初まりは秋。
どうしようもなく普通で平凡な秋の一日。
夏が終わったばっかりでまだ残暑が残る以外は何も変化がない日
彼女は世間一般の高校生の定義に当てはめるならば、異常だった
別に性格、身体などに問題があるのではない、むしろ彼女は至極気さくで友好的な性格であった
容姿も整っており、女ならば誰もがうらやむような完璧な容姿だった
彼女は歌手だった。
おそらく、今現在日本でもっとも人気のある歌手だった
だから、彼女に友達はいなかった
日本一の歌手の彼女のスケジュールは多忙を極めた
彼女はバラエティー番組等に出ることをせず、音楽活動にのみ専念したが、それでも(日本一の歌手ゆえに)学校に行ける時間は作り出せなかった
番組等に出ない故に彼女は同じような立場にある人の友達ができなかった
悩んだ末に彼女の両親は彼女を転校させることに決めた
彼女が形式的に籍を置いていた学校は入学以来ほぼ一度も顔を出していなかった
今更顔を出しにくかろうという両親の配慮によって決まった
転校と同時に仕事のペースも減らし、彼女は学校になるべく通えるようにもした
かくして彼女は桜花高校に転校した
椿鈴音 桜花高校1年A組 日本一の歌手にして高校生 容姿端麗 成績も抜群
桜花高校で彼女はかけがえの無いものを手にする
それは普通の高校生なら誰もが持っている平凡という名の普通の幸せ
それと・・・・
新式日常 第2話「今更情報」
9月1日(水)
AM8:40
桜花高校1年A組教室
俺は自分の机から避難していた
理由?
ホームルームが終了し、担任が出て行った途端、椿の周囲に女子男子問わず集まってきて押しつぶされそうになったからだ
ついでに言えば、教室の外も人が群がっている
噂千里を走る・・・
正しくはないが、今ばかりはこれが正しいと思った
しかし、椿は何者なんだ?確かに顔は可愛いとは思うが、それだけでここまで人は集まってこないと思うんだが・・・
「正、椿さんは何者なんだ?って顔してるね」
「どんな顔だよ、それよりお前は椿のとこに行って話しを聞きにいかないのか?」
こうゆうゴシップ関係は一番こいつが好きそうと思うんだが
「ちっちっち、甘いね正、情報とは独占してこそ意味があるのさ。全員が知っている情報など知ったとこで何もならないよ」
「・・・そうかよ」
こいつとは中学からの付き合いだが未だに行動がわからんな・・・
「まぁ、それは良いとしてだ。正、本当に椿さんのこと全然知らないのかい?」
「当たり前だ、初対面の人間を知ってるわけがないだろう」
それを聞いて二郎は「時代遅れの人間はこれだから・・・」という顔をする
こいついつか殺してやる・・・
「あのね、椿さんは現在日本で一番有名かつ、一番人気がある歌手なんだよ」
・・・・・・・・・歌手?
「補足して説明すると、4年連続でレコード大賞をとったり、日本人で初めて世界中で売れに売れた曲を出したりしたんだよ」
「ほう」
「だから、いくら正が時代遅れで情報に乗り遅れまくって、昭和世代の生き残りみたいなのでも知っていないはずはないんだけど・・・」
絶対に殺す、覚えてやがれ
「マジで知らないの?」
更に二郎が聞いてくる
むう・・ここ4年くらいの記憶を思い返してみるか
4年前・・・母さんが死んでそれどころじゃなかったな
3年前・・・母さんが死んで喪に服すとか言ってたクソ親父が速攻で再婚相手見付けてきて結婚しやがったんで更に混乱してたな・・・
2年前・・・ここは年中剣道ばっかしまくってテレビを全く見なかった記憶があるな
1年前・・・剣道ばっかしてたら成績がデッドゾーンになったんで勉強に明け暮れてた記憶が・・・
そして最近・・・受験戦争でできなかった剣道を思う存分やってて・・・
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・マジで知らないみたいね」
「ああ・・・・」
「正、もうちょい世間の情報とかに気を配った方が良いんじゃないかな・・・」
「今回だけはその忠告を真面目に受けておこう・・・」
椿の周囲と教室前の人並はまだ衰えていなかった
あとがき
ここまで読んでくださった方たち、ありがとうございます
きりしまです。
徒然なるままに第2話を書いてみました
いかがだったでしょうか?
良ければ感想などお願いします
正って、一体…。
美姫 「……」
おーい、美姫?
美姫 「黙ってて。続きを読んでいるんだから」
そうか。……って、ちょっと待て待て!
俺を放っておくな。
美姫 「だったら、さっさとこっちに来なさいよ」
へいへい。