文化祭2日目
2日目は一般市民にも開放されるだけあって、実行委員の俺と鈴音は仕事に忙殺された
仕事がとてつもなく多く、実行委員から開放されたのは文化祭終了宣言が出されてからの16時半頃だった
これから後夜祭だ
どこの学校でも御馴染みのキャンプファイヤーからダンスへと繋がる終わりの儀式
俺は勿論、鈴音をダンスに誘うべく声をかけようとしたが、ついさっきまでそこにいたはずの鈴音がいなくなっている
どこにいったのだろうか?
ふと、窓に視線を向けると暮れゆく陽が目に入った
―あそこか
俺は確信をもってそこに向かった
新式日常 最終話「輝く日常」
「やっぱりここか」
屋上に行くと、やはりそこに鈴音が居た
「何を見てるんだ?」
鈴音はフェンス際の手摺りにもたれかかって、ボーっとオレンジ色に染まる街並を眺めていた
俺も隣に立って同じように街を眺める
「街を見ながら、ここ2ヶ月のことを思い出してた」
「・・・そうか、もう2ヶ月か」
鈴音と出会った日
その時と同じ夕陽を眺めながら友達になった日
ああ、あの頃はいきなり「名前で呼べ!」とか言い出すからこいつ変な奴だな、とか思ってたな
「・・・ちょっと、何で笑ってるのよ」
「いやいや、気にするな。思い出し笑いだ」
「まったく、なんで人が真剣な時に笑い出すかな・・・」
「すまん」
鈴音がふん、とそっぽ向く
俺はその背中に言う
「色々、あったよな」
「・・・うん、色々あったね。2ヶ月前にはこんなことになるなんて思いもしなかった」
本当に色々あった
友達になったり、弁当を作ってやったりした
お互いに意識し合って、無駄にすれ違った時もあった
「ねぇ?」
「ん?」
過去を振り返ってると、鈴音が問いかけてきた
「今度、またピクニックに行かない?」
「ああ、行こう」
「・・・昨日の約束があるから、お弁当作ってくれるよね?」
「別に約束なんてなくても作るよ。・・・・なんたって愛しい彼女様のためだ」
最後の台詞は少し恥ずかしくなって語尾を途切らせながら言う
鈴音も顔を赤くして俯いている
くそ、殺人的に可愛いな・・・
ああ、俺も世間一般で言う「バカップル」になりつつあるぞ、この幸せがあるならそれくらい言われても構わないが
「・・・12月になったらクリスマスも一緒に過ごそうね」
「ああ」
「初詣とかも一緒に行きたいな」
「ああ、そうゆうのも良いな」
「春になったらお花見とかも行きたいな」
「おいおい、話が飛びすぎだろう」
俺は思わず苦笑する
「別に良いじゃない、一緒に行ってくれないの?」
少し怒った口調で鈴音が返す
「勿論、行くよ」
うん、と鈴音が頷く
何となく、鈴音の手を握る
鈴音も握り返してくる
お互いに手を握り合って、二人でオレンジの街を眺める
会話はない
会話はないけど、どこまでも通じ合ってる気がした
会話はないけど、本当にとても幸せだった
新しい日常
愛しい彼女がいる日常
とても輝いている―
「いつまでも・・・」
鈴音が急に口を開く
「いつまでも、ずっとずっと一緒にいようね」
「当たり前だ」
真っ直ぐに鈴音の目を見て言う
「俺はずっと鈴音の側に居る」
「うん・・・・っ!」
お互いに見詰め合う
鈴音が目を閉じる
俺も目を閉じながら、唇を合わせた
あるところに、とても日常を愛する高校生がいました
ある日、彼は日常を望む1人の女の人と出会いました
彼と彼女は友達になり、一緒に過ごしました
当然のように、彼と彼女はお互いのことが好きになりました
でも、彼と彼女はお互いに好きでありながらすれ違って苦しんだりしました
それでも、それを乗り越え彼と彼女は想いを伝え合って、恋人同士になりました
そして、彼と彼女はとても幸せに過ごしました
そんな、どこにでもある普通の物語
あとがき
新式日常、これにてフィナーレです
きりしまです。えー、初めてのSSということで設定、登場人物などまるで生かせれてなかったのが心残りです
次回作ではちゃんと活用できるように改善したいと思います
では、また次のお話で
連載お疲れ様でした〜。
美姫 「お疲れ様〜」
二人のお話はひとまずこれでお終いみたいだね。
美姫 「そうね。とても面白いお話でした」
連載はここで終られるみたいだけれど、二人の物語はこれからも続いていく事でしょう。
美姫 「それを私たちがもう見る事は出来ませんが…」
それでも、これからも二人は物語を紡いでいきます。
美姫 「これから、二人はどんな物語を紡いでいくのでしょうね」
と、まあ最後はソレっぽい事を口にしつつ…。
美姫 「もう一度、きりしまさん、お疲れ様でした〜」
でした。