別に何も思っていなかった

 

彼は友達、私がこの学校で出来た最初の友達

 

特別な感情はなかった

 

少なくとも嫌いではないけど、好きとゆうわけではない

 

ただただ、そこにそうあるのが当然であるかのような付き合い

 

特別な感情はなかった

 

――少なくとも今は

 

 

 

 

 

 

新式日常 第6話「変化の兆し」

 

 

 

 

 

 

9月10日(金)

 

 

PM12:30

 

 

桜花高校屋上

 

 

 

 

「ほら、約束のお前の分の弁当」

 

誰もこっちの方を見てないことを確認して渡す

 

「ありがとう」

 

実に嬉しそうに鈴音が礼を言う

 

「しかし、お前もいつも俺となんて食ってないで、他の奴と食ったらどうだ?」

 

「なんで?」

 

「なんで、って・・・お前も俺以外に女子の友達とかできたんだから、そっちで食った方が楽しいんじゃないか?」

 

そうなのだ

 

鈴音の性格と容姿で友人ができないわけがない

 

転校してきて1週間と少しほど経ったが、もう既にクラスの大半を友達にしてしまった

 

しかし、何故か鈴音はいつも俺と一緒に昼飯を食ったりする

 

自分でも自分が面白くない堅物なのではないか?と思うことがあるので鈴音の行動はかなり不可解だった

 

「あのねぇ、楽しくなかったら一緒に食べるわけないじゃない」

 

「確かにそうだが・・・」

 

「まぁ、そんなことどうでもいいじゃない、それより早く食べよ、お腹空いちゃった」

 

とりあえず、この疑問は先送りしておこう

 

「ああ、さっさと食べようぜ」

 

いつか解る日も来るだろう・・・多分

 

「おぉー・・・美味しそうー・・・」

 

鈴音が弁当を眺めながらよだれを垂らさんばかりに言う

 

実はちょっといつもより気張って作ったりした

 

「まぁ食えよ」

 

「うんっ!いただきまーす!」

 

鈴音はまずは弁当の定番玉子焼きを食べるや否や

 

「美味しー!」と漏らし、それから何を食べても「美味しい」と言ってくれた

 

くそ、なんか照れるな・・・でも嬉しい。

 

こんなに嬉しそうに食ってくれると作り甲斐もある

 

それに、こいつの笑顔は可愛すぎる・・美味しいと言うたびにとてつもない笑顔を見せるから何回も見惚れた。

 

反則だな、こいつが人気者になるのもうなずける

 

「ふー、ごちそうさまー」

 

「お粗末様」

 

定番の返事を返しておく

 

「いやもう、本当に美味しいよ、こんな美味しいの初めて食べたよー」

 

鈴音が笑いながら言う

 

それを聞いて俺も嬉しくなって

 

「そうか、ありがとう」

 

と笑みで返した

 

何故か突然ポーっとする鈴音

 

「おい、どうした?」

 

「な、何でもないよ!それよりも、そのえっと、えーっと・・・」

 

何で急に赤くなって慌てるんだ?

 

可愛いと思ったがやっぱ変な奴だな

 

「そ、そうだ!正はテスト勉強してるの!?」

 

「テス、ト・・・・?」

 

「そうテスト、もう明日から中間テストの一週間前じゃない」

 

中間テスト・・・そんなイベントもあったな・・・

 

桜花高校では真に有難くないことに、中間テスト、体育祭、文化祭、期末テストと二学期は立て続けにイベントが連なっているのだ

 

昔は体育祭、中間テスト、文化祭、期末テストと言う順番だったが、P○Aから(どうゆうわけか)物言いがついて上の順番になったらしい

 

「そうゆう鈴音はどうなんだよ、お前も勉強してるようには見えないじゃないか」

 

まったくしてない、と言い返すのも癪だから言い返してみる

 

大体、転校したばっかりというハンデがあるんだから、鈴音の方がやばいはずだが

 

「私はしてないよ、正と違ってしなくても余裕だもの」

 

「ちょっと待て・・・しなくても余裕と言う発言は置くとして、その正より余裕というのはなんだ・・・」

 

「色んな人からから「正の成績はビリから数えた方が早いー」って聞いた」

 

クラスの男共め、俺が鈴音に嫌われるような工作を始めやがったな・・・

 

こいつ鈍いから効果ないけど

 

「とゆうわけで、私が正の臨時教師をしてあげようと思って」

 

・・・・あれ?

