃいけないことだからな。」」

 

聖杯戦争の後、桜とイリヤは人形師によって、新しい体を作ってもらい(対価は間桐の資産の8割を支払った)今は元気に暮らしていた。イリヤとは約束通り、衛宮家で士郎と一緒に暮らすようになり、桜は前と同じように、毎朝、家を訪ねてくる。それに、何故か、姉の凛の方も。

それから、セイバーは今も具現化している。バゼットの使い魔として彼女についているのだそうだ。今回、アンリ・マユの“悪”という概念を消滅させた事で、アンリ・マユはただの人として、転生の輪に加わる事になり、聖杯は正常な状態に戻った。セイバーはこのまま限界を続け、できるなら次の聖杯戦争で願いを叶えるつもりだと言う。

 

「ちゃんと、帰ってきなさいよ。約束はまもらなくちゃいけないんだからね。」

 

「ああ、わかってるよ。イリヤ。」

 

 だが、全てが片付いた訳では無かった。オルフェノク、その存在が大量に現れつつある事を、知り合いのライダーの先輩より士郎は聞いたからだ。人間の進化体、その存在に対し、どう対処していけばいいのかはまだ答えがでなかったが、どの道彼にはその状況を放って置くことなど出来なかった。

 

「東京の方にオルフェノクを纏める組織があるらしい。まずは、そこの人に会って話しをしてくるよ。」

 

「オルフェノクと人の共存ねえ。はっきりいって、夢物語に近いわよ。」

 

「かもな。けど、やってみなくちゃわからないだろ? 少なくとも俺はやる前から諦めたりしたくはない。」

 

 士郎はバイクにまたがる。それは、聖杯戦争でライダーとして召喚された本郷猛の宝具サイクロン号だった。聖杯戦争後も何故か具現化し続けたそれは、今は彼の愛機となっている。

 

「それじゃあ、行ってくるよ。」

 

 そして、士郎はバイクを走らせる。彼の戦いはまだ、始まったばかりだった。

 

                   To be continue 555 with masked rider sirou

 

 

 


(後書き)

終わったああああああ!!!!最後の方、もう滅茶苦茶ですいませんでした!!キャラの性格もおかしいし、全然FateじゃないよOTL

こんな作品ですが、最後までお付き合いくださった方どうもありがとうございました。

一応この話は士郎が555の世界へ行く所へ続くのですが、今のところ執筆の予定は未定です。それでは、本当にみなさまありがとうございました。




お疲れさまでした。
美姫 「お疲れ〜」
士郎の聖杯を巡る戦いは、これにて幕を閉じたけれども…。
美姫 「彼の理想を追いつづける戦いは、まだこれから」
それでも、とりあえずは、一つの大きな戦いが幕を降ろした。
美姫 「うんうん。本当に、面白い作品をありがとうございました」
ございました。
美姫 「それでは、この辺で」
ではでは。



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