あの日からなんとなく彼の顔が見づらくなった
別に彼と話すのも見るのも嫌というわけじゃない
彼を見るとよくわからない気持ちが吹き出してきて、何か暴走しそうになって怖かった
しかし、彼を避けるのも苦しかった
私はともかくも、彼は普通に私に話しかけようとした
それを私は前述の理由で、怖くて拒絶した
その時に見せる、彼の表情は何故か私の心に突き刺さる感じがした
避けたら辛い
話そうとすると不安がある
私は一体、どうすればいいのだろう?
誰か教えて―
新式日常 第9話「ニアミス」
9月26日(日)
AM 9:30
桜花高校 グラウンド
今日は体育祭だった
祭りだから、みんなどこか浮かれている
俺みたいな運動だけが取り柄のような人間にとっては絶好の晴れ舞台でもある
しかし、俺の心は曇り空だった
理由は簡単
ここ1週間、鈴音から徹底的に避けられている
鈴音が逃げるように帰っていったあの夕方から一言も言葉を交わしていない
俺が話しかけようとしても避けられている
・・・・別に俺は構わないはずだ
これでクラスの男たちから制裁も食らわないし、精神的イジメもなくなる
鈴音も俺みたいなつまらない男といるより、話が合う女子と居た方が良いはずだ
そのはずなのに
何故、こんなにもよく鈴音のことを思い出すのか?
何故、鈴音のことがこんなにも気にかかるのか?
解らなかった。理解できなかった。今までこんなことなかった。
「おい小田、障害物競走の集合かかってるぞ。お前参加者だろ?」
「ああ、今行く」
・・・まぁ良い、競技に集中すれば忘れれるだろう。
少なくとも、その瞬間だけは
俺は運動神経が良いので、かなりのエントリーをしている
障害物競走、クラス対抗リレー、メドレーリレー、クラブ別リレー、パン食い競争、棒引き、棒倒し、騎馬戦・・・・・
概ねありふれた競技だな、格闘系が多い気がするが・・・
あとはクラス全員で参加の玉入れ、綱引きくらいか
しかし、うちの体育祭の競技って今は禁止されてる類の格闘系の競技が多いような・・・
まぁ、小学生ならともかく、高校生なら力の加減ができるから大丈夫か
彼は間違っていた
午前一杯でリレー系の競技は終わり、午後はいよいよ格闘系に入る
しかし、午前中のリレーは白熱した
クラス対抗リレーではアンカーが最後まで他のクラスの1位争いをしたし
クラブ別対抗リレーでは陸上部には負けたものの(陸上部が遅かったらそれはそれでどうかしている)なんとか2位を取って面目を保った
さて、次の競技は、と。騎馬戦は最後だが、棒引きと棒倒しはどの辺だったかな
「おい小田、次はフォークダンスだぞ。とっとと並びに行けよ」
・・・何ですと?
横に居た男子に言われ固まる
「俺はフォークダンスにエントリーなどした覚えはないが・・・」
「何言ってんだ、フォークダンスは全員参加だぞ」
慌ててプログラムを見直す
・・・あった、しかもちゃんと1年生全員と明記してある
余りにも自分と縁がないもんなんで、気が付かなかった
「よし小田、行くぞ」
俺は話し相手の男子に引かれるようにして入場門の方へ向かった・・・
男子と女子が別々の列に並び、どこかで聞いたことがあるような音楽が流れてくる
参ったな、気まずい鈴音とはあんまり顔を合わせたくないんだが
しかし、ここまで来たらもう逃げることはできない
鈴音と俺が当たるまでに終わることを祈るしか
「・・・・・・・・・」
もう次が鈴音だった
神様、そんなに俺が嫌いですか?
思わず運命を呪いたくなった
鈴音と踊る順番がやってきた
心なしか、鈴音の表情が強張っている(きっと俺も同じような顔をしているだろう)
鈴音とのダンスは何事もなく終わった
しかし、それからのことはあんまり覚えていなかった
気付いたらダンス自体が終了し、自分のクラス席に向かっているところだった
さて、色々あったが綱引き、玉入れ、棒引き、棒倒しが終わった
しかし、棒倒しはひどかったな・・・
何がひどかったかというと、殴り、蹴り、踏み、体当たりなどなんでもありだったのだ
しかも、高校生だから手加減できるなどということはなく、全員手加減なしの本気で殴ったりしている
男限定の競技というのが頷ける
・・・その割にはタンカで運ばれた怪我人とかが1人も出なかったな
簡易治療を受けてたのは山ほどいたが
さて、次は体育祭の華、騎馬戦だ。
俺は剣道部で鍛えたフットワークを見込まれ、馬ではなく乗る方だ
中学の時も最後の一騎打ちで5人抜きなどしたので、楽しみだ
騎馬戦の団体戦が終わり、一騎打ちになった
団体戦の時間自体は5分ほどといったところなので、騎馬戦は一騎打ちがメインと言っても良いだろう
当然俺は残っている
こちらは7騎、向こうは5騎
もしかしたら、俺に回ってくる前に終わるかも、と思った
しかし、その目論見は甘かった
何と、相手の1騎目に6人抜きされてしまったのだ
俺の番だ
6人抜きした相手の奴は「お前も余裕で抜いてやる」というような表情をしていた
見てろ
開始の笛が鳴る
と同時に相手が一直線に鉢巻を取りに来る
まぁまぁ早い、しかしいつも見てる竹刀より遅い
俺はそいつの手を冷静に左で受け流し、体を捻りながら右手で素早く鉢巻を取った
まずは1人抜き
取られた相手は呆然としながら退場した
2人目
こいつは動き自体がなっちゃいなかった
闇雲に手を出してくるので、全部捌いて疲れたところを素早く取った
3人目
2人目と同じで余裕だった
4人目
少し考えたのか、俺が手を出すのを待ちカウンターをするように待ち構えていたが、素早く取って勝ち
5人目
こいつは違った
俺と同じで何か格闘技でもやっているのか、どこかスキがなかった
迂闊に手を出せば、すぐ取られる感じがある
くそ、こんな奴とっとと倒して鈴音を・・・
違う、俺は戦いの途中に何を考えている。鈴音のことなんか後で考えろ
一瞬、ほんの一瞬俺は集中が途切れた
それを相手は見逃さなかった
相手の左手が猛然と迫ってくる
なんとか再度集中し、それをなんとか避けた
しかし、追撃で相手の右手が迫ってくる
くそ、なんとしてでも勝たなければ
思いっきり身を乗り出し、相手の右手をなんとか避けながら相手の鉢巻にに手を伸ばした
俺の右手が相手の鉢巻を取る
よし、勝った
そう思った瞬間、俺は頭から地面に叩きつけられ、意識を失った。
あとがき
今回は中身がスカスカです。
きりしまです、見てる人は少ないと思われますが、見ていただいてありがとうございます
出来ればこれからの拝見もお願いいたします
では、また次の話で
何か二人の間がギクシャク。
美姫 「二人はどうなってしまうのか」
そして、意識を失った正は。
美姫 「そんなこんなでまた次回〜」
楽しみにしています〜。