 

なんか話飛びまくってない?

 

「何でそうなるんだ・・・」

 

俺は頭を抱えながら尋ねる

 

相変わらずこいつの思考回路はどうなってやがるんだ?

 

「良いじゃない、感謝して受けなさいよ。部活も明日から1週間前だからもうなくなるでしょ?」

 

「確かになくなるが・・・」

 

絶対怪しい

 

何か企みがあるに違いない

 

「・・・で、何が望みだ」

 

聞いてみた

 

鈴音はニヤッと微笑の中間のような笑顔を作って

 

「正のお弁当一週間!」

 

と言った

 

それが狙いか・・・

 

悪くはない条件だ。弁当を1つくらい増やすのは(前にも言ったが)そんな苦労することではない

 

それに、あんな良い顔してたいらげてくれるなら毎日作ってやっても良いくらいだ

 

問題は鈴音の成績が本当にどの程度良いか、というとこだ

 

無茶苦茶な自意識過剰の自分を天才と思い込んでる馬鹿(例:二郎)ということも有り得なくもないだろう

 

・・まぁ、馬鹿でも普通でも天才でも一緒にやるのは面白いだろう

 

1人だと途中で挫折することもあるだろうし

 

「分かった、その条件を呑もう」

 

「やった、成立ね」

 

喜色ばんだ声で鈴音が言う

 

「さて、契約が成立したとこでそろそろ降りるか。もう時間だ」

 

気付けばもう昼休みが終わりというとこまで時間が迫っている

 

「わ、もうこんな時間か、早く戻ろう」

 

俺と鈴音は急いで屋上を後にした

 

 

 

 

 

 

9月10日(金)

 

 

PM5:00

 

 

桜花高校剣道道場

 

 

 

 

「で、最近どうなんだよ」

 

「・・・・何がだ?」

 

俺と二郎は剣道の部活の休憩中に少し話す(実は二郎もまったく似合わないが剣道部所属である)

 

「何が、ってお前椿ちゃんと妙に仲が良いじゃないか」

 

「・・・そんなことはない」

 

「へぇー、屋上で手作りの弁当を渡しても仲が良くない、と」

 

「てめぇどこで知りやがった!あの時俺を見てる奴はいなかったはずだぞ!」

 

「やっぱそうか、いや、正が弁当の包み2つ屋上に持っていったから不思議に思ってカマかけたんだよ」

 

「・・・・ッ!」

 

騙された!

 

「・・・・何が望みだ」

 

今日の昼休みと同じことを言う

 

「別に、何も望まないよ」

 

はぁ?どういうことだ?

 

こいつの今までの傾向からしたら脅迫してきてもおかしくないんだが

 

「俺はまだ馬に蹴られて地獄に落ちたくないんでね」

 

二郎がニヤッとしながら俺に言った

 

「どうゆうことだ?」

 

「その内わかるさ」

 

『休憩終わりー!稽古始めるぞー!』

 

まだ二郎に話を聞きたかったが、休憩終了を告げる顧問の声が聞こえてきた

 

俺は準備をすべく少し急いだので、話はそれっきりになってしまった

        

      


あとがき

 

きりしまでございます、今回の話はどうでしたでしょうか?

 

ちなみに今回の話で「起承転結」で言うとやっと「承」の初めといったところです

 

まだまだ話は続きますが、できればお付き合いねがいます

 

ではまた次の話で

      

    


接近していく正、鈴音の二人〜。
美姫 「果たして二人の行く先は?」
まだまだ話が続くそうで、嬉しい限りです。
美姫 「続きを楽しみに待っていますね〜」
ではでは。





